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決戦、デュラクシール ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第17話 ~

[ハガネ 格納庫]

リオ「……これまでと同じで、拒否してもいいのよ。 特に今回はね」
イング「いえ、僕に出来ることがあるなら、行きます」
リオ「いつもそんなことを言うのね」
イング「……僕には過去の記憶がありませんし、 寄る辺なき身ですから……何であれ、 必要とされるのは安心できるんです」
リオ「イング……」
マサキ「すまねえな、イング。お前の力も借りるぜ」
イング「わかりました」
イルム「これでパイロットは全員参加か」
ヴィレッタ「ええ。 一時退艦を希望するクルーもいなかったそうよ」
エクセレン「整備員のみんなは、セニア王女が行く所なら どこでも行くって、一致団結してたしねぇ」
マイ「まるで、アイドルのファン・クラブみたいだ……」
ツグミ「ところで、フェイル陛下の部隊の動向は?」
セニア「ナゴール湾に駐留中よ。 このまま何事もなければ、間に合うわ」
ヴィレッタ「では、各員は機乗し、待機しなさい」
ライ「了解です」
マサキ(フェイル殿下……今から行くぜ。 あんたを止めるためにな……!)

《神聖ラングラン王国 バルディア州 ナゴール湾(ハガネ)》


第17話
決戦、デュラクシール

〔戦域:ナゴール湾〕

(デュラクシールを始め、フェイル軍は出撃済み)
フェイル「そうか、カークスが……」
オールト「これで全ての采配は我らに委ねられました」
フェイル「ああ、そうだな。 ……それで、ハガネは?」
オールト「依然、こちらへ接近中…… まもなく現戦域内へ進入します」
フェイル「戦域、か。 衝突が避けられぬのであれば、そうなるな」
オールト「………」
フェイル「オールト将軍、貴公らは撤退してくれ。 そして、来るべき戦いに備えるのだ」
オールト「そのご命令には従えませぬ。 どこまでもお供させていただきますぞ、陛下」
フェイル「ならん。命を無駄にするな」
オールト「いえ……陛下の理想と苦しみ、 私は身に染みてわかっておるつもりです」
オールト「そして、ここにいる者全てが 陛下のために心身を捧げる決意をしております」
オールト「それでも我らが不要と仰るのでしたら、 まず私めからお討ち下さいませ」
フェイル「将軍……」
オールト「ただし、私が手塩に掛けたこのブローウェル…… 陛下のデュラクシール、そして魔装機神相手でも 遅れは取りませぬぞ」
フェイル「わかった……すまぬな、ケビン。 私は……」
オールト「その後のお言葉は、 事を成した後でいただきまする」
(南端にハガネが出現。出撃準備)
フェイル「マサキ…… 考えを改め、協力してくれる気になったか」
マサキ「いや……俺達はあんたを止めに来た」
フェイル「それは……魔装機神操者としての判断か」
マサキ「……ああ」
フェイル「やはり、私の行いがラ・ギアスに 災厄をもたらすと考えているのだな?」
マサキ「そうだ。 現に、ルオゾール達は混乱に乗じて動き出している。 それに、いまだ行方知れずのカークスも……」
フェイル「カークス将軍は先程戦死したよ。 ヤンロンやヒリュウ改との決戦でな」
マサキ「……!!」
フェイル「これで後顧の憂いを断つことが出来た。 マサキ、君達には済まないと思っているが…… 私は己の信じる道を進む」
セニア「兄さん! 今、成すべきことは シュテドニアスへの侵攻じゃなく、 ラングランの安定でしょう!」
フェイル「言ったはずだ、セニア。 武力によるシュテドニアス制圧が、 ラ・ギアス全土の平穏につながると」
