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リトル・プリンセス リュウセイルート ~ 第21話 ~

《地中海上空》

リュウセイ「こちらR-ウィング、 リュウセイだ。付近にドリル戦艦は 見当たらず。そっちはどうだ?」
リョウト「僕の方もダメだったよ。 偵察担当区域にクロガネは いなかった」
リュウセイ「やれやれ… 今日も無駄足か。ここ数か月、 こんなんばっかしだぜ」
リョウト「そうだね…」
リュウセイ「いつエアロゲイターが 攻めて来るかわからないってのに… こんなことやってていいのかよ?」
リョウト「でも、 DCの残存部隊はクロガネ以外にも まだ各地に潜伏しているし…」
リョウト「彼らを何とかしないと、 DC戦争は終わったことにならないと 思う…」
リュウセイ「そりゃわかってるけどさ」
リョウト「あのさ、リュウセイ君。 前から聞こうと思ってたんだけど…」
リュウセイ「改まって何だよ?」
リョウト「君も、 バーニングPTの腕を見込まれて 軍にスカウトされたんだよね?」
リュウセイ「! …ってことは、 お前もテンザンと同じで…?」
リョウト「うん…。DC副総帥の アードラー・コッホ博士に選ばれて、 AMのパイロットになったんだ」
リュウセイ「やっぱり、そうだったか…」
リョウト「ただ、僕はテンザンと違って 戦意が低いっていう理由で、一般の パイロットへ格下げになったけど…」
リュウセイ「なあ、アードラーの目的は 何なんだ? ビアン博士に心酔して DCに入ったとは思えねえし…」
リュウセイ「昔は、ラトゥーニがいた 研究機関の責任者だったって言うし」
リョウト「コッホ博士の本当の 目的は、無人機動兵器による世界の 征服と支配なんだ」
リュウセイ「そりゃまた、 随分とわかりやすい目的だな…」
リョウト「そして、その無人機動兵器に 搭載される人工知能のサンプルとして 僕達が必要とされていたんだ」
リュウセイ「サンプル?」
リョウト「そう…。 博士によれば、僕達のような人間は 突然変異に近い存在で…」
リュウセイ「ちょ、ちょい待ち!  突然変異ってどういうことだよ!?」
リョウト「投薬措置や一定の訓練を 受けず、ごく短期間で機動兵器に 順応する能力を…」
リョウト「嫌な言い方だけど、要は ゲーム感覚でPTやAMを…」
リョウト「乗りこなせる才能を 持った人間のことらしいんだ」
リュウセイ「それのどこが 突然変異なんだよ? そんな連中、 他にもゴロゴロいるって」
リョウト「ゲームをやるだけならね」
リョウト「でも、すぐに 実戦へ対応できるってことになると、 普通の人とは違ってくるらしい…」
リュウセイ(…言われてみれば、 俺も割と早くゲシュペンストや ビルトラプターへ馴染んだし…)
リュウセイ(リオもシミュレーター 訓練しかやってなかったのに、 ぶっつけ本番で実戦に対応してた…)
リュウセイ(! もしかして、クスハも その能力のせいで…?)
リュウセイ(いや、あいつは 訓練どころか、バーニングPTだって やったことがねえぞ)
リョウト「それから、もう一つ 僕には気になることがあるんだ」
リュウセイ「な、何だよ?」
リョウト「僕と君は、同じ国で 同じゲームをやっていたのに…」
リョウト「僕はEOTI機関… つまりDCへ、君は連邦軍へ行った」
リュウセイ「ああ、テツヤ大尉達も 不思議がってたな。あのゲームは ロブが連邦軍で作った物なのに…」
リョウト「多分、連邦軍の極東支部に DCへの内通者がいたんだと思う」
リョウト「だから、僕やテンザンの データはコッホ博士の所に 回され、僕らはEOTI機関に…」
リュウセイ「………」
(通信)
テツヤ「こちら、 ハガネのテツヤ・オノデラ大尉だ」
テツヤ「リュウセイ、リョウト。すぐに 帰還しろ。緊急事態が発生した」
リュウセイ「もしかして、 クロガネが見つかったのかよ!?」
テツヤ「違う。リクセント公国からの SOSを受信した。どうやら何者かの 攻撃を受けているらしい」
リュウセイ「!」

