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ヴォルクルスの影 ヒリュウ改に立ち寄る ~ 第9話 ~

《神聖ラングラン王国 トロイア州 ハンゴウ海峡(ヒリュウ改)》

[ヒリュウ改 ブリッジ]

リューネ「ねえ、ユン。ハガネや他のみんなから 連絡とかって入って来てないの?」
ユン「ヒリュウがこの世界へ来てから、 コンタクトは試みてるんだけど……」
ユン「地上と違ってサテライト・リンクが 使えるわけじゃないし、色々な要因が重なって 長距離通信が困難な状態なのよ」
リューネ「……ヤンロン、あんた達が使ってる通信機は?」
ヤンロン「作戦区域での通信なら特に問題はないが…… ここ最近のエーテル流の乱れのせいで、 長距離通信はかなり不安定だ」
ヤンロン「それが、混乱を増長させている 原因の一つとなっている」
ヤンロン「カークス軍は自軍の拠点にある 高性能通信機をリレーすることで、 連絡網を何とか確保しているが……」
ヤンロン「そこから外れた所にいる勢力……つまり、 カークス将軍の指揮下ではないラングラン軍の 動きについては、掴み切れていない」
ヤンロン「現在、シュテドニアス軍に占拠されている王都は 言わずもがな……情報を得るにはスパイを 送り込むか、威力偵察を行うしかない」
リューネ「ネットワーク系はどうなのさ?」
ヤンロン「シュテドニアス軍が強力なプロテクトを掛けている。 その点は、セニア王女がいれば何とかなるかも 知れないが……」
リューネ「王女……ラングランの王族は行方不明なんだっけ」
ヤンロン「……ああ」
リューネ「じゃあ、あたし達がハガネを見つけるには、 自分達から動くのが一番か……」
ユン「お互いが通信可能範囲に入ればいいんだけど」
リューネ「あたし達、結構派手に動いてるからね。 向こうも気づくんじゃないかな」
ユン「シュテドニアス側に付いている 可能性もあるけど……」
リューネ「その時はその時でしょ。 そもそも、あたし達とハガネが 戦う理由なんてないんだから」
ヤンロン(あるいは、 フェイル殿下の所にいるケースもあり得る……)
(通信)
ユン「あ……カークス軍本隊からの通信だわ」
ヤンロン「次の任務が決まったか」

[ヒリュウ改 ブリーフィング・ルーム]

カチーナ「何? 調査だぁ?」
ヤンロン「ああ。ここから50キロほど北へ進んだ所に 神殿跡がある。数時間前、そこで大規模な 地盤崩落が発生したそうだ」
カチーナ「で、原因を調べろってか。 そんなの、あたしらの仕事じゃねえぜ。 学者を派遣しろ、学者を」
レフィーナ「いえ…… 私達を差し向ける理由があるのでしょう」
ヤンロン「そうです。 地下にヴォルクルスの神殿が 存在している可能性があります」
カチーナ「ぼるするく?」
ヤンロン「ヴォルクルス、だ」
カチーナ「ヴォスルクス?」
リューネ「そっちの方が言いにくくない?  でも、ヴォルクルスって言葉に 聞き覚えがあるのよね……」
ラッセル「ええ、自分も……」
リューネ「あっ、思い出した!  シュウが言ってたよ、修羅の乱の時に!」
キョウスケ「ああ……奴のグランゾンが ネオ・グランゾンに変化する前だったな」
リュウセイ「確か、破壊神とか何とか言ってなかったっけ?」
ヤンロン「君達がシュウと戦い、彼を倒したことは ヒリュウのデータを見て知っていたが…… ヴォルクルスの名を聞いていたか」
リューネ「もしかして、あんたが前に言ってた ラ・ギアスに災厄をもたらす魔神って、 ヴォルクルスのことなの?」
ヤンロン「そういう説もあるが、正体は不明だ。 ヴォルクルスの実態も定かではないが…… 神と崇め、その復活を目論む集団は存在する」
リュウセイ「邪神とその信者集団か。 これでモンスターか出て来たら、 ファンタジー物のロープレだぜ」
タスク「そうだな……精霊とか魔法がある世界だしな」
ヤンロン「そして、懸念事項がもう一つ…… それは、調和の結界の崩壊だ」
リューネ「調和の結界?」
ヤンロン「調和の塔からラ・ギアス全土を覆っている 特殊な結界で……大規模な魔法の使用を 制限している」
ヤンロン「そして、そこに魔力を供給するのが、 ラングラン王族の義務の一つとなっているのだが……」
ヤンロン「王都で発生したテロ事件が原因となって、 調和の結界は破れてしまった」
ショーン「ならば……今はヴォルクルスが復活し易い状況と いうわけなのですな」
ヤンロン「ええ。 万が一、破壊神が現れるようなことがあれば…… ラングランはさらなる混乱へ陥ります」
レフィーナ「わかりました。直ちに神殿跡へ向かいましょう」
ヤンロン「僕がグランヴェールで先行します」
リューネ「あたしも行くよ」
リュウセイ「じゃあ、俺も」
レフィーナ「いいでしょう、許可します」

