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熱砂の蜉蝣 北米のネオ・ジオンを追う ~ 第27話 ~

《大西洋・WORDL AREA》

[大空魔竜・格納庫]

氷竜「しかしだ、炎竜…」
炎竜「じゃあ、氷竜は納得出来るのか?」
氷竜「誰もそうは言っていない!」
ゴルディマーグ「だけど、仕方ねえだろうが」
炎竜「僕はゴルディマーグのように 簡単に割り切ることは出来ない!」
ケン太「ねえ… ケンカはやめてよ、みんな」
「そうだよ。 もうすぐアフリカに着くっていうのに」
「…どうした?  いつもの兄弟ゲンカに今日は ゴルディマーグも混ざっているのか?」
鉄也「デカい図体で迷惑な連中だぜ。 ケンカがしたいんなら、 艦を降りてやってくれ」
「ケン太や護が心配しているぞ。 一体、原因は何だ?」
炎竜「隊長、僕達も アフリカでの作戦に参加しなくては ならないのでしょうか?」
「炎竜…」
氷竜「…私達のAIは基本的に人間が 乗る機体との戦闘は想定されていません」
炎竜「そのためか、モビルスーツや グランチャーとの戦闘では、AIに 強い負荷がかかるようなんです」
「負荷か…。 言うなれば、ためらいか心の痛み…」
ゴルディマーグ「そう、それだぜ」
鉄也「見かけによらずナイーブな連中だな」
氷竜「申し訳ありませんが、 あなた方に私達の気持ちは 理解不可能だと思います」
「…お前達の言い分はわかったよ。 次の出撃は各自の判断に任せる」
「いいのか、凱?」
「ああ」
氷竜「すみません、隊長…。 では、失礼します」
(ロボットの足音・勇者ロボ達が立ち去る)

鉄也「少し甘すぎるんじゃないか?」
「そう言うな。 身体は大きいが、あいつらの心は 生まれたばかりの子供同然なんだ」
「自分の心の中に生じた悩みや 痛み、矛盾を乗り越えるのには まだ時間がかかる」
「ま、そういうのには 俺も覚えがあるけどな…」
鉄也「だが、 次の相手は甘えが通用しない連中だぞ」
「次の相手?」
鉄也「アフリカには未だに一年戦争時代の ジオンの亡霊が潜んでいると言われている」
鉄也「奴らは使命に殉ずる男達だ。 一筋縄ではいかないぞ」
「ああ、わかってる……」

[大空魔竜・コンピュータールーム]

(キーを叩く)
コウ「…シーマ・ガラハウ… リリー・マルレーン… 海兵上陸戦闘部隊…」
(エラーシグナル)
コウ「駄目だ、ここにあるデータは 一年戦争以降のものばかりだ」
サコン「ウラキ少尉、 旧ジオン軍の軍籍データは戦禍で ほとんど失われている」
コウ「…わかっている…。 今度は別のキーワードでやってみる」
キース「大空魔竜のメインコンピュータで 駄目だったら、あきらめた方がいいぜ?」
コウ「いや、もう少しだけ調べていく。 キースは先に戻ってくれ」
キース「一体、どうしたんだよ?  何で今さらシーマのことを…」
コウ「…知りたいんだ。 あの女の底にある執念の源を」
キース「…まあ、 確かに気にはなるな…」
サコン「…ウラキ少尉、こちらの データベースにアクセスしてみてくれ」
コウ「あ、ああ…」
(成功シグナル)
コウ「あったぞ…!  シーマ・ガラハウ…B級犯罪容疑により 追跡中…」
コウ「サコン!  このデータベースは…!?」
サコン「戦争犯罪容疑者のリストだ。 …だが、これ以上は機密扱いとなり 一般の閲覧は認められていない」
コウ「戦争犯罪…。 あの女の過去に何があったんだ…」

《アフリカ キンバライド基地・WORLD AREA》

[キンバライド基地内部]

