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カークスの野望 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第11話 ~

[ハガネ メディカル・ルーム]

イング「……シミュレーター、ですか」
リオ「そう、あなたが記憶を取り戻す きっかけになるんじゃないかと思って。 艦長の許可は取ってあるわ」
リョウト「イング、君はパーソナルトルーパーアーマードモジュールの操縦方法を知ってる?」
イング「いえ……」
リョウト「でも、身体が覚えているってことは あり得るから……」
リオ「もちろん、今すぐってわけじゃないのよ」
リョウト「そう、もっと具合が良くなってからでいいんだ」
イング「今からでも大丈夫です。 僕は失った記憶を取り戻したい…… 僕が何者なのか、知りたいんです」
リオ「だけど……」
イング「お願いします」
リョウト「……わかったよ。ドクターに相談してみる」
リオ「リョウト君……」
リョウト「レベルFなら、身体にもそんなに負担が掛からない。 ドクターのOKが出たら、立ち会ってもらおう」

[ハガネ 艦内(シミュレーター・ルーム)]

ヴィレッタ「それで、どうだったの?」
リョウト「機種設定は、DC戦争直前に配備された 量産型ゲシュペンストMk-IIにしました」
リョウト「それで、彼はドクター・ストップがかかるレベルCの ミッション3まで難なくこなしたんです。ターゲットの 撃破率は平均で94%、機体損傷率は5%……」
ヴィレッタ「……凄い成績ね」
ライ「レベルCのミッション3なら…… V型ガーリオンとの対空戦闘までクリアしたのか。 あの当時の量産型ゲシュペンストMk-IIで」
リョウト「ええ……鋼龍戦隊で充分通用する腕前です」
リオ「見ていて感心するぐらいのスムーズな動きで……」
ヴィレッタ「それを、彼の身体が覚えていたというわけか」
アヤ「本人はどういう感じだったの?」
リオ「最初は驚き、戸惑っていたんですが、 次第に落ち着いていって……」
リオ「最後の方は機械的とも言える正確さで 機体をコントロールしていました」
ヴィレッタ「………」
アヤ「で、彼は何か思い出したの?」
リョウト「いえ…… 人型機動兵器の操縦や戦闘方法についても、 いつどこで会得したか思い出せないようです」
ライ「ドクターの見解は?」
リョウト「嘘を言っているようではない、と……」
ライ「例の件は試してみたのか?」
リョウト「ええ、最後に」
アヤ「ライ、例の件って?」
ライ「ハガネに配備されたばかりの機体、 アルブレード・カスタムの設定で 試してみろと言ったんです」
ライ「イングがスパイの類なら、 何らかの反応を見せるのではないかと思って……」
リョウト「艦長の許可を得た上で、 あくまで表面上での設定だったんですが…… 特に変わった様子はありませんでした」
ライ「そうか……」
リオ「イングは病室でもずっと大人しくて…… 起きている時は備え付けの本を読んでいるそうです」
リオ「私も、何て言うか…… あの子、不思議な印象はありますが、 怪しい感じはしなくて……」
ライ「………」
ヴィレッタ「後は、彼が他のきっかけで 記憶を取り戻すのを待つか、それとも……」
アヤ「何です?」
ヴィレッタ「……いえ、気にしないで」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

