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彗星の来襲 アイビス ~ 第13話 ~

[暗闇]

???「アイビス…アイビス…」
アイビス「また、あんたなの…」
アイビス(負の心)「つれない返事ね…。 そろそろ負け犬である自分を 受け入れる気になった?」
アイビス「………」
アイビス(負の心)「まあいいわ。 今日はあなたが会いたがっている人を 連れてきてあげたわ…」
フィリオ「………」
アイビス「フィリオ…」
フィリオ「………」
アイビス「何か言ってよ、フィリオ…!  そうでないとあたしは…あたしは…」
アイビス(負の心)「虫のいい話しね、アイビス。 フィリオの下から去ったのは あなた自身じゃない?」
アイビス(負の心)「もうフィリオが 語りかけてくることはないわ… 夢を失ったあなたにはね」
アイビス「フィリオ…」
アイビス(負の心)「認めなさい、アイビス。 あなたは負け犬… もう這い上がることは出来ない」
アイビス「そんなことはない… あたしは飛べる…飛んでみせる…!」
アイビス(負の心)「…そして、また堕ちるのよ。 みんなの期待と夢を背負ったまま 醜く大地に叩きつけられるのよ」
アイビス(負の心)「そう…あなたの大事な フィリオ・プレスティの夢と共に…」
アイビス「やめて…!  思い出させないで…!」
アイビス(負の心)「受け入れるのよ、アイビス。 敗北者の烙印を押されたあなたは 二度と飛べない…」
アイビス(負の心)「もう二度と飛ぶことは 出来ないのよ!」
アイビス「いやだ…!  あたしは…あたしは…!」

《移動中・EARTH AREA》

[マザー・バンガード・休憩室]

アイビス「あたしに話って何です…?」
バニング「今までのアルテリオンの 稼働データを検討したのだが…」
バニング「はっきり言おう。 このままお前が戦闘を続けることは 大きな危険を伴う」
アイビス「………」
バニング「お前自身も薄々は 気づいているだろうが…時折、戦闘中に 意識が寸断されている瞬間がある」
バニング「ツグミに提出してもらった 戦闘中の心拍と脳波データからも その結果がはっきり出ている」
アイビス「だから、何です…?」
バニング「このままでは 作戦行動に支障をきたし、他の機体にも 危険が及ぶ可能性が高い」
バニング「最悪の場合… 一時的にではあるが、お前を戦列から 外す措置を取る」
アイビス「! あたしに アルテリオンに乗るなと…?」
アムロ「…そうだ」
バニング「心因性の問題を抱えた者を 前線に送り出すわけにはいかん。それに、 アルテリオンは貴重な機体だからな」
アイビス「あたしは軍属でもないし、 アルテリオンは個人の所有物です!  …勝手にさせてもらいます」
万丈「アイビス、バニング大尉は 君のことを心配しているんだ」
アイビス「…余計なお世話よ」
バニング「お前がまだ戦うつもりなら、 心を鍛えろ。戦場では精神が弱った 奴から死んでいく」
アイビス「…話がそれだけなら 失礼させてもらいます」
万丈「待つんだ、アイビス。 君の過去…DCにいた頃の事故の話は ツグミから聞かせてもらった」
アイビス「ツグミから…?」
万丈「ああ。彼女は君の症状のことを 相談に来たんだ」
アイビス「…だったら、 どうだというのよ…?  なぐさめやお説教なら結構よ!」
アムロ「…君の心の問題は君自身が 解決するしかない。だが、少しは 俺達にも頼って欲しいところだな」
アイビス「………」
アイビス「失礼します…」
(扉が開閉する・アイビスが立ち去る)
アムロ「アイビス…」
万丈「やれやれ…。 彼女がかかえている傷は 想像以上に深刻みたいだね」
バニング「ツグミ抜きで 話をしたのは逆効果だったかも 知れんな」
アムロ「………」
バニング「どうした、アムロ大尉?」
アムロ「彼女の気持ちは何となく 理解できるな。かつて、俺も 似たような経験をしたことがあるから…」
アムロ「ああなったら、 後は自分自身で這い上がるしかない」
バニング「…問題は、それまでに あいつが生き残れるかどうかだ…」
アムロ「ええ…」

[格納デッキ]

カミーユ「どうだ、小介?」
小介「う~ん…やっぱり、 このスペックであの出力は低すぎますね」
小介「テスラ・ドライブの 性能を活かしていないとしか 言いようがありません」
コウ「じゃあ、アルテリオンには 何か欠陥があるのか?」
サコン「俺の情報が正しければ、この機体の 設計はフィリオ・プレスティと聞く。 そんなミスがあるとは思えないが…」
ケーラ「そのフィリオってのは誰だい?」
サコン「DCのアーマードモジュールの 主任開発員だ。まだ若いが、その才能と 将来性は折り紙付きだ」
ケーラ「ふ~ん。若くて優秀なら、 カミーユのライバルってところだね」
カミーユ「冷やかさないで下さいよ、 ケーラ中尉」
キース「で…そのフィリオっていう 若き天才さんが、何だってこんな アンバランスな機体を作ったんだい?」
サコン「バランスが悪いわけじゃない。 考えられる結論は一つ…、 故意に出力が抑えられているのだろう」
小介「僕もそう思いますね」
ツグミ「…さすがですね、皆さん…。 こんなにも早くアルテリオンの リミッターに気づくなんて…」
サコン「リミッター?」
ツグミ「そうです…アルテリオンの パワーダウンは私が設定したものです…」
ケーラ「あんた自身がかい…!?」
ツグミ「ええ…。私はアルテリオンの システム開発者です。制御系の調整なら 1人で出来ることです」
サコン「なるほど…アイビスの 未熟な腕でも機体を扱えるように したわけか」
ツグミ「その通りです…。ですが、 これはあくまで一時的な処置です」
コウ「一時的って…じゃあ、君は あのアイビスがアルテリオンを いつか使いこなせると思ってるのかい?」
キース「いくら何でも あいつの実力じゃ無茶な話だと 思うけどな…」
ツグミ「アイビスならやれます!  やれるはずなんです!」
ツグミ「彼女ならアルテリオンの力を 最大限に引き出せるはずです…!  彼女なら、絶対に…!」
コウ「ツグミ…」
ツグミ「…す、すいません…。 つい取り乱してしまって…」
ツグミ「…でも、私…待っているんです…。 アイビスが自分を取り戻して、 真のパイロットになってくれる時を…」
ケーラ「ふ~ん…。 あんた、彼女を信じてるんだね」
(速い足音)

