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フェイルの闇 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第15話 ~

《神聖ラングラン王国 ラングラン州 王都(ハガネ)》

[ハガネ 格納庫]

セニア「え? サイバスターが?」
マサキ「ああ。ヴォルクルス神殿で サイフラッシュを使ってから、 どうも調子が良くねえんだ」
セニア「じゃあ、ハガネから降ろしといて。 あたしが精密検査をやるわ」
マサキ「わかった、頼むぜ。 ……ところで、手に持ってるのは何だ?」
セニア「これ? 新しい魔装機の資料よ」
マサキ「設計したのはお前だろ?」
セニア「えっ? ええ、まあ」
マサキ「地上の機体を参考にした機体なんだろ?」
セニア(ううっ、確信しちゃってるわね。 リョウト達に最終調整データを こっそり見てもらおうと思ってたんだけど)
マサキ「どうなんだ?」
セニア「わかった、わかったわ、白状するわよ。 ヒュッケバイン・シリーズを参考にした魔装機なの」
マサキ「やっぱり……」
リオ「その話、本当?」
セニア「ええ。超高性能の魔装機で、名前はデュラクシール。 明日、ロールアウトする予定なの」
マサキ「つーか、もうそこまで出来てんのか」
リョウト「ヒュッケバインMk-IIやMk-IIIの 実機を見たがってた理由がわかったよ……」
ライ「……何故、ヒュッケバイン・シリーズを 参考にしたんだ?」
セニア「地上の機体データを色々見たんだけど…… 個人的には、ヒュッケバイン・シリーズが 最もバランスに優れたフレームを持ってると思ったの」
セニア「見た目は華奢だけど、大出力ジェネレーターの 搭載を想定した高い剛性を持っているし…… 運動性にも優れていて、汎用性も高いわ」
イルム「ああ。ご指摘通り、いい機体なんだが…… 色々と曰く付きでな」
セニア「知ってるわ。 今、ここにいる人って、当事者なんでしょ」
イルム「よく御存知で」
セニア「ええ、マサキからもらったデータに 大まかな経緯が記録されてたから」
イルム「……意外にまめなんだな、マサキ」
マサキ「いや、俺じゃねえよ」
クロ「あたしが折を見て、記録してたニャ」
リオ「そうなんだ。 まあ、マサキ君がコツコツとデータ打ちを してる所なんて、想像できないけど」
マサキ「わ、悪かったな」
リョウト「それで……デュラクシールはどんな機体なの?」
セニア「火力重視の魔装機よ。ヒュッケバイン・シリーズより 大型化されていて、フレームの剛性を高めつつ、 大出力ジェネレーターを搭載しているの」
セニア「あと、精霊とは契約してないんだけど…… 疑似プラーナ発生装置のおかげで、操者の プラーナ次第では魔装機神並の力を発揮できるわ」
マサキ「精霊と契約してねえのか。 話だけ聞いてりゃ、魔装機って言うより、 地上の特機みてえな感じだな」
セニア「そうね、ラングラン軍のフラグシップ機に なり得る機体よ」
(扉が開閉する)
テュッティ「セニア様、マサキ、 そろそろフェイル殿下の所へ行く時間よ」
マサキ「わかった。 俺はサイバスターを出さなきゃならないから、 先に行っててくれ」

[神聖ラングラン王国 王宮内(執務室)]

