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野心の代償 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第13話 ~

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

フェイル「ノボス、状況は?」
ノボス「芳しくありませんな。 カークス将軍はテリウス殿下が出奔なされた時点で 行動を起こしていたようです」
ノボス「現在、カークス軍本隊が他部隊と合流しつつ、 王都を目指して進軍しているとのことです」
フェイル「戴冠式の様子見をしたのが仇となったか。 あの時点ですぐに帰還していれば…… いや、ハガネを王都に残していれば……」
マサキ「アハマドの真意は、俺達をあそこで 足止めすることだったのかも知れねえな……」
セニア「兄さん、マサキ……それを言っても詮無いことよ」
エクセレン「でも、カークス将軍にも焦りがあるんじゃない?  戴冠式のことがバレたら、立場が悪くなるのは あっちなんだし」
ライ「向こうはシュテドニアス軍をラングランから 撤退させるため、各方面に部隊を展開していた」
ライ「それ故、戦力を一気に王都周辺へ 集結させることは出来ないはず……」
テュッティ「そうね…… カークス軍は短期決戦を余儀なくされているから、 数を揃えている時間はないわ」
フェイル「事情はこちらも似たようなものだ。 我々が王都へ帰還するまで、オールト将軍が 持ち堪えてくれればいいのだが……」
セニア「間に合っても、私達と将軍の部隊だけで カークス軍本隊と戦わなければならないのね……」
アヤ「鋼龍戦隊のメンバーが全員揃っていれば、 何とかなるかも知れないけど……」
イルム「頭数の少なさは、各個の頑張りで カバーするしかないな」
ヴィレッタ「……リョウト、アルブレード・カスタムは?」
リョウト「まだ調整が完全に終わっていませんが、 使用可能です」
ヴィレッタ「………」
リオ「しかし、パイロットが……」
リョウト「! 大尉、もしかして……」
ヴィレッタ「……艦長、私に提案が」
テツヤ「何だ?」
ヴィレッタ「イングに出撃許可を。 機体はアルブレード・カスタムで」
テツヤ「!」
リオ「た、大尉、本気ですか!?」
ヴィレッタ「ええ、そうよ」
マサキ「イングって、確か……記憶喪失の?」
リオ「う、うん……」
ライ「危険です、隊長。 いくらシミュレーターで高成績を出したとは言え、 素性が定かでない者を出撃させるなど……」
ヴィレッタ「そこは賭けよ。 それに、カークス軍本隊との戦いで勝利を得るためには 少しでも戦力になるものを投入しなければならないわ」
ユウキ「実戦を経験することによって、彼が記憶を取り戻し…… 我々に敵対する可能性もあるのでは?」
ヴィレッタ「鈴は付けておく。 最悪の事態を迎えた場合、私が責任を取る」
リョウト「責任って……」
リオ「イングに……選択権はあるんですか?」
ヴィレッタ「ええ。 戦う意志がない者を出撃させても、 結果は見えているから」
アヤ「一種のショック療法というわけですか。 かつて、イングラム少佐が取った手段と 同じような……」
ヴィレッタ「……そうね」
テツヤ「よかろう。 イングが了承すれば、出撃させて構わん」

[ハガネ メディカル・ルーム]

イング「………」
リオ「拒否してもいいのよ、イング……」
イング「いえ、受けます。 皆さんには命を救っていただいた恩が ありますし……」
イング「この危機的な状況で、 僕に出来ることがあるのでしたら……」
リョウト「本当に……いいのかい?」
リオ「もう一度よく考えて。 もし……万が一、何かあったら、その時は……」
イング「………」
イング「……覚悟の上です。 僕は……アルブレード・カスタムに乗ります」


