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フィアー・ゲーム リュウセイルート ~ 第4話 ~

《極東支部基地》

アヤ「いい? あなたが乗っているのは ゲームの機体じゃなく、本物の パーソナルトルーパー…」
リュウセイ「………」
アヤ「それに、 訓練は遊びじゃないのよ」
リュウセイ「ったく、うるせえなあ。 んなことぐらいわかってるよ」
アヤ「わかっている人は、 そんな顔をしません!」
ライ「大尉、リュウセイに 説教するだけ時間の無駄です」
アヤ「ライ…」
ライ「馬鹿は死ななければ 治らないと言いますが、この男に それは当てはまらないようですね」
リュウセイ「てめえ!  そりゃどういう意味だ!?」
ライ「お前は今日の シミュレーター訓練で4回死んだ」
ライ「だが、何の進歩もない…。 そういうことだ」
リュウセイ「な、なるほど…」
リュウセイ「って、待てコラ!」
ライ「…一つ忠告しておく。 軍を辞めるなら、今のうちだ」
ライ「時間が経てば、 お前は嫌でも後戻り出来なくなる」
リュウセイ「な、何っ…」
ライ「だから、さっさと荷物を まとめて家に帰れ。遊び気分で 訓練に参加されるのは迷惑だ」
リュウセイ「うるせえ!  俺だってなあ!!」
アヤ「二人とも、やめなさい!」
リュウセイ「!」
アヤ「ケンカなんかしている暇が あったら、今日の訓練の報告書を 作って提出しなさい! いいわね!」
リュウセイ「わ、わかったよ。 ったく…アヤって、まるでお袋か 学校の先生みたいだよな…」

《極東支部基地》

イングラム「…稼働効率が 予定より34%も下回っている」
イングラム「訓練を開始してから すでに2週間…未だチーム内の 連携がなっていないようだな」
アヤ「申し訳ありません。 現在、ライからの提案で…」
アヤ「フォーメーションの 見直しを行っているところです」
イングラム「我々には時間がない。 それはわかっているな?」
アヤ「ええ。テスト機が ロールアウトするまでには 何とかします」
イングラム「よし…。では、 明日は予定どおり、鳥島海域の 演習場で実機による訓練を行う」
アヤ「はい。 少佐のご期待に添えるよう、 努力します」


第4話
フィアー・ゲーム

〔戦域:鳥島海域演習場〕

イングラム「では、これより 沿岸地帯の敵基地制圧作戦を 想定した訓練を行う」
イングラム「なお、極東支部配備の ゲシュペンストMk-IIは…」
イングラム「日本地区が海に囲まれて いることもあり、水中戦にも 対応出来るよう調整されている」
イングラム「しかし、 メガ・ビームライフルなど エネルギー兵器の中には…」
イングラム「水中では 威力が下がるものがある。 そのことを留意しておけ」
リュウセイ「えっと…飛び道具は M950マシンガンがあるから いいとして…」
リュウセイ「水の中でも使える PT用の刃物って、あったっけ?」
イングラム「コールドメタルナイフを 用意してある。必要だと思うなら 機体に装備しておけ」
リュウセイ「ようし! 森の中とか 草原での訓練に飽き飽きしてたんだ。 今回は張り切って行くぜ!」
ライ「そういう台詞は、陸上訓練で まともな結果を出してから言え」
リュウセイ「何だとぉ!?」
アヤ「あなた達、ケンカは…」
(アラート)
リュウセイ「!?」
イングラム「どうした?」
オペレーター「少佐、 エマージェンシーコールを 受信しました」
イングラム「発信元は?」
オペレーター「第3特別航空輸送隊 所属の輸送機、T5です」
イングラム「状況は?」
オペレーター「南西30キロの 海上で所属不明機の追撃を 受けているようです」
アヤ「所属不明機…ひょっとして、 エアロゲイターなの!?」
オペレーター「いえ、 それは違うようです。しかし、 機種の識別は出来ません」
イングラム「…訓練は中止だ。 T5をこの海域へ誘導し、救助する」
イングラム「ライとアヤはPTの 銃火器に実弾を装填した後、出撃。 輸送機を救助しろ」
イングラム「なお、状況によっては 所属不明機への攻撃を許可する」
ライ「了解。出撃準備に入ります」
リュウセイ「ちょ、ちょっと 待ってくれよ、教官!  俺はどうすんだよ!?」
イングラム「お前は実機のPTに乗って まだ日が浅い。それに、陸上戦以外の 戦闘も未経験だ」
リュウセイ「味方が正体不明の 奴に追いかけられてるんだろ!?  俺も助けに行くぜ!」
ライ「………」
リュウセイ「それとも何か!?  こういう状況で俺に黙って 見てろってのかよ!?」
ライ「少佐、こんな素人を実戦に… しかも、救助作戦に参加させるのは どうかと思いますが」
リュウセイ「うるせえな!  いつまでも素人扱いするんじゃねえ!」
イングラム「…いいだろう。 リュウセイの出撃を許可する。だが、 俺の命令に逆らうことは許さん」
リュウセイ「…ああ。 わかってるよ、教官」
イングラム「よし、ならば、 お前は『M950マシンガン』を 装備して出ろ」
イングラム「その武器ならば、 水中でも威力を発揮することが 出来るからな」
リュウセイ「了解! 武器選択で、 M950マシンガンだな?」