セニア「シュテドニアスだけじゃないわ!  ラ・ギアス全ての国を敵に回すつもり!?」
フェイル「覚悟の上だ」
テュッティ「無茶です、陛下! 仮に全ての魔装機神が あなたの下に集っても、周辺の国々と戦って 勝利を収めることなど不可能です!」
フェイル「目的のためならば、手段は選ばぬ…… 非情に徹しなければ、大願は果たせぬ」
カーラ「そんな言葉で片づけられると思ってんの!?」
フェイル「……戦争に犠牲は付き物だ」
カーラ「わかってるよ!  でも、やらなくていい戦争に巻き込まれた人達は たまんないでしょ!」
フェイル「必然性の有無は、国王たる私が決めること。 我が悲願の成就を阻むと言うのであれば、 君達とて容赦はせんぞ」
セニア「兄さん!!」
フェイル「各機、攻撃を開始せよ!」
(ハガネの周りに爆煙多数)
イング「!!」
アイビス「う、撃って来た!」
マサキ「くっ! フェイル、本気か!?  本気で俺達とやろうってのか!?」
フェイル「ああ、そうだ。君達に魔装機神操者の 義務が課せられているように、私にも国王として 果たさねばならぬ責務がある」
マサキ「責務だと……!?」
フェイル「そう、今は非常の時なのだ。私とて戦争を 起こしたくはないが、ここでためらっていては 近い将来、今まで以上の戦乱が起きる」
フェイル「そうなってからでは遅いのだよ」
マサキ「馬鹿な! そうならないようにするのが あんたの役目だろ!? 時間をかけて、 他国との関係を修復していけば……!」
フェイル「……それは出来ん……出来んのだ、マサキ」
マサキ「何……!?」
テュッティ「どうあっても、シュテドニアスとの戦端を 開かれると仰るのですね?」
フェイル「……ああ」
マサキ「くっ! 自分の国を危機に陥れて、何が国王だ!  あんたはカークスと同じように 野望に取れ憑かれちまってるんだよ!」
フェイル「野望ではない、大義だ。私はラングランだけでなく、 ラ・ギアス全土のために事を成す」
マサキ「どうしても……どうしても退かねえってんなら、 俺は力ずくであんたを止める!」
アヤ「マサキ、それでは!」
マサキ「わかってるよ!  フェイルをデュラクシールから引きずり降ろす!」
テュッティ「出来れば、オールト将軍達も……!」
イルム「無駄死にさせるなってことだろ。 厳しい注文だが、やるしかないか」
テュッティ「テツヤ中佐、申し訳ありません。 このようなことになってしまって……!」
テツヤ「やむを得ん。 この事態を収拾するため、我々も参戦する」
エクセレン「キョウスケ達と一緒に地上へ戻るためにもね」
フェイル「では、行くぞ、マサキ…… このラ・ギアスの命運を懸けて!」
マサキ「あんたから教えられた魔装機神操者の義務……!  今こそ、それを果たすぜ!!」
(作戦目的表示)

〈vs オールト〉

[マサキ]

マサキ「ブローウェルなんぞで サイバスターと渡り合えると思ってんのか!  引っ込んでろ、爺さん!」
オールト「我が愛機を甘く見てもらっては困りますな、 マサキ殿! 行きますぞ!」

[テュッティ]

テュッティ「あなたの忠誠心には敬意を表します、 オールト将軍……しかし、私は魔装機神操者です!」
オールト「言われずとも承知しておりますぞ、テュッティ殿。 私も私の義務を果たしましょう!  遠慮なくかかって参られい!」

[ミオ]

ミオ「ちょっと、ちょっと! 何よ、そのブローウェル!  チート過ぎるでしょ!」
オールト「チートだかハートだか知らぬが、 我が愛機の力を見抜くとは、さすが魔装機神操者!」

[セニア]

セニア「よくもまあ、量産機のブローウェルに あれだけの改造を施せたものね…… 見直したわ、オールト将軍」
オールト「お褒めに預かり、恐悦至極。 ですが、陛下の大義を否定なさるのなら、 セニア様とて容赦はしませんぞ!」

