back index next


囚われの王女 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第9話 ~

《神聖ラングラン王国 ラングラン州 ガジェッタ山(ハガネ)》

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「艦長、合流ポイントに到着しました」
テツヤ「では、俺とヴィレッタ大尉、マサキ達で フェイルロード殿下に会ってくる」
テツヤ「各機は第二種戦闘配置のまま待機。 対空対地警戒を厳となせ」
エイタ「了解です」

(溪谷)

マサキ「……やれやれ、ようやく殿下に会えたぜ」
フェイル「マサキ、ご苦労だった。 それに、地上の方々にもご尽力いただき、 感謝の意に堪えません」
テツヤ「これまでの通信での無礼をお許し下さい。 殿下のご尊顔を拝謁し……」
フェイル「あ、いや、そのままで結構です。 私も堅苦しいのは好きじゃありませんので」
テツヤ「では、殿下…… いくつかお聞きしたいことがあるのですが、 よろしいでしょうか?」
フェイル「構いません」
テツヤ「地上人召喚事件の原因について、 判明したことはありますか?」
フェイル「……それについては、依然調査中です。 ただ、各所でのゲートの発生については、 収まりつつあるようです」
テツヤ「ならば、この世界へ来ていると思われる 鋼龍戦隊旗艦ヒリュウ改の消息や、他のメンバーの 行方について何か御存知でしょうか?」
フェイル「それに関する情報も掴めておらず…… シュテドニアス軍のこともあり、本格的な 調査や捜索が出来ず、心苦しく思っています」
テツヤ「……ラングランの事情は理解しているつもりです。 ですが、我々には地上での責務もあり、 いつまでもここにいるわけには……」
フェイル「わかっています。 事が収まり次第、あなた方の同胞の捜索や、 地上への帰還準備を行いましょう」
ヴィレッタ(マサキ達が言っていたように、ソラティス神殿以外にも 地上へ戻れる場所と手段があるようね……)
テツヤ「どのみち、我々は ヒリュウ改や部下達の消息が判明するまで、 地上へ戻るわけにはいきません」
テツヤ「それに、我らと敵対する勢力も この世界へ召喚されていますから…… 引き続き、我々は殿下に協力致します」
フェイル「大変ありがたいことです。 私を信用して下さっていると考えてよろしいか?」
テツヤ「ええ。 地上で我々と共に戦ってくれたマサキが、 殿下の下にいることも理由も一つです」
マサキ「そ、そう言われると何か照れるな」
フェイル「……では、中佐達には王都奪還作戦の軍議に ご参加いただきたいと思っています」
テツヤ「わかりました」
テュッティ「マサキ、行くわよ」
マサキ「え、俺も?」
テュッティ「当然でしょう。今までは散々サボってたけど、 今回はそういうわけにいかないわ。 あなたは魔装機神の操者なんですから」
マサキ「ちぇっ……ハガネならともかく、 こっちの軍議は堅苦しくてさぁ」
テツヤ「……その言い方だと、まるで俺達が和気あいあいと ブリーフィングをやっているように聞こえるが?」
マサキ「あ、いや、そういうわけじゃなくて」
フェイル「魔装機神は戦力の要だ。 マサキ、君にも軍議に参加してもらいたい」
フェイル「ただ、以前にも言った通り……魔装機神操者に対して 協力は要請するが、強制はしない」
マサキ「わかった、行くぜ。もちろん、自分の意思でな」
ヴィレッタ(さしものマサキも、フェイル殿下の前だと 素直になるようね……)