『コールドメタルナイフ』を入手した
『M950マシンガン』×2を入手した

(出撃準備)
オペレーター「T5が この海域に侵入して来ます!」
(タウゼントフェスラーが出現)
連邦軍兵「イルム中尉、 所属不明機を振り切れません!」
イルム「やれやれ、ついてないねえ。 地球へ降りて来た途端にこれとは…」
イングラム「T5、応答せよ。 こちらは極東支部所属の イングラム・プリスケン少佐だ」
イルム「!」
イングラム「今からPTで 所属不明機を牽制する。その隙に この海域から離脱しろ」
イルム「すみませんね、 イングラム隊長。面倒かけちまって」
イングラム「お前は…」
ライ「もしや、イルム中尉?」
リュウセイ「何だ?  教官とライの知り合いか?」
イングラム「イルム…。 何故、お前がそこにいるのだ?」
イルム「ちょっとワケありで、 月のマオ社から出戻る羽目に…」
連邦軍兵「イルム中尉、駄目です!  所属不明機に追いつかれました!!」
(F-32シュヴェールト×4、リオンが出現)
所属不明「テンザン、引き返せ!  これ以上は危険だ!!」
テンザン「何言ってんだ。 せっかく面白くなってきたのによ」
所属不明「お前の機体は まだ連邦軍に知られるわけには いかない! 命令に従え!」
テンザン「もう遅いっての。 それに、俺はアードラーの依頼で このリオンのテストをしてんだぜ?」
テンザン「文句があるなら、俺を 引き入れたあのジジイに言えっての」
所属不明「き、貴様…!」
テンザン「…ちぇっ、 あんたらがグダグダ言うから、 腹が減ってきちまった」
所属不明「は、腹が減っただと!?」
テンザン「こうなったら、 さっさとあの輸送機を撃墜して、 中のお宝を頂くとすっか」
所属不明「やめろ、テンザン!  連邦軍との交戦は許可できん!!」
テンザン「あ~もう、うるせえな!  だったら、あそこにいる奴らを 全部片づけりゃいいだろう!?」
所属不明「馬鹿を言うな!  逆にお前が撃墜されでもしたら どうする!?」
テンザン「ま、このリオンは テストタイプだからな。 そうなっちゃ、ヤバいわな」
アヤ「何なの、あの戦闘機…?  見たことがないタイプだわ」
ライ「あれは確か新型機の…」
リュウセイ「お、おい! もう一方の 戦闘機…手と足が生えてるぞ!  ありゃロボットじゃねえのか!?」
ライ「馬鹿な。 現状で、完全な単独飛行が可能な PTは存在していないはずだ」
イングラム「各機へ。 イルムの輸送機がこの海域から 離脱するまで敵機を牽制しろ」
イルム「ってことで、ライ… 悪いけど、よろしく頼むわ」
ライ「了解です、中尉」

〈vs テンザン〉

[T5]