[トールス]

トールス「間近で見れば、噂通りの機体だとわかる……!  見た目は似ていても、パワーが私の機体とは 段違いだ!」
オールト「ルザック州の警備を任されていた トールス・ゼテキネス中尉だったな……」
オールト「ラングランの軍人でありながら、 陛下に弓引くとは……その罪、許し難いぞ!」

[ゴルド]

ゴルド「それがしにも資金があれば、 あの機体と同様の改造を施すものを……!」
オールト「ふん、金だけでここまでの改造は出来ん!  ブローウェルの全てを知り尽くしてこそよ!」

[リョウト]

リョウト「見た目をさほど変えず、あそこまでのパワーを 引き出すなんて……かなりの知識と拘りがなければ、 出来ないことだ……!」
オールト「むっ、見所のある少年よの。 敵にしておくのが惜しいわ」

[撃墜]

オールト「く、くうっ……我がブローウェルも ここまでか……!」
マサキ「脱出しろ、爺さん!」
オールト「一足先に逝きますぞ、陛下……!  そして……また……共に……!」
(ブローウェルカスタムが爆発)
マサキ「じ、爺さん……!」
セニア「ど、どうして……?  脱出できたはずなのに……!」
フェイル(すまぬ、ケビン…… 礼は、彼の地で会った時に述べよう……)

〈vs フェイル〉

[マサキ]

マサキ「俺は……正直、あんたとは戦いたくなかったぜ。 だけど、やるしかねえんだな!」
フェイル「全てはこの一戦で終わる……!  例え、どちらが勝つにせよ…… これは、そういう戦いだ!」

[テュッティ]

テュッティ「陛下、理由を教えて下さい!  そうでないと私は……私は!」
フェイル「すまない、テュッティ。 一刻も早く、ケリを付けよう…… 私には時間が……!」
テュッティ「え……!?」

[ミオ]

ミオ「あたしもザムジードに選ばれた以上、 魔装機神操者なんだから! 覚悟は出来てる!」
フェイル「いい目だ、ミオ……リカルドはいい後継者を得たな。 私の相手としても相応しいよ!」

[プレシア]

プレシア「殿下、あたしはゼオルートの娘です!  お父さんならきっと……あたしと同じことを したと思います!」
フェイル「ふ……いい構えだ、プレシア。 父親と同じく、きっと君はいい戦士になる……」

[セニア]

セニア「兄さんのやり方は間違ってる!  あたしにはもう、兄さんのことがわかんない!」
フェイル「セニア、お前も敵に回るか。 ふふ、さすがは私の妹だ…… それでいい、それでいいんだ……」

[ライ]

ライ「あなたも我が父と同じく、 敢えて力を行使すると言うのなら…… 俺はそれを止める側に回る!」
フェイル「そうか……君は父上を心の中で尊敬し、 愛していたのだな」
ライ「……!」
フェイル「私にはわかるような気がするよ、 ライディース……」

[HP50%以下]