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

イルム「……なるほど。 それじゃ、もうしばらくの間、 ラ・ギアスに滞在決定ってわけか」
マサキ「ああ。 ハガネみてえにデカいのを地上へ戻すには、 それなりの準備と時間が必要なんだと」
エクセレン「こっちに召喚した時はどうだったのかしらねぇ」
リョウト「……確か、マサキやテュッティさんは 魔装機のパイロット候補として、 ラ・ギアスに呼ばれたんだよね?」
マサキ「ああ、俺の場合は身一つでラングランへな」
リョウト「でも、今回は戦艦クラスの物体からミオまで…… 召喚される条件や場所がバラバラだ」
リョウト「誰かが仕組んだことだとしても…… これは、事故と言ってもいいんじゃないかな」
トールス「その意見は、我ら側でも出ていました」
ユウキ「つまり、地上人召喚を画策した人物がいたとして…… その者にとっても、今回の事態は意外だったと?」
トールス「ええ」
ライ「俺達のような存在を戦力として 組み込むつもりだったとしても、誰がどこに 召喚されるのかわからないようであれば……」
カーラ「あんまり意味ないよね」
エクセレン「何にしても、早くキョウスケやボス、 リュウセイ君達を見つけたいわね」
ツグミ「そうですね……。 それに、今頃、地上では私達が姿を消したことで 騒ぎになっているかも知れませんし」
エクセレン「出来ることなら、一報を入れておきたいわね。 色々説明するのが大変だけど」
アイビス「ねえ、マサキ。地上と交信する方法はあるの?」
マサキ「エーテル通信機が使えるが、 向こう側に受信機がねえからなあ……」
マイ「前から思っていたけど、 サイバスターが地上とラ・ギアスの間を 自由に行き来できるなら……」
マサキ「そうなんだが、 ゲート通過時に発生させるフィールドが小さくてな」
マサキ「パーソナルトルーパー1機ぐらいだったら、 サイバードの足の爪で掴んで、一緒にゲートを くぐり抜けられるかも知れねえが……」
アヤ「でも、今、あなたが地上へ行くわけには いかないでしょう」
(扉が開閉する)
テツヤ「……作戦に参加するメンバーは揃っているな」
ヴィレッタ「ええ」
テツヤ「では、王都奪還作戦の概要を説明する。 我々はフェイル殿下の意向により、 別働隊として敵の陽動を行う」
テツヤ「まず、西回りのルートで王都の背後を突き、 シュテドニアス軍を引き付ける。そして、その隙に 殿下の本隊が王都へ突入することになる」
テツヤ「なお、我らは敵にイレギュラーとして 認識されている。無視は出来ないはずだ。 可能な限り、派手に動き回ってもらいたい」
エクセレン「んふふ、そういうのは得意よん」
マサキ「こないだはシュウのせいで躓いたが、 今度こそ王都へ行って、シュテドニアスの連中を 叩き出してやるぜ……!」


第9話
囚われの王女

〔戦域:草原〕

(敵機は出現済み。ハガネが出現)
テツヤ「これより、敵の陽動を行う。 前部全主砲、全副砲、VSLM、攻撃用意!」
(出撃準備)
ザンボス「やはり、連中はこちらへ来ましたな。 狙い通りです」
ロドニー「貴公の勘もたまには当たるんやな。 せやけど、あいつらの相手は骨が折れるで、ホンマ。 おまけに、ザムジードも奪われてもうたし」
ザンボス「今回は切り札を用意しています。 心配はいりませんよ」
ロドニー「ほう、初耳やな。何や、その切り札て?」
ザンボス「こればかりはジェスハ将軍と言えど、 お教え出来ません。我が隊の特権ですからな」
ロドニー「ちっ、けったくそ悪い。 これやから、特殊工作隊ちゅうんは嫌いやねん」
ザンボス「フッ、よく言われることですな」
ロドニー「まあ、ええわ。 とにかく、あの地上人部隊は厄介や。 何とかせんとな」
ザンボス「将軍、この場は私に指揮権が……」
ロドニー「わかっとる、わかっとる。 今は居候みたいな身の上やからな。 命令は聞いたるし、手柄もお前のもんや」
ザンボス(フン……もはや落ち目だな、ジェスハ将軍)
テツヤ「各機、攻撃を開始せよ!」
(作戦目的表示)