シーマ「シケた基地だね…。 宇宙からの客にワインの一杯も 出ないのかい?」
ビッター「そう言うな、中佐。 この基地は一年戦争の終結以来、 補給なしでやってきたのだ」
ビッター「地球攻略の最前線として アフリカ戦線を維持すること… これが我々の任務だからな」
シーマ「そんな大昔の 命令を律儀に守っているとはね…」
シーマ「おかげで 宇宙への帰り方を忘れちまったかい?」
ビッター「ふふふ…そうかも知れん。 我々の魂はあまりにも長く 重力に縛られすぎた…」
ビッター「だが、 まもなくそれからも解放される…」
シーマ「どういうことだい?」
ビッター「先程、偵察部隊から連絡が入った。 連邦の部隊がこの基地に接近している」
シーマ「何だって? アリゾナで 完全に巻いたと思っていたのに…!」
ビッター「どうやら、尾けられたようだな」
シーマ「だったら、 こっちから出迎えてやるまでさね」
ビッター「いや… その役目は我々に任せてもらおう」
シーマ「馬鹿言ってんじゃないよ!  相手はガンダムと特機の集まりだ… ザクでかなうと思っているのかい?」
ビッター「………」
シーマ「モグラはモグラらしく、 穴蔵であたし達を援護してな」
ビッター「そうはいかん。 新しきジオンのため、中佐には 与えられた任務を確実に遂行してもらう」
シーマ「任務なんざクソ食らえさ!  あたしはあたしの落とし前を つけさせてもらう…!」
シーマ「そうやって あたしは生きてきたんだよ…!」
ビッター「その気性… ジオン独立戦争以来か…」
シーマ「そうさ。あたしが信じられるのは あたし自身だけ。あの戦争で嫌というほど 思い知ったからね」
ビッター「1月3日の悪夢… その傷は深いか…」
シーマ「あんた…知っているんだね?  あの日のことを…」
ビッター「…………」
シーマ「そうさ…。 一年戦争が始まったあの日…」
シーマ「コロニーに G3ガスを流したのは、あたしの部隊さ」
シーマ「人類史上最大級の民間人虐殺を やったのは、あたし達なのさ…!」
ビッター「だが、中佐らには そのガスは致死性のない催涙ガスだと 伝えられていたと聞く…」
シーマ「だがね…やっちまったものは 取り返しがつかないのさ…」
シーマ「おかげであたしは戦争犯罪人扱い。 あたしの艦隊はアクシズに向かうことも 許されなかった」
ビッター「カラマ・ポイントでのことか…」
シーマ「ああ…戦争がなし崩しに終わった後、 あそこにはジオンの残党が集結していた」
シーマ「そこで、 連中は地球圏で戦い続けるか… アクシズに逃亡するかの選択に迫られた」
シーマ「だがね…あたし達は アクシズへ向かうことを許されなかった。 生き方を選ぶ権利もなかったのさ」
ビッター「………」
シーマ「軍律の逸脱…ジオンの名の汚辱…。 あたし達は任務に忠実なだけだった… だが、その報酬がこれだ」
ビッター「それで宇宙を放浪し続けたか…」
シーマ「デラーズと合流するまでの間ね…」
(アラート)
ビッター「敵は 第一次防衛ラインを超えたようだ」
シーマ「なら、あたし達が出る!」
ビッター「ならん!  中佐は宇宙に上がってもらう」
シーマ「言ったはずだよ。 あたしは任務では動く気はないと」
ビッター「任務ではない。 これは、この基地の人間全ての願いだ」
シーマ「願い…?」
ビッター「そうだ。 この作戦の失敗は、我々のこれまでを 全て無意味なものとするのだ」
ビッター「何としても中佐には 宇宙に上がってもらわねばならない。 それは我々の願いなのだ」
シーマ「………」
ビッター「………」
シーマ「いいだろう…」
ビッター「わかってくれたか、中佐」
シーマ「フン…あたしに命令した奴は 腐るほどいたが、頼み事をした奴は あんたが初めてだからね」
ビッター「中佐…」
シーマ「最後に一つ聞かせておくれよ。 あんた…地球暮らしが長いのなら 蜉蝣っていうのを知ってるかい?」
ビッター「カゲロウ?」
シーマ「ああ… どうやら虫の名前らしいんだが…」
ビッター「…透明の羽を持つ昆虫だ。 成虫の寿命は数日もない」
シーマ「そうかい…」
ビッター「その蜉蝣がどうかしたのか?」
シーマ「聞いてないかい?  『宇宙の蜉蝣』…それがあたしの通り名さ」