フェイル「……ここまで来て、遠慮はいらぬ。 全力で来なければ、このデュラクシールを 止めることなど出来んぞ」
マサキ「フェイル! 何があんたをこんな無謀な戦いに 駆り立ててるんだ!?」
フェイル「理由を知らねば、本気で私を討てぬか……」
テュッティ「……!」
フェイル「教えてやろう…… 地上人をこの地に召喚し、混乱を引き起こした 責任は……この私にあるのだ」
マサキ「!!」
カーラ「そ、それ、ホントなの!?」
フェイル「ああ、そうだ」
アヤ「そ、そんな……!」
フェイル「言い訳に聞こえるだろうが…… 召喚プログラムが事故で暴走してしまったため、 呼び寄せた地上人の数は予想を遥かに上回った」
フェイル「事故の原因はいまだに不明…… いや、事故ではなく、何者かが 仕組んだことかも知れぬ」
セニア「………」
フェイル「だが、大量の地上人召喚により、 ラ・ギアスを混乱させてしまったのは、 紛れもない事実だ」
マサキ「まさか、それを収拾する気で……!?」
フェイル「私とて、最初からラ・ギアス統一計画を 強行する気はなかった。だが、私の命が あと僅かだと知った時……」
マサキ「!?」
フェイル「この命ある限り、責任を取ってみようと 考えたのもまた事実だ」
セニア「に、兄さん……命があと僅かって……!?」
フェイル「私は……理想実現のために 何としても王座が必要だった……」
フェイル「そのためには、生来不足していた魔力を 強化しなければならなかった」
セニア「……!」
フェイル「かろうじて魔力テストには合格したが、 無理な修練と薬物の副作用で私の身体は 限界を迎えていた……」
フェイル「それに加え、王都のテロ事件で負った傷が 致命的となり……私の命は、もってあと半年」
セニア「そ、そんな……!!」
マサキ「だ、だからって、何もこれほど急いで 力で全てを解決しようなんて……!!」
フェイル「これまでの戦いを経て、わかったのだ…… 私は本質的に軍人なのだと」
フェイル「そして、軍人は力による解決を尊ぶものだ。 その私に対し、手心を加えようなど…… それは、侮辱以外の何物でもない」
テュッティ「陛下……!」
フェイル「私に残された時間は少ない…… 故に、悲願達成を妨げる者は 何人であっても排除する」
ライ「地上人召喚事件の責任を取ると言うのなら、 あなたが選んだ方法は間違っている……!」
リョウト「そうです!  ラ・ギアスへ呼び込まれた地上人を見つけ出し、 地上へ送還させることこそが……!」
フェイル「召喚プログラムが暴走した時点で、 賽は投げられたのだよ」
フェイル「無論、君達を巻き込んでしまったことは 申し訳ないと思っているが……」
フェイル「各国が地上人召喚事件の真相を知れば、 様々な手段で我々を糾弾するだろう。 そして、それはさらなる混乱を呼ぶ……」
マサキ「そうなる前にラ・ギアスを統一しようってんなら、 本末転倒も甚だしいぜ!」
フェイル「事実隠蔽や責任転嫁のための手段ではない。 地上人召喚事件が起きずとも、魔神によって もたらされる災厄は予言されているのだ」
フェイル「全てが手遅れになる前に、 私は力を以てラ・ギアスを統一し、 秩序をもたらす……!」
フェイル「君達もこの世界の行く末を案ずるのならば、 全力で私を阻止してみせろ!」
マサキ「あんたが仕掛けようとしてる戦争は 私闘以外の何物でもねえ……!」
マサキ「フェイル! 俺は魔装機神操者として、 あんたの野望を叩き潰すぜ!!」

[マサキ]

マサキ「もう引き返せねえんだな、フェイル……!  だったら、せめてこの俺が幕を引いてやる!」
フェイル「まだ終わるわけにはいかないのだよ、マサキ。 ラ・ギアス全土の未来のためにも…… そして、責任を取るためにも」
マサキ「あんたには別の方法で責任を取ってもらう!  そのデュラクシールから引きずり降ろした後でな!」
フェイル「甘いな、マサキ!」
マサキ「!」
フェイル「どうした!? 遠慮などいらん!  私を倒すのが、お前達魔装機神操者の義務だろう!」
マサキ「いいだろう、手加減はしねえぜ!!」

[テュッティ]

テュッティ「私がもっと早く陛下のことに気づいていれば…… 他に手立てがあったかも知れないのに!」
フェイル「君が悔やむ必要はない…… 全ての責任は、この私にあるのだからな」

[ミオ]

ミオ「命があと僅かだから……責任を取るためだからって、 戦争を起こすなんて、納得できないよ!」
フェイル「それが君とザムジードの心の声か……!」

[プレシア]