[神殿跡 地下]

リューネ「……神殿跡の地下に こんな洞窟があるなんて……」
リュウセイ「しかも、パーソナルトルーパーで 楽々中に入れるとはな」
ランシャオ「ご主人様、この洞窟内には精霊がいないようです」
ヤンロン「やはり、この先にヴォルクルスの神殿が……」
リュウセイ「この先って……なら、神殿って相当デカくねえか?  だとしたら、何でそんなに……」
ヤンロン「祭っているもののためだ。 ヴォルクルスは神と言われているが、遥か昔に 滅びた巨人族の怨念集積体だという説もある」
リュウセイ「巨人族……?」
ヤンロン「この世界で彼らが栄えていたのは、数千万年前…… 我々と同等か、それ以上の知性を持っていたらしい。 化石などから、そのことがわかっている」
ヤンロン「だが、巨人族は大異変により、滅亡した。 生きとし生けるもの全てに対する凄まじい 怨念を残して……」
ランシャオ「! ご主人様、前方に複数の動体反応が!」
ヤンロン「いかん! みんな、機体に戻れ!」


第9話
ヴォルクルスの影

〔戦域:神殿跡地下空洞〕

(ヒリュウ改が出現、出撃準備)
リューネ「ヤンロン、何が現れるのよ!?」
ヤンロン「デモンゴーレムだ!」
(デモンゴーレムが出現)
リュウセイ「マジでモンスターが出て来やがったぜ!」
ヤンロン「あれは、死霊の霊気を土塊に宿らせた兵器だ」
ゲンナジー「ヤンロン、 デモンゴーレムが現れたとなると……」
ヤンロン「ああ、近くに術者がいる可能性が高い。 事態は僕達が思っているより 先に進んでいるのかも知れない」
キョウスケ「ならば、この向こうにヴォルクルスが……?」
ヤンロン「それは何とも言えん。 ヴォルクルスの神殿は複数存在するからな。 ともかく、奴らを倒し、奥へ行こう」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

