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悲しい罪は涙で消えない ゼンガー ~ 第13話 ~

《移動中 火星と地球の間・SPACE AREA》

[ガルンロール・ブリッジ]

リヒテル「…何故、貴公は 余の地球攻撃作戦に反対する? どうして 一気に地球を攻撃しようとせぬ?」
ベルガン「地球人は 前回の大戦を教訓にし、母星の防衛網を より強固にしていると思われます」
ベルガン「さらに、地球内部にも 未知なる敵対勢力が存在し…」
ベルガン「うかつに手を出せば、我々は 複数の勢力を相手にせねばなりません」
リヒテル「世迷い言を!  我がバームが地球人ごときの戦力に 敗北すると思っているのか!」
ベルガン「…キャンベル星のオレアナ、 我が軍のハイネルも同様のことを述べ、 敗れ去っていったのですぞ?」
リヒテル「む……」
ベルガン「ここは慎重に事を進め、 利用できるものは利用し、我が軍を 勝利に導くことが肝要かと思われます」
リヒテル「………」
リヒテル「…ド・ベルガン殿、この太陽系へ たどり着けたのも、ボアザンの導きが あった故のことと感謝している」
ベルガン「いえいえ… この度のボアザンとバームの同盟は、 誠に喜ばしく思っています」
リヒテル「そのボアザンと バームの関係は対等のはず…。 余の前ではその仮面を外して頂こう」
(フェイスガードを上げる)
ベルガン「…これはとんだ失礼を。 お許し下さいませ、リヒテル提督」
ライザ(ボアザン星から派遣された このベルガンという男…何を考えているか わからぬところがある)
ライザ(彼らと…そして、ゼーラ星の者の 行動には注意を払う必要があるな)
(扉が開閉する)
バルバス「申し上げます、リヒテル様!  我々の艦隊がこのままのコースを取ると 大空魔竜と接触します」
ベルガン「リヒテル提督、 我々の任務は地球本星の制圧です。 ここは航路を変更すべきでしょう」
リヒテル「いや、これは好機だ。 大空魔竜へ攻撃を仕掛ける」
ベルガン「…失礼ながらヒリテル提督、 あなたはお父上のリオン大元帥の仇討ちを 考えているのではないでしょうかな?」
リヒテル「ベルガン殿、 余はこの艦隊の司令官だ。 その責務に私情を挟む気は毛頭ない」
リヒテル「だが、地球を攻撃するにあたり… 奴らとの戦いは避けて通ることが 出来ぬであろう」
ライザ「わかりました、リヒテル様。 全軍に攻撃準備を指示します」
リヒテル「よろしいかな、ベルガン殿?」
ベルガン「そこまでおっしゃられるのなら 私も提督のご命令に従います」
ベルガン(フン、青二才めが…)

《火星圏・SPACE AREA》

[大空魔竜・ブリッジ]

大文字「…では、マザー・バンガードは 我々に同行なさるのですな?」
ベラ「はい。 そちらにご迷惑をおかけすることになると 思いますが…」
大文字「いえ、構いません。これからの 事態に対処するため、我々も戦力を 増強せねばなりませんからな」
ベラ「…ありがとうございます。では…」
(ベラとの通信が切れる)
ピート「いいんですか、博士。 彼らはロンド・ベル隊の元メンバーとは 言え…今は海賊としてお尋ね者の身です」
ピート「我々にまであらぬ疑いを かけられるかも知れませんよ?」
サンシロー「何言ってんだ。 デカい恐竜の横に海賊船が一隻増えたって、 誰も不思議に思いやしないよ」
ミドリ「…かえって目立つと思うけど」
ピート「サンシロー、マザー・バンガードは クロスボーン・バンガードの紋章を… 敵の紋章を掲げているんだぞ」
サンシロー「連邦軍から勘違いされて、 攻撃されるかも知れないって言うんだろ?」
ピート「そうだ」
サンシロー「じゃあ、俺達が 海賊を捕まえて、連行してるってことに すりゃあいいじゃないか」
ピート「それで上手くごまかせるものか」
大文字「心配はいらんよ、ピート君」
大文字「その件に関しては木星帝国軍への 対応を含め…ロンド・ベル隊の ブライト中佐に根回しをしてもらっている」
ピート(…ロンド・ベル隊…。 彼らも本格的に行動を開始するのか…)

