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喪われた記憶 ヒリュウ改に立ち寄らない ~ 第7話 ~

《神聖ラングラン王国 サイツェット州(ハガネ)》

[ハガネ メディカル・ルーム]

イング「……今、僕が置かれている状況は だいたいわかりました」
リオ「ごめんなさいね。 この艦のことは詳しく教えてあげられないし……」
リオ「ラ・ギアスに関しては、 私達にもわからないことの方が多いから」
イング「……非常事態だということは認識しています」
リョウト「あれから、何か思い出した?」
イング「いえ……」
リョウト「………」

[ハガネ 艦内(通路)]

ヴィレッタ「……彼とのやり取りは、 モニター越しで見せてもらった」
リョウト「どうでしょう?」
アヤ「過去の記憶を失ったことに対するショックが 見受けられないわね……もっとも、彼の性格が 落ち着いているからかも知れないけど」
リオ「そこは、私達も気になっていたんです。 取り乱すわけでも、悲しむわけでもなく、 淡々と現実を受け入れていて……」
アヤ「マイの場合は、 フラッシュバックがあったんだけど……」
ライリマコンの形跡は?」
リョウト「ありませんでした」
ヴィレッタ「肉体に不自然な点は?」
リオ「戦闘訓練を受けているようですが、 それ以外は特に……」
ヴィレッタ「ここの検査器では、 検出できないということもあり得る。 この私がそうだったからな」
アヤ「隊長……」
ヴィレッタ「予め調整を受けていたか、耐性があるのか……。 ただ、私もデータを見たが、相似点はない。 今の所はね」
アヤ「疑って……おられるのですか?」
ヴィレッタ「……可能性の話よ。 事後の調整が不要だとも言えるし、 本当に記憶が欠落しているのかも知れないわ」
アヤ「そうですね、私と違って……」
ライ「……リョウト、彼の行動に不審な点は?」
リョウト「ありません。 こちらの要求は素直に受け入れますし、 何かを探っている様子もないです」
リオ「記憶を少しでも取り戻す きっかけがあればいいんですけど……」
ライ「彼が機動兵器のパイロットなら、 PTシミュレーターに乗せてみるのはどうだ?」
リョウト「ショック療法というわけですか?」
ライ「ああ。 機体の扱い方からわかることもあるかも知れん」
リョウト「了解しました。 後で艦長やドクターと相談してみます」
アヤ「……隊長、 そろそろ王都突入作戦のブリーフィングの時間です」
ヴィレッタ「そうね。 ブリーフィング・ルームへ行きましょう」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

テツヤ「王都とその周辺の地形データは見せてもらった。 予測される敵戦力は?」
マサキ「コーラルキャニオンで遭遇したソディウム級…… あれがいくつか配備されてるのは間違いねえ」
テツヤ「空中戦艦の類は?」
マサキ「それはねえだろうな、多分」
イルム「いや、地上からストーク級なんかが 召喚されてる可能性はあるぜ」
マサキ「そ、そうか……」
テツヤ「モニカ王女が捕らえられている場所については?」
テュッティ「おそらく、王宮内だと思われます」
マサキ「どのみち、シュテドニアスの奴らから 王宮を取り戻さなきゃならねえ。 ゴールはそこで決まりだな」
エクセレン「さてさて、どのような作戦で?」
テツヤ「まず、可能な限り発見されぬよう ギナス山へ接近し……王都周辺に 配備されている敵艦を引き付ける」
テツヤ「サイバスター、ガッデス、アルテリオン、 ライン・ヴァイスリッター以外の機体は、 敵機をかく乱……」
テツヤ「それと同時にマサキ達は王宮内へ突入。 こちらの数は少ないからな、サイフラッシュが 成否の鍵を握るだろう。使い時を見誤るなよ」
マサキ「ああ」
エクセレン「グルンガスト改とSRXがいれば、 向こうが数を揃えていても 何とかなるんじゃない?」
ライ「いや、現状のRシリーズはSRXに合体できない」
エクセレン「え? そうなの?」
アヤ「今のR-1は、 演習用に応急のセッティングを施して、マイに とりあえずアジャストさせているだけなのよ」
アヤ「合体を行うとなると、設定変更や調整に かなりの時間を要するわ」
エクセレン「それなら、リュウセイ君を捜し出した方が 早かったりするような感じねぇ……」
(警告シグナル)
アヅキ「……艦長、至急ブリッジへおいで下さい。 アンノウンが1機、本艦に接近中です」
テツヤ「わかった。 第一種戦闘配置命令を出せ。 ……お前達も直ちに出撃を」
マサキ「ああ、わかったぜ!」


