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王都への路 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第10話 ~

《神聖ラングラン王国 ラングラン州(ハガネ)》

[ハガネ 格納庫]

セニア「……ザムジードの応急処置が終わったわ。 ここのスタッフって、優秀な人が揃ってるわね」
リョウト「マサキが地上にいた時は、サイバスターを 扱ってたからね。それに、鋼龍戦隊の機体は 多種多様だから、みんな経験が豊富なんだ」
ゴルド「それがしの機体も整備をしていただき、 助かっております」
トールス「ええ。ラングラン軍の整備員と比べても、 遜色のない仕上がり具合ですよ」
ミオ「……ねえねえ、一つ聞いていいかな。 そもそも、魔装機神魔装機って 何のために作られたの?」
セニア「マサキ、説明してなかったの?」
マサキ「……そう言や、ちゃんとは話してなかったな」
セニア「じゃあ、私が教えてあげるわ。 魔装機が開発されるきっかけとなったのは、 ラングラン王宮アカデミーの未来見の予言なの」
セニア「それは、『巨大な魔神がラングランを滅ぼす。 そして、それはラ・ギアスに生けるもの全てに 災厄を振りまく』という内容だったわ」
ミオ「巨大な魔神……」
セニア「ええ。だから、それに対抗するための力として、 魔装機魔装機神の開発が決定されたの」
セニア「それまで、このラ・ギアスではそんなに強力な兵器は 存在していなかったわ」
ミオ「ふ~ん……予言なんていう随分とあやふやな きっかけで魔装機を作ったんだね」
セニア「あやふやって…… ああ、地上での予言的中率は凄く低いんだっけ」
ミオ「え? どういうこと?」
セニア「ラングランみたいに ラプラス変換理論が完成されていないから、 個人の霊感に頼っているケースが多いんでしょ?」
テュッティ「ええ、そうよ」
リョウト「じゃあ、こっちでの予言は……」
テュッティ「信頼性が高いわ。 ただ、予言はあくまでも可能性だから、 人の力で変えることも出来るの」
テュッティ「だからこそ、ラングランで魔装機魔装機神の 開発が決定されたのよ」
ミオ「でも、どうしてラングランを救うマシンの パイロットが地上人なの? この世界の人が 乗ればいいのに」
トールス「……仰る通りです」
セニア「魔装機を動かすにはプラーナ……“気”が必要なの。 それも、激しい感情の起伏を伴ったものがね」
ミオ「激しい感情の起伏、ねぇ。 マサキはそうだと思うけど……」
マサキ「俺を引き合いに出すなよ」
テュッティ「ミオも心の奥には大きな感情のうねりがあるはずよ。 そうでしょ?」
ミオ「う~ん……どうなんだろ」
リョウト「もしかして、そういった人……魔装機神の パイロットになれるほどのプラーナを持った人は、 ラングランじゃ、少ないんですか?」
テュッティ「そう……だから、魔装機神魔装機の操者候補として 私やマサキのような地上人が召喚されたのよ」
リョウト「じゃあ、残りの魔装機神には……」
マサキ「グランヴェールには、 ホワン・ヤンロンっていう地上人が乗ってるよ」
ミオ「そして、 あたしもザムジードに選ばれたんだよね……」
マサキ「ミオ、念のためにもう一度確認しておくが…… いいんだな?」
ミオ「うん」
マサキ「セニア、構わねえか?」
セニア「ええ。ザムージュが彼女を選んだんなら、 あたしがとやかく言う筋合いはないわ」
テュッティ「私も同意見よ。 ミオ、ザムジードをよろしくお願いね」
ミオ「うん……大事にするね、テュッティさん」
ゴルド「……マサキ殿、ディアブロはどうするのです?」
マサキ「そうだな……」
プレシア「ねえ、お兄ちゃん…… あたしがディアブロに乗ってもいい?」
マサキ「プレシア、お前……!」
プレシア「止めたって駄目だよ、お兄ちゃん。 あたしだって戦えるもの、手伝いたいの」
プレシア「それに、ディアブロにはマドックお爺ちゃんに 何度か乗せてもらったことがあるし」
マサキ「いや、だからと言って……」
プレシア「今は大変な時なんでしょ。 早く王都を取り戻さなきゃ、ラングランは……」
マサキ「しかしだな…… テュッティ、お前からも言ってやってくれ」
テュッティ「いいわ、プレシア。ディアブロに乗りなさい」
マサキ「え!?」
プレシア「さすが、テュッティお姉ちゃん! 話がわかる!」
マサキ「おい、テュッティ!」
テュッティ「マサキ、プレシアはあのゼオルートの娘よ。 大丈夫、信じてあげなさい」
マサキ「………」
テュッティ「……あなたの気持ちは理解できるわ。 でも、いずれは……」
マサキ(……血は争えねえってか……)
マサキ「……わかったよ。 ただし、くれぐれも無理をするなよ、プレシア」
プレシア「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
セニア「じゃあ、ディアブロの調整をしなきゃね。 おいで、プレシア」
プレシア「はい」
(足音・セニアとプレシアが立ち去る)
リョウト「……マサキ、そのゼオルートという人は?」
マサキ「プレシアの実の父親で…… ラングラン王宮の剣術師範や武術指南役を やってたんだ。そして、俺の師匠でもある」
トールス「そう、“剣皇”と称される神祇無窮流の達人…… 皆から慕われる、素晴らしい方でした」
マサキ「そう言や、あんた…… ゼオルートのおっさんの後輩だったっけ。 士官学校時代の」
トールス「ええ、覚えていてくれましたか」
リョウト「今、その人は……」
マサキ「シュウと戦って……逝っちまったよ」
リョウト「……!」
マサキ「俺がお前らと地上で出会う前の話だけどな」
リョウト(そういう事情もあって、 マサキはシラカワ博士を……)
(アラート)
テュッティ「!」
マサキ「シュテドニアスの連中を見つけたようだな!  出撃しようぜ!」


