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進水式

[ブリーフィングルーム]

ベッキー「やあ、お帰り。 デモンゴーレム退治、お疲れさん」
マサキ「ベッキー! お前、いつ戻ったんだ?」
ベッキー「ついさっきね。いやあ、残念だったよ。 デモンゴーレム退治、あたしも 手伝いたかったんだけどねぇ」
セニア「……わざとらしいわね。 ホントはもっと前に戻ってたんじゃ ないの?」
ベッキー「ま、まさか。ハハハ…… そんなワケないじゃないのさ」
(扉が開く)
ミオ「やー、諸君、ご苦労さん!」
リューネ「ミオ、あんたも戻ってたの?」
ミオ「うん、ベッキーさんと一緒にね。 デモンゴーレム退治に行くって聞いたから、 ベッキーさんと一緒に隠れてた」
ベッキー「あっ、こら、ミオ!  バラすんじゃないよ!!」
セニア「あーっ、やっぱり!」
ミオ「まあまあ、留守番も必要でしょ?」
マサキ「何言ってやがる。 デモンゴーレムを相手にすんのが 面倒臭かっただけだろーが」
ミオ「うん」
マサキ「正直に言やあいいってもんじゃねぇ!」
ツレイン「ミオ・サスガ殿とレベッカ・ターナー殿 ですね! 自分は……」
ベッキー「ああ、聞いてるよ。 レカニバン少尉、だろ?  ベッキーでいいよ」
ツレイン「はっ! では、ベッキー殿、 自分もツレインと呼んで頂いて 結構であります!」
ベッキー「……硬いねぇ、あんた」
ミオ「あたしもミオでいいよ。 歳、そんなに変わらないよね?」
ツレイン「自分は15歳です」
ミオ「そっか、じゃあたしの方が 一つ年上なんだ。プレシア以外の 年下なんて初めてだよ」
ツレイン「よろしくお願いします、先輩!」
ミオ「先輩……いい響き……
 ね、もっかい言って!」
ツレイン「は、はあ…… よろしくお願いします、先輩」
ミオ「おう! 任せなさい、後輩!
 ところでさ、あんたのその髪型って、 わざわざセットしてんの?」
ツレイン「え? これですか?  いえ、これは生まれつきのクセッ毛で」
ミオ「んー…… ちょっと、片膝立てて、腕を下げて、 前でクロスしてみてくれる?」
ツレイン「は?
 えーと……こ、こうですか?」
ミオ「そうそう。それで力を込めてる 表情して」
ツレイン「は、はぁ……
 ふんっ!!」
ミオ「ををっ!  これで髪が波打てば完璧っ!」
リューネ「隣にランシャオがいると、 さらに良し、だね」
ミオ「わかってるね~、リューネさん」
ツレイン「あ、あの~…… これ、どういう意味があるんですか?」
ミオ「あー、説明すると色々問題が起きるから そこはスルーして。
 うん、満足したからもういいよ」
ツレイン「は、はぁ……」
ミオ「次までに、髪を波打たせる事が できる様になる事。これ、宿題ね」
ツレイン「ええっ? それは無理ですよ」
ゲンナジー「……また無茶を言ってるな」
マサキ「うおっ!? ゲンナジー、いたのか?」
ゲンナジー「ああ、ミオと一緒に戻ってきた」
ミオ「さすが、歩くステルス、ゲンちゃん!  いい登場の仕方だねっ!」
ツレイン「し、失礼しました!  ゲンナジー殿!」
ゲンナジー「気にするな。もう慣れた」
ミオ「ところで、新人ってツレインだけ?」
リューネ「確か、予定では明日、空母と一緒に 何人か配属になるはずだよ。 辞令、読んでないの?」
ミオ「読んでないよ。訊いた方が早いもん」
リューネ「威張るトコじゃないんたけどね」
ミオ「空母ってさ、どんな感じのヤツなの?  加賀? 大鳳? エセックス?  エンタープライズ?」
リューネ「……それって、大昔の空母の名前だろ。 そういうのとは違うの」
セニア「これからあたし達の生活の場に なるんだから、気になるのもわかるな」
マサキ「明日は進水式だろ。 明日になりゃ嫌でもわかるさ」

<No.006:進水式

マサキ「こいつか……思ったよりもでけぇな」
リューネ「そりゃ、魔装機が16体以上格納 できるんだから、これぐらいなくちゃ」
????(ブラッドロイ)「いやいや、お嬢さん。この空母は 最大で30体まで格納できるんだよ」
リューネ「へぇ、そりゃすごい…… って、おじさん、誰?」
????(ブラッドロイ)「ああ、失礼。俺は……」
????(シャリアン)「父さん! またそんなところで 油売って! みんな待ってるんだから 早く来なさい!」
????(ブラッドロイ)「ああ、こら、シャーリー。 引っ張るな。こちらの方達は……」
????(シャリアン)「シャーリーって呼ばない!  そんなの後でいいから、早く来い!」
(つねる)
????(ブラッドロイ)「痛い、痛い! 耳はやめろ、耳は!」
ミオ「お待たせ! タコ焼き買ってきたよ。
 ……ところで何、あの二人?」
リューネ「軍服着てたから、軍の関係者だと 思うけど……」
セニア「あ、ほら、進水式始まるよ。 あたし達も並ばないと」
マサキ「あー、めんどくせぇなぁ」
セニア「ほら、しゃきっとする!  お偉いさんも、いっぱい来てるんだからね。 悪い印象もたれない様にしないと」
クロ「今後の部隊運営に色々と 支障が出るってワケね」
セニア「そういう事。ほら、行くわよ」
マサキ「へい、へい」