アイビス「何してるのよ、ツグミ!  アルテリオンを他人にいじらせるなんて!」
ツグミ「アイビス…」
キース「ちょっと待てよ。 俺達はアルテリオンの整備をしていた だけなんだぜ」
アイビス「他人は口出ししないで…!  これはあたしとツグミの問題よ」
ケーラ「…気に食わないね。 背中を預け合うあたし達を 他人呼ばわりかい?」
アイビス「………」
(アラート)

シモン「各員に通達!  所属不明機が急速接近中!  機数1、あと3分で接触します!」
カミーユ「何て速さだ! それじゃ、 こっちの出撃準備が間に合わない!」
アイビス「…ツグミ、出るよ!」
ツグミ「アイビス…!?  相手は正体不明の超高速機なのよ!」
アイビス「機動力ならアルテリオンに 勝る機体はないはずよ!」
ツグミ「…わかったわ。 私達でみんなが出撃するまでの 時間を稼ぎましょう」


第13話
彗星の来襲

〔戦域:地球衛星軌道上〕

(大空魔竜、マザー・バンガード、アルビオンが出現済み、アルテリオンが出撃)
ベラ「アイビス、もうすぐ大気圏への 突入時刻です。接近する機体が敵でも 深追いする必要はありません」
アイビス「………」
ツグミ「聞いているの、アイビス?」
アイビス「聞いているさ!  …だけど、敵ならばやってみせる…!」
アイビス「あたしだって… あたしだってやれるってことを みんなに見せてやる!」
ツグミ「アイビス…」
シモン「正面、来ます!」
(北西端にベガリオンが出現)
アイビス「あれは…!?」
ツグミ「あのシルエット… まさか!?」
(ベガリオンがブーストをかけて南東へ移動)
スレイ「ついに…ついに見つけたぞ、 アルテリオン…!」
スレイ(兄様…。 見えますか…兄様のアルテリオンです…)
スレイ(兄様の夢は私が継ぎます。 …だから、私に力を貸して下さい…)
ツグミ「あれは…あの機体は…!?」
スレイ「アルテリオンの パイロットに告げる。こちらは ベガリオンのスレイ・プレスティ…」
スレイ「その機体は我が兄、 フィリオ・プレスティのものである。 大人しく機体を明け渡してもらおう」
アイビス「スレイ…プレスティ…。 ナンバー01のスレイ…」
ツグミ「スレイ、聞こえる?  こちらは元プロジェクトTD所属の ツグミ・タカクラです」
スレイ「システム開発チームの タカクラ主任か?」
ツグミ「ええ…。 久しぶりね、スレイ…」
アムロ「赤い機体のパイロットは アイビス達の知り合いらしいな」
コウ「あのスレイという女性、 アイビスと同じく元DC所属の テストパイロットなのか…」
モンシア「ち…じゃあ戦闘は無しかよ。 スクランブルをかけて損したぜ…」
ツグミ「スレイ…アルテリオンには アイビスが乗っているのよ。 あなたも覚えているでしょう?」
アイビス「………」
スレイ「アイビスだと…?  そんな人間は私の記憶にはないな…」
ツグミ「え…スレイ…?」
スレイ「待てよ…、 まだDCに所属していた頃、 同じ名前を聞いた記憶がある…」
アイビス「………」
スレイ「…プロジェクトTDにいた その女はテスト機での訓練飛行中に 操縦ミスで墜落し…」
スレイ「そのままDCを逃げるように 去っていった負け犬だ」
アイビス「………」
ツグミ「もうやめて、スレイ!  アイビスは…」
スレイ「あの女はプロジェクトTDと 兄様との夢を自ら捨てていった 卑怯者だ!」
スレイ「そんな女が何故兄様の遺した アルテリオンに乗っている!?」
アイビス「遺した…?  フィリオは…フィリオ・プレスティは どうしたの!?」
スレイ「…兄様は、 もうこの世にはいない…」
スレイ「兄様は星々の海を夢見たまま 永遠の眠りについた…」
アイビス「そんな…!」
アイビス「そんな…フィリオが… 死んでいただなんて…!」
ツグミ「………」
スレイ「アイビス!  今すぐアルテリオンから降りろ!」
スレイ「お前のような女に アルテリオンに乗る資格などない!」
アイビス「もし…断ったら…」
スレイ「その時は、コックピットから お前を引きずり出してでも アルテリオンを取り戻す…!」
ツグミ「やめて、スレイ!  フィリオがそんなことを望んでいると 思うの!」
スレイ「ツグミ…お前も命が惜しければ アルテリオンから降りろ」
スレイ「さあ!  お前達に与えられた選択肢は二つだ!  死ぬか、それとも機体から降りるかだ!」
アイビス「………」

アイビス選択

「スレイと戦う」
「アルテリオンを渡す」


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