第10話
王都への路

〔戦域:王都南部〕

(敵機とオールト将軍の隊は出撃済み)
ディック「ここでの勝敗は決しつつあるな。 奴らを仕留めれば、昇進も夢ではない」
オールト「これでは多勢に無勢…… だが、ここで我らが敵を食い止めねば、 フェイル殿下の作戦が……!」
兵士「オールト将軍、味方の援軍です!」
オールト「おお、来てくれたか!」
(ハガネが出現)
テツヤ「各機、直ちに出撃せよ!」
(ディアブロとザムジードが出撃。出撃準備)
ザレス「ちっ、奴らがここまで!  ジェスハ将軍の敗走が響いたか!」
オールト「あれは地上人の戦艦ハガネ…… それに、ザムジードも」
テュッティ「オールト将軍ですね?  後は私達が何とかします。 そちらはいったん後退して下さい」
オールト「いえ、我らも戦いますぞ」
マサキ「気持ちだけもらっとくぜ。 こっちは魔装機神が3機いるからな」
マサキ「だから、将軍はフェイル殿下に加勢してくれ。 あんたもその方がいいだろ?」
オールト「……承知致しました。では、ご武運を」
(ブローウェルカスタムと5機のガディフォールが撤退)
マサキ「……プレシア、ミオ、 お前達はまだ機体に慣れちゃいねえ。 後ろに下がって、援護に専念しろ」
プレシア「わかったよ、お兄ちゃん」
ミオ「こっちも了解!  いくよ、ザムジード!」
ディック「魔装機神ザムジード…… あの機体を我が方で運用できていれば……!」
ザレス「ジェスハ将軍のツケがこちらに回って来たか」
ザレス「各機へ! 魔装機神が相手と言えど、 機先を制すれば勝機が見える!」
ザレス「ここであの連中を退ければ、 戦局が優勢になるだけでなく、ラングラン全軍の 士気を削ぐことも出来る! 奮戦せよ!」
ディック「了解です!」
マサキ「あともうちょっとで王都を取り戻せるんだ!  これ以上、てめえらの好きにはやらせねえぜ!」
(作戦目的表示)