第27話
熱砂の蜉蝣

〔戦域:キンバライド基地周辺〕

(敵機は既に出撃済み)
ジオン兵「HLV打ち上げ準備完了。 各部隊も配置につきました!」
ビッター「…各自聞いてくれ。 打ち上げ終了後、この基地は降伏する」
ジオン兵「し、司令…」
ビッター「この戦いでモビルスーツを 失えば、我々の役目も終わる」
ジオン兵「しかし…!」
ジオン兵「今さら降伏などと…!」
ビッター「兵達は今までよく戦った。 我々の志は新たな星の屑作戦に 受け継がれる」
ビッター「我らの長きに渡る雌伏の時は 今日のためにあったと思え!」
(歓声)
シーマ「………」
ビッター(中佐が宇宙の蜉蝣なら、 我々は熱砂の蜉蝣…。その少ない生命を 今日という日に懸けよう)
ビッター「全ては新しきジオンのために!」
ジオン「敵機、来ましたっ!」
(アルビオンが出撃、出撃準備)
甲児「何だ!? ザクしかいねえのか!?」
コウ「前の大戦じゃない…!  もしかして、一年戦争の時から!?」
一平「まさに ジオンの亡霊ってわけかよ…!」
カツ「けど、旧式の機体で こっちを食い止められるものか!」
ベイト「気をつけな。 あの手の野郎共は意外に手強いぜ。 ガキ相手にゃ特にな」
シモン「シナプス艦長!  10時の方向に大きな熱反応…!  おそらくHLVの発進口です!」
シナプス「打ち上げまでの時間は!?」
シモン「およそ9分後と算出されます!」
シナプス「各機は発進口を守る モビルスーツ部隊を殲滅しろ!  可能な限り急げ!」
ビッター「来い、連邦め…! 我らの意地… そして、ジオンの意地を見せてやるぞ!」
(作戦目的表示)

〈3EP〉

(敵機増援が出現)
コウ「伏兵か…!?」
ベイト「ハッ! さすが地元の野郎だぜ!」

〈4EP〉

(敵機増援が出現)
「みんな! 俺達には 守り抜かなければならないものがある!」
「それは誰が相手だろうと 貫かなければならないものだ!」
ゴルディマーグ「隊長…!」
「氷竜、炎竜!  ゴルディマーグ!」
「敵を倒す痛みは心に刻め!  それは俺達が越えていかなくては ならない壁だ!」
「勝つんだ!  俺達の勝利を待っている人達のためにも!」
氷竜「は、はい!」
炎竜「了解です!」
ゴルディマーグ「へ…!  こうまで言われりゃな… 俺も吹っ切れたぜ!」
バニング「各機、陣形を立てなおせ!  アルビオンを守りつつ、 一気に敵を突破するぞ!」
ビッター「よく統制がとれている。 向こうも退けぬ理由があるか…」
ビッター「だが、 我らとてゆずれないものがある…!」
ビッター「全機突撃!  一気に勝負に出るぞ!」

〈vs ビッター〉

[いずれかの味方]

ビッター「我らは今日という日のために この地に生き延びてきたのだ!」
ビッター「その意地、見せてくれる!」

[コウ]

ビッター「ジオンの意地… ジオンの魂、受けるがいい!」
コウ「ガトーと同じ気迫…!  この男もジオンに殉じる気なのか!」

[アムロ]

ビッター「ジオンの勝利のためにも ここは通すわけにはいかん!」
アムロ「く…ここにもシャアに 殉じる男がいるのか…!」

[キンケドゥ]

ビッター「連邦の世が続く限り スペースノイドに安息の日は 来ないのだ!」
キンケドゥ「強い…!?  いや、この男のプレッシャーに 俺達が気圧されているのか…!」

[凱]

ビッター「ここは通さんと言っている!」
「俺達にも退けない理由がある!」

[撃墜]

(ビッター機に爆煙)
シモン「敵隊長機、停止しました!」
シナプス「よし! アルビオン突撃!  一気に発進口を押さえる!」
シモン「艦長! 熱反応の増大を確認!  HLV打ち上げられます!」
シナプス「主砲開け!  この距離なら当たるはずだ!」
パサロフ「艦長! 敵隊長機がっ!」
シナプス「な!?」
(ビッター機がアルビオンの北側へ接近)
ビッター「我々の意地を見よッ!!」
パサロフ「隊長機、突っ込んできます!」
シナプス「構わん!  主砲発射! HLVを撃ち落とせ!!」
(ビッター機が空中へ)
【強制戦闘】
シナプス[メイン・メガ粒子砲]vsビッター[反撃不可能]
ビッター『我々の志は…… 宇宙(そら)の同士に 受け継がれる……!!』
ビッター「ジ、ジオンに栄光あれ!」
(ビッター機が爆発)
【デモイベント『HLV打ち上げ』】
コウ「ああっ…!」
シナプス「うぬっ…!!」
カミーユ「俺達は…負けたのか…?」
アムロ「くっ…!  シャアにみすみす核を…!!」
シモン「艦長! あれを!」
(HLV発進口の北側を指す)
ジオン兵「………」
シナプス「白旗を………!?」

《衛星軌道上・EARTH AREA》

[ジオン艦・ブリッジ]