《ハガネ艦橋》

テツヤ「リクセント公国の防衛隊と 連絡は取れたか?」
エイタ「いえ…SOSを受信した以降は 音信不通のままです」
テツヤ「そうか…」
イングラム「DCか、コロニー統合軍の 残存部隊の襲撃を受けていると 見て間違いないだろうな」
テツヤ「ええ」
エイタ「でも、どうして彼らが リクセント公国を狙うんだろう?」
エイタ「あそこは特別独立自治権を 持っている小さな国なのに…」
リオ「観光地で有名な所よね。 それに古い歴史を持った国で… 前に避暑で行ったことがあるわ」
エイタ「避暑だって? やっぱ、お前… いいトコのお嬢さんなんだろ?」
リオ「そ、そんなことないわよ」
イングラム「リクセント公国は領地内に 金鉱山をいくつか持っている」
イングラム「DC残存部隊は 再興資金を得るために、あの国を 襲っているのかも知れんな」
テツヤ「艦長、どうします?」
ダイテツ「救いを求めている者を 見過ごすわけにはいかん。最大戦速で リクセント公国へ向かえ」
テツヤ「はっ!」

《リクセント公国》

ジョイス「王女!  どこにいらっしゃるのですか!?」
ジョイス「シャイン様、 どうかお返事を! いい加減に なされませんと爺は怒りますぞ!」
シャイン「…慌てすぎです、ジョイス。 王族たるもの、いかなる時も堂々と… でこざいますのよ」
ジョイス「それどころではありません!  コロニー統合軍の残党が、 城を包囲しておるのですぞ!」
ジョイス「早くここから お逃げ下さいませ!」
シャイン「爺… 不届き者の狙いは、この私… そうではございませんか?」
ジョイス「そ、それは…」
シャイン「ならば…退けません。 お父様の代わりに、この国を 守ってみせたりしますわ」
ジョイス「よろしいですか、王女。 敵が要求しているのは、我が国の 金塊だけではございません」
ジョイス「彼らは 御身の引き渡しを要求してきて いるのですぞ」
ジョイス「金塊など彼らにいくらでも くれてやりましょう…ですが、 正統な継承者である王女だけは…」
シャイン「この程度でビビる… あ、え~と、怖じ気づく私では ございません…!」
シャイン「理不尽極まりない侵略に 屈するようでは、ハウゼン家の名を 名乗れなくなりますもの…!」
ジョイス「ですが、 現実は甘くはございませぬ。 状況は圧倒的に不利…」
ジョイス「これより 防衛隊の面々も決死の覚悟で 王女様を脱出させる所存です」
ジョイス「どうか、ハウゼン大公家の 血統…あなた様をまもろうとする彼らの 決意をくんでやって下さいませ」
シャイン「…爺。 もう一つ…方法がございますわ。 私があの者達の下に行きます」
ジョイス「な、何ですと!?」
シャイン「お父様やお母様が 愛したリクセントの街…そこに住む 人達を失うわけにはいきませんもの」
ジョイス「………」
ジョイス(シャイン様、 よくぞご立派になられました…)
ジョイス(と、 申し上げたいところですが… 敵はそれ程甘くはないでしょう…)
シャイン「それに…助けは来ます。 そんな予感がしたりするの…!」
ジョイス(! もうお気づきに…。 やはり…大公家の血は争えぬか…)
ジョイス(…あとは救助要請を出した 連邦軍部隊に、気骨を持った者が おることを祈るばかり…)