〈敵機13機以上撃墜 or ソディウム級移動要塞のHP70%以下 or ギルドーラのHP60%以下〉

ザンボス「……フン、やるな。 だが、こちらには切り札があるんだよ」
ザンボス「地上人に告ぐ。直ちに武装解除し、降伏しろ」
カーラ「降伏!? それはこっちの台詞だよ!」
ザンボス「我らの命令に従わぬ場合、 モニカ王女が報いを受けることになるが、 それでもいいのか?」
テュッティ「何ですって!?」
マサキ「まさか、モニカ王女を人質にしてやがるのか!?」
ザンボス「ああ、その通りだ」
マイ「私の時と同じだ……あいつらは……!」
アヤ「人質を取ることが常套手段だと言うの……!?」
リオ「あなた達、やることが汚いわよ!」
ザンボス「何とでも言え。 我々は、無駄な血をこれ以上流したくないだけだ」
マサキ「ふざけんな!  ラングランへ攻め込んで来やがったくせに!」
ロドニー「兄ちゃん、言うとくけど、 ワシらにはワシらの理由があるんやで」
マサキ「人質を取るなんて卑怯な真似をする連中が、 何を言いやがる!」
ロドニー(……ま、そら一理あるわな)
イルム「王女を人質にしたと言うなら、 その証拠を見せてもらおうか?」
ザンボス「いいだろう。 ……おい、モニカ王女をここへ連行しろ」
ザンボス「……何!? どういうことだ、それは!?  貴様ら、何をやっていた!?」
シロ「ニャんか様子が変だニャ」
ザンボス「……事情が変わった。 人質の命が惜しくば、今すぐ撤退してもらおう」
マサキ「何だ、てめえ…… 本当にモニカ王女はそこにいるのか?」
ザンボス「うるさい! 撤退するのか、しないのか!?」
(ノルスが出現)
モニカ「その必要はないわ!」
テュッティ「モニカ王女!?」
ザンボス「ええい! 急いで取り押さえろ!」
マサキ「みんな、あの魔装機にモニカ王女が乗ってる!  援護してくれ!」
モニカ「あ、ちょっと待って。 んもう、こんなの着せて……」
マサキ「!?」
セニア「ふう、これで良しっと」
テュッティ「そ、その髪の毛の色……セニア様ですか!?」
セニア「ええ、私よ。 あいつら、モニカを奪われちゃったんで、 私を身代わりにする気だったの」
ミオ「ど、どういうこと?」
カーラ「さ、さあ?」
アイビス「もしかして、王女は二人いるとか……」
セニア「悪いけど、マサキ……援護してもらえるかしら?」
マサキ「ああ、わかった!」
ロドニー「メッキが剥がれた以上、意味ないわな。 ま、人質を取るなんざ、気に喰わんやり方やし」
ザンボス「作戦はまだ失敗したわけではない!  王女を取り戻し、奴らを撃退しろ!」
(作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[セニア]

セニア「せっかく脱出したのに、 こんな所でやられるわけにはいかないわ!」

〈vs ロドニー〉

[マサキ]

マサキ「ザムジードに加えて、セニアまで!  こいつは高くつくぜ!」
ロドニー「おいおい!  ワシ、王女さんの件とは関係ないで!」

[ミオ]

ロドニー「何や、前回のお嬢ちゃんか。 子供相手ちゅうんは、どうも気が進まんわ」
ミオ(あの人、意外にいい人なのかな?)

[撃墜]

ロドニー「ちっ! しゃあない、引き揚げや!  降格は確実やろうけど、命には代えられへんしな!」
(ギルドーラが撤退)

〈vs ザンボス〉

[マサキ]

マサキ「てめえ、卑怯な真似をしやがって!」
ザンボス「これは戦争だ! 結果的に勝ちゃあいいんだよ!」

[テュッティ]

テュッティ「一度ならず二度も人質を取るなんて…… 恥を知りなさい!」
ザンボス「目的を果たすためなら 手段なんざ選ばねえんだよ、俺達は!」

[撃墜]

ザンボス「ええい、またしても! 撤退だ、撤退するぞ!」
(ソディウム級移動要塞が撤退)
エクセレン「……これで陽動作戦の第一段階は 成功ってことかしらん?」
マサキ「だが、この辺りにいるシュテドニアス軍は、 あいつらだけじゃねえはずだ。 まだ気を抜くわけにはいかねえ」
テツヤ「アヅキ、各機に伝達。 直ちに帰艦し、弾薬の補給や応急修理を」
アヅキ「了解です」
テツヤ「本艦はしばらくこの場に留まる。 対空対地警戒を厳となせ」

