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カークスの真意 ヒリュウ改に立ち寄る ~ 第10話 ~

[ヒリュウ改 艦長室]

ヤンロン「レフィーナ大佐、カークス将軍から次の任務要請が 来ました。行方不明だったテリウス王子が発見され、 護衛と共にザイア市へ移動中なのですが……」
ヤンロン「シュテドニアス軍側もそれに気づき、 動きを見せているとのことです。将軍からは テリウス王子の護送を依頼されました」
レフィーナ「王子……当然のことながら、VIPですね」
ヤンロン「ええ。神聖ラングラン王国の第四…… いえ、第三王位継承者です」
ヤンロン「ラングランは立憲君主制であり、 王に大した権力はありませんが……王族の魔力は 平和をもたらす大きな要因の一つとなります」
レフィーナ「この間、あなたが話していた調和の結界ですね」
ヤンロン「はい。 ですから、シュテドニアス軍にテリウス王子の 身柄を奪取されるわけにはいきません」
レフィーナ「わかりました。 護衛部隊と合流し、ザイア市まで 送り届ければいいのですね?」
ヤンロン「そうです。シュテドニアスが追っ手を出している 可能性がありますので、急がなければなりません」
レフィーナ「では、直ちに進発しましょう」


第10話
カークスの真意

〔戦域:荒地〕

(ガディフォールとブローウェル3機がいる所にヒリュウ改が出現)
ショーン「0時方向、テリウス王子の護衛部隊を 視認致しました」
ヤンロン「レフィーナ大佐、この辺りは ラングラン軍とシュテドニアス軍の勢力境界線です。 念のため、出撃します」
レフィーナ「わかりました」
(出撃準備)
ミラ「ヤンロン殿、ミラ・ライオネス少尉であります」
ヤンロン「テリウス殿下は?」
ミラ「私の機体にお乗せしております」
ヤンロン「了解した。 では、ザイア市まで僕達が護衛する」
ミラ「ありがとうございます」
テリウス「……僕はどうしてもカークスの所へ 行かなきゃならないのか」
ミラ「まだそのようなことを……。 今、王位を継げるのは殿下だけなのですよ」
ヤンロン(! どういうことだ……?)
テリウス「王位なんていらない。 そんなもの、フェイル兄さんにあげればいい」
ミラ「ですが、フェイル殿下は……」
テリウス「生きてるんだろ、知ってるよ。 それでも僕を……と言うのなら、 結局は飾り物にされるだけなんだろう」
テリウス「昔からそうだ……いつも兄さんと比べられて…… どうせ僕なんか役に立たないんだ」
ミラ「そのようなことを……」
テリウス「仕方がないだろう。 僕は魔力が高いわけでも、頭がいいわけでもない。 魔装機だって、ろくに扱えない」
ヤンロン「それは…… 殿下が本気で努力をされていないからです」
テリウス「ヤンロン……!」
ヤンロン「殿下…… 王族たる者、その務めを果たさねばなりません。 わかっておいででしょう?」
テリウス「………」
ヤンロン「天、我が材を生ずる、必ず用あり。 僕が尊敬する詩人、李白の言葉です。 あなたには自分の力を生かす義務があるのです」
テリウス「……また訳のわからないことを……」
ヤンロン「王族としての責務を今一度お考え下さい。 一刻も早く、この戦乱を収めるために」
テリウス「……今、僕に出来ることをやれと言うのか」
ヤンロン「そうです。 フェイル殿下と共に調和の結界を……」
テリウス「ふん……カークスが何を考えているか 知らないんだな、君は」
ヤンロン(……ならば、やはり……)
(ヒリュウ改にアラート)
ユン「敵機接近! 0時方向より真っ直ぐ!  シュテドニアス軍の魔装機です!」
(シュテドニアス軍が出現)
ヤンロン「シュテドニアスめ、やはり追っ手を出していたか!  ライオネス少尉、テリウス殿下を連れて ザイア市へ向かえ!」
ヤンロン「僕達はここで敵を食い止める!」
ミラ「りょ、了解です!」
(ガディフォールとブローウェル3機が撤退)
リューネ「ヤンロン、あの人達だけで行かせていいの!?」
ヤンロン「ここから20キロほど行けば、 ラングラン軍の勢力圏内に入る!  今、優先すべきは追っ手の阻止だ!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