プレシア「本当に……本当に これしかなかったんですか、殿下……!?  こんなの、悲し過ぎます……!」
フェイル「今の私は……悲しむ時間すら惜しいのだよ、 プレシア」

[セニア]

セニア「駄目よ、兄さん!  こんな責任の取り方なんて…… もっと他に方法があるはずよ!」
フェイル「セニア……お前には感謝している…… デュラクシールという力を与えてくれたのだから」
セニア「あたしが、そんな物を造ってしまったから……!  こんな……こんなことになるのなら……!」

[トールス]

トールス「陛下、まだ間に合います!  その機体から降りて下さい!」
フェイル「ここで立ち止まるわけにはいかぬのだ、中尉…… 私の命令によって戦場へ赴き、散っていった 部下達に報いるためにも!」

[ゴルド]

ゴルド「義のためなどとは申しませぬ!  それがしは、それがしの信ずる所に従って、 この戦場におりまする!」
フェイル「マサキに拠り所を見出したか…… それは彼の成長を意味する。良きことだよ」

[ライ]

ライ「あなたには生きて責任を取ってもらう!」
フェイル「ラ・ギアス全土の統一以外に方法はないのだよ、 ライディース」
ライ「それは独善に過ぎない!  残される人間のことを考えていないのか、 あなたは!」

[テツヤ]

フェイル「あなた達がマサキ達に協力するとは…… いや、予測はついていた」
テツヤ「自分は陛下のご意志を理解し、 ラングランに平和をもたらすためにも 戦ってきたつもりです」
テツヤ「一方的に巻き込まれてしまったとは言え、 我々地上人の存在はラ・ギアスの情勢に 影響を及ぼした……」
テツヤ「ならば、それを少しでも収拾するのが 我らの役目でありましょう」
フェイル「ふ……あなた達に出会えたのは僥倖だった。 だが、この混乱した事態を収拾するのは、 私の役目なのだ……!」

[撃墜]

フェイル「終わった……な……全てが…… これで……良かったのかも知れん……」
フェイル「セニア……モニカ……テリウス…… わかってくれとは……言わない…… ただ……許して欲しい……」
マサキ「フェイル……!!」
フェイル「私も……君達と同じ時を歩みたかった…… さぞ楽しかったろうなあ……」
セニア「兄さん、脱出して! 脱出装置があるでしょ!?」
フェイル「は……はは……セニア…… 強制脱出装置は取り外しておいたよ……」
マサキ「なっ……!!」
テュッティ「フェイル陛下っ!!」
フェイル「どっちにしろ、私の命は……もう……」
セニア「駄目ぇっ! 兄さん、駄目よぉっ!!」
フェイル「?……モニカか……?  そうか……無事だったんだね……良かった……」
セニア「えっ……!?  兄さん、何言ってるの……? 私は……」
セニア「! まさか、目が!?」
フェイル「モニカ……セニア…… お前達で……ラン……ラングランを…………」
(デュラクシールが大爆発)
セニア「に、兄さん!!」
マサキ「フェ、フェイル……!!」
プレシア「あ、あああ……そんな……そんなぁ……」
テュッティ「う、うう……フェイル陛下……」
ライ(……それがもう一つの…… 責任の取り方ですか……)
(北東端にソディウム級移動要塞が出現)
ノボス「陛下……! 遅かったか……!!」
マサキ「貴様……ノボス……!」
ノボス「お待ち下さい、マサキ殿。 すでに事は終わりました。 我らに戦う意志はございません」
マサキ「……そうだな……もう……」
ミオ「終わった……の?」
マサキ「ああ……。 だが、また混乱が起こっちまうかもな……」
ノボス「その心配はご無用です。 陛下はこちらへ来られる前に 全ての始末をつけておられました」
セニア「どういう……こと……?」
ノボス「陛下が亡くなられた時点で ラングラン新政府は解散……新たな内閣が 総選挙により決定されるようになっております」
ノボス「同時にシュテドニアスとの休戦協定も 新内閣によって結ばれます」
ノボス「陛下は全てを見越した上での…… 覚悟の死だったのです……」
マサキ「覚悟の死だと!? そんな言い方をするな!!」
ノボス「!!」
マサキ「フェイルは死ぬためにここへ来たんじゃねえ!  あいつは、最後まで自分の理想を貫いたんだよ!」
テュッティ「マサキ……」
マサキ「それが……それが間違っていたとしても…… あいつにはそれしかなかったんだ……」
マサキ「死ぬために戦うなんてのは…… 似合わねえよな……」
マサキ「なあ、フェイルよ…………」