[大空魔竜・メインコンピュータルーム]

ゼンガー「参式の機能を元に戻す?」
サコン「ええ…。あの機体は戦闘機と重戦車に 分離することが出来るはずです」
サコン「パイロットがもう一人いれば、 汎用性がさらに向上すると思うのですが…」
ゼンガー「いや… 俺には同乗者のことを気遣いながら 戦うような真似など出来ん…」
サコン「確かに… 少佐の戦い方についていける人間は 数少ないでしょうね」
ゼンガー(あるいは、あの男なら…)
ゼンガー(…いや、奴は自分が 乗るとなれば、参式をも黒く塗りかねん。 それに、俺の力を必要とする男でもない)
サコン「どうかしましたか?」
ゼンガー「いや、何でもない。 せっかくの申し出だが…参式は 今のままにしておいてもらえんか?」
サコン「わかりました」
(扉が開閉する)
ハチロー「サコンさん、 コーヒー持って来たよ!」
サコン「ほう、気が利くな…ハチロー」
ハチロー「ううん、 僕はエリカさんとイルイちゃんを ここへ案内しただけなんだ」
イルイ「………」
エリカ「あの…ご迷惑だったでしょうか?」
サコン「いや…。 君はもう起き上がって大丈夫なのか?」
エリカ「ええ、 記憶はまだ完全に戻りませんが…」
サコン「…そうか。 じゃあ、コーヒーをもらおうか」
エリカ「はい。じゃあ、イルイちゃん… みんなの分をお願いね」
イルイ「うん…」
ゼンガー「…俺はいらん。 他に用事があるのでな」
イルイ「え…?」
ハチロー「どうして?  せっかく持ってきたのにさぁ」
ゼンガー(俺がいれば… イルイが怖がるだろうからな)
エリカ「そんなことをおっしゃらずに 飲んでいって下さいませんか?」
エリカ「イルイちゃん、あなたのために コーヒーのいれ方をロペットさんから 教わったんですから」
ゼンガー「……!」
イルイ「…………」
ゼンガー「…では、もらおうか」
イルイ「ど、どうぞ……」
ゼンガー「………」
ゼンガー「……む!?」
イルイ「?」
ゼンガー「あ……」
イルイ「あ?」
ゼンガー(甘すぎる………!)
イルイ「あ、あの…… おいしく…なかった…?」
ゼンガー「…いや、うまい。 なかなかいい筋をしている」
サコン(いい筋?)
ゼンガー「また頼む。 ただし…その時はブラックでな」
イルイ「うん…。 コーヒー、飲んでくれてありがとう…」
ハチロー(へ~え…… イルイちゃんがあんな風に笑うの、 初めて見たな)
エリカ「じゃあ、サコンさんもどうぞ」
サコン「すまないな」
エリカ「! この画像は…?」
サコン「ああ、 こいつはバーム星人の戦闘ロボットさ」
エリカ(………!)
ハチロー「エリカさん、どうかしたの?」
エリカ「い…いえ…何でもありません。 失礼します…」
(扉が開閉する・エリカが立ち去る)
サコン(あの反応は……)

[大空魔竜・ブリーフィングルーム]