ヤンロン「よし、ここのデモンゴーレムは全て倒したな。 奥へ進もう」

〔戦域:ヴォルクルス神殿祭壇〕

(ヒリュウ改が出撃済み、出撃準備)
ヤンロン「やはり、祭壇が……!」
タスク「あ、あれは!!」
(デモンゴーレムに囲まれているズィーガーリオンを指す)
タスク「ズィーガーリオン! レオナか!?」
レオナ「タ、タスク!」
ルオゾール「ほう……やはり、彼らとお知り合いでしたか」
ヤンロン「ルオゾール!」
ルオゾール「お久しぶりですな、ヤンロン殿」
カチーナ「何なんだ、あいつは!?」
ヤンロン「魔神官ルオゾール…… ヴォルクルスに仕える闇の神官だ」
ルオゾール「ご紹介いただき、ありがとうございます。 それにしても、地盤崩落を知って すぐさまここへ来られるとは……さすがですな」
タスク「てめえ、レオナをどうする気だ!?」
ルオゾール「彼女は、なかなか興味深い波動を 持っておられましたので……ヴォルクルス様への 生け贄になっていただこうと思いまして」
タスク「生け贄!?」
ヤンロン「波動とは何だ?」
ルオゾール「そこにも彼女と同じものを持っておられる方が 二人ほどいらっしゃるようですが」
リュウセイ「もしかして、念動力のことか……!」
キョウスケ「レオナを生け贄にして、 ヴォルクルスが甦るのか?」
ヤンロン「魔術の法則に“類似の法則”というものがある。 ヴォルクルスは恐怖や憎しみ、怒りなどの 情念の塊だ」
ヤンロン「類似の法則に従えば、 外形や本質の似たものは互いに影響し合う」
ヤンロン「つまり、生け贄の恐怖が同じ負の存在…… ヴォルクルスを召喚するキーとなるわけだ」
ルオゾール「お詳しいですな、ヤンロン殿。 我がヴォルクルス教団にご入信いただければ、 一廉の神官になれるやも知れませんぞ」
ヤンロン「怪力乱神を語らず、と言うがな。 貴様の妄言には惑わされんぞ」
ルオゾール「これ以上、この神殿を荒らされては困りますのでな。 大人しく立ち去っていただけませんか」
ヤンロン「貴様を見逃すわけにはいかんな」
ルオゾール「やれやれ、わかりました。 では、生け贄の儀式が終わるまで、 この者達の相手をしていただきましょう」
ルオゾール「天の理、地の理、逆しに行えば、逆しに生ず。 冥府の怨み、煉獄の焔、血をもちて盟す。 闇に依りて盟す」
ルオゾール「アク・サマダ・ビシス・カンダク」
(デモンゴーレムが出現)
ルオゾール「ここはわが神の神殿内…… 先程のデモンゴーレムより 力が増しておりますぞ」
ゲンナジー「む……」
リューネ「あのルオゾールって奴をやっつければ、 何とかなるんじゃないの?」
ヤンロン「今の僕達の装備では不可能だ。 奴の咒霊機ナグツァートは、その半身がアストラル界に 属しているため、ダメージを与えられない」
リューネ「じゃあ、どうすんのさ!?」
ルオゾール「どうにもなりませんよ。 あなた方もこの状況に恐怖なさい。 それが、我が神の糧となります」
ルオゾール「いえ、むしろあなた方も生け贄にして 差し上げましょう。拒否されるのであれば、 深き冥府へ堕ちていただくことになりますが」
タスク「は……ははははは!!」
リューネ「タスク!?」
ルオゾール「ふむ…… 恐怖のあまり、おかしくなられましたかな?」
タスク「いや、むしろ嬉しいぐらいだぜ。 ようやく愛しのレオナちゃんを 見つけられたんだからな」
レオナ「タスク……!」
ルオゾール「フッ……身の程知らずのお方ですね」
カチーナ「てめえこそ、あたしらを甘く見るんじゃねえぞ!  こっちにゃ、鋼龍戦隊きっての突撃野郎が 三人も揃ってんだ!」
キョウスケ「………」
リュウセイ「俺達の仲間を生け贄なんかにはさせねえぞ!」
ルオゾール「ここまで来ると言うのですか? 愚かな……」
タスク「馬鹿野郎! 俺の愛の力をなめんじゃねえぜ!!」
レオナ「そ、そんな大きな声で……!」
ルオゾール(む……負の念の集束率が…… あの者達の覇気に影響されているとでも?)
ヤンロン「生け贄の儀式は進行中だ。 10分以内に彼女を助けなければ、 手遅れになるかも知れんぞ」
カチーナ「それだけありゃ、充分だ!  行くぞ、野郎共! まずはレオナを助け出す!」
タスク「合点承知!!」
(作戦目的表示)