フェイル「そうか、ヴォルクルスが……」
ノボス「カークス軍残党やシュテドニアスとの問題が 落ち着かぬ現状では、由々しきことですな」
フェイル「ああ……ヴォルクルスの復活に シュテドニアスが一枚噛んでいるとなると、 看過することは出来ん」
マサキ「どっちかって言うと、 シュテドニアスの特殊部隊はルオゾールに 利用されてただけっぽいがな」
フェイル「事の大小でなく、彼らの間につながりがあるという 事実を重要視しなければならない」
フェイル「シュテドニアス軍が、ヴォルクルスによって 破壊活動を目論む輩と結託したのなら…… 彼らに再度侵攻の意志ありと見なすべきだ」
マサキ「あ、ああ……」
セニア「でも、兄さん…… 向こうも軍勢を引き揚げたばかりだから、 すぐに攻めて来るとは思えないけど」
フェイル「いや、悠長なことを言ってはいられない。 我が方は一刻も早く態勢を立て直し、他国の 侵攻に対する備えがあることを示さねばならない」
セニア「それはそうだけど……シュテドニアスやバゴニアを 下手に刺激することにならないかしら?」
フェイル「彼らに動きがなければ、な。 だが、現にシュテドニアスは特殊部隊を ラングランへ送り込んで来ている」
フェイル「ここで日和っては、彼らを付け上がらせるだけだ」
セニア「………」
マサキ「……ルオゾール達への対応はどうすんだよ?」
セニア「ヴォルクルスの件は、クリストフも絡んでいると 思うし……モニカやテリウスのこともあるから、 追跡調査が必要だわ」
セニア「情報局の専任調査員の数を増やして…… 場合によっては、魔装機魔装機神を 含めた対策班の結成を」
フェイル「わかった、検討しよう。 ヴォルクルスのみならず、有事の際に動ける 独立部隊発足の件も含めてな」
マサキ「独立部隊……鋼龍戦隊みたいな感じのか?」
フェイル「イメージは近いが、権限はもっと拡大させたいと 思っている。ただ、私の一存で決められぬ案件だ。 発足にはそれなりの時間が掛かるだろう」
フェイル「それまで、ヴォルクルス出現のような 非常事態が発生した場合は、君達に対応を要請したい」
マサキ「ああ」
テュッティ「わかりました、殿下」
フェイル「それと、地上人送還の件だが…… 戴冠式と新体制政府の発表後に行うつもりだ」
マサキ「戴冠式……じゃあ、殿下が……!」
フェイル「そうだ。私が第288代ラングラン国王となる」
テュッティ「おめでとうございます、殿下…… いえ、陛下とお呼びしなければなりませんね」
フェイル「気が早いな、テュッティ」
セニア「じゃあ、ますます忙しくなるわね、兄さん」
フェイル「ああ。私が国王になっても、ついてきてくれるか?  ラングランだけでなく、ラ・ギアス全土に 秩序と平穏をもたらすために」
マサキ「もちろんだぜ、殿下」
フェイル「……その言葉に期待させてもらうよ、マサキ。 これから私がやろうとしていることに 君や魔装機神の力は必要不可欠なのだから」
フェイル「今までと同じく、私に協力してもらえるとありがたい。 これは、次代国王という立場からの要請だけでなく、 私個人の切実な願いでもある」
マサキ「……どうしたんだ、今日は? 妙に改まって」
フェイル「それだけ私の決意が固いということさ。 以後は、相当の覚悟で事を進めなければ ならないからな」
セニア「兄さん……いったい、何をするつもりなの?」
フェイル「まもなく、わかるよ。それと、デュラクシールを 動かせるようにしておいてくれ。新体制発表時に お披露目を行いたい」
セニア「でも、操者はどうするの?」
フェイル「デュラクシールには、私が乗る」
テュッティ「えっ、殿下が?」
ノボス「いけません。殿下は国王になられる身ですぞ。 軽率な行動は慎んでいただかねばなりませぬ」
フェイル「わかっているが、人々の規範となるのが王だ。 私は、脅威に対して自ら立ち向かうことも 厭わぬ存在でありたい」
フェイル「そのことについては話したはずだ、ノボス」
ノボス「……承知致しました」
セニア「………」
フェイル「では、セニア……調整を頼む」
セニア「……すぐに戦線へ出るわけじゃないわよね?」
フェイル「ああ、そのつもりだ」
セニア(……どうしたのかしら、兄さん…… 気負って……いや、焦っているように見える……)

[ハガネ ブリッジ]

マサキ「……というわけで、みんなを地上へ送還するのは 戴冠式と政府の新体制発表後となる」
マサキ「それまで、 ハガネには王都の警備を担当してもらいたいとさ」
テツヤ「了解した」
アヅキ「私達、ようやく地上へ戻れるんですね……」
エイタ「マサキ、お前はラングランに残るんだよな?」
マサキ「ああ、テュッティ達と一緒に フェイル殿下の手伝いをするつもりだ」
アヅキ「それじゃ、クロちゃんやシロちゃんと 会えなくなっちゃうんですね……」
クロ「また地上に行くことにニャるかも知れニャいし…… 今生の別れってわけじゃニャいわ」
(アラート)
マサキ「何だ!?」
エイタ「艦長、王都内で大規模な爆発が!」
テツヤ「敵襲か!?」
エイタ「いえ、王都周辺に敵影は見当たりません!」
アヅキ「艦長、セニア王女から通信が入っています!」
テツヤ「つなげ!」
(通信がつながる)
セニア「テツヤ中佐、マサキ、大変よ!  サイバスターのエーテル・スラスターに ヴォルクルスの破片が付着していたの!」
マサキ「な、何!?」
セニア「小さかったから、整備員も見落としてたのよ!  それで、破片を引き剥がした途端、再生が始まって!」
マサキ「じゃあ、さっきの爆発の原因は!?」
セニア「そう、再生途中のヴォルクルスが 外に出たせいよ!」
エイタ「な、なら、王都の中にあの化け物が!?」
テツヤ「総員、第一種戦闘配置!  直ちに各機を出撃させろ!」
マサキ「セニア、サイバスターは無事なのか!?」
セニア「ええ。 事が起きたのは破片を除去した後だったから……」
マサキ「よし、すぐにそっちへ行く! 俺も出るぜ!」