エリカ(知っている…。 あの戦闘ロボットを私は知っている…)
エリカ(だけど、思い出せない…!  ああ…そうじゃない…!  私はそれを思い出したくない…)
エリカ(記憶を取り戻したら… その時にはきっと…)
一矢「どうしたんだ、エリカ?  顔色が真っ青だぞ!」
エリカ「ああ、一矢……私、怖いの…!  記憶がよみがえるのが怖いの!」
一矢「記憶!?  以前のことを思い出したのか!?」
エリカ「そうじゃないの……!  思い出すことが…過去を知ってしまうことが 怖い……」
(足音)
京四郎「そうだろうな。 思い出したが最後、周りは敵だらけ… ってなことになるかも知れないからな」
一矢「それはどういう意味だ、京四郎!?」
京四郎「確かに、エリカには自由行動の 許可は降りている。だが、スパイ容疑が 晴れていないことも忘れるなよ」
一矢「お前の心はお見通しだ、京四郎!  お前はエリカを疑っている!  そうじゃないのか!?」
京四郎「ああ、図星だ」
一矢「何っ!?」
ナナ「やめて! 二人ともやめてよ!」
京四郎「一矢、今のお前には 何を話しても無駄のようだな。 マルクス曰く『全てを疑え』だ」
一矢「この野郎っ!!」
エリカ「やめて、一矢!  私のために争わないで下さい!」
一矢「君が疑われるなんて、 俺には我慢出来ない!」
一矢「君のためなら、俺は世界中の 全てを敵に回してもいい!」
エリカ「か、一矢…!」
ナナ「お、お兄ちゃん……」
京四郎「ナイト気取りもいい加減にしろ。 それじゃ、命がいくつあっても足りんぜ」
一矢「何だと!?」
エリカ「………」
ナナ「エリカさん…あなたのせいよ…」
エリカ「え…?」
ナナ「あなたがいるからお兄ちゃんが 苦しむのよ! どうして…どうして あなたがお兄ちゃんの隣にいるの…!?」
一矢「ナナ…お前…」
ナナ「あたしのお兄ちゃんを取らないで!」
(速い足音・ナナが走り去る)
京四郎「待て、ナナ!」
(京四郎が立ち去る)
一矢「エリカ…。 ナナの言ったことは気にしないでくれ…。 彼女と俺は幼なじみみたいなもので…」
エリカ「でも、彼女の言葉は事実です。 私をかばうことで、あなたは 苦しんでいく…」
エリカ「…一矢、何故なの?  何故、こんなに私に親切にしてくれるの?」
一矢「それは… 君を放っておけないからさ…」
エリカ「嘘…あなたは 同情しているだけなんだわ…」
一矢「違う…違うよ、エリカ。 俺は…」
(アラート)
一矢「敵襲!?」


第13話
悲しい罪は涙で消えない

〔戦域:暗礁宙域〕

(大空魔竜とマザー・バンガードは出撃済み、出撃準備)
ミドリ「敵機、来ます!」
(敵機が出現)
ウモン「あいつらがバーム星人とやらか…」
キンケドゥ「ボアザン軍はともかく、 俺達はバーム軍と戦うのは初めてだ。 油断するなよ、じいさん」
ウモン「おう、わかっとるわい」
竜馬「あの部隊…単純に俺達を 追いかけてきたわけじゃなさそうだな」
一平「ああ、目指す場所は同じらしい」
サンシロー「何だって!? まさか、 あいつら…地球を目指しているのか!?」
一矢「……!!」
万丈「火星を根城にして、地球攻略か。 充分にありえる話だね」
健一「だったら、何としても ここで奴らを食い止めなければ!」
リヒテル「全軍に指令! 奴らを血祭りにし、 地球攻略の狼煙を上げるのだ!」
(作戦目的表示)

〈1EP〉

エリカ「あ…あのロボットは…!」
ミドリ「エリカさん!  どうしてここに!?」
ピート「ここはブリッジだぞ!  非戦闘員は所定の位置へ退避していろ!」
エリカ「は、はい…」
大文字「今から艦内を移動させるのは危険だ。 ミドリ君、エリカ君をサブシートに 座らせてくれたまえ」
ミドリ「一矢君が心配になったのね…。 さあ、こちらに座って」
エリカ「すみません…」