連邦軍兵「う、うわああっ!  こ、攻撃してきたっ!!」
イルム「あわてるな!  落ち着いて回避行動を取れ!」
連邦軍兵「は、はいっ!」
イルム(チ…!  ここで撃墜されたら、積み荷に また変なジンクスがついちまうぜ)
テンザン「よお、あんたらが レアなパーソナルトルーパーを 運んでるってことは知ってんだよ」
テンザン「死にたくなければ、 そいつをよこしな」
イルム「何…?  あいつ、どうして積み荷のことを 知ってるんだ?」
(戦闘)
リュウセイ「あ、あの空飛ぶロボット、 輸送機に攻撃を仕掛けやがった…!」
ライ「ならば、 敵と見なしていいようだな」
イングラム「各機へ。 所属不明機への攻撃を許可する」
ライ「了解」
アヤ「わかりました!」
リュウセイ「こ、攻撃って… 実戦かよ…!?」
ライ「どうした、リュウセイ?  …怖じ気づいたのか…?」
リュウセイ「だ、誰が!」
ライ「これからの戦いは、 お前が遊んでいたゲームや シミュレーターとは違う…」
ライ「死にたくなければ、 俺の後ろに下がっていろ」
リュウセイ「う、うるせえっ!!」
アヤ「リュウ、ライの言うとおりよ。 輸送機の救助は私達に任せて」
リュウセイ「だからって、 引き下がってられるかよ!!」
テンザン「何だぁ、あのPT…?  他のに比べて様子が変だな」
所属不明「テンザン、連邦のPTが 迎撃態勢に入った! 撤退するぞ!」
テンザン「…よし、ここらで試しに 対PT戦ってのもやってみるか。 戦闘データ収集にもなるしよ」
所属不明「な、何だと!?」
テンザン(それに PTとの戦闘はゲームでしか やったことがねえからなぁ)
所属不明「テンザン! 今、 我々の動きが連邦に知られるのは まずい! わかっているのか!?」
テンザン「だから、 うるせえっつってんだろ!!」
所属不明「!」
テンザン「どのみち、テンペストの おっさんの命令には違反してんだ!」
テンザン「こうなったら、手土産の 一つでもぶら下げて帰らなきゃ、 言い訳も出来ねえだろうが!」
所属不明「く…!」
テンザン「わかったんなら、 あんたらは輸送機と残りの PTを攻撃しろっての!」

[リュウセイ]

リュウセイ「来た!!」
テンザン「ヘヘッ、 こいつ…ビビってやがんのか?  それとも、ビギナーか?」
テンザン「いよーし、栄光の PT撃墜マーク一つ目…頂きだ!」
(戦闘)
リュウセイ「な、何とか… 生き残った…か」
テンザン「チェッ、仕損じたか。 それにしても、あいつ…機体の 動きがバーニングPTくせえな」
テンザン「………」
テンザン「ヘッ、まさか…な」
リュウセイ「こ、これが… 本物の戦闘…人間相手の 戦闘だってのかよ…!?」
テンザン「初心者だからって、 遠慮はしないぜぇ?」
リュウセイ「!!  このままやられてたまるか!!」

[ライ]

ライ「この機体… パーソナルトルーパーではない。 まったく別系統の機体だというのか」
テンザン「ほ~お、連邦にも 骨のある奴がいるらしいな」
ライ「答えろ。貴様は何者だ?  その機体は何だ?」
テンザン「悪いけど、 そいつはまだ秘密なんだよ」
ライ「まだ、だと…?」
テンザン「細かいことは おいといてだな…あんたとの バトルを楽しませてもらうぜ!」
ライ「フン… ゲーム感覚で戦闘をする馬鹿が ここにもいたか…!」

[アヤ]

アヤ「ここで、この機体を 止めなければ、リュウが…!」
テンザン「何だぁ?  こいつの動きも素人くさいな」
アヤ「何ですって!?」
テンザン「この程度の パイロットがPTに乗ってんなら、 連邦は俺達の相手じゃねえなあ」
アヤ「あなた…いったい何者なの!?」

[撃墜]

