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ザムジードの心 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第8話 ~

《神聖ラングラン王国 サイツェット州(ハガネ)》

[ハガネ 艦内(食堂)]

アヤ「ねえ、マサキ。フェイル殿下のこと、 もう少し教えてもらえないかしら?」
エクセレン「うんうん、私も聞きたいわね」
ミオ「あたしも」
カーラ「あたしも興味あるな~」
マサキ「やれやれ、ちょっと顔見せしただけなのに えらい人気だな」
プレシア「ラングランでもフェイル殿下を慕う人、 いっぱいいるもんね」
アヤ「で、どんな方なの?」
マサキ「ま、実際に会ってみりゃわかると思うけど…… 真面目だし、第一王位継承者にしては 偉ぶった所がねえしな」
プレシア「うん、あたしとも普通にお話ししてくれるよ。 うちで一緒に夕食を食べたこともあるの」
アヤ「気さくな王子様……ますます素敵ね」
マサキ(意外とミーハーだな、アヤって)
テュッティ「殿下は、とてもいい方よ。この世界の行く末を 本気で憂いていらっしゃるわ」
マサキ「ああ…… 今のラングランは、カークス将軍の台頭のせいで 本来、一つにまとまるべきはずが分裂しちまってる」
テュッティ「大国ラングランのおかげで 世界のバランスが取れていたのに、 この戦乱でシュテドニアスが強大になったの」
マサキ「シュテドニアス連合の ゾラウシャルド大統領は、超タカ派でな…… バックに軍事複合企業トリニティがついてやがる」
マサキ「このままじゃ、ラ・ギアス全土が 戦乱に巻き込まれるのは、目に見えてるんだ」
テュッティ「そうならない内に、フェイル殿下の下に ラングランを急いで再統一し、シュテドニアスの力を 削いでおく必要があるの」
マサキ「戦争で迷惑するのは、普通の人達だからな…… 早いとこ何とかしねえと」
(エクセレンが驚いている)
エクセレン「………」
マサキ「何だよ、その顔?」
エクセレン「いつになくマーサが真面目な話をしてるな、って 思って……」
カーラ「う、うん……意外」
マサキ「どういう意味だ、そりゃ!」
プレシア(お兄ちゃん…… 地上じゃ、いつもどんな話してたんだろ?)
(アラート)
マサキ「何だ!?」

[ハガネ ブリッジ]

フェイル「……今、我々は敵の奇襲を受けています。 申し訳ないのですが、ハガネにはバナン市の南に 存在する敵本陣を叩いてもらいたいのです」
テツヤ「救援に向かわなくて大丈夫なのですか?」
フェイル「こちらは何とか凌ぎます。 それに、本陣が攻撃を受けたとなれば、 奇襲部隊も浮き足立つでしょう」
テツヤ「了解しました。 では、我々はバナン市南部に向かいます」


第8話
ザムジードの心

〔戦域:バナン市南部〕

(ハガネ、サイバスター、ガッデス、ディアブロが出現。出撃準備)
ロドニー「敵襲か。参ったなぁ、ホンマ。 奇襲のためのジャミングが、仇になってもたな」
ロドニー「しかも、あの戦艦……例の地上人の艦か。 こりゃ面倒な相手やで」
リッジ「ジェスハ将軍、敵の中に魔装機神が!」
ロドニー「ほうほう。で、機種は?」
リッジ「サイバスターとガッデスです!」
ロドニー「あちゃあ……手強い相手やなあ。 しゃあない、あれを出そか」
リッジ「は!? し、しかし、あれは!」
ロドニー「かまへん、責任はワシが取るわい。 すぐに第1種装備で準備せい」
リッジ「ですが、操者は!?」
ロドニー「ワシが乗ったるわい。まぁ、何とかなるやろ」
アイビス「あれが敵の本隊なの? 意外と数が少ないね」
ライ「移動要塞内にまだ敵機がいると 考えておいた方がいいだろう」
マサキ「何が出て来ようが、まとめて叩いてやる!  行くぜ、みんな!」
(作戦目的表示)