〈初戦闘〉

[キンケドゥ]

キンケドゥ「これ以上、地球圏へ 敵を送り込ませるわけには!」

[ザビーネ]

ザビーネ(バーム軍の侵攻は… さらなる混乱のきっかけとなるな…)

〈2PP〉

(通信)
ミドリ「大文字博士!  こちらの回線に割り込み通信が!」
大文字「何…!?」
(雑音)
リヒテル「バーム星地球攻撃軍提督、 リヒテルの名の下に最後通告を申し渡す」
ミドリ「博士!  敵の母艦より通信が入っています!」
大文字「むうっ…!」
鉄也「最後通告だと…!?」
一矢「リヒテル…!!」
エリカ「あ…ああ…!」
ミドリ「どうしたの、エリカさん!?」
サコン(この様子…やはり彼女は…!)
リヒテル「我が同胞…10億の バーム人に安住の地を与えるため… 地球人共よ、我らへ降伏せよ!」
サンシロー「勝手なことを言うな!  人の家の玄関に上がり込んで、家を よこせとは…どういう了見だ!?」
サンシロー「誰がお前達に屈するものか!  最後の最後まで戦い抜いてやる!」
リヒテル「フン、あくまで刃向かう気か」
エリカ(私は…あの人を知っている…。 そう…私はあの人と一緒に小バームから 火星へ降り立った…)
エリカ(全てを思い出したわ…。 私は…私はバーム星人…)
リヒテル「愚かな地球人達よ… お前達と我々の戦力差は、 先の戦いでも証明されている」
エリカ(そして、あの人… リヒテルは私の兄…!)
リヒテル「余の最後通告を聞き入れぬのなら、 ここにお前達の屍の山を築いてくれよう」
エリカ「いけない!  そんなことはしてはいけない!」
リヒテル「そ…その声は……エリカ!  何故、お前が地球人の艦に!?」
エリカ「お願いです、兄上!  戦いをやめて下さい!」
ピート「兄上だと!?」
ミドリ「エリカさん…あなたは…!?」
サコン(やはり……)
エリカ「すみません、皆さん…。 今、私は全てを思い出しました…」
ピート「思い出しただと!? 今頃何を!!」
大文字「いかん、ピート君!  彼女を撃ってはならん!」
エリカ「!」
ピート「スパイめ! そこを動くな!」
(銃声、エリカが羽を出す)
エリカ「………」
ピート「何っ、翼が!?」
ミドリ「エ、エリカさん… あなた、バーム星人だったのね!?」
エリカ「…さようなら、皆さん…」
エリカ「皆さんに優しくして頂いた ご恩は一生忘れません…」
(エリカが飛び去る)
ピート「敵のスパイが逃げたぞ!  艦外に出すな!」
(アラート)
日吉「ねえ!  大空魔竜で何かあったみたいだよ!」
一平「敵の大将が目の前にいるってのに 何をやってやがるんだ!?」
(ガルバーFXIIが出撃)
京四郎「あれは予備のガルバーだぞ!  誰が乗っているんだ!?」
ピート「あれにはエリカが乗っている!  あの女、バーム星人だったんだ!」
健一「何だと…!?」
一矢「エ、エリカがバーム星人…!?」