〈3EP or 敵機を10機以上撃墜 or ギルドーラのHP90%以下〉

ザレス「……こちら側の援軍はどうした?  地上人の傭兵共は何をしている?」
(ケルベリオン・アヴニールが出現)
シオ「………」
カーラ「あ、あいつは!」
ユウキ「ああ、3機目のケルベリオンだ」
エクセレン「これで三人兄弟が全員顔見せしたってわけね」
ザレス「シオ・アルジャンだったな。援軍はお前だけか?」
シオ「そうだよ。 本当は来たくなかったけど、シエンヌに 言われたから仕方なく、ね」
ザレス「どういうことだ!?」
シオ「おじさん達の軍、何か大変みたいだし。 シアンも適当な所で切り上げるって言ってたし、 僕もそうするつもりだし」
ザレス「何……!?」
シオ「さっさと仕事をして、地上へ帰してもらいたいし。 僕はシエンヌ達と違って、こんな所に 長居したくないし」
アイビス「あいつ、他の二人とは感じが違う……?」
エクセレン「ギラついた所がないって言うか…… 別の意味でひねてるわねえ」
シオ「相手が誰でも、別に興味ないし。 面倒だから、さっさとやられちゃってよ」
カーラ「だったら、こんな所に 首を突っ込まなきゃいいじゃないのさ!」
シオ「シュテドニアス軍に協力すれば、 地上へ戻れるって話だし」
ライ「……!」
イルム「やっぱり、そういう事情か」
シオ「だけど、シエンヌ達は ここでも稼ぐつもりみたいだから、 僕はそれに付き合ってるだけだし」
イルム「ここでも……? 地上でも傭兵をやってるのか?」
シオ「そうじゃないけど、 本当のことを教える必要なんてないし。 そもそも、あんまり絡みたくないし」
エクセレン「じゃ、坊やにはさっさとご退場願いましょっか。 こっちは取り込み中だから、ね?」
シオ(ああ、面倒くさいな……早く終わらせよう)
(作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[プレシア]

プレシア「お父さん、見守ってて! あたし、頑張る!」

〈ディック機撃墜〉

ディック「ええい、ここまでか!」
(ディック機が撤退)

〈vs シオ〉

[ユウキ]

ユウキ「何故、地上で俺達を襲った?」
シオ「そうしろって、命令されただけだし」
ユウキ「その命令を出したのは何者だ?」
シオ「それは……企業秘密だし」

[カーラ]

カーラ「残りの二人はどこへ行ったの!?」
シオ「そんなこと、教える義理なんてないし」

[HP50%以下]

シオ「……これ以上、ザレスに付き合っても無駄だし。 もう帰ろうっと」
(ケルベリオン・アヴニールが撤退)
エクセレン「あらら、あっさり引き揚げたわねぇ」
マサキ「放っとけ!  残ってる連中をここから叩き出すぞ!」

〈vs ザレス〉

[マサキ]

ザレス「サイバスター!  お前を倒せば、ラングラン軍の士気が下がる!」
マサキ「るせえ!  そんな魔装機魔装機神を倒せると思うな!」

[テュッティ]

テュッティ「あなた達、さっさと王都から出て行きなさい!」
ザレス「お前達こそ! ラングランは、 我がシュテドニアスに支配されて然るべきなのだ!  ラ・ギアス全体のためにもな!」

[ミオ]

ザレス「魔装機神ザムジードか!  私の手で取り戻してくれるわ!」
ミオ「ザムジードはあたしを選んでくれたんだよ!  あんた達には渡さないから!」
ザレス「何!? お前のような小娘が 新たな操者だと言うのか!?」

[撃墜]

ザレス「くっ、奴らを食い止められんとは!  遺憾ながら、撤退する!」
(ギルドーラが撤退。残っている敵機も撤退)
エイタ「戦域内の敵機反応、全て消失。 索敵範囲内に敵影を認めず」
アヅキ「艦長、フェイル軍より入電。 王都のシュテドニアス軍が撤退を 開始したそうです」
テツヤ「ならば、作戦はひとまず成功か……」
マサキ「みんな、ありがとよ。おかげで助かったぜ」
エクセレン「どういたしまして」
プレシア「お兄ちゃん……あたし達、王都に帰れるのね?」
マサキ「ああ、これで一段落できるといいんだがな……」

《神聖ラングラン王国 ラングラン州 王都(ハガネ)》

[ハガネ ブリッジ]