第15話
フェイルの闇

〔戦域:王都〕

(王都の西側にヴォルクルスが出現していて、ハガネは出現済み。出撃準備)
ミオ「再生したヴォルクルスって、 1体だけじゃないの!?」
セニア「分裂して、増殖したのよ。 早く倒さなきゃ、さらに数が増えるかも知れない」
マサキ「くそっ、俺のせいだ!  俺がヴォルクルスを始末できなかったから……!」
ヴィレッタ「今、それを言っても始まらないわ。 ここで確実に仕留めることを考えなさい」
ノボス「フェイル殿下、トロイアへ派遣した部隊を 王都へ呼び戻しましょう」
フェイル「それは駄目だ。後々の作戦に支障が出る」
ノボス「しかし、大事の前です。 王都がこれ以上の損害を被れば、 殿下のご計画が……」
フェイル「今、王都に在留している戦力で ヴォルクルスの分身を撃退することに意味がある」
フェイル「マサキ達の力を借りることにはなるが…… 新たなラングランの力を国内外に示す機会となろう」
ノボス「まさか、殿下! デュラクシールでご出陣を!?」
フェイル「ああ。先程も言った通り…… 脅威に際しては、自ら立ち向かう王でありたい」
ノボス「で、ですが、御身に万一のことがあれば!」
フェイル「ここで敗れるようであれば、 大事を成し遂げることなど出来ぬよ」
ノボス「わ、わかりました……」
オールト「殿下、私もお供致しますぞ」
フェイル「いや、将軍は民の避難誘導と護衛を頼む。 それと、くれぐれもザボド卿や神官達に 累が及ばぬようにな」
フェイル「彼らに何かあれば、戴冠式や地上人送還が ままならなくなる」
オールト「承知致しました」
セニア「……王都内でヴォルクルスと戦って、 破片を撒き散らされたりしたら厄介だわ。 みんな、何とか彼らを王都の外へ誘導して」
イルム「ああ、わかった」
フレキ「テュッティ様、あの分身達は 前回遭遇した時ほどの力を持つに 至っておらぬようです」
テュッティ「完全に再生したわけではないのね」
エクセレン「言われてみれば、上半分しかいないわねぇ」
ゲリ「ですが、時間が経てば、下半身部分も 再生される恐れがあります」
アヤ「こんな街中であんな物が現れたら、 取り返しの付かないことになるわ」
カーラ「いつも以上に速攻で行かなきゃ!」
ヴィレッタ「各機、攻撃開始。 ヴォルクルスの分身を掃討する!」
(作戦目的表示)

〈3PP or 敵機を撃墜〉

(王都西端にヴォルクルス(上)が5機出現)
マサキ「チッ、分裂しやがった!」
セニア「思ってたより増殖のスピードが速い……!  このままじゃ!」
(王宮の南側にデュラクシールが出現)
リョウト「あれは!?」
セニア「デュラクシール! 兄さんなの!?」
フェイル「ああ、そうだ。加勢するぞ」
(デュラクシールが王都の西側へ移動)
【強制戦闘】
フェイル[メガスマッシャー]vsヴォルクルス[ハイパーソニックウェーブ]
(東側に出現したヴォルクルス(上)が爆発)
リオ「い、一撃でヴォルクルスを……!」
アイビス「す、凄い……!」
ライ「確かに、魔装機神並のパワーだな」
フェイル(デュラクシール…… この私でもここまでの力を発揮するとは……)
マサキ「やれるのか、殿下!?」
フェイル「君達ほどではないが、 私にも魔装機での戦闘経験がある。 足手まといにはならぬつもりだ」
セニア「でも、武装が全て使える状態じゃないのに……!」
フェイル「いや、現状でもいい仕上がりだ。 これならば、私は事を成し遂げられよう」
セニア「……それ、どういうこと?」
フェイル「今、そのことについて話している時間はない。 一刻も早く、ヴォルクルスの掃討を」
テュッティ「ですが、大切なお体です。 決して、無理をなさらないで下さい」
フェイル「ここに至るまで、何度も聞かされた言葉だ。 わかっているよ」
マサキ「殿下が出て来た以上、無様な真似は見せられねえ!  やってやるぜ!!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