ピート「それだけじゃない!  あの女はリヒテル提督の妹だ!」
一矢「う…嘘だ!  エリカが父さんの仇の妹だなんて!」
(ダイモスがエリカ機の傍へ移動)
一矢「嘘だろ、エリカ…?  これは何かの間違いだと言ってくれ…!」
エリカ「ごめんなさい、一矢…。 私はバーム星人…リヒテル提督の妹です…」
エリカ「でも、これだけは信じて下さい。 このことは、つい先ほど思い出したことで あなたを騙すつもりはなかったことを…!」
一矢「エ…エリカ…!」
エリカ「さようなら、一矢…。やはり、 あなたはお慕いしてはいけない人…」
(エリカ機が南西へ移動)
エリカ(どうして…どうして好きに なってしまったのでしょう…)
エリカ(一矢…あなたは 私にとって愛してはいけない人。 でも…でも、どうしても好き…)
(ダイモスが南へ移動)
一矢「待ってくれ、エリカ!  君がバーム星人でも父さんの仇の妹でも 関係ないんだ…!」
エリカ「ああ…一矢…。 その言葉だけで私には充分です…」
リヒテル「何をしている、エリカ!  地球人の下を脱出したのなら こちらに合流するのだ!」
エリカ「申し訳ありません、兄上…。 エリカは…エリカは死にました…」
リヒテル「血迷ったか、エリカ!?」
エリカ「どうか私のことは死んだと思い、 捜さないで下さい…」
(ライザ艦がエリカ機の傍まで移動)
エリカ「ああっ!」
ライザ「エリカ様!  あなたのお兄様は戦っておられるのです。 わがままもいい加減になさいませ!」
(エリカ機がライザ艦に収容される)
リヒテル「でかしたぞ、ライザ!」
ライザ「リヒテル様、 私はエリカ様を連れて一足先に地球へ 向かいます」
リヒテル「うむ…くれぐれもエリカを頼むぞ」
ライザ「はっ…!」
エリカ「………」
一矢「待ってくれ、エリカ…!  俺は君にまだ何も話していないんだ…。 俺は…俺は…」
一矢「俺は君が好きなんだーっ!」
(ライザ艦が撤退)
一矢「エリカァァァァァッ!!」
京四郎「待て、一矢!  追うつもりじゃないだろうな!?」
一矢「止めるな、京四郎っ!!」
京四郎「状況をよく見ろ!  お前一人で飛び出して行ったって、 何にもならんぞ!」
竜馬「彼の言う通りだ。 ここでバーム軍の戦力を削っておかないと、 後々面倒なことになる!」
一矢「エリカを見捨てろと言うのか!?」
鉄也「見捨てるも何も、 あの女はバーム星の…敵側の人間だぞ。 追いかけてどうするつもりだ?」
一矢「うっ…!」
ナナ「…お兄ちゃん…」
リヒテル「己の母星すら まともに統治出来ぬお前達が、 我らバーム軍に勝てると思うな!」
ザビーネ(フ……その通りだな)
ザビーネ(見たところ、 バーム星は高貴な者による支配体制が 確立している…)
ザビーネ(今の地球圏に足りぬのは、 まさにそれなのだ)
キンケドゥ「…ザビーネ、どうした?」
ザビーネ「いや、何でもない」
キンケドゥ「………」