《神聖ラングラン王国 バランタイン州 セブ神殿》

[セブ神殿(祭壇近く)]

リューネ「マサキ!」
マサキ「リューネ、 おめえもラ・ギアスへ来てたとはな……」
リューネ「ようやく会えたよ。 こっちはこっちで大変だったんだから」
マサキ「ああ、カークス将軍の本隊と戦ったんだよな」
ヤンロン「それにしても…… 地上人召喚事件の発端を開いたのが、 フェイル殿下だったとは……」
テュッティ「でも、何らかの原因で召喚プログラムが暴走して…… 予定を遥かに上回る数の地上人が ラ・ギアスに呼び込まれてしまったのよ」
テュッティ「しかも、戦艦や機動兵器ごと……」
マサキ「フェイル殿下は、シュテドニアスに侵略された ラングランを解放しようとして、勇み足を 踏んじまったんだ」
マサキ「戦力増強のため、地上人を召喚したが…… テュッティが言った通りの結果になっちまった。 そして、それがさらなる混乱を呼んで……」
マサキ「余命いくばくもない殿下は、 事態を収拾し、戦いを終わらせるために ラ・ギアスの武力統一を決意した……」
ザッシュ「……最終的にフェイル殿下は、 僕の父と同じような結論を出されたのですね……」
マサキ「ああ……俺達はそれを止めようとしたが、 フェイル殿下は自らの命と引き替えに 責任を取ることを選んだ……」
ミオ「殿下は、デュラクシールの脱出装置を 予め取り外してたんだよね……」
ヤンロン「……彼女が、ザムジードの?」
テュッティ「ええ、そうよ」
ミオ「あたし、ミオ・サスガ。 グランヴェールのヤンロンさん、だよね。 よろしく」
ヤンロン「ああ、こちらこそな」
リューネ「マサキがサイバスター、ヤンロンがグランヴェール、 ミオがザムジード……じゃあ、残りのガッデスは 誰が乗ってるの?」
テュッティ「私よ」
リューネ(わ、美人……)
プレシア「リューネさん、ですよね?  あたし、プレシア・ゼノサキスです。 お兄ちゃんから色々と話を聞いてました」
リューネ「ああ、確か……マサキの義理の妹なんだよね」
プレシア「はい、よろしくお願いします」
タスク「……たは~、そっちは女子率が高かったんだな。 俺もハガネに乗ってりゃよかったぜ」
マサキ「何言ってんだ、お前?」
タスク「あそこの……ART-1に張り付いてる子も お前の知り合い?」
マサキ「ああ、セニア王女だよ」
セニア「……これがART-1…… Rシリーズとヒュッケバイン・シリーズの ラインの合い具合が見事ね」
リュウセイ「おっ、わかる?」
セニア「わかるわかる。 フレームの剛性が上がって、屈伸時の 重心移動がやり易そうな感じとか」
リュウセイ「そ、そんなことまで……」
リョウト「彼女は魔装機の設計をやってるからね。 それに、パーソナルトルーパー特機の 研究もしてたし……」
リュウセイ「つまり、相当なメカ好きってこと?」
リオ「リュウセイ君とはちょっと方向性が違うわよ。 ヒュッケバインを参考にした魔装機を 作ったぐらいだし」
リュウセイ「マジ!? ど、どこにあるんだ、それ!」
リョウト「リオ、そのことは……」
リオ「あっ……ご、ごめんなさい、セニア」
セニア「ううん……いいの」
リュウセイ「どういうことなんだ?」
リョウト「その魔装機は……デュラクシールは、 フェイル殿下が最後に乗った機体なんだ」
リュウセイ「……!  す、すまねえ、事情を知らずに はしゃいじまって……」
セニア「いえ、大丈夫よ。気にしないで。 今度、時間があったら、ゆっくりと メカの話をしたいわね」
リュウセイ「あ、ああ……」
(速い足音)
マイ「リュウ!」
リュウセイ「マイ……!  色々と心配かけちまったみたいだな」
マイ「ううん、リュウが無事で良かった……」
アヤ「行方不明になってたあなたとキョウスケが ラ・ギアスへ来ていたなんてね……」
リュウセイ「まあ、俺もこっち側へ戻って来た時は びっくりしたけどよ」
エクセレン「ねねね、キョウスケは 私と会えなくなって、寂しがってた?」
リュウセイ「いや、いつも通りだったけど」
エクセレン「あらら……まったく、もう」
アヤ(寂しがってるキョウスケは ちょっと想像できないけどね)