ネオ・ジオン艦長「ご苦労だった、中佐。 これで次の作戦の準備は整った」
シーマ「キンバライドの連中は?」
ネオ・ジオン艦長「ビッター少将は 戦死…生き残った者は投降した」
シーマ「…………」
ネオ・ジオン艦長「総帥もお喜びだ。 しかし……」
シーマ「…わかってるよ。 スウィート・ウォーターには 顔を出すなってことだろう?」
ネオ・ジオン艦長「…そうだ。今回の件は 一部の者の独断ということになる」
シーマ「…フン、いつもの手かい」
ネオ・ジオン艦長「何?」
シーマ「いや、こっちの話さね」
ネオ・ジオン艦長「では、 次の命令が出るまで待機せよ」
(ネオ・ジオン艦長が立ち去る)
シーマ「…………」
シーマ(馬鹿だね…。 死んじまったら元も子もないのにさ)
シーマ(だけど… 頼まれたとおり、宇宙へ上げたよ…)
シーマ(核とあんた達の志をね……)

《アフリカ キンバライド基地・WORLD AREA》

[格納デッキ]

コウ「くそっ!  あそこでもう一押しできていれば!」
バニング「ウラキ、 戦いは今日で終わるわけじゃない。 気をしっかり持て」
コウ「ですが、大尉…自分は今日の戦いで ジオンの意地を見ました」
アムロ「理想に殉じる戦士達の意地か…」
コウ「…自分は…自分達は あれに打ち勝つことが出来るのかと…」
アムロ「今のシャアは ああいう人間に支えられている…」
アムロ「それに打ち勝てないようじゃ、 奴を止めることは出来ないぞ」
コウ「…………」
アムロ「それとも、 人に死を強いるような革命を認めるか?」
コウ「いえ……そのつもりは。 自分達にも彼ら同様、意地があります」
ゴルディマーグ「そうだ、ウラキ少尉。 沈んでいる暇はないぜ」
炎竜「ああ。敵に覚悟があるなら、 僕達にだってあるはずだ」
モンシア「何だ、 意外に立ち直りのはええ連中だな」
バニング「戦いに疑問を持つのは、 新兵の病気みたいなものだ。 これでお前達も一皮むけたな」
モンシア「とりあえず、 一人前に一歩近づいたってこった。 ま、これからも頑張りな」
氷竜「はい。 ご指導よろしくお願いします」
「お前達も何かをつかんだようだな」
氷竜「隊長…今回の戦いで我々に 何が欠けているかがわかりました」
「そうか…」
炎竜「はい。αナンバーズの みんなも僕達と同じ想いをしながら 乗り越えてきたんですね」
「ああ、そうさ。 だが、次は負けるわけにはいかないぞ」
ゴルディマーグ「おう! 俺達にだって 守らなきゃならねえものはあるからな!」

[大空魔竜・ブリッジ]

三輪「…それで貴様らは ネオ・ジオンを取り逃がしたのか?」
大文字「申し訳ございません、長官」
三輪「まあいい。 北米支部の尻拭いなどに 貴重な戦力を割く必要はない」
ピート「お言葉ですが、長官。 既に戦局は一支部の責任を越えた 規模に発展しているのでは?」
三輪「一兵が戦略に口を出すな! 貴様らは ワシの命令を聞いておればいいのだ!」
ピート(くっ…こんな男が 極東支部の最高責任者とは…!)
三輪「貴様らには次の任務を与える。 太平洋上のポイントN1003へ向かえ」
ミドリ「ポイントN1003… 日本近海ですね」
三輪「そうだ。そこにバーム星人のものらしき 宇宙船が飛来した。おそらく、奴らの 前線基地がその近くにあると思われる」
大文字「我々にその前線基地を討てと?」
三輪「そのとおりだ。 この一戦で異星人と決着をつけてこい」
サコン「しかし、連日の戦闘で こちらは消耗していますが…」
三輪「それぐらいはわかっておる。 各研究所より調達した新兵器の類を 貴様らに送る」
大文字「了解しました。 準備が整い次第、αナンバーズは N1003ポイントへ向かいます」
三輪「うむ、任せたぞ」
(モニターオフ)
ピート「くそ…!  相変わらず好き勝手に俺達を 使ってくれるぜ…!」
サコン「だが、ピート… これは戦局を決するチャンスだ」
大文字「うむ…我々は出来るだけ早く 地球での戦いに決着をつけねばならん…」
大文字「ピート君、大空魔竜発進だ。 ミドリ君はマザー・バンガードと アルビオンに連絡を」
ミドリ「わかりました」


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