リュウセイ「や、やったか…!?」
テンザン「あらら… ゲームオーバーかよ。 お遊びが過ぎたようだな」
テンザン「ま、しょうがねえ… こいつは所詮テストタイプだし、 腹も減ったし」
リュウセイ「て、てめえは…!」
テンザン「お前さ…もう少し 経験値をためてレベルを上げなきゃ、 二度と俺に会えないぜ」
リュウセイ「何だと!?」
テンザン「じゃ、あばよ」
(爆発)
イルム「やれやれ、 何とか助かったか」
イルム「それじゃ…隊長、ライ。 極東支部で会おうぜ」
(タウゼントフェスラーが撤退)
リュウセイ(………)
リュウセイ(…敵のパイロットは… 脱出したのか………)
リュウセイ(…だけど、 やられたのが俺だったら……)
リュウセイ(…俺は…… 生き延びられてたんだろうか……)

《極東支部基地》

リュウセイ(くそっ、情けねえ。 実戦であのザマじゃ…!)
アヤ「リュウ…」
イングラム「放っておけ、アヤ」
アヤ「いいんですか?」
イングラム「リュウセイは 実戦の恐怖を身体で知った。 後は…奴次第だ」
アヤ「………」
イングラム「アヤ、俺は今から レイカー司令の所へ報告に行く。 整備作業のチェックは任せるぞ」
アヤ「わかりました」

《極東支部基地》

イングラム「…ラプターはテスト中の 事故が原因で、廃棄処分になったと 聞いていましたが?」
レイカー「いや。私の権限で密かに 月のマオ・インダストリー社へ 修理を依頼していたのだ」
イルム「で、俺が修理の終わった ビルトラプターを月から持って 帰ってきたってわけですよ、少佐」
イングラム「なるほど。 だが、お前が戻って来た理由は それだけではなさそうだが」
イルム「うっ…」
イングラム「大方、浮気でもして リンを怒らせたのだろう?」
イルム(あ、相変わらず鋭い…)
ハンス「しかし、司令…修理したとは 言え、ビルトラプターは欠陥機です。 再使用には賛成しかねますな」
ハンス「それに… あのヒュッケバインのような事故を いつ引き起こすかわかりませんぞ」
イルム(よく言うぜ。 あんたのおかげでキョウスケの奴が どんな目に遭ったか…)
イングラム「ビルトラプターは 我々で再チェックを行い、問題点が あれば改修します」
イングラム「それでよろしいですね、 ハンス中佐?」
ハンス「フン…好きにするがいい」
レイカー「ところで、 イルム中尉の輸送機を襲った 所属不明機のことだが…」
イングラム「飛行型の機動兵器は、 パーソナルトルーパーと 全く別系統の物だと思われます」
ハンス「以前に、 軍の偵察機が接触したという 謎の人型ではないのか? あ?」
イングラム「映像データを 検証しましたが、形が違います。 AGX-05ではありません」
ハンス「では、その機体から 脱出したパイロットを、だ捕する ことは出来なかったのか?」
イングラム「…残念ながら」
ハンス「そうか……」
レイカー「…イングラム少佐、 君の見解を聞かせてもらおうか」
イングラム「あの人型機動兵器は、 F-32ないし同系列の戦闘機を ベースにした物と思います」
レイカー「しかし、戦闘機なら ともかく、人型機動兵器の開発が 可能な所は限られているはずだ」
イングラム「ええ。PTの開発元である 月のマオ・インダストリー社…」
イングラム「そして、 超闘士グルンガストを開発した 北米のテスラ・ライヒ研究所…」
ハンス「大方、その正体不明の 人型機動兵器を開発したのは、 テスラ研ではないのか?」
ハンス「あそこの研究者達なら、 突拍子もない機体を作りかねん」
イルム(まあ、そう思われても 仕方ないか。グルンガスト零式 なんざ、まさにそうだからな)
レイカー「イルムガルト中尉… 君の父上はテスラ研でグルンガストを 開発した人物だったな?」
イルム「ええ、まあ…そうですが」
レイカー「何か話を聞いていないか?」
イルム「いえ。 仮に、あの手足つきの飛行機を 開発したのがテスラ研だとしたら…」
イルム「父は、いの一番に自分へ 自慢しているはずですからね」
レイカー「では、残る所は…」
イングラム「テスラ研を創設した 稀代の天才科学者…そして、 EOT研究の第一人者でもある…」
イングラム「ビアン・ゾルダーク博士 率いるEOTI機関です」
レイカー「………」
ハンス「………」
イルム「………」
レイカー(ビアン・ゾルダーク… そして、EOTI機関か……)


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