フェイル「……我々はシュテドニアス軍から 王都を奪還することが出来た。 君達の尽力に対し、重ねて礼を述べよう」
マサキ「いや……大変なのは、これからだろう?」
フェイル「ああ、シュテドニアス軍が王都から撤退したとは言え、 全ての戦いが終結したわけではない。彼らは レドナ溪谷周辺で戦力を集結させつつあるからな」
テュッティ「やはり……黙って引き下がる気はないのですね」
マサキ「俺やテュッティはともかく、 鋼龍戦隊はどうすりゃいいんだ?」
フェイル「我々は、王都の復興や以後の軍事作戦について、 これから協議を行わねばならない」
フェイル「召喚事件の真相究明や地上人の捜索、 そして地上への送還に関する決定は、その後となる」
マサキ「そうか……」
フェイル「テツヤ中佐、申し訳ありませんが…… 諸々の準備が済むまで、あなた方には 王都に留まっていただきたいと思っています」
テツヤ「……了解しました」
フェイル「補給物資が必要であれば、申し出て下さい。 出来うる限りのことは致しますので」
テツヤ「どうかお気遣いなく。 王都の復興を最優先にしていただいて結構です」
フェイル「では、私は王宮での軍議がありますので、 これにて」
(通信が切れる)
テツヤ「……戦局はまだまだ余談を許さぬようだな」
マサキ「ああ……またみんなの力を 借りることになるかも知れねえ」
テツヤ「地上へ戻るまではやむを得ないと思っているが…… ラ・ギアスの情勢に深入りするのは 禁物だと考えている」
マサキ「……殿下もそのことはわかってるだろうよ」
テツヤ「ともかく、ここで一息つけるだろう。 マサキ、王都へ行きたければ、そうして構わんぞ」
マサキ「そうだな……しばらくの間、家に戻ってねえし…… お言葉に甘えさせてもらうとするか」

[ハガネ 艦内(食堂)]

マサキ「……というわけで、俺は家に帰るんだが、 誰か一緒に来ねえか?」
プレシア「あたし、お夕食を作ろうと思ってて…… 人が多い方が、楽しいですし」
マサキ「と、プレシアも言ってるんだけどさ」
カーラ「行きたい、行きたい!」
アイビス「あ、あたしも……!」
マサキ「エクセレンはどうだ?」
エクセレン「気持ちはありがたいんだけど、 降艦許可が出てるわけじゃないしね」
ライ「それに、パイロットは 艦内で待機しておく必要があるだろう」
カーラ「じゃあ、駄目かぁ」
アヤ「艦長がマサキに降艦許可を出したのなら、 あなた達も行って大丈夫じゃない?  鋼龍戦隊の所属じゃなく、民間の協力者だし」
カーラ「え? 行っていいの?」
アヤ「ええ、留守番は引き受けるわ。 それと、ヴィレッタ隊長には私から 言っておいてあげる」
リオ「何かあったら連絡するから、私達の分も楽しんできて」
カーラ「やったぁ! ねえ、ユウも一緒に行こ!」
ユウキ「いや、俺は……」
イルム「お前とツグミはお目付役だ。 それに、王都がどんな感じなのか、 見てきて欲しいしな」
カーラ「可愛い女の子がいるかどうかっていう?」
イルム「それについては、ほら……テュッティやセニア王女、 プレシアちゃんで証明済みだから」
エクセレン「ま、イルム中尉の話はさておき…… 街中に出れば、召喚された地上人に関する 情報が手に入るかも知れないし」
ユウキ「そういうことでしたら……」
ツグミ「では、私もアイビス達と一緒に行きます」
マイ「いいな……」
アヤ「マイは私達と一緒にお留守番よ」
マイ「うん、わかってる……」
プレシア「あの……もし良かったら、 家で何か作って持って来るけど……」
マイ「え? 本当?」
プレシア「うん。あたし、日本料理が得意なの。 お兄ちゃんから色々聞き出したから」
マイ「じゃあ、お願いしてもいい?」
プレシア「任せて!」

[神聖ラングラン王国 王宮内]