第13話
野心の代償

〔戦域:王都南側〕

(王都市街地の南端にブローウェルカスタムとガディフォールが5機いて、南側にシュテドニアス軍部隊が展開している)
オールト「ぬうっ……!  残った機体はこれだけか……!」
カークス「オールト将軍、もはや我らを止めることは出来んぞ。 悪いことは言わん、降伏しろ」
オールト「私は殿下から留守役を申し付けられた身……!  この命に代えても、お前達を食い止めてみせよう!」
オレグ「……骨のある男のようだが、結果は犬死にだな」
オールト「逆賊に降伏する気など、毛頭ない!  例え一縷の望みと言えど、可能性があるのならば 諦めはせぬ!」
カークス「望み……可能性だと? そんなものが……」
兵士「カークス将軍!  1時方向からハガネが突入して来ます!」
カークス「反対側か! それでは、王都内に……!」
(王都の北側にハガネが出現)
フェイル「オールト将軍、遅れて済まぬ!」
オールト「おお、フェイル殿下!」
テツヤ「各機、出撃せよ!」
(アルブレード・カスタムが出撃。出撃準備)
フェイル「オールト将軍、そちらは後退してくれ」
オールト「了解です。どうかご武運を」
(ブローウェルカスタムとガディフォール5機が撤退)
リオ「イング、大丈夫?」
イング「ええ。 この機体の扱い方は、だいたい把握しました」
リョウト(短時間でそんなことを……)
ヴィレッタ「イング、お前に異常があった場合、 機体を強制停止させる」
イング「わかっています…… 最悪の事態が起きた場合も含めて」
ヴィレッタ「……無理をして前線に出る必要はないわ。 ハガネの護衛をしなさい」
イング「了解です」
イング(記憶を失ったまま……自分が何者かわからないまま 死ぬわけにはいかない……)
カークス「……このタイミングでハガネが現れるとはな。 天が与えた試練か」
フェイル「兵を退け、カークス将軍。 これ以上の争いは無意味だ」
カークス「王都の喉元に刃を突き付けられた状態で そのようなことを仰いますか」
フェイル「ラングランの混乱が望みではあるまい。 将軍と同じく、私もこの戦いを 一刻も早く終結させたいのだ」
カークス「では、そちらこそ兵を退き、 王都を我らに明け渡していただきたい。 そして、殿下には王位継承権の放棄をお願いする」
マサキ「てめえ、何様のつもりだ!?」
フェイル「カークス将軍……戴冠式の真相は知っている。 それが明らかになるのは、時間の問題だ」
カークス「はて、何のことですかな?」
エクセレン「こりゃまた、豪快にしらばっくれたわねぇ。 カークス軍の得意技なのかしらん」
テュッティ「あの戴冠式に出席していたテリウス殿下が 偽物だということは、わかっているのです」
カークス「何の証拠があって、そのようなことを言う?」
フェイル「……将軍も知っているはずだ。 我々が本物のテリウスと接触したことを」
カークス「さて……記憶にございませんな」
イルム「政治家みたいな言い訳しやがって……」
フェイル「どうあっても退く気がないと言うのだな?」
カークス「然様。ここで雌雄を決する他ありませぬ」
マサキ「ふん……いい度胸だ、カークス。 以前のてめえとは大違いだな」
カークス「私も驚いているよ、これほどの才能があったことに。 まさに、治世の能臣、乱世の姦雄というわけだ」
マサキ「何が治世の能臣だ。昼行灯だったくせに」
カークス「今は力によって道を示さねばならぬ時なのだ。 大逆者の汚名を着ようとも、武力によって ラングランを……いや、ラ・ギアス全土を統一する」
カークス「それこそが、この世界に平和をもたらす 最善の方法なのだ」
マサキ「てめえにゃ過ぎた野心だぜ、そいつは!  それを成し遂げるために何人の人間を 犠牲にする気だ!?」
カークス「犠牲なき平和など、あり得ぬよ」
フェイル「………」
カークス「お前達に志あらば、我が下へ来るがいい。 そして、共にラ・ギアス全土の平和を 目指し、戦おうぞ」
エクセレン「あなたと同じようなことを言った人間が、 地上にもいたのよね。目指す所は同じでも、 そこに至るまでの方法に問題があるってわけ」
カークス「我が大義を理解せぬか」
イルム「まあ、あんたの大義とやらはわかり易いがな。 だが、それ故にその危険性も然り……ってわけなのさ」
ライ「そう……お前の大義は、野望と紙一重だ」
ミオ「それに、急いては事を仕損じる……って言うよ?」
カークス「やはり、これ以上話しても無駄なようだな。 各機、攻撃を開始せよ」
オレグアインスト……ここで決着を付けるぞ」
エクセレン「あなた……カークス軍にいたのね」
ユウキ「もしや、あれは……オレグ・ナザロフ大尉か?」
オレグ「ユウキ……ユウキ・ジェグナンか」
エクセレン「え? 知り合いなの?」
ユウキ「彼は、ノイエDCの総帥だったバン大佐直属部隊の 隊長……ラングレーにおけるアインストとの 戦闘にも参加していました」
エクセレン「なるほど、それでアインストに怨みを……」
オレグ「ユウキ……この裏切り者めが。 バン大佐の恩義を忘れ、鋼龍戦隊に 身を寄せるなどと……!」
ユウキ「オレグ大尉…… バン大佐亡き後のノイエDCに大義はない」
カーラ「それに、地上での争いを ラ・ギアスに持ち込んでどうなるってのよ!」
オレグ「ここがどこであろうと、 アインストと連邦に与する者は死ぬべきなのだ!」
エクセレン「悪いけど、あなたの恨み辛みに 付き合ってる暇はないのよね……!」
マサキ「カークス……てめえはやり過ぎた。 その野心の代償をここで払ってもらうぜ!」
カークス「来るがいい!  お前達の死を以て、我が大義を世に示してくれよう!」
(作戦目的表示)

