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地底世界 ヒリュウ改に立ち寄る ~ 第2話 ~

神と悪魔が闘っている。
その戦場こそ、人間の心の中だ。
   ――F・M・ドストエフスキー

修羅の乱終結後、リューネはノイエDC残党の
動向を調査するため、ヴァルシオーネを駆って
暗礁宙域を目指していた。

コックピット内に接近警報が鳴り響き、リューネが
所属不明機を確認したその時、異変が起きた。

突然視界が暗転し、底知れぬ淵へ
引き込まれるような感覚……

そして、彼女の意識は闇の中へ溶けていった……。


第2話
地底世界

〔戦域:平原〕

(中央にヴァルシオーネとグランヴェールがいる)
リューネ「う、うう……いったい、どうなって……」
ヤンロン「……気づいたか」
リューネ「敵機!? こ、こんな近くに!! まずい!!」
ヤンロン「うろたえるな! 落ち着け!」
リューネ「くう……でかい声……!」
リューネ「って言うか、ここはどこ!?  あたし、宇宙にいたのに! 何で地上へ!?」
ヤンロン「混乱するのは当然だ。 不測の事態だろうからな」
リューネ「あんた、誰……!? ここはどこなのさ?」
ヤンロン「僕の名はホワン・ヤンロン。 そして、ここはラ・ギアスだ」
リューネ「ラ・ギアス……!?」
ヤンロン「そう、 地球内部の異なる位相空間にある地底世界…… 君は地上から召喚されたのだ」
リューネ「そ、それじゃ、マサキと同じ……!」
ヤンロン「マサキ? もしや、マサキ・アンドーのことか?  君はあいつと知り合いなのか?」
リューネ「そうだよ。 L5戦役インスペクター事件修羅の乱で 一緒に戦った仲なんだから」
リューネ「あんたもマサキのことを知ってるの?」
ヤンロン「ああ。 僕のグランヴェールも彼のサイバスターと同じ、 この世界に4体しか存在しない魔装機神だからな」
リューネ「ふ~ん……。 ホワン・ヤンロンって言ったね。 もしかして、中国人?」
ヤンロン「そう、僕はこのラ・ギアス出身の人間じゃない。 君と同じく、地上人だ」
(ヴァルシオーネに警告シグナル。グランヴェールとヴァルシオーネが北西を向く)
リューネ「こっちに何か近づいてくる……!」
ヤンロン「連中もゲートに気づいたか」
(敵機が出現)
リューネアーマードモジュール……!  でも、連邦軍の機体じゃない……DC残党かな」
ヤンロン「彼らも君と同じように ラ・ギアスへ召喚されたのだ」
リューネ「誰が、何のためにそんなことを……」
ヤンロン「君達を呼び寄せたのが何者か知らないが…… 地上から召喚した者達を傭兵として使う 連中が存在している」
リューネ「で、そいつらはあんたと敵対してるってわけ?」
ヤンロン「察しがいいな。その通りだ」
リューネ「……一応、筋は通ってるか」
ヤンロン「どうする?  君は後退してもらっても構わんが……」
リューネ「冗談! 売られた喧嘩は買わなきゃ、 リューネ・ゾルダークの名が泣くってものよ!」
リューネ「それに、あたしのヴァルシオーネを見て 向かってくるDC残党なら、容赦はしない!」
ヤンロン「リューネ……それに、ヴァルシオーネか。 いい度胸だ。やられるなよ」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

ヤンロン「後続はなしか……偵察部隊だったらしいな」
リューネ「ヤンロン、何であんたはさっきの連中に 狙われてたの?」
ヤンロン「どちらかと言えば、狙いは君だった。 何が召喚されたか、様子を見に来たのだ。 僕と同じようにな」
リューネ「様子を見に来たって……」
ヤンロン「ここ最近、原因不明のゲートが 開かれるという騒ぎが多発していてな……」
ヤンロン「多くの地上人が突発的に 召喚されてしまっているんだ」
リューネ「色々訳ありみたいだね。 詳しく説明してくれる?」
ヤンロン「ああ、君もこの地へ来てしまった以上、 事情を知っておく必要があるな。 少し話は長くなるが……」

《神聖ラングラン王国 マラカ州 セミール湾》

(山のふもと)

ヤンロン「……以上が、現在の神聖ラングラン王国の状況だ」
リューネ「要するに、このラングランって国が、 王都で起きたテロのせいで無政府状態に なっちゃったと」
リューネ「で、隣のシュテドニアス連合が攻め込んで来て…… カークス将軍ってのが立ち上がったってわけね」
ヤンロン「ああ。 現状のラングランにおいてまとまった勢力と 呼べるのは、カークス将軍の部隊だけだ」
ヤンロン「僕は、将軍とは意見を異にするが…… ラングランを解放するため、共に シュテドニアスと戦っている」
ヤンロン「さて、リューネ……君はどうする?」
リューネ「地上に帰る方法はあるの?」
ヤンロン「召喚系の魔法は、かなりの魔力を 必要とするからな……使える人間は限られる」
ヤンロン「有名な所では、 大神官イブンに銀の魔法師カテキス…… 他には、今は亡きフェイルロード殿下」
リューネ「じゃ、魔法が使える人間がいれば、 割と簡単に戻れるの?」
ヤンロン「この混乱した状況下で、そうはいかんだろうな。 神殿が敵に制圧されていたり、神官達が 疎開している可能性もある」
リューネ「なら、すぐに帰れるってわけじゃないんだ。 ところで……マサキは今、どこにいるの?  ラ・ギアスへ行くって言ってたけど」
ヤンロン「彼の行方はわからない。カークス将軍の部隊は ともかく、散り散りになった他の同志達と 連絡を取ることさえもままならぬ状況なのだ」
リューネ「そう……マサキのことだから、 どこかで迷子になってるかも知れないけど……」
ヤンロン「あいつとの合流を望むのなら、 今の僕では力になれそうにない。 任務があるからな」
リューネ「任務って……どんな?」
ヤンロン「遊軍として敵を混乱させることだ。 まず北に向かい、シュテドニアスの 中継基地の一つを叩く」
リューネ「あんただけで、それを?」
ヤンロン「ああ。 炎の魔装機神グランヴェールならば、可能だ」
リューネ「ふ~ん……じゃ、あたしもついてくよ」
ヤンロン「気楽に決めてくれるな。 僕を信用し、そう決断した理由は何だ?」
リューネ「まず、あんたがマサキと同じく、魔装機神の パイロットだってこと。融通は利かなさそうだけど、 悪い奴じゃないってわかるよ」
リューネ「この世界へ来たばかりのあたしに、 妙な真似をしなかったしね」
ヤンロン「………」
リューネ「それと……DCの残党が召喚されてるなら、 事はあたしにも関係あるんだ。 放っておくわけにはいかない」
ヤンロン「ほう、一応は考えているわけだ」
リューネ「あと、あんたと一緒に行動していれば、 マサキと合流できるかも知れないしね」
ヤンロン「いいだろう。では、僕についてくるがいい」


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