第21話
リトル・プリンセス

〔戦域:リクセント城周辺〕

(敵機が出現)
テンペスト(DC復興のためとはいえ、 年端もいかぬ王女を連れ去らねば ならんとは…)
テンペスト(何故、アードラーは あんな子供を必要としているのだ?)
テンペスト(いや…俺には関係のない こと。このような迷いがあったが故に 俺はハガネに敗北したのだ)
テンペスト(連邦を打ち倒し、 妻と子の無念を晴らすために… もはや手段は選んでいられん)
DC兵「テンペスト少佐、 公国側から通信が入っております」
テンペスト「…ようやく観念したか」
ジョイス「テンペスト・ホーカー少佐… 私はシャイン王女の側近、 ジョイス・ルダールと申します」
テンペスト「貴様が誰だろうと構わん。 王女の返答を聞かせてもらおうか」
ジョイス「王女は、あなた方の要求を 受け入れると申されております」
テンペスト「賢明な判断だ」
ジョイス「その代わり、 約束は守って頂きますぞ」
テンペスト「ああ、 王女の命は保証しよう。だが、 この国の歴史は今日で終わりだ」
ジョイス「な、何ですと!?」
テンペスト「我らDCに歯向かうと、 どんな結末を迎えることになるか…」
テンペスト「連邦に今一度、 思い知らせる必要があるからな」
ジョイス「そ、それでは 話が違いますぞ!」
テンペスト「悪く思うな。 全ては我が復讐のためだ」
C軍兵「少佐!  連邦軍の戦艦が接近中です!!」
テンペスト「!」
(ハガネが出現)
テツヤ「間に合ったか!?」
テンペスト「フッ…俺は運がいい。 ここで奴らに出会えるとはな。 あの時の屈辱を晴らさせてもらう!」
テンペスト「ハガネに告ぐ!  シャイン王女、及びリクセント公国 国民の命が惜しくば…」
テンペスト「直ちに武装を解除し、 我らに降伏しろ!」
リュウセイ「てめえはあの時の…!」
ラトゥーニ「…テンペスト ホーカー少佐…」
リュウセイ「人質を取るたあ汚ねえぞ!  それがてめえの大儀なのか!?」
テンペスト「前に言ったはずだ。 俺の目的は、連邦への復讐だとな」
テンペスト「そして、そのためには 手段を選ばん! 要求に応じねば、 王女が死ぬことになるぞ!!」
シャイン「嘘をおっしゃっては いけません! もう!」
テンペスト「何だと!?」
シャイン「手出しできるなら、 してごらんなさいな!  お尻ペンペンでございますわよ!」
ジョイス「こ、これ、シャイン様!  はしたないですぞ!」
シャイン「あ、あら… 私と致しましたことが」
テンペスト「おのれ…!」
ジャーダ「…どうやら、 連中は、あの元気な姫様に 手出し出来ねえみたいだな」
イルム「だが、 速攻でケリをつけた方がいい」
インクラム「よし…移動力の 高いPTは、王女の救出に向かえ。 残りの機体は敵機を迎撃せよ」
イングラム「王女がいる場所は このポイントだ」
(城の正面玄関を指す)
リュウセイ「あそこに行って、 お姫様を助けりゃいいんだな?」
イングラム「そうだ。 ただし、敵機に先を越されるな」
リュウセイ「了解!」
テツヤ「PT各機、出撃せよ!」
(出撃準備)

〈味方機が城内へ〉

エイタ「艦長!  王女の救出に成功したようです!」
ダイテツ「よし。 残っている敵機を掃討せよ!」
テンペスト「おのれ…!  こうなったら、ハガネだけでも 沈めてみせる!」

〈4EP〉

(敵機増援が出現)
リュウセイ「あ、あのバレリオンは!」
リョウト「テンザンの機体だ」
ガーネット「あのゲームマニア、 まだ生きてたの!?」
ジャーダ「コイン入れて、 コンテニューでも したんじゃねえのか?」
テンザン「ホ! やっぱりハガネかよ!  意外に早い再会だったな。これで 久々にゲームが楽しめるってモンだ」
テンペスト「テンザンか。 ここへ何をしに来た?」
テンザン「アードラーの命令で 少佐を助けに来たのさ」
テンペスト「………」
テンザン「そう気を悪くすンなよ。 あのジジイにとっちゃ、それだけ 例の王女とやらが重要なんだろうよ」
テンペスト「…俺の命令には 従ってもらうぞ」
テンザン(チッ、ロートル風情が つけあがりやがって…。ま、でも 奴をダシにするってのはアリだな)
テンザン「わかってるっての!  んじゃ、お姫様争奪戦…開始だぜ!」

〈vs テンザン〉

[リュウセイ]

リュウセイ「テンザン!  てめえ、生きてやがったのか!」
テンザン「当たり前だ。 そう簡単に死んでたまるかっつーの。 楽しいゲームはこれからだぜ!」
リュウセイ「なら、ここで ゲームオーバーにしてやる!!」

[リョウト]