<No.006:進水式

クィンティヌスかけまくもかしこき、諸神達の ひろまえに、かしこみかしこみも もうさく……」
マサキ「なあ、セニア」
セニア「何?」
マサキ「あそこで祝詞あげてんのって、 もしかしてお前が前に言ってた 又従兄弟の国王ってヤツか?」
セニア「うん、お祖父さんの兄弟の孫。 第289代ラングラン国王、 クィンティヌス陛下だよ」
マサキ「若いな」
セニア「確か……まだ21歳のはず。 ヒゲなんて生やしてるけど、 似合ってないわね~」
マサキ「ぷっ!」
????(シャリアン)「そこ! 静粛に!」

[ブリーフィングルーム]

マサキ「やっと終わった…… 何がすぐ、だよ。30分はかかったぞ」
セニア「あたしのせいじゃないわよ。 今度の首相があんな演説好きだとは 知らなかったわ。データ更新しなきゃ」
リューネ「へぇ、あのおじさんが首相だったんだ。 何か、軽薄そうだったけど」
セニア「ついこの前総裁選で選ばれたの。 ハト派だから、あんまりあたし達には いい相手じゃないよ」
ミオ「それって、あたし達を厄介者扱いしてる 一派って事?」
セニア「まあ、そういう事ね。 空母も完成して、予算も取られなくなって 大歓迎って様子だったし」
ミオ「なーんか、やな感じ」
ツレインラングランの皆が皆、そうだとは 思わないでください!」
ミオ「わかった、わかったから。 暑苦しいのはやめてってば」
ツレイン「……すみません、つい」
テュッティ「あっ、いたいた!  探したのよ、みんな」
マサキ「おっ、テュッティ。 そっちは終わったのか?」
テュッティ「ええ、後で報告するけど、できるだけ むしり取ってあげたわ」
リューネ「ははっ、さすがテュッティ。 そういうトコは情け容赦ないね」
テュッティ「そうそう、みんなに紹介しなきゃ。 新型空母の艦長と副長よ」
ブラッドロイ「艦長を務めます、ブラッドロイ・ザン・ ベリファイト大佐です。よろしく」
シャリアン「同じく副長の、シャリアン・ザニア・ ベリファイト少佐です。 よろしくお願いします」
リューネ「あ、さっきの……」
シャリアン「あら、あなた達……」
ブラッドロイ「あの時はちゃんと説明できなかったが、 あれはいい艦だぞ」
ベッキー「そうだね。乗り心地は良さそうだ。 なんつってもでっかいのがいいよ。 気に入った!」
ブラッドロイ「そう言ってもらえると嬉しい。 そうだ、あの空母に、君達で名前を 付けてくれないか」
マサキ「何だ、まだ決まってなかったのか?」
セニア「こういうのは、メインクルーが 決める慣習なのよ。 何かいい名前ない?」
テュッティ「そうね……トーゴーなんてどう?」
マサキ「トーゴー? 何だそりゃ?」
テュッティ「え? マサキ、日本人でしょ?  知らないの? アドミラル・トーゴー」
マサキ「何のこっちゃ?」
ミオ「東郷平八郎だよ。日露戦争の連合艦隊 司令長官」
マサキ「……知らね。俺、歴史は苦手なんだよ」
ミオ「テュッティさん、ラングランではどうだか 知らないけど、日本じゃ戦艦や空母には 人の名前付けないよ」
テュッティ「あら、そうなの?」
ミオ「東郷元帥が乗ってた戦艦なら、三笠って 名前だよ」
マサキ「……お前、よくそんな事知ってるな」
セニアラングランでも、艦に人の名前付ける 風習はないなぁ。神話からとった名前が 多いと思う」
テュッティ「だったら、フリングホルニにしましょう」
マサキ「ふ……ふりんぐ?」
テュッティ「フリングホルニ。北欧神話に出てくる 巨大な船の名前よ」
マサキ「フリングホルニ……ねぇ。 まあ、テュッティらしいネーミングで、 いいんじゃねぇの?」
リューネ「うん、それいいんじゃない?」
ミオ「あたしも賛成」
テュッティ「艦長はどう思います?」
ブラッドロイ「ああ、いいんじゃない」
シャリアン「!」
(つねる)
ブラッドロイ「あいてっ!?」
テュッティ「? どうかしましたか?」
ブラッドロイ「あ、ああ、いや、いい名前ですな。 フリングホルニ、これでいきましょう」
(アラートが鳴り、赤く点滅を始める)
マサキ「おっと! 何だ!?」
テュッティ「敵襲よっ!」
マサキ「敵? 戦争は終わったのにか?」
クロ「魔装機の反応……多分テロリストよ」
リューネ「間違いなさそうだね」
マサキ「ちっ、どいつもこいつも、 テロだ何だと……ぶちのめしてやらぁ!」