〈2EP or ソディウム級移動要塞のHP90%以下〉

(敵機増援が出現)
テュッティ「やっぱり、増援を出して来たわね」
マサキ「あれだけなら、何とかなるぜ。 一気にケリを付けてやる!」

〈3EP or ソディウム級移動要塞のHP60%以下〉

ロドニー「……もうええやろ。ハッチを開きいや」
リッジ「お待ち下さい、将軍!  守護精霊の支配係数は、75に達しておりません!」
ロドニー「70以上もありゃあ、充分やて。 魔装機神にゃ、魔装機神をぶつけるしか 方法はあらへんからな。ほな、出るで!」
(ザムジードが出現)
テュッティ「ザ、ザムジード!!」
マサキ「馬鹿な!  奴ら、あれを手に入れてやがったのか!?」
ユウキ「あの機体を知っているのか?」
マサキ「ああ、あいつも魔装機神だ!」
リョウト「じゃあ、あれが3体目の……!」
テュッティ「そ、そんな……ザムジードが……!  リ、リカルド……!」
マサキ「テュッティ!?」
テュッティ「だ、大丈夫よ……」
フレキ「テュッティ様、お気を確かに」
テュッティ「ええ。 でも、いったい誰がザムジードに……?」
ロドニー「……よっしゃ、さすがにパワーは 全部引き出せへんけど、何とか戦えるわ。 ちゃっちゃといてもうたるさかい、覚悟してもらおか」
ゲリ「……おそらく、操者はシュテドニアスの者でしょう」
フレキ「それにゲアスを使っていると思われます。 ザムジードの守護精霊は大地…… 焔の強制魔法ならば、彼を操ることが可能です」
フレキ「ただし、ザムジードは自らの意思に反して 操られているわけですから、凄まじい苦痛を 味わっていることでしょう……」
マサキ「ああ、魔装機神は自分で操者を選ぶからな。 それを無理矢理ねじ伏せたとなると……!」
ミオ「……泣いてるよ、あのロボット……」
マサキ「!?」
テュッティ「ミ、ミオ、あなた……ザムジードの心がわかるの!?」
ミオ「うん……泣いてる……」
テュッティ「………」
マサキ「これは……間違いなさそうだな。 ディアブロを乗りこなしたことと言い、 ザムジードの心を読んだことと言い……」
テュッティ「ミオが……ザムジードに選ばれた……!?」
マサキ「そういうことだろうな」
テュッティ「そんな! 駄目よ! あの子には無理だわ!」
マサキ「テュッティ、気持ちはわかるけどよ」
テュッティ「マサキ、私は昔のことに拘ってるわけじゃないのよ。 ただ、ミオの実力じゃ……」
イルム「……とりあえず、あれが魔装機神の1体なら、 取り返した方がいいんじゃないか?」
マサキ「ああ、そうだ。 テュッティ、話は後だ。まずはザムジードを!」
テュッティ「わかったわ」
ミオ「でも、取り返すって……どうやって?」
マサキ「ザムジードには悪いが、力ずくで取り押さえる。 あいつは結構頑丈だからな。ただし、やり過ぎて 撃墜するなよ」
ミオ「わかった……!」
(作戦目的表示)

〈vs ロドニー〉

[マサキ]

マサキ「てめえなんぞにザムジードが扱えるのかよ!?」
ロドニー「おうおう、元気のええ兄ちゃんやのう」
マサキ「何だ、こいつ? すげえトロイア訛りだな」

[テュッティ]

テュッティ「あなた、ザムジードから降りて投降しなさい!」
ロドニー「アホ言え! んなこと出来るかいな!」
テュッティ「なら、気は進まないけど、 力ずくで行くしかないわね……!」
ロドニー「上等や、かかってこんかい!」
テュッティ(リカルド……ごめんなさい……!)

[ミオ]

ミオ「ザムジードが痛がって、泣いてるじゃない!  さっさと降りなさいよ!」
ロドニー「ほう……お嬢ちゃん、地上人みたいやな。 こないなトコに首突っ込んでると、 怪我するだけじゃ済まへんで」
ミオ「覚悟の上だよ!  ザムジードは返してもらうからね!」

[HP5000以下]

(ザムジードに爆煙)
ロドニー「あちゃあ、無茶が祟ったか。もう動かんわ。 このままやったら、あいつらに捕まるし…… 降格覚悟で逃げるしかあらへんな」
シロ「マサキ、コックピットから人が!」
マサキ「野郎、捕まえてやるぜ!」
(サイバスターがザムジードに高速で隣接)
ロドニー「兄ちゃん、ワシはそんなノロマやないで。 縁があったら、また会おか。ほな、撤退や!」
クロ「あっ、逃げたニャ!」
(敵機が残っていると撤退)
マサキ「……チッ、逃げ足の速い奴だな」
アヤ「でも、敵本隊は後退したし、 ザムジードも取り戻せたわ」
マサキ「ああ……フェイル殿下の方も何とかなるだろう。 みんな、すまねえがザムジードの回収を手伝ってくれ」

《神聖ラングラン王国 サイツェット州 バナン市(ハガネ)》

[ハガネ 格納庫]