〈vs ルオゾール〉

[リューネ]

ルオゾール「ヴァルシオーネ、でしたか。 興味深い技術を使っているようですが、 我がナグツァートの敵ではありません」
リューネ「あんたみたいな奴、生理的に駄目なのよね!  虫酸が走るわ!」

[ヤンロン]

ルオゾール「ふふふ……いくら攻撃力の高いグランヴェールでも 我がアストラルシフトは破れませんぞ」
ヤンロン「相変わらず卑怯な手を使っているな、ルオゾール!」

[タスク]

ルオゾール「我がナグツァートを目前にして戦かぬとは……」
タスク「ヘッ、カチーナ中尉の仕置きと 怒ったレオナに比べりゃ、てめえなんぞ!」

〈9PP〉

ヤンロン「みんな、タイムリミットまで あと1分ほどしかないぞ!」

〈10PP〉

ヤンロン「タイムリミットまで、あと30秒しかない!  急ぐんだ!」

〈味方機がズィーガーリオンに隣接〉

ルオゾール「……やはり、パワーが上がりませんな。 あの生け贄では駄目だということですか。 仕方がありません、ここは諦めるとしましょう」
ヤンロン「ルオゾール!」
ルオゾール「私にはまだやらねばならないことが ありますのでね。それでは、また」
(ナグツァートが撤退)
カチーナ「あの野郎、逃げやがったか……!」
ラッセル「で、でも、自分達にとっては幸運ですよ。 あの機体を倒す術がなかったんですから……」
カチーナ「………」
(タスク機がズィーガーリオンに隣接)
タスク「レオナ、大丈夫か?」
レオナ「え、ええ……ありがとう、タスク」
レフィーナ「各機に帰艦命令を。その後、地上へ戻ります」
ショーン「了解しました」

[ヒリュウ改 格納庫]

カチーナ「これであたしのチームは面子が揃ったな」
レオナ「ええ…… 助けていただき、ありがとうございました」
リュウセイ「しかし、運が良かったよな。 俺達が神殿に向かってなきゃ、 今頃どうなってたか……」
タスク「そいつは、俺の引きだな。 運命の糸で引き合ってるのさ」
リューネ「ふふっ、そうかもね」
キョウスケ「レオナ、鋼龍戦隊の他のメンバーについて 何か情報を持っているか?」
レオナ「いえ……この世界へ来た後、ルオゾールに 捕まってしまったので……」
カチーナ「奴はヴォルクルス関連以外のことで 何か言っていたか?」
レオナ「何者かと連絡を取り合っているようでしたが、 その内容までは……」
ヤンロン(連絡か。おそらく、サフィーネだな)
リューネ「ところで、あの神殿はどうするの?」
ヤンロン「先程、カークス将軍に連絡した。 部隊を派遣し、周辺地域を封鎖するとのことだ」
カチーナ「とりあえず、一件落着か。 レオナ、次の任務までゆっくり休め」
レオナ「わかりました」
カチーナ「タスク、レオナの代わりに ズィーガーリオンのチェックをやっとけ」
タスク「了解ッス」
カチーナ「じゃあ、あたしらは行くぜ」
(足音・タスクとレオナ以外が立ち去る)
レオナ「………」
タスク(ここでキスの一つもしときたい所だけど…… 張り倒されかねないしなぁ)
タスク「レオナ、チェックリストはいつもの所だよな?  後は俺に任せてくれ」
レオナ「え、ええ……」
タスク「おろ? どうしたの?」
レオナ「よ、ようやく会えたのよ…… わ、私の口から……言わせる気……?」
タスク「レオナ……」
レオナ「だ、誰かが来る前に……」
(閃光)
リューネ「……あ~、いいなあ」
ラッセル「見ちゃ駄目ですよ、行きましょうよ」
リューネ「そうだね。 あのカチーナ中尉が、珍しく気を利かせたんだし」


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