フェイル「……では、現在の状況をノボス筆頭参謀に 説明してもらおう」
(勢力地図が表示される)
ノボス「現在、シュテドニアス軍は大陸南東部に 勢力を張っており……さらに、その東部には カークス軍が陣を構えています」
ノボス「この図で説明しますと、 グリーンが我が軍、ブルーがカークス軍、 レッドがシュテドニアスとなります」
ノボス「我が軍とカークス軍とで シュテドニアスを挟んだ形となっていますが、 その逆も成り立つわけでありまして……」
ノボス「我が軍はシュテドニアスとバゴニア軍に、 カークス軍はシュテドニアスとその本国に 挟まれているとも言えます」
ノボス「目下の所、我が軍は連勝を続けており、 優勢であるように見えますが…… 敵の潜在力を無視するわけにはいきません」
ノボス「絶対数において、 いまだシュテドニアスの戦力は我が軍に優っており…… 正面決戦を挑むのは無理があります」
(勢力地図が消える)
フェイル「……やはり、 カークスといったん手を結ぶしかないか……」
ノボス「愚考致しますに、それが最善の策かと」
フェイル「………」
(通信)
オールト「……何だ? こちらは軍議中だぞ」
オールト「! それは本当か!?」
フェイル「どうした?」
オールト「殿下、カークス将軍から連絡が入っているそうです」
フェイル「……!」
ノボス「何と、将軍から直々に……!」
フェイル「回線をこちらに」
オールト「御意」
(通信がつながる)
カークス「………」
フェイル「……カークス将軍」
カークス「お久しぶりですな、フェイル殿下。 そろそろ私めの軍との同盟をお考えになる頃かと思い、 ご連絡致しました」
フェイル「………」
ノボス(カークスめ、よくもそのようなことを……)
フェイル「……いいタイミングだった、カークス将軍。 本来ならば、正式に会談をもちたい所だが、 そうも言っておられぬからな」
フェイル「今、最優先すべきは、一刻も早くこの国から シュテドニアス軍を追い出すことだ。 これに異存はあるまい」
カークス「………」
フェイル「どうだ、同盟の話を受けてもらえぬか?」
カークス「さて、いかがしたものでしょうな……。 確かに、私もかつてはラングラン王国の禄を食んだ身。 この国を救いたいという気持ちも同じ」
カークス「しかしながら、ラングランが本当の危機に 見舞われていたあの時、殿下はどちらに おいででしたかな?」
フェイル「………」
カークス「ラングランの中枢が消滅した時、 血を流してこの国を守るべく戦ったのは……」
カークス「僭越ながら、この私と同志達ではありませぬか?」
ノボス「カークス! 貴様、殿下の御前で言葉が過ぎるぞ!」
カークス「はて? 何が?」
ノボス「貴様……!」
カークス「私はすでに旧ラングランと関係のない身。 今更上辺だけ飾りたてた所で何になりましょうや。 違いますかな?」
フェイル「……では、貴公は同盟を結ぶ意志がないと 言うのだな?」
カークス「いえいえ。 私はただ、シュテドニアスを撃退した後の ラングランの行く末を憂いているだけに過ぎませぬ」
フェイル「貴公の独立を認めよとでも言うつもりか、 カークス?」
カークス「まさか、そのような畏れ多いことを考えるなど……。 私は、ラングランを平和な国に戻したいだけなのです」
カークス「しかしながら、新生ラングランにおいて 至尊の冠を頂く御方が殿下であれば…… 少々不安がこざいます」
ノボス「カークス!」
フェイル「……では、誰ならば良いと言うのだ?」
カークス「新生ラングランの王として相応しい御方…… それは、テリウス殿下でございます」
フェイル「!!」
カークス「では、殿下……」
テリウス「ああ……元気そうだね、フェイル兄さん」
フェイル「テリウス!? どういうことだ、いったい!?」
テリウス「さっき、カークスが説明した通りだよ。 僕は、新ラングラン王国の初代国王になる」
ノボス「馬鹿な!  テリウス殿下の王位継承権は、第三位ですぞ!  フェイル殿下やモニカ王女を差し置くなどと!」
カークス「先程も申し上げたように、フェイル殿下は 新国王としていささか不安……」
カークス「いつ雲隠れされるやわからぬようでは…… おっと、言葉が過ぎましたかな」
カークス「ましてや、モニカ王女は現在も行方知れず…… となれば、やはりテリウス殿下を 推戴するのが筋でありましょう」
ノボス「無礼な! 伝統ある王室を汚す気か、カークス!」
フェイル「……もういい、ノボス」
ノボス「殿下……!?」
フェイル「カークス…… テリウスの即位を認めれば、同盟を結ぶのだな?」
カークス「然様で」
フェイル「よかろう。テリウスの即位を認める」
ノボス「で、殿下! それでは!」
フェイル「ただし、この国にのさばっている シュテドニアス軍を全て撃退した後での話だ。 いいな、カークス?」
カークス「さすがは聡明なフェイル殿下。 そういうことであれば、我らも協力を惜しみませぬ」
カークス「そして、事が片付き次第、 テリウス殿下の戴冠式を執り行います」
カークス「是非、フェイル殿下もご出席下さい。 それでは」
(通信が切れる)
フェイル「………」
オールト「殿下……」
ノボス「どういうおつもりなのです?  カークスはテリウス殿下を傀儡として、 国家を壟断する気ですぞ」
フェイル「わかっているよ、ノボス。 たが、シュテドニアス軍の撃退が最優先事項だ」
フェイル「それに、国王など所詮飾り物に過ぎん。 要は、議会でカークスの独断を止めるだけの力を 確保できれば良いのだ」
オールト「しかし、それでは殿下が……」
フェイル「激動の時代だ。 変わらねばならぬのだよ、ラングランは……」
オールト「………」
ノボス「……では、最後に一つだけお聞きします」
ノボス「もし、カークスが非常手段に訴えた場合、 殿下はカークス軍と事を構える気がおありですかな?  敢えて逆賊の汚名を着ても……」
フェイル「無論だ。 私の願いは、このラ・ギアス全土の平和だ。 カークスの独裁など、断じて許しはしない」
ノボス「それを聞いて安心致しました。 カークス軍との作戦交渉は私めにお任せ下さい。 そうそう奴らの思惑通りにはさせませぬ」
フェイル「ああ……頼んだぞ」