イルム「これで、ラ・ギアスへ召喚された 鋼龍戦隊のメンバーは全員揃ったか?」
ライ「どうやら、そのようですね」
エクセレン「私以外のATXメンバーとカチーナ組、 ボスとシャイン王女、リューネちゃんが ヒリュウに乗ってたのよね」
シャイン「……ライディ様、ご無事で何よりですわ」
ライ「王女こそ…… よもや、御身までもが召喚されていたとは……」
シャイン「はい。リクセントでフェアリオンの コックピット内を掃除していた時に、 こちらへ呼び込まれてしまったのです」
ライ「そうだったのですか……」
アイビス「……ねえ、クスハ。 あんた達、緋色のシリーズ77…… ベガリオンを見掛けなかった?」
クスハ「え……?  緋色って……もしかして、スレイさんも ラ・ギアスへ来てたんですか?」
アイビス「多分……。 でも、本人が乗っているかどうか、 確認は出来なかった……」
ブリット「俺達はその……ベガリオンは見ていない」
アイビス「そうか……」
カチーナ「ムラタやアルジャンとか言うムカつくガキ共とは やり合ったけどな」
エクセレン「ムラタって……武者ガーリオンの?  あの人もラ・ギアスに来てたの?」
カーラ「それに、あの三人がヒリュウ組にも ちょっかいを出してたなんて……」
ゼンガー「ああ……シュテドニアス軍の傭兵としてな」
ユウキ「彼らは、このままラ・ギアスに 居座るつもりなのか……?」
リューネ「じゃあ、あいつらを見掛けたら、 あたしが懲らしめとくよ」
リュウセイ「って、お前……こっちに残るつもりかよ?」
リューネ「うん。ラ・ギアスに愛着も湧いてきちゃったし…… 何より、マサキがいるからね」
ザッシュ「そ、それが理由なんですか、リューネさん……」
エクセレン「むむっ、その顔……もしかしてもしかすると、 あなた、リューネちゃんにホの字な感じ?」
ザッシュ「そ、そそそ、そういうわけでは!」
エクセレン「あらん、わかり易いわねぇ。 ま、ストレートなのはいいことだけど♥」
イルム「その前に……どこの誰君?」
ザッシュ「僕はザシュフォード・ザン・ヴァルハレヴィア…… 魔装機ガルガードの操者です」
ライ「ヴァルハレヴィア……?  もしや、カークス将軍の?」
ザッシュ「はい、息子です」
アヤ「そ、そうだったの……」
ザッシュ「父が色々とご迷惑をお掛けしたようで…… 申し訳ありませんでした」
イルム「いや……もう終わったことだからな」
(足音)
テツヤ「……レフィーナ大佐、 こちら側の点呼は終了しました」
レフィーナ「では、地上へ帰還しましょう」
ヴィレッタ「各員は直ちに乗艦しなさい」
アヤ「了解です、隊長」
テュッティ「テツヤ中佐…… 今までありがとうございました」
テツヤ「いや、こちらこそな」
セニア「レフィーナ大佐、 私からもお礼を言わせて下さい。 それと……」
セニア「あなた達をラングランでの戦乱へ 巻き込んでしまった兄を、 どうか許していただけませんか」
レフィーナ「ええ……今回の事件で、 私達も学び得ることが色々とありましたし……」
レフィーナ「これからが大変でしょうが、 ラ・ギアスの未来のために頑張って下さい」
セニア「……はい」
マサキ「あ、そうだ。 リュウセイ、こいつを渡しとくぜ」
リュウセイ「何だ、そりゃ?」
シャイン「笛……に似ておりますわね」
マサキ「そうそう、一回吹いたらプレシアが、 二回でテュッティ、三回で俺が……」
レオナ「何の話なの?」
マサキ「いや、何でもねえ。 そいつは高性能の小型エーテル通信機でな、 地上とラ・ギアス間で連絡が取れるんだ」
マサキ「何かあったら、呼んでくれ。 俺で良けりゃ、力になるぜ」
リュウセイ「ああ、わかった」
マサキ「言っとくが、つまんねえ用事で呼び出すなよ?  しばらくの間は事後処理で忙しくなるんだから」
タスク「まあ、そりゃお互い様だよな。地上じゃ、 俺達は行方不明扱いだろうし……戻ったら 報告書をいっぱい書かされるのは間違いねえな」
リューネ「あらら…… こういう時は、フリーで良かったと思うよ」
カーラ「うん、まったくだね」
キョウスケ「では、マサキ……元気でな」
マサキ「ああ。また会おうぜ、みんな」