〈ガーリオン撃墜〉

オレグ「お、おのれ、アインスト! 連邦の犬共めぇぇ!!」
(ガーリオンが爆発)
ユウキ「オレグ大尉……」
エクセレン「……あの人、現実が見えてなかったわよね、 色んな意味で……」

〈4EP or ソディウム級移動要塞のHP80%以下〉

カークス「戦力の出し惜しみをしている場合ではない……!  残りの機体を全て出撃させろ!」
(南端にガディフォールが5機出現)
マサキ「それで打ち止めってわけか!  勝負が見えたぜ、カークス!」
カークス「笑止!  戦いは終わってみなければわからぬものよ!」
マサキ「なら、さっさと幕を引いてやるぜ!」

〈vs カークス〉

[マサキ]

マサキ「あの昼行灯のおっさんが、 よくもここまでやったもんだ!  そこだけは褒めてやるぜ!」
カークス「サイバスター……魔装機神が これほどまでに世界を変えるとはな」
カークス「ならば、私にも出来ぬ道理はない!」

[テュッティ]

テュッティ「将軍、力は制御するためにあるのです!  無闇に振り回すのは、子供と同じです!」
カークス「今のような非常時には、 力を以て統治する者が必要なのだ!  何故、それがわからん!」

[ミオ]

ミオ「なりふり構っちゃいられないってワケね、 カークス将軍! けど、往生際が悪いよ!」
カークス「ザムジードの新しい操者か。 やはり、魔装機神は私の味方をしては くれぬのだな……!」

[プレシア]

プレシア「あたしも魔装機操者となった以上、 カークス将軍の行為は見逃せません!」
カークス「剣皇ゼオルートの娘か…… いくら素質があろうと、年端もいかぬ小娘に 負けるわけにはいかん!」

[セニア]

カークス「セニア王女、ご無礼をば致します。 ちゃんと脱出して下されよ」
セニア「余計なお世話よ、カークス将軍!  あんたが旗揚げをしたって聞いた時は、 ちょっと期待したのに!」

[テツヤ]

カークス「殿下、私の大義に賛同して下さらぬのなら、 お命を頂戴致します」
フェイル「私はまだ倒れるわけにはいかないのだ、 カークス将軍……!」
カークス「ですが、殿下は新国王として相応しい方では ありませぬ。それを最もよく御存知なのは、 殿下自身でございましょう?」
フェイル「………」

[撃墜]

カークス「ぬうっ、これまでか!」
マサキ「勝負あったぜ、カークス将軍!」
カークス「だが、私は諦めん! 理想を実現するまではな!  諸君、また会おう!」
(ソディウム級移動要塞が爆発)
マサキ「あの野郎、脱出したのか!?」
テュッティ「放っておきなさい、マサキ」
マサキ「何でだよ!? あいつ、また来るぜ!」
テュッティ「カークス将軍は力と大義名分を失ったのよ。 だから、彼に従う者達は、おそらく……」
マサキ「………」
テツヤ「これで終わったか……」
フェイル(急ぎ過ぎたな、カークス将軍……)
フェイル(だが、この私も……同じかも知れぬ……)

《神聖ラングラン王国 ラングラン州 王都(ハガネ)》

[神聖ラングラン王国 王宮内]

ノボス「……各地のカークス軍部隊が 続々と我が方に投降して来ております」
ノボス「ただし、カークス将軍の行方はわからず、 現在捜索中です。また、シュテドニアス軍は 大きな動きを見せておりません」
フェイル「そう……か。 ラングラン各地の復興作業の……準備を…… それと、バゴニアの……方は……」
セニア「兄さん、顔色が悪いわよ。 ここの所、あまり寝ていないんでしょう?  少しは休んだら?」
フェイル「いや……まだ……うっ……」
セニア「兄さん!?」
ノボス「殿下!!」
フェイル「だ……大丈夫だ。今、休んでいる暇など……」
ノボス「いけません! 殿下は大事なお体なのです。 無理はなされませぬよう」
セニア「ドクターに連絡して、ここへ来てもらうわ」
フェイル「それより……お前はデュラクシールを……」
セニア「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!」
フェイル(時間がない…… 私に残された時間は……もう残り少ないのだ……)


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