進水式

〔戦域:空母ドック〕

(ドックにフリングホルニが留まっていて、サイバスター、ガッデス、ザムジード、 ラ・ウェンター、ジャオームが東側に出撃済み)
テュッティ「敵の狙いは……空母ね」
ブラッドロイ「すまんが、この艦はまだ艤装が 済んでいない。攻撃はおろか、動く事も ままならん。援護を頼む」
マサキ「了解した!」
ベッキー「なんだい、そのデカいのは ハリボテかい?」
セニア「今はそれに近いわ。機関部もまともに 動いてないから、装甲も薄いの。 普通の攻撃でも大ダメージよ。
 とにかく、空母に近づけじゃダメよ!」
クロ「来た!!」
(東端に敵機が出現する)
オンガレッド「ふん……魔装機神がいたか」
ドレップ「当てが外れましたな」
オンガレッド「気にするな。このスヴェンドの 機動力なら、包囲網をくぐり抜け、 空母に接近するも容易」
ドレップ「なるほど、さすがは執友オンガレッド」
オンガレッド「当然の事だよ。他の執友達には 攪乱を命じてある。私とお前の二人で 空母を沈める。いいな?」
ドレップ「了解」
セニア「あの魔装機……新型ね!  記録しとかなきゃ!」
マサキ「新型って……どこの国のだ?」
セニア「見ただけじゃわかんないけど…… シュテドニアスでもバゴニアでも なさそうね。
 あ、もちろんラングランじゃないわよ」
マサキ「……見ただけでそこまで わかってるじゃねぇか」
セニア「ウェンディ、どう思う?」
ウェンディ「もしかすると……」
セニア「心当たりあるの?」
ウェンディ「はい。ただ、確信は持てませんけど」
セニア「情報不足って事ね。 じゃ、ともかく録画、録画!  他のみんなも、ちゃんと記録しといてよ!」
テュッティ「セニア様、目的がずれてますよ。 今は空母を護るのが先決です」
セニア「あっと、そうだった!」
オンガレッド「さて、戦いの前に自己紹介させて もらおうか。私の名は、オンガレッド・ キレシナ。
 絶対民主主義復古を目指す、 雀奕の細胞の委員長だ」
マサキ「こいつ……開放回線で前口上かよ?」
オンガレッド「君達も、自分が狙われる理由くらいは 知っておきたかろう?
 我々は、階級主義に抑圧された民衆を 解放し、絶対的な平等を目指すものだ。
 故に、その障害となるアンティラス隊と 新設空母を排除する事に決定した」
マサキ「いくら屁理屈こねても、力に訴えてる 時点で説得力がねぇんだよ!」
オンガレッド「では、君達も力で解決するという点では 我々と同様だな」
マサキ「有無を言わさず仕掛けた側が 説教垂れんなっ!」
(作戦目的表示)

〈2EP〉

オンガレッド「さて、ほどよく散開陣も完成した。 そろそろ私達の出番だ。いいな?」
ドレップ「承知!」

〈3PP〉

(オンガレッド機を指す)
ブラッドロイ「あの新型の動き……気になるな」
シャリアン「今更何言ってるんです。 あいつらは私達を狙ってるに 決まってるじゃないですか」
ブラッドロイ「いや、それはそうなんだがな、 何というか……ただのテロリストにしては 動きがよすぎんか?」
シャリアン「……言われてみれば」
ブラッドロイ「だろ。あいつらが戦術を熟知していると 仮定して、シミュレーション仕直してみろ」
シャリアン「は、はい」

〈4PP〉

シャリアン「出ました! 敵の目的は…… 強行突破による白兵攻撃です!」
ブラッドロイ「やはりな……全員に伝えろ!  空母を護る防衛ラインを形成しろと!」
リューネ「防衛ライン? つまり、ZOCを 使えって事かい?」
マサキ「そういう事だ。あの新型、かなりの 機動力と白兵力がある。
 戦線を突破されて空母に取り付かれたら、 あっという間に沈められるぞ!」
ツレイン「あの、ZOCって、ゾーン・オブ・ コントロールのZOCですか?」
セニア「そうよ、士官学校で習ったでしょ?」
ツレイン「あ、はい。ただ、シミュレータ用語だと ばかり思ってました」
ミオ「考え方が逆よ。 シミュレータシステムは、実戦に 対応するために作られたものなんだから。
 敵が近くにいちゃ素通りできないのは 今までの戦いでわかったでしょ?」
ツレイン「確かに……勉強になります!」

ツレインの初戦闘の相手は
オンガレッド オンガレッド以外


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