テンザン「ホ!  てめえも無事だったらしいな!」
リョウト「DC戦争は もう終わったんだ! アードラーに 手を貸すのは止めろ!」
テンザン「何言ってんだ。俺のゲームは まだ終わってねえっての!」

[撃墜]

テンザン「ま、今日のところは手勢も 少なかったし…再会記念ってことで 花を持たしてやっか」

〈テンペスト撃墜〉

テンペスト「な、何ということだ!  王女を手に入れられずに…!」

〈敵機全滅〉

エイタ「敵機がリクセント公国の 領土外へ撤退して行きます」
ダイテツ「よし…PT隊を先行させ、 王女の身柄を確保しろ」
テツヤ「了解です」

《ハガネ艦橋》

ジョイス「ありがとうございます、 ダイテツ・ミナセ中佐。おかげで 我が国は救われました」
ダイテツ「いえ。シャイン王女が ご無事で何よりです」
ジョイス「本当に、 何と御礼を申し上げれば良いやら…」
ジョイス「王女の御身にもしものことが あれば、亡くなられた大公陛下夫妻に 申し訳が立ちません」
ダイテツ「では、王女のご両親は…?」
ジョイス「はい…。 他国をご訪問中、DCと連邦軍の 戦闘に巻き込まれて…」
ダイテツ「…そうですか」
ダイテツ(ワシの孫と同じく、 両親を失ったのか…)
テツヤ「ところで、王女はどちらに?」
ジョイス「そう言えば、お姿が 見えませんな。私がここまで お連れして来たのですが…」
エイタ「王女なら、さっき ブリッジから出て行かれましたよ」
ジョイス「な、何と…!」
テツヤ「エイタ、 どうして止めなかったんだ?」
エイタ「え?  内緒にしてねって言われたんで…」
テツヤ「…お前な。 責任取って捜してこい!」
エイタ「す、すみません!」
(扉が開閉する・エイタ立ち去る)
ジョイス「も、申し訳ございません。 軍艦の中で勝手な行動は慎まれるよう 重ね重ね念を押したのですが…」
ダイテツ「構いません。あの年頃の子は 好奇心がおう盛なものですからな」
ジョイス「は、はあ…」
イングラム「ところで、ルダール公… お聞きしたいことがあるのですが」
ジョイス「何でございましょう?」
イングラム「先程の敵部隊は シャイン王女のら致が目的でした。 …狙われた理由とは?」
ジョイス「! そ、それは…」
イングラム「劣勢に追い込まれている DCが必要としていることから…」
イングラム「王女の持ち物、もしくは 王女そのものに何か秘密があるのは 間違いない…」
ジョイス「………」
ジョイス「…わかりました。 我が国を助けて頂いたあなた方に、 隠しても詮無いこと…」
ジョイス「実は…シャイン様には ある特別な力が備わっているので こざいます」
テツヤ「特別な力?」
ジョイス「はい。その力は 代々の大公家に脈々と受け継がれ… シャイン様も例外ではなく」
テツヤ「も、もしかして… 超能力や霊能力…の類ですか?」
ジョイス「そうお考え頂いても 結構でございます」
テツヤ(ま、またその手の話か…)
イングラム(念動力… いや、違うな。あの王女から その資質は感じられない)
ジョイス「わかりやすく申しますと… 予知能力の一種でございます」
ジョイス「ただ、未来のことが 完ぺきにわかるというわけでは ありません」
ジョイス「しかし、 シャイン様のお力は先代よりも 遥かにお強いのです」
イングラム「興味深い話ですね」
ジョイス「ですが…軍事利用… 考えるのもおぞましいですが、 そんなことが出来るとは、とても…」
イングラム「いえ、 あながちそうだとは言えません」
イングラム「彼女の力を機動兵器の マン・マシン・インターフェイスに 応用すれば…」
イングラム「敵の攻撃を予測・回避する 機体を作り上げることが出来ます」
ジョイス「そ、そのようなことが…」
イングラム「DCの副総帥である アードラー・コッホは、その手の 研究に長けた男です」
イングラム「今回はうまくDC残党を 撤退させることができましたが…」
テツヤ「我々がこの国を離れれば、 奴らが再び王女を狙う可能性も あると…?」
ジョイス「………」
ジョイス「…お願いでございます。 どうか、あなた方の手で王女を安全な 場所へかくまって頂けませんか?」
ダイテツ「ふむ…。イングラム少佐の 話が事実だとすれば…」
ダイテツ「シャイン王女の身柄を、 DCやコロニー統合軍に渡すのは 避けねばならんところだな」
テツヤ「しかし、艦長。 安全な所と言っても…」
ダイテツ「一度、 レイカーに相談してみよう」