第7話
喪われた記憶

〔戦域:ギナス山付近の町周辺〕

(ハガネが出現。出撃準備)
エイタ「アンノウン、2時方向より依然近づく!」
テツヤ「識別は?」
エイタ「該当データあり!  こ、これは……グ、グランゾンです!」
テツヤ「何だと!?」
(東端にグランゾンが出現)
マサキ「ば、馬鹿な!!」
イルム「本物かよ、あれ……!?」
アイビス「そんな……!!」
ライ「グランゾン……いや、ネオ・グランゾンは あの時……!」
マサキ「ああ、俺達が倒した!  奴がこんな所にいるわけがねえ!」
テュッティ「なら、乗っているのはクリストフ…… いえ、シュウ・シラカワじゃない……?」
アイビス「グランゾンって、 シュウ以外の人間でも動かせるの……!?」
シュウ「おや、どうやらあなた方も 私を知っているようですね」
マサキ「シュウ! やっぱり、てめえか!」
シロ「い、生きてたニャんて!!」
シュウ「……どうやら私はあちこちで、恐れられたり、 恨まれたりしているようですね」
マサキ「何だと!? てめえ、何を言ってやがる!?」
シュウ「……その下品な物言い、 思い出せそうなのですが……」
マサキ「わけのわからねえことを!  俺のことを忘れたとは言わせねえぞ!」
シュウ「……残念ながら、本当に覚えていないのですよ」
マサキ「なっ……!!」
リオ「もしかして、過去の記憶を失っているの……!?」
エクセレン「それ以前に、どうやって復活したのかしらん?」
マサキ「まさか……!?」
ヴィレッタ「記憶がないと言いながら、 何故、私達の前に姿を現した?」
シュウ「あなた方に彼らの相手をしていただきたいと 思いまして。それでは、先を急ぎますので」
(グランゾンが高速で西端まで移動)
マサキ「ま、待ちやがれ!!」
(グランゾンが撤退)
アイビス「彼らって、どういうこと……!?」
(アラート)
エイタ「シュテドニアス部隊、接近中!  2時方向より斜行!」
(シュテドニアス軍が出現)
イルム「あいつら、グランゾンを追っていたのか?」
ライ「おそらく」
テュッティ「あれだけの数で追撃していたということは…… シュテドニアス軍もシュウを重要視しているようね」
ライ「それに、連中が俺達の目的に気づけば、 王都の警戒が厳になる」
マサキ「チッ、シュウの野郎が 余計な真似をしやがったせいで……!」
テュッティ「どうするの、マサキ?」
マサキ「シュウのことは後回しだ!  艦長、俺達がここで見つかっちまった以上、 あのシュテドニアス部隊を叩くしかねえぜ!」
テツヤ「そうだな、挟撃は避けたい所だ。 各機、迎撃せよ」
テュッティ(ふふっ、成長したわね、マサキ。 昔なら、なりふり構わずシュウを 追いかけていた所だけど)
ザンボス「例の地上人の戦艦がこんな所に……!  ギボン、貴様の隊はグランゾンを追え!」
ギボン「はっ!」
(ギボン機を含めレンファ5機が西端まで移動し、撤退)
ザンボス「王都の本隊に連絡しろ!  敵は二面作戦で来た、警戒を厳重にしろとな!」
(作戦目的表示)