プレシア「はい、マイ。おにぎりを持って来たよ」
マイ「ありがとう」
イルム「おいしそうだね、プレシアちゃん。 俺ももらっていいかな?」
プレシア「たくさんありますから、どうぞ」
イルム「これは……昆布出汁な感じのおにぎりだな。 ラ・ギアスに来て、こんな物が食べられるなんて ありがたいね」
マイ「うん、美味しい……」
プレシア「こっちにも似たような食材があるんです。 味付けはお兄ちゃん好みですけど……」
イルム「文句なしだよ。 いいお嫁さんになれるぜ、プレシアは」
マサキ「何だって!?」
イルム「え? 俺、何か悪いこと言ったか?」
マサキ「カークス将軍がテリウス殿下を!?  本当なのか、その話!?」
トールス「え、ええ……」
イルム「何だ、別の話か……と言っても、 穏やかじゃなさそうだな。どうした?」
マサキ「カークス側から出た同盟の条件が…… フェイル殿下を差し置いて、弟のテリウス殿下を 新国王にすることだってよ」
イルム「ははあ……じゃあ、カークス将軍はテリウス王子を 操り人形にして、ラングランを牛耳ろうってんだな」
エクセレン「う~ん、典型的なお家騒動ねぇ」
セニア「でも、あのテリウスがカークス将軍の 企みに乗るなんて……」
ユウキ「テリウス殿下は、どのような人物なんだ?」
セニア「大人しいんだけど、面倒くさがり屋っていうか…… 講義もサボってたりしてたし……」
エクセレン「要は、あんまりやる気がないってことかしらん?」
セニア「まあ、そうとも言えるわね」
マサキ「大方、カークスの口車に乗せられちまったんだろうよ。 都合のいいことばかり言われてな」
セニア「………」
マサキ「それに、フェイル殿下がカークスの寝言を 黙って聞き入れるわけがねえ」
テュッティ「でも、ここで私達とカークス軍が争ったら、 シュテドニアスの思う壺よ」
マサキ「そいつぁ、わかってるが……」
(扉が開閉する)
テツヤ「……みんな、揃っているな」
マサキ「艦長、俺達を集めたってことは フェイル殿下から作戦への参加要望が出たんだな?」
テツヤ「ああ。そして、俺は艦長として、それを受諾した。 殿下やマサキ、テュッティ達から話を聞いて、 ラングランの事情を理解しているからであるが……」
テツヤ「殿下は諾否に関わらず、 本艦への補給支援を請け負ってくれた」
テツヤ「我々が地上へ帰るまで、しばしの時を要するが…… この世界で同盟者を求めるとしたら、 やはり、ラングラン軍しかないと判断したのだ」
マサキ「鋼龍戦隊がしばらく協力してくれるんなら、 ありがてえ話だぜ」
テュッティ「ええ」
ヴィレッタ「では、次の作戦は?」
テツヤ「3日後、シュテドニアス軍に対し、レドナ溪谷で 大攻勢をかける。これはカークス軍との共同作戦だ。 我々は遊撃部隊として左翼から強襲する」
エクセレン「脇腹を突くってわけね。柔らかければいいけど」
テツヤ「今回の作戦でラングラン軍が勝利すれば、 シュテドニアス軍はさらなる撤退を 余儀なくされるだろう」
マサキ「ああ……上手くいけば、 奴らをこの大陸から追い出せるかも知れねえ」
セニア「兄さん達がカークス将軍と 手を結んでまで立案した作戦だもの。 何としても成功させなきゃね」
マサキ「……セニア、お前はフェイル殿下の所に いなくていいのか?」
セニア「ええ、兄さんからも言われているのよ。 こっちには魔装機神が3体も配備されてるから、 私がいた方が都合いいだろうって」
セニア「それに、地上の機体を間近で見られるしね」
マサキ「そっちが本音じゃねえだろうな?」
セニア「ち、違うわよ」
テツヤ「なお、本艦は明日0100、王都を進発する。 各員、備えは万全にな」


第11話
カークスの野望

〔戦域:レドナ溪谷周辺〕

(シュテドニアス軍が出現)
兵士「クワイアー大佐、9時方向より飛行物体が接近!  地上人の戦艦です!」
ザレス「ちっ、あともう少しの所で……!  こちらの意図を読まれたか」
ザレス「やむを得ん、迎撃する!  それと、第4中隊をこちらへ向かわせろ!  奴らを挟み撃ちにする!」
(ハガネが出現。出撃準備)
セニア「あの部隊、進行方向から判断して カークス将軍の部隊を奇襲するつもりだったようね」
マサキ「あいつを助けることになるのは癪だが、 そんなことは言ってられねえ…… みんな、頼むぜ!」
ヴィレッタ「了解した。各機、攻撃を開始しろ」
(作戦目的表示)

〈ギルドーラ撃墜〉

ザレス「ええい、援軍が来る前に撃破されるとは!  やはり、奴らの存在はラ・ギアスの バランスを崩しかねん……!」
ザレス「この機体はもう動けん……脱出するしかないか!」
(ギルドーラが爆発)