《ハガネ艦橋》

レイカー「…なるほど。 事情はわかった」
ダイテツ「ワシとしても、 DCやコロニー統合軍が王女を 狙う理由が気になるのでな」
レイカー「鬼艦長と呼ばれた お前がそこまで親身になるとはな。 孫娘のことを思い出したのか?」
ダイテツ「ば、馬鹿なことを言うな。 歳が違う、歳が」
レイカー「フフ…歳は関係あるまい。 では…王女はしばらくの間、 極東支部で預かることにする」
レイカー「ここは連邦軍総司令部や EOT特別審議会のあるジュネーブ よりは安全だろうからな」
ダイテツ「すまん」
レイカー「それに、Rシリーズや 新型機の調整作業もある。ハガネは 王女を護衛して日本へ帰還してくれ」
ダイテツ「了解した」

《ブリーフィングルーム》

アヤ「…結局、 お城の中には入れないの?」
ラトゥーニ「ええ。 ハガネはすぐに日本へ出発すると…」
アヤ「そう…残念だわ。 リクセント城なら、貴重な美術品とか あったでしょうに…」
リュウセイ「美術品? 何で?」
アヤ「実はね、私… 美術館巡りとか好きなの。それで…」
リュウセイ「ヘッ、アヤが そんなのに興味を持ってたとはな。 柄にもねえのはこのことだな」
アヤ「何ですってぇ?  それ、どういう意味!?」
リュウセイ「い、いてて!  ほっぺたをツネるなって!!」
ガーネット「それにしても… あの王女様、可愛かったわねえ」
アヤ「ええ。ああいうの、 女の子の永遠の憧れだもんね」
リュウセイ「ヘッ、 いい歳こいて何言ってんだか…」
アヤ「何ですってぇ? そ・れ・は どの口が言ってるのかしら~!?」
リュウセイ「だ、だから ほっぺたをツネるなって!!」
ガーネット「やっぱ、あの年頃の 女の子は可愛く着飾らなきゃね」
ガーネット「ね、ね、ラトゥーニ。 前の服、もう一回着てみない?」
ラトゥーニ「え…?  でも…任務もあるし…」
エイタ「あの~…」
アヤ「あら、どうしたの?」
エイタ「みなさん、シャイン王女を 見かけませんでしたか?」
アヤ「いえ…」
ガーネット「もしかして、 マサキみたいに艦内で 迷子になっちゃったの?」
エイタ「え、ええ…まあ…」

《ハガネ格納庫》

ライ(クロガネ…。 エルザムが乗ったあの艦の消息は 未だつかめずか)
シャイン「そこの者」
ライ(父亡き後、あの男は 何をしようとしているのだ…?)
シャイン「これ! ちょっと!  ねえってば!」
ライ「…む?  シャイン王女…何故、こんな所に?」
シャイン「珍しいからでございますわ。 そうだ…あなた、案内なさいませ」
ライ「自分はまだ仕事が終わって いません。他の者にお頼み下さい」
シャイン「私はあなたがいいと言って いるんでございますのよ!?」
ライ「王女… 何でも自分のおっしゃったとおりに なるとは思われないことです」
ライ「それがご自身の意志ではなく、 家柄や立場から、そういうものだと 思っているだけなら…なおさらです」
シャイン「な…! 無礼でしょう!  あなた! もう!」
ライ「失礼しました。では…」
シャイン「お待ちになって!  …あなた、あの…お名前は?」
ライ「…ライディース・ F・ブランシュタイン少尉です。 失言はお許しを、シャイン王女」
シャイン「ブランシュタイン… あなた、もしかして…あの?」
ライ「…自分はこれで」
(足音・ライが立ち去る)
シャイン「………」
シャイン(お父様と…同じこと… 言われちゃった…)