〈vs バルバス〉

[一矢]

バルバス「地球人め! エリカ様の恨み、 存分に晴らさせてもらうぞ!」
一矢「違う…! 俺は… 俺達はエリカの敵じゃないんだ!」

[撃墜]

バルバス「ええいっ!  こうなったら退却だ!」

〈vs ベルガン〉

[健一]

健一「貴様ら、 まさか最初から地球を侵略する気で…!」
ベルガン「つまらぬ言いがかりは 止めてもらおうか」
健一「何!?」
ベルガン「リオン大元帥は平和を願って おられたお方…あの会談を台無しに したのは、他でもない貴様らなのだぞ!」

[撃墜]

ベルガン「く…適当に切り上げるつもりが 引き際を誤まったか…!」
(スカールークが爆発、撤退)

〈vs リヒテル〉

[一矢]

リヒテル「父を暗殺しただけでなく、 妹まで拉致していたとは!!  もはや許せん!!」
一矢「エリカが 父さんの仇の妹だなんて…!  そんなことがあってたまるかっ!!」
リヒテル「黙れ!  エリカがお前達から受けた辱め… 貴様の命によってあがなってくれるわ!」

[健一]

健一「俺の父さん達が、リオン大元帥の 暗殺など目論むわけがない!」
健一「戦争を仕掛けるより、 事の真相を追究する方が先じゃないのか!」
リヒテル「卑怯者め! 自分達の犯した罪を 今さら言い訳する気か!」

[サンシロー]

リヒテル「いかなる兵器と言えども、 我らには太刀打ち出来ぬぞ!」
サンシロー「こっちだって、 今まで何もしてこなかったわけじゃない!」
サンシロー「お前達が地球を侵略する気なら、 受けて立ってやるぜ!!」

[撃墜]

リヒテル「ええい、地球人共め!  この借りは地球本星にて返してくれる!  全軍撤退だ!」
(撤退)
ピート「大文字博士、敵は全て後退しました」
大文字「うむ…」
キンケドゥ「木星帝国同様、 バーム軍も地球圏を目指して 侵攻を開始したか…」
万丈「ああ。 僕達もぐずぐずしている暇はない。 早く地球圏へ帰らなければならないな」
一矢「………」
ナナ「お兄ちゃん…」
一矢(エリカ………)
一矢(俺達は もう二度と会うことは出来ないのか…?)

《移動中 火星と地球の間・SPACE AREA》

[ガルンロール・ブリッジ]

マルガレーテ「ああ…おひいさま… よくぞ…よくぞご無事で…!」
エリカ「心配をかけてごめんなさい、 マルガレーテ…」
リヒテル「…エリカ、率直に尋ねよう。 そちは何故、かくも長く地球人達と 行動を共にしていた?」
マルガレーテ「お話した通りで ございましょう。おひいさまは 記憶を失われて…」
リヒテル「マルガレーテ、 そちに聞いておるのではない!」
リヒテル「余は地球攻略司令官として 聞いているのだ。答えろ、エリカ!」
エリカ「………」
マルガレーテ「おひいさま…」
リヒテル「何故…何故、黙っている!?  やましいことがないのなら話せるはず!」
ベルガン「おやめなさい、リヒテル提督。 …その理由は提督もご存知のはずでしょう」
リヒテル「ベルガン殿…これは余の問題だ。 余計な口出しは遠慮してもらおう」
ベルガン「そうですかな?  提督の妹君が敵の人間に対して あるまじき感情をお持ちになった…」
エリカ「……!」
ベルガン「この事実は軍全体の士気にも 関わりかねません。エリカ様には断固たる 態度で接して頂きたいものですな」
リヒテル「そのようなこと、 貴公に言われるまでもない…!」
ベルガン(フフフ、これでいい。 ここでリヒテルが妹をかばえば、 弱みを握ることが出来る…)
エリカ「兄上、聞いて下さい…」
リヒテル「…ええい、黙れ!  事もあろうに憎むべき地球人、 父の仇である地球人を愛すなど…!」
リヒテル「貴様は もう余の妹でもバーム星人でもない!  今、この場でその首をはねてくれる!」
エリカ「…はい… 兄上がそれを望むのなら…」
マルガレーテ「何をなさいます、若!  おやめ下さい!」
リヒテル「どけい、マルガレーテ!  そちには血のつながった妹の裏切りが どれほど憎いのかわからぬのだ!」
マルガレーテ「おやめ下さい、若!  こんな光景をお父様がご覧になったら…」
リヒテル「その父を殺した地球人と エリカは通じていたのだぞ!  どけ! どけ! どけい!」
マルガレーテ「若! どうしてもと おっしゃるなら私をお斬り下さい!  それで気が収まるなら!」
リヒテル「マルガレーテ…貴様っ!」
マルガレーテ「私のお世話が 至らなかったのでございます!  私を地獄でもどこにでもおやり下さい!」
マルガレーテ「おひいさまは一時の心の迷い。 乳母である私の不始末として 私をお斬り下さいませ!」
リヒテル「くっ…!」
マルガレーテ「いけません!  おひいさまを…おひいさまを斬るなど!」
エリカ「マルガレーテ…」
リヒテル「…ええい! 勝手にするがいい!」
マルガレーテ「ありがとうございます!  ありがとうございます…若…」
リヒテル「だが、エリカ!  貴様は裏切り者として死に至るまで 石牢から一歩も外へは出さぬ!」
エリカ「はい…」
リヒテル「もう余に肉親はおらぬ…。 バーム星人、エリカは死んだ…。 死んだのだ…」
エリカ(さようなら一矢…。 私達は二度と会うことはないでしょう…。 ただ、あなたの無事を遠くから祈ります…)