エイタ「王都内のヴォルクルス、全て反応が消えました!」
マサキ「ふーっ、何とかなったか……」
フェイル「ヴォルクルスが出現した地区の封鎖を継続。 オールト将軍達に破片の処理をさせる」
フェイル「ハガネには引き続き、王都の警備を依頼したい。 この後、すぐに新体制の発表を行うのでな」
セニア「兄さん、 それは事後処理が終わってからにした方が……」
フェイル「いや……今、行うことに意味があるのだよ」
セニア「え……?」
フェイル(そう、今でなければならないのだ……)

《神聖ラングラン王国 ラングラン州 王都(ハガネ)》

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

セニア「まったく、もう……。 人に散々言っておいて、自分が破片を 持ち帰ってりゃ世話ないわ」
マサキ「うっ……す、すまねえ。 でも、整備員のみんなを責めないでやってくれ」
シロ「始末書、どれぐらい書くことにニャるのかニャ……」
セニア「まあ、責任はマサキだけにあるわけじゃないわ。 あたしの注意が足りなかったのも事実だし。 始末書の文面は考えとくから、一緒に提出しましょ」
リョウト「それにしても……デュラクシールは凄かったね」
セニア「うん……」
リオ「どうしたの? 何か問題があったの?」
セニア「機体じゃなくて、兄さんの様子がね……。 何か、変に気負ってるっていうか……」
マサキ「これから国王になろうってんだ。 そりゃ、いつも以上に気合が入るだろうよ」
セニア「だったら、いいんだけど……」
(扉が開閉する)
プレシア「あれ、モニターが点いてない…… お兄ちゃん、フェイル殿下の演説、 もう始まってるわよ」
マサキ「おっと、いけね。観なきゃな」

(中継映像:礼拝堂)

フェイル「……全軍の奮闘により、我が方は王都の奪還に成功。 その後、シュテドニアス軍の侵攻勢力を 領土外へ撤退させるに至りましたが……」
フェイル「王都民は既にご承知の通り、彼らは生体兵器を用い、 我が方の中枢壊滅を目論みました」
フェイル「幸いにも、魔装機神と鋼龍戦隊、 新型魔装機デュラクシールによって 王都に現れた敵は全て排除しましたが……」
フェイル「シュテドニアスによる度重なる非道な侵略行為を もはや看過することは出来ません」
フェイル「私、フェイルロード・グラン・ビルセイアは 本日、ラングラン正統新政府の発足を 宣言すると共に……」
フェイル「シュテドニアス連合に対し、 正式に宣戦布告を行います」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

マサキ「な、何だって!?」
セニア「そ、そんな……!!」
マサキ「どういうつもりなんだ、殿下!?  事態が終息しつつあるってのに、 戦火を拡大してどうすんだ!」
セニア「兄さんが言ってた、成すべきことって……!」
マサキ「こ、こうしちゃいられねえ!」
(扉が開閉する)
プレシア「お兄ちゃん、どこへ行くの!?」
マサキ「殿下の所だ!  宣戦布告のことを直接問い質す!」
セニア「待って、あたしも行くわ!」

[神聖ラングラン王国 王宮(入口)]

マサキ「何だと!? どういうことだ!?」
ノボス「ですから、ここから先へお通しするわけには 参りません。フェイルロード陛下のご命令です」
マサキ「陛下だと!? 戴冠式はまだだろうが!」
(足音)
ザボド「……簡素なものではあるが、戴冠式は先程終了した。 フェイルロード陛下は、第288代ラングラン 国王として即位されたのじゃ」
セニア「ザボド様……!」
マサキ「本当なのか、爺さん!?」
ザボド「こ、これ! 何をする!」
テュッティ「マサキ、やめなさい!」
マサキ「くっ……!!」
セニア「あたし達に何も言わず、 戴冠式を終えるなんて……!」
ノボス「ともかく、ここはお引き取り下さい。 例え王族の方でも通してはならぬという お達しなのです」
セニア「そ、そんな……!」
マサキ「冗談じゃねえ! このまま引き下がれるか!」
テュッティ「……マサキ、いったん戻りましょう」
マサキ「だけどよ!」
テュッティ「ここで揉め事を起こしても、何にもならないわ。 後で、魔装機神操者として正式にフェイル殿下へ 申し入れをしましょう」
マサキ「魔装機神操者として……?」
テュッティ「ええ」
マサキ「わ……わかったぜ」
テュッティ「ノボス筆頭参謀、殿下にもそうお伝え下さい」
ノボス「……承りました」


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