《ブリーフィングルーム》

イルム「諸君、そろってるな?  姿勢を正して俺の話を聞いてくれ」
ジャーダ「どうしたんです、中尉?  えらくかしこまって…」
イルム「え~、ゴホン。 この度、我々に新しい任務が 与えられることになった」
ガーネット「新しい任務?」
イルム「そう。ここにおわす シャイン・ハウゼン王女を日本まで 無事にお連れするという任務だ」
エイタ「えっ!?」
リュウセイ「マジ!?」
シャイン「そうでございます。 リクセントの民達に、迷惑を かけるわけにはいきませんもの」
アヤ「つまり、 極東支部で保護する…と?」
イルム「そういうことだ。道中、 くれぐれも無礼のないようにな」
リュウセイ「じゃあ、王女様のお相手は ライに任せといた方がいいな」
ジャーダ「どうしてだよ?」
リュウセイ「だって、あいつ… いいトコのお坊ちゃんだからさ」
ジャーダ「な~る。 ライなら、上流階級との接し方も バッチリだってことか」
シャイン「ライって… ライディ様のこと?」
ガーネット「誰?」
エイタ「…お連れの方ですか?  ルダール公」
ジョイス「…はて、シャイン様?」
シャイン「ライディ様は ライディ様ですわ」
アヤ「リュウ、もしかして…」
リュウセイ「ああ、ライのことだよな」
イルム「まあ…とにかく、頼んだぜ」
シャイン「では、日本までの護衛… お願い致しますわ」
シャイン「さらに退屈しないような 旅ならば、なおよしです。特に そこの者…粗相は許しませんよ」
リュウセイ「お、俺? チェッ、 ライは様付けだってのにさあ…」
シャイン「文句も許しませんわよ?」
リュウセイ「ト、トホホ…。 わ、わかりました…」
ジャーダ(なるほど、それで イルム中尉がかしこまってたって ワケね…)
ガーネット「さすが王女様。歳の割には 命令することに慣れてるわねえ」
アヤ「でも、あんな風に言えるのって やっぱり憧れ…かも」
ガーネット「あらら、大尉… やっぱりそっち系?」
アヤ「ちょ、ちょっと、ガーネット、 そっち系って!?」

《艦内個室》

クスハ「…クスハ・ミズハです」
イングラム「入れ」
クスハ「あの…。 お話って何でしょうか、少佐…」
イングラム「明日からお前に PTシミュレーター訓練を課す」
クスハ「え…!?  そ、それって…何のために?」
イングラム「無論、 お前をパイロットにするためだ」
クスハ「そ、そんな…!  私なんかがどうして…!?」
イングラム「これは命令だ。 拒否は認めん。いいな?」
クスハ「………」
クスハ(……もしかして… 私がハガネに乗せられた 理由って……)
クスハ(…だとしたら、 私に出来ること…私がしなければ ならないことは……)

《アースクレイドル》

イーグレット「…ようこそ、 我が聖地アースクレイドルへ」
アードラー「挨拶はいい。 ここの建設は進んでおるのか?」
イーグレット「地上との連絡口は ほぼ完成したが、地中中核部の 隔壁は未だ建設中だ」
イーグレット「さらに、 メインコンピューター・メイガスの 調整作業も終わっていない」
アードラー「予定より遅れておるな。 マシンセルは使えるのか?」
イーグレット「実用化まで、 あと1年はかかる」
アードラー「1年後じゃと…?  遅い。そんな時分には、異星人が とっくに地球を征服しておるわ」
アードラー「ええい、 ワシが直接ソフィアを問い質す。 ここへ呼んで来るのじゃ」
イーグレット「彼女はメイガスに かかりっきりでな。ここ数週間、 中枢ブロックから姿を見せていない」
アードラー「構わん。DC副総帥である ワシの命令じゃぞ!」
イーグレット「…今、ソフィアの手を 止めれば、メイガスに影響が出る」
イーグレット「そうなれば、 例の量産機のラインにも問題が 発生するが…それでもいいのか?」
アードラー「うぬぬ…。 ならば、致し方あるまい」
アードラー「あれは王女の力同様、 ワシの世界征服計画にとって 必要不可欠なものじゃからな」
イーグレット「下らんな。 小娘の力をあてにするなど…」
アードラー「何とでも言うがいい。 それに、王女の行き先が日本だと いうことはわかっておる」
イーグレット「スパイからの情報か」
アードラー「うむ。 後は奴の働き次第じゃな」
(『ハチマキ』『資金20000』を入手)


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