(王都 街中)

マサキ「……ここら辺は被害を受けてねえようだな」
プレシア「うん、良かった……」
カーラ「王都って言うから、 未来都市みたいなのを想像してたんだけど…… お洒落な街並みだね」
ツグミ「何て言えばいいのかしら…… とにかく気持ちのいい風景ね」
テュッティ「そうね、地上の大都市みたいに高層建築物が 立ち並んでいるわけじゃないし……」
カーラ「デートコースとしては最適だよ。 ねえ、ユウ?」
ユウキ「……あまりくっつくな。 遊びに来たわけじゃないんだぞ」
カーラ「ちぇっ、ムードないんだから」
ミオ「……ところで、マサキの家はまだなの?」
マサキ「ああ、もうちょっと歩くぜ」
ミオ「本当ぉ~? 迷ってない?」
ツグミ「プレシアが案内してくれてるから、大丈夫よ」
マサキ「いくら俺でも、自分の家へ行くのに迷わねえって」

(ゼノサキス家のリビング)

カーラ「……へえ、ここがマサキとプレシアの家なんだ。 いい感じだね」
マサキ「しばらく留守にしてたからな、掃除しねえと……」
ツグミ「じゃあ、手伝うわ」
マサキ「いいよ、いいよ。みんなはくつろいでくれ。 プレシア、とりあえずお茶を頼むぜ」
プレシア「もうユウキさんがやってくれてるよ」
マサキ「さては、持参してたな。さすが、紅茶マニア」
ミオ「へえ……ユウキさんって、そうなんだ」
マサキ「そりゃもう…… ティーバッグで適当に紅茶を飲もうものなら、 荷電粒子砲が火を吹くぜ」
テュッティ「あらあらあら、大変ね」
ユウキ「……マサキ、わけのわからんことを言うのは やめてもらおうか」
マサキ「でも、ティーバッグはNGだろ?」
ユウキ「もちろんだ。今日はヌワラエリヤ、それも ラバーズリープ産を用意した。無論、渋味が 強くならぬよう、湯温に細心の注意を払った」
アイビス「って言われても、よくわからないよ……」
カーラ「いつものことだから、適当に聞き流しといて」
テュッティ「じゃあ、いただくわね。 えっと、お砂糖は……」
ツグミ「はい、どうぞ」
テュッティ「ありがとう。それじゃ……」
ユウキ「!?」
カーラ「どうしたの、ユウ?」
ユウキ「テュ、テュッティ……さん…… そんなに砂糖を入れたら、紅茶の味が……」
テュッティ「え? 控えめにしたつもりなんだけど……」
ユウキ「ティ、ティースプーン8杯で……控えめ……?」
ミオ「もしかして、テュッティさんは……」
マサキ「ああ、甘党なんだよ。 ……常識外れ、桁外れのな」


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