〈2EP or ソディウム級移動要塞のHP90%以下〉

(ソディウム級移動要塞の傍にケルベリオン・パッセが出現)
シアン「何だ、グランゾンはいねえのかよ」
ザンボス「奴は……地上人の傭兵か」
シアン「まあ、いいか。 代わりに鋼龍戦隊っていう大金星がいるからな」
ザンボス「貴様、何をしに来た?」
シアン「稼ぐために決まってんじゃねえか。 ついでにそっちを手伝ってやるからよ、 ギャラを上乗せしてくれや」
ザンボス「チッ、ガキが……」
アイビス「こないだのケルベリオンと 少し形が違う……!」
シアン「俺はシアン・アルジャン。 シエンヌと同じブーステッド・チルドレンだ」
ツグミ「!」
シアン「ヘッ……てめえらを仕留めたとなりゃ、 地上に戻っても俺達は勝ち組だ」
エクセレン「外見もそうだけど、中身も似たような感じねぇ」
シアン「シエンヌには悪いが、手柄をいただく。 てめえらには負け組になってもらうぜ。 覚悟しな!」

〈3PP or ソディウム級移動要塞のHP60%以下 or ケルベリオン・パッセのHP90%以下〉

エイタ「高速飛行物体接近! 10時方向より真っ直ぐ!  数は2!」
テツヤ「敵の増援か?」
エイタ「いえ、味方の識別コードを出しています!  ラーズアングリフ・レイブンと ランドグリーズ・レイブンです!」
(ラーズアングリフ・レイブンとランドグリーズ・レイブンが北端に出現)
カーラ「あ~、良かった。 ようやく馴染みがある顔に出会えたよ」
リオ「カーラ、 あなた達もラ・ギアスに来てたのね……!」
カーラ「わけのわかんない連中に絡まれたりして、 大変だったんだよ、色々」
シアン「おっ、あいつらは……!」
カーラ「ユウ、あの機体!  あたし達がこっちへ来る前に 喧嘩を売って来た奴だよ!」
ユウキ「ああ、1機しかいないようだが……」
エクセレン「あらん、お知り合い?」
ユウキ「何者かは知りませんが、俺達は彼らとの戦闘中に この世界へ跳ばされたのです」
イルム「詳しい話は後だ、こっちを手伝ってくれ」
カーラ「オッケー! 行くよ!」

〈4EP or ソディウム級移動要塞のHP40%以下 or ケルベリオン・パッセのHP60%以下〉

ザンボス「奴らめ、しぶといな。 残りの機体を出撃させろ!」
(南側に敵機が出現)
マサキ「シュテドニアスの連中め、 調子に乗るんじゃねえぞ!」

〈vs シアン〉

[マサキ]

マサキ「てめえ、シュテドニアスの傭兵か!」
シアン「だから、どうした!  てめえは黙って俺の獲物になりゃいいんだよ!」

[エクセレン]

エクセレン「もしかして、シエンヌって子の兄弟なの?」
シアン「そういうわじゃねえが、 てめえらには関係のねえこった!」

[ユウキ]

ユウキ「お前達もこの世界へ来ていたか……!」
シアン「そりゃ、こっちの台詞だぜ!  まあ、どこだろうとやることは同じだがな!」

[カーラ]

シアン「ちょうどいい、あの時の続きといこうか!」
カーラ「あんた達、いったい何者なのよ!?」
シアン「ブーステッド・チルドレンさ!  ただし、ブロンゾとは格が違うがな!」

[HP40%以下]

シアン「チッ、やってくれるぜ!  だが、俺は負け組になる気なんざねえんだよ!」
(ケルベリオン・パッセが撤退)

〈vs ザンボス〉

[マサキ]

マサキ「てめえら、何でシュウを追っていやがる!?」
ザンボス「貴様に教える理由などないわ!」

[HP20%以下]

ザンボス「お、おのれ! 撤退だ!!」
(ソディウム級移動要塞が撤退)

〈敵機全滅〉

エイタ「戦域内に残敵の反応なし」
テツヤ「よし、対空対地警戒を厳となせ。 各機を帰艦させろ」

[ハガネ ブリーフィング・ルーム]