[大空魔竜・ブリーフィングルーム]

一矢「ピート! 何故エリカを撃った!?」
ピート「戦闘中に 敵のスパイがブリッジへ入り込んだんだ。 …当然の行為だろう?」
一矢「確かに彼女はバーム星人だったかも 知れない! でも、だからといって スパイだとは限らないだろう!」
ピート「今のお前は冷静な判断が 出来ていない。大空魔竜の外へでも行って、 頭を冷やしてくるんだな」
一矢「何だとっ!?」
(殴る)
めぐみ「止めて、一矢君!!」
ピート「フン…。 頭に血が上った奴のパンチが効くものか」
ピート「それとも、カラテファイターの 力はその程度なのか?」
一矢「貴様ぁぁっ!」
サンシロー「みんな! 一矢を抑えてくれ!」
ヤマガタケ「まかしとけい!」
一矢「放せ! 放せぇっ!!」
ヤマガタケ「いいから、落ち着けよ!」
健一「いい加減にするんだ、一矢。 ここでお前が暴れたって、 何の解決にもなりはしない」
一矢「健一…!  お前もエリカを疑うのか…!?」
健一「彼女がバーム星人だったことは 紛れもない事実だ」
健一「だけど、お前がそうやって暴力を ふるうことを彼女が望むと思っているのか?」
一矢「う…」
剛健太郎「一矢君、健一の言う通りだ。 君がエリカ君を信じるなら、なおさら その拳をこらえなくてはならない」
剛健太郎「何故なら、暴力は他人だけでなく… 自分の心まで傷つけていくからだよ」
一矢「………」
大文字「エリカ君の件は 真相がはっきりしない以上、 現時点では何とも言えん」
大文字「しかし、仲間に暴力を ふるった点については申し開きは効かない。 君には自習室で反省してもらう」
一矢「はい…」

[大空魔竜・ブリーフィングルーム]

サンシロー「ピート…お前も言い過ぎだぜ」
ピート「サンシロー、 お前もとんだ甘ちゃんだな。 大空魔竜の情報が敵に漏れたんだぞ?」
サンシロー「エリカさんが 本当にスパイだったら、もっと具体的に 被害が出てるんじゃないのか?」
ピート「何だと…?」
サンシロー「サコン、どうだ?」
サコン「今のところ、 予備のガルバー以外に被害はない」
ピート「ガルバーだけでも充分だ。 それに…異星人など信用出来るものか」
健一「それは偏見だよ、ピート。生まれた星が 違うと言っても、相手は同じ人間なんだ」
めぐみ(健一達はボアザン星人と 地球人の間に生まれた…。だから、 エリカさんのことを信じたいのね……)
ピート「異星人や地下勢力との戦いで… 敵に情けなどかけていたら、 やられるのはこっちだ」
ピート「健一…… それをよく知っているのはバルマー戦役を 戦い抜いたお前達じゃないのか?」
健一「俺だって、全ての異星人と わかりあえるとは思っちゃいない」
健一「だが…バーム星人とは 平和的な話し合いが出来る段階まで いったんだ」
健一「そこで不幸な事件があったとは言え、 完全に相手を拒絶してしまうのは どうかと思う」
ピート「………」
健一「俺は……もしかしたら、一矢とエリカが 地球とバームの間をつなぐ架け橋に なるんじゃないかと思っているんだ……」


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