ユン「戦域内の敵機反応、全て消えました」
レフィーナ「テリウス殿下の護衛部隊は?」
ユン「ザイア市へ直行しています。 先程、ラングラン軍の勢力圏内に入ったので、 無事に到着するかと」
レフィーナ「そうですか……」
ゲンナジー「……ヤンロン、 ライオネス少尉が言っていたことだが……」
ヤンロン「ああ……カークス将軍はテリウス殿下を 王位に就ける気なのかも知れん」
ゲンナジー「フェイル殿下が生きておられるというのに…… 将軍を信用して大丈夫なのか?」
ヤンロン「……もう一度、 彼の真意を確かめなければならないな」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

カークス「テリウス殿下の護衛任務、ご苦労だった。 先程、殿下は我が本隊へ向け、出立された」
ヤンロン「……将軍はまだ僕に隠し事をしていますね」
カークス「………」
ヤンロン「テリウス殿下の即位をお考えなのでしょう?」
カークス「……その件については、後で話す。 今、戦局は大きく動きつつある。 フェイル殿下の軍が王都奪還作戦を遂行中なのだ」
ヤンロン「……!」
カークス「そのため、シュテドニアス軍は浮き足立っている。 私はこの好機を逃さず、彼らの拠点を叩くつもりだ。 ……そう、すぐに動かねばならん」
ヤンロン「ここでフェイル殿下以上の軍功を挙げ、 後で優位に事を運ぶためですか。テリウス殿下の件も 含め、それがあなたの野望なのですか」
カークス「今、そのことについて論じている場合ではない。 君達に叩いてもらいたい敵拠点がある」
ヤンロン「話を逸らさないでいただきたい。 僕は、シュテドニアスの侵攻がラ・ギアス全体にとって 益にならないと判断し、あなたの下で戦ってきました」
ヤンロン「ですが、一個人の利益のためとなると話は別です」
カークス「……私は、ラングランだけでなく、 ラ・ギアス全土の将来を見据えて行動している」
ヤンロン「僕は……あなたを信用できなくなりつつあります。 テリウス殿下の件以外にも、まだ隠していることが あるのでしょう?」
カークス「疑念あらば、事が終わり次第、私の所へ来るがいい。 逃げも隠れもせんよ」
ヤンロン「………」
カークス「だが、その前に敵拠点の一つを攻略してもらいたい。 そこに地上人が捕らえられているという 情報も入っている」
レフィーナ「! それは本当ですか?」
カークス「ああ、信憑性は高い。 また、我が方の諜報員が敵拠点付近で 巨大な剣を持った地上の機体を目撃している」
リューネ「巨大な剣……もしかして!?」
ショーン「グルンガスト零式か参式、 あるいはダイゼンガーかも知れませんな」
カークス「気になるのであれば、 自らの目で確かめてもらいたい。以上だ」
(通信が切れる)
ヤンロン「くっ……!」
ショーン「口が達者……権謀術策に長けたお方ですな。 政治家にも向いておられるようで」
ヤンロン(シュテドニアス軍との戦いが終わった後で、 フェイル殿下とカークス将軍が 激突する可能性が出て来たか……)
リューネ「ヤンロン、カークス将軍の言ってたことが 本当なら、あたし達は……」
ヤンロン「……わかっている。 僕に君達を止めることは出来ない」
ヤンロン「今はカークス将軍に踊らされていることを 承知の上で敵拠点へ向かおう…… 君達の仲間を救い出すために」


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