カーラ「あたし達、再調整したダイゼンガーのテストに 付き合って、洋上に出てたんだけど…… さっきのシアンって奴に襲撃されてね」
カーラ「そのままこっちへ来ちゃったのよ」
エクセレン「それじゃ、ボスも召喚されてるわねぇ、きっと」
ライ「もしや、クロガネと俺の兄も?」
ユウキ「それはわからん。 俺達はクロガネから離れた所にいたからな」
カーラ「それにしても、あのシアンっての…… ブーステッド・チルドレンだったんだね」
リョウト「そうなんだけど、アラド達とは事情が色々と 違うみたいなんだ」
カーラ「地上じゃ、あたし達のことを反逆者呼ばわりしてたよ。 もしかして、ノイエDC残党なのかな?」
ユウキ「連邦軍ということもあり得る」
カーラ「まあ、あたし達はお尋ね者だもんね」
ヴィレッタ「お前達が遭遇したブーステッド・チルドレンは、 シエンヌとシアンだけなのか?」
ユウキ「いえ、あのケルベリオンという機体は もう1機いました」
エクセレン「じゃあ、あの子達は三人兄弟なのね」
ユウキ「ともかく、ハガネと合流できて助かりました。 艦長、以後も同行してよろしいでしょうか?」
テツヤ「ああ、構わん」
マサキ「………」
テュッティ「マサキ、シュウのことが気になっているのね?」
マサキ「ああ……あいつが生きてやがったとは……」
アヤ「記憶喪失が事実だとして、その理由は何なの?」
マサキ「……あの野郎が復活したことも含めて、 ルオゾール絡みかも知れねえな」
テュッティ「それはあり得るわね……」
テツヤ「ともかく、今回の件でシュテドニアス軍は 王都の守りを固めただろう。突入作戦を見直し、 偵察を行った方がいいと考えているが……」
(通信)
アヅキ「……艦長、 本艦にフェイルロード・グラン・ビルセイアと 名乗る方から通信が入っています」
テツヤ「フェイルロード……それは」
マサキ「フェイル殿下だ!」
テツヤ「アヅキ、回線をこちらに回してくれ」
アヅキ「了解です。しばらくお待ち下さい」
エクセレン「いよいよラングランの王子様のご登場ね」
テュッティ「え、ええっと……」
フレキ「鏡をどうぞ、テュッティ様」
テュッティ「あ、ありがとう、フレキ。 ……おかしなとこ、ないわよね?」
ゲリ「テュッティ様は、いつもお美しいです」
カーラ「あ、もしかして……」
エクセレン「テュッティってば、王子様のことを……?」
テュッティ「そ、そういうわけじゃないわよ。 私はあくまで身だしなみを……」
(通信がつながる)
フェイル「……突然の無礼をお許しいただきたい。 私は神聖ラングラン王国の第一王子、 フェイルロード・グラン・ビルセイアです」
テツヤ「地球連邦軍極東方面軍第1独立特殊部隊、 戦闘母艦ハガネ艦長、テツヤ・オノデラ 中佐であります」
フェイル「そちらの動きは、こちらでもキャッチしていました。 にも関わらず、連絡が遅れ、申し訳なく思っています」
テツヤ「いえ……」
ミオ(あれがラングランの王子様なんだ……)
アヤ(凛々しくて素敵……)
マサキ「フェイル殿下……」
フェイル「おお、マサキ。よく戻って来てくれた。 テュッティも無事で何よりだ」
テュッティ「殿下におかれましては、ご機嫌麗しゅう……」
フェイル「簡潔にいこう。我々はナクート平原において、 シュテドニアス軍を撃破することに成功した。 ついては、王都奪還のため、君達の力を借りたい」
フェイル「我々は現在、バナン市に陣を構えている。 合流の意思があるのなら、早急に来てくれ」
テュッティ「わかりました、殿下。 早速、マサキを連れ、そちらへ向かいます」
テツヤ「本艦も助力致します。 マサキ達と共に王都へ突入する予定でしたので」
フェイル「それはありがたい。 では、バナン市で待っています」
(通信が切れる)
エクセレン「……いや~、ウチの色男さんも 顔負けな感じの王子様だこと。 あ、でも、声は甲乙付け難いわよん」
ライ「……何の話だ」
マサキ「バナン市なら、ここから近い。急いで行こうぜ」


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