[ハガネ 格納庫]

セニア「あのハガネに乗れる日が来るなんて、 思ってもみなかったわ。 この目で地上のメカが見られて、感激……」
マサキ「相変わらずだな、セニア。 ところで、ザムジードはどうだ?  直せそうか?」
セニア「装甲の自己再生も進んでるみたいだし、 応急処置で使えるようになるわよ」
エクセレン「……ねえ、マーサ。 王女様を紹介してもらえるかしらん?」
マサキ「ああ、セニア・グラニア・ビルセイア王女だ。 フェイル殿下の妹で、モニカ王女の双子の姉でもある」
セニア「よろしく。もっとも、王位継承権はないから、 気軽にセニアって呼んでくれて結構よ」
アヤ「王位継承権がないって……?」
セニア「要するに落ちこぼれなのよ。 魔力テストに不合格だったの」
ツグミ「魔力テスト?」
セニア「魔力は、プラーナの活用によって生じるものなの。 人が及ぼす強い観測作用で……えーと……そう、 あなた達の言葉で言うと超能力に近いわね」
セニア「で、王族はみんな魔力テストを受けるんだけど、 これに合格しないと王位継承権が認められないのよ」
アイビス「た、大変なんだね、ここの王女様や王子様は……」
テュッティ「それで、セニア様…… どうしてモニカ様の身代わりに?」
セニア「そうそう、あいつら、モニカをクリストフに さらわれちゃったのよ」
マサキ「シュウが!?  もしかして、あの時……!!」
セニア「え? あなた、クリストフと会ったの?」
マサキ「ああ、ここへ来る前にちょっとな」
ライ「モニカ王女の件もあって、 シュウはあの場からすぐに立ち去ったのか……」
マサキ「チッ、あの野郎……!」
テュッティ「でも、記憶を失っていたシュウが 何故、モニカ様を……?」
セニア「さあ……私にもわからないわ」
テュッティ「モニカ様がシュウの所にいるのなら、 シュテドニアス軍は手を出せないと 思いますが……」
セニア「そうね……クリストフが何を考えているか、 はっきりしないけど……」
マサキ「やっぱり、あの時にシュウを とっつかまえておくべきだったぜ」
セニア「済んだことを悔やんでも仕方ないわよ。 ある意味、モニカはクリストフと一緒にいた方が 安全かも知れないし」
マサキ「………」
セニア「ところで、ヒュッケバインはどこ?  Mk-IIやMk-IIIは?」
リョウト「ヒュッケバイン・シリーズは全機、 メーカーでのオーバーホール中で…… ハガネには搭載していないんです」
セニア「なぁんだ…… データだけじゃなく、直に見たかったのにな」
リョウト「え?」
マサキ「あ、お前…… もしかして、サイバスターにインプットされてた データを寄越せって言ってたのは……」
セニア「ギクッ!」
エクセレン「どういうこと?」
マサキ「俺が地上にいた時、エーテル通信機で ちょくちょく連絡してきてたんだよ」
セニア「ま、まあ、いいじゃない」
マサキ「まさか、お前…… 地上のメカのデータを参考にして、 何か作ってたんじゃねえだろうな?」
セニア「え、え~っと……」
リョウト「マサキ、もしかして前に言ってた 無類のメカ好きで魔装機の設計をしてる人って……」
マサキ「ああ、セニアのことだよ」
リョウト「やっぱり」
セニア「あなたもご同類って感じかしら?」
リョウト「え、ええ、まあ」
セニア「良かったら、他の機体も見せてくれない?  パーソナルトルーパーだけじゃなく、 アーマードモジュール特機にも興味があるの」
リョウト「僕で良かったら、案内します」
セニア「敬語は使わなくていいわ。フランクにいきましょ」
リョウト「う、うん……」
リオ「ちょっと、リョウト君!  何よ、デレデレしちゃって!」
リョウト「あ、リ、リオ……」
マサキ「まあ、心配することねえって。 セニアは筋金入りのメカフェチだから」
アヤ「その点は、リュウとも気が合いそうね……」


back index next