マサキ「ザムジード…… さすがに無傷で取り戻すわけにはいかなかったな」
ミオ「壊れちゃってるよね……直せるの?」
マサキ「フェイル殿下の所へ行けば、何とかなるだろ」
ミオ「……ねえ、マサキ。 魔装機神に乗るって、どんな気分なの?」
マサキ「………」
テュッティ「………」
ミオ「ザムジードを初めて見た時、泣いてると思ったの。 まるで兄弟か親友が酷い目に遭ってるみたいな…… それで、助けてあげなきゃって……」
マサキ(その感じ方は……)
テュッティ(やはり……)
マサキ「魔装機神は、それぞれが高位の精霊と契約を結んで、 その能力を宿らせてある」
マサキ「言わば、一人の人間みたいなもんだ。 それ故に魔装機神は操者を選ぶ、 精神が同調できる相手をな」
マサキ「だから、ミオ……ザムジードの心を理解した お前は、あいつに選ばれたことになる」
ミオ「だけど、それは……」
マサキ「魔装機神操者には権利と義務が伴うんだ。 いずれ、フェイル殿下が教えてくれるだろうが……」
マサキ「まず、魔装機神操者は あらゆる権力に従わなくていい。 その意思は、国家の決定より優先される」
ミオ「え……」
マサキ「そして、義務とは世界存続の危機に際した時…… 何らかの脅威と出会い、それがラ・ギアスにとって 災厄になり得ると判断した時……」
マサキ「そいつに対抗することだ」
ミオ「権利と義務って……それだけなの?」
マサキ「俺も最初に聞いた時はそう思ったさ。 だが、魔装機神操者としての義務を果たすことは、 かなり難しいぜ」
ミオ「責任重大……ってことよね」
マサキ「ああ。それを果たせるだけの力をつけることだ。 そして、心の強さも。操者が邪心を持ったら、 守護精霊が拒否するようになるからな」
ミオ「……わかった。ありがとう、マサキ」
マサキ「おっ、珍しく素直だな。普段もそうだといいんだけど」
ミオ「……最後に一つ聞かせて。 魔装機神操者はあらゆる権力に従わなくて いいっていうのなら……」
ミオ「マサキとテュッティは どうしてフェイル殿下の下で戦ってるの?」
テュッティ「それは……殿下がこの世界の行き先を案じて 行動なさっているからよ」
マサキ「ああ……俺達自身がそう判断し、 殿下の力になると決めた。それに、こっちの世界にも 守りてえものが多いしな」
テュッティ(……守りたいもの……でも、私はあの時……)
(足音)
マサキ「テュッティ、どこへ行くんだ?」
テュッティ「……ちょっとね。でも、心配はいらないから……」
(扉が開閉する・テュッティが立ち去る)
マサキ「テュッティ……」
ミオ「……テュッティとザムジードの間に何かあったの?」
マサキ「ああ。 正確には、前のザムジードの操者とな……」

[ハガネ 艦内(休憩室)]

テュッティ(リカルド……あなたと共に戦っていたザムジードが、 新たな操者を選んだ……)
テュッティ(いずれ、こういう日が来ると思っていた…… そう、あなたがいなくなっても、ザムジードは 存在し続けているから……)
(足音)
イルム「……ちょっといいかな?」
テュッティ「イルム……さん。私に何のご用でしょうか?」
イルム「君のことが気になっててね」
テュッティ「もしかして……私を?」
イルム「いや、口説くなら、笑顔の女性と決めている。 泣いている所に付け込むのは、趣味じゃないんでね」
テュッティ「私、泣いていたかしら?」
イルム「ああ……心の中でね」
テュッティ「………」
イルム「もしかして、君を泣かせたのは…… ザムジードに乗っていた奴との思い出かい?」
テュッティ「もう……過去のことです。 少なくとも、涙を人に見せずに済むくらいには」
イルム「だが、ザムジードは帰って来た。 あんたやマサキ達の下へ」
テュッティ「………」
イルム「もう、気にしなくていい…… ザムジードはそう言ってるんじゃないか。 そんな気がするよ」
テュッティ「……!」
イルム「ま、俺は魔装機神に選ばれたわけじゃないから、 本当の所はどうか知らんが……」
テュッティ「……ありがとうございます、イルムさん。 気を遣って下さって」
イルム「お、笑顔が戻った。 その方がいい、君にはそっちの顔が良く似合う。 それじゃあな」
(足音・イルムが立ち去る)
テュッティ(……ザムジードの心……そうね…… 今のラングランには魔装機神が必要だもの……)
テュッティ(ザムジードがミオを選んだのなら…… 私もそれを受け入れるわ、リカルド……)

[ハガネ ブリッジ]

フェイル「……敵本隊の撃退だけでなく、ザムジードの奪還まで 成し遂げるとは……よくやってくれた、マサキ。 協力してくれた皆さんにも感謝している」
マサキ「それで、殿下……そっちの状況は?」
フェイル「敵は慌てて撤退したよ。 後は王都を奪還するのみだな。 ガジェッタ山で合流しよう」
マサキ「ガジェッタ山か…… あんまりいい思い出がある場所じゃねえが……」
テツヤ「では、今から本艦はそちらへ向かいます」


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