〈敵機全滅〉

マサキ「よし、これで……」
(アラート)
エイタ「敵機接近! 6時方向より真っ直ぐ!  シュテドニアスの魔装機、数は10!」
(北西にギルドーラIIが2機、ギルドーラ3機、レンファが5機出現)
テツヤ「直ちに迎撃を!」
エイタ「艦長、3時方向より高速飛行物体群が接近!  味方の識別信号を出しています!」
テツヤ「!」
(北東にマスカレオン・タイプC、ベガリオン、マスカレオン・タイプNが6機出現)
アラセリ「各機、攻撃開始だ」
(アラセリ隊の攻撃で北西に出現した魔装機が全機爆発)
アラセリ「……よし、プロフェッショナルな仕事だった」
アイビス「あ、あの機体は!!」
(ベガリオンを指す)
ツグミ「ベガリオン……!!  ラ・ギアスに来ていたの!?」
アイビス「スレイ!  ベガリオンに乗ってるのは、あんたでしょ!?」
(ベガリオンの反応はない)
ツグミ「応答がない……!」
アイビス「スレイ! 返事をしてよ、スレイ!!」
アラセリ「……なるほど、因縁のある連中だったな」
カーラ「あの連中もフェイル殿下に協力してんの……!?」
セニア「いえ、違うわ。おそらく、彼らは……」
(南東端にガディフォールの大軍とガルガードが出現)
カークス「ほう……もう片付いたか。さすがだな」
アラセリ「依頼された仕事は終えた。これで我々は……」
カークス「わかっている。 後ほど、丁重に送り返して差し上げよう。 ここは退いてもらって構わん」
アラセリ「我らの素性については内密に」
カークス「うむ、それもわかっている」
アラセリ「では……各機、行くぞ」
(アラセリ隊が撤退)
アイビス「ああっ!!」
ツグミ「………」
イルム「あれがベガリオン……その他の機体は、 アイビスとツグミが遭遇したっていう……」
ツグミ「ええ、そうです」
マサキ「カークス軍側にも地上人がいたのか……」
セニア「詳細は本人に聞いてみたら?  あのガルガードに乗ってるんだし」
マサキ「ああ、そうだな。 ……カークス将軍、聞こえるか?  マサキ・アンドーだ」
カークス「……久しぶりだな」
マサキ「ふん……雰囲気が変わったな、将軍。 あの地上人は何者だ?」
カークス「我が軍の機密事項だ。教えるわけにはいかん」
マサキ「何だと!?」
テュッティ「将軍……何故、テリウス殿下を担ぎ出したのです?  さらなる混乱をお望みですか?」
カークス「私は、フェイル殿下こそが混乱の源だと考えている」
セニア「何ですって……!?」
マサキ「いい加減なことを言うんじゃねえ!  ラングランを混乱させてんのは、 てめえの方だろうが!」
カークス「理解してもらえぬのは残念だ。 では、我々はシュテドニアス軍を追撃するので、 これにて失礼する」
(カークス軍が撤退)
マサキ「あの野郎……!」
セニア「………」

[ハガネ ブリッジ]

フェイル「諸君、よくやってくれた。 我が方も敵の撃退に成功した」
フェイル「現在、シュテドニアス軍はヌエット海を渡って 撤退しつつあり、カークス軍がそれを追撃している」
マサキ「……俺達、カークス将軍に会ったぜ」
フェイル「そうか……」
マサキ「奴は、殿下が混乱の源だとぬかしやがった」
フェイル「………」
マサキテリウス殿下の戴冠式のことも話してやがったが…… あいつの好きにさせておいていいのか?」
フェイル「今、最優先すべきはシュテドニアス軍の撃退だ。 カークス軍の力を借りねば、この大陸から 敵勢力を一掃することは出来ん」
マサキ「それはわかっちゃいるけどよ!」
テュッティ「マサキ、控えなさい。 カークス将軍の件で最も頭を悩ませているのは、 フェイル殿下なのよ」
マサキ「………」
フェイル「ともかく、君達は王都まで戻って来てくれ。 その後、改めて要請を出す」
テツヤ「殿下、カークス軍にも地上人部隊がいるようです。 もしかして、我が隊の旗艦ヒリュウ改も……」
フェイル「彼は、麾下戦力の全てを こちら側に明かしていないのです。 我々の方でも調査を進めていますが……」
テツヤ「何か判明しましたら、連絡をお願いします」
フェイル「わかりました」
マサキ「それと、ヤンロン達の消息もな。 あいつら、こんな時にどこを うろついてやがるんだか……」
テツヤ「では、殿下……我々は王都へ帰還します」


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