[セブ神殿]

ミオ「行っちゃったね……寂しくなるなあ」
マサキ「ミオ、リューネ…… 本当に地上へ戻らなくて良かったんだな?」
リューネ「まあ、帰ろうと思えば、いつでも帰れるしね」
ミオ「あたしはザムジードの操者だし…… 責任と義務があるもん」
ヤンロン「ほう……いい心掛けだ」
マサキ「なら、操者としての修行がもっと必要だな、ミオ」
テュッティ「まだ使い魔も持っていないしね」
マサキ「しばらくの間は、俺が訓練に付き合ってやる。 ビシビシしごいてやるから、覚悟しな」
ミオ「はい、先生!」
ゲンナジー「特訓ならば、俺も付き合おう」
ミオ「はい……って、誰!? いつの間に!?」
ゲンナジー「さっきからいたのだが……」
ミオ「か、完璧なまでの気配の消し方…… もしかして、忍者?」
ゲンナジー「いや、俺はゲンナジー・I・コズイレフ。 魔装機ジャオームの操者だ」
セニア「さあ、みんな。王都へ戻りましょ。 やらなきゃならない仕事は、たくさんあるわよ」
プレシア「はい!」
リューネ「そうそう、一段落したらデートしよ、マサキ」
マサキ「は? 何でだよ?」
リューネ「あーっ、あんた!  前にデートをすっぽかしたこと、忘れたの!?」
マサキ「う~ん、覚えがあるような、ないような……」
ザッシュ「じゃ、じゃあ、リューネさん。 代わりに僕がデートを……」
テュッティ「はああ…… これから忙しくなるというのに、 緊張感ないんだから」
ヤンロン「気を引き締めなければならないぞ。 シュウやルオゾール達は、まだ暗躍を 続けている……」
ヤンロン「それに、テリウス殿下やモニカ王女も 行方不明のままなのだからな」
マサキ「わかってるよ。 シュウやルオゾールが何をしでかそうと、 俺達の魔装機神で食い止めてやるぜ……!」


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