ベルガン「く…適当に切り上げるつもりが
引き際を誤まったか…!」
(スカールークが爆発、撤退)
リヒテル「父を暗殺しただけでなく、
妹まで拉致していたとは!!
もはや許せん!!」
一矢「エリカが
父さんの仇の妹だなんて…!
そんなことがあってたまるかっ!!」
リヒテル「黙れ!
エリカがお前達から受けた辱め…
貴様の命によってあがなってくれるわ!」
健一「俺の父さん達が、リオン大元帥の
暗殺など目論むわけがない!」
健一「戦争を仕掛けるより、
事の真相を追究する方が先じゃないのか!」
リヒテル「卑怯者め! 自分達の犯した罪を
今さら言い訳する気か!」
リヒテル「いかなる兵器と言えども、
我らには太刀打ち出来ぬぞ!」
サンシロー「こっちだって、
今まで何もしてこなかったわけじゃない!」
サンシロー「お前達が地球を侵略する気なら、
受けて立ってやるぜ!!」
リヒテル「ええい、地球人め!
この借りは地球本星にて返してくれる!
全軍撤退だ!」
(リヒテル艦が爆発)
ピート「大文字博士、敵は全て後退しました」
大文字「うむ…。だが、彼らの本隊は
そのまま地球へと向っただろう…。
こちらも対策を考えねばならん…」
ピート「わかりました。
各機にアクシズへ帰還指示を出します」
一矢「………」
ナナ「お兄ちゃん…」
一矢(俺達は
もう二度と会うことは出来ないのか…?)
マルガレーテ「ああ…おひいさま…
よくぞ…よくぞご無事で…!」
エリカ「心配をかけてごめんなさい、
マルガレーテ…」
リヒテル「…エリカ、率直に尋ねよう。
そちは何故、かくも長く地球人達と
行動を共にしていた」
マルガレーテ「お話した通りで
ございましょう。おひいさまは
記憶を失われて…」
リヒテル「マルガレーテ、
そちに聞いておるのではない!」
リヒテル「余は地球攻略司令官として
聞いているのだ。答えろ、エリカ!」
エリカ「………」
マルガレーテ「おひいさま…」
リヒテル「何故…何故黙っている!?
やましいことがないのなら話せるはず!」
ベルガン「おやめなさい、リヒテル提督。
…その理由は提督もご存知のはずでしょう
あの決死の逃避行を見せられては」
エリカ「………」
リヒテル「ベルガン殿…、
これは余の家族の問題だ。
余計な口出しはしないでもらおう」
ベルガン「そうですかな?
地球攻略司令の妹が敵である地球人と
恋に落ちる…」
ベルガン「問題は公のものと
言えるでしょう。断固たる態度で
妹君に接してもらいたいものですな」
リヒテル「く…」
ベルガン(これでいい。
ここでリヒテルが妹をかばえば、
奴の弱みを握ることになる)
ベルガン(そうすれば、労せずして
リヒテルを私のあやつり人形に
することが出来よう…)
エリカ「兄上、聞いて下さい…」
リヒテル「…ええい、黙れ!
こともあろうに憎むべき地球人、
父の仇である地球人を愛すなど…!」
リヒテル「貴様は
もう余の妹でもバーム星人でもない!
今、この場でその首をはねてくれる!」
エリカ「…はい…
兄上がそれを望むのなら…」
マルガレーテ「何をなさいます、若!
おやめ下さい!」
リヒテル「どけい、マルガレーテ!
そちには血のつながった妹の裏切りが
どれほど憎いのかわからぬのだ!」
マルガレーテ「おやめ下さい、若!
こんな光景をお父様がご覧になったら…」
リヒテル「その父を殺した地球人と
エリカは通じていたのだぞ!
どけ! どけ! どけい!」
マルガレーテ「若! どうしてもと
おっしゃるなら私をお斬り下さい!
それで気が収まるなら!」
リヒテル「マルガレーテ…貴様っ!」
マルガレーテ「私のお世話が
至らなかったのでございます!
私を地獄でもどこにでもおやり下さい!」
マルガレーテ「おひいさまは一時の心の迷い。
乳母である私の不始末として
私をお斬り下さいませ!」
リヒテル「くっ…!」
マルガレーテ「いけません!
おひいさまを…おひいさまを斬るなど!」
エリカ「マルガレーテ…」
リヒテル「…ええい! 勝手にするがいい!」
マルガレーテ「ありがとうございます!
ありがとうございます…若…」
リヒテル「だが、エリカ!
貴様は裏切り者として死に至るまで
石牢から一歩も外へは出さぬ!」
エリカ「はい…」
リヒテル「もう余に肉親はおらぬ…。
バーム星人、エリカは死んだ…。
死んだのだ…」
エリカ(さようなら一矢…。
私達は二度と会うことはないでしょう…。
ただ、あなたの無事を遠くから祈ります…)
一矢「ピート! 何故エリカを撃った!?」
ピート「敵のスパイが戦闘中、
ブリッジに入り込んだんだぞ。
捕獲、あるいは射殺は当然の行為だ」
一矢「確かに彼女はバーム星人だったかも
知れない…。だが、だからといって
スパイであるとは限らないじゃないか!」
ピート「フン…女にたぶらかされて
ついに正常な判断を失ったか…」
一矢「何だとぉぉぉっ!?」
(殴る)
ミドリ「きゃあっ!」
ピート「フン…。
頭に血が上った奴のパンチが効くものか」
ピート「…それともカラテファイターの
力はその程度なのか?」
一矢「貴様っ!」
京四郎「落ち着け、一矢!!」
一矢「止めるな、京四郎!!」
健一「いい加減にするんだ、一矢。
ここでお前が暴れたって、
何の解決にもなりはしない」
一矢「健一…!
お前もエリカを疑うのか…!?」
健一「彼女がバーム星人だったことは
紛れもない事実だ」
健一「だけど、お前がそうやって暴力を
ふるうことを彼女が望むと思っているのか?」
一矢「う…」
剛健太郎「一矢君、健一の言う通りだ。
君がエリカ君を信じるなら、なおさら
その拳をこらえなくてはならない」
剛健太郎「何故なら、暴力は他人だけでなく…
自分の心まで傷つけていくからだよ」
一矢「………」
大文字「エリカ君の件は
真相がはっきりしない以上、
現時点では何とも言えん」
大文字「しかし、仲間に暴力を
ふるった点については申し開きは効かない。
君には自習室で反省してもらう」
一矢「はい…」
サンシロー「だか、ピート…
お前もさっきは言い過ぎだぞ」
ピート「サンシロー、
お前もとんだ甘ちゃんだな。
今は生きるか死ぬかの戦いの時だぞ」
サンシロー「それはわかっているさ。
だが、そんな時だからこそ、人を信じる
気持ちを大切にするべきじゃないか?」
ベイト「だが、相手は異星人だ。
俺達とはメンタリティが違う。
…信用できるとは思えんね」
健一「…それは偏見です」
めぐみ(健一達はボアザン星人と地球人の
間に生まれた…。だからエリカさんと
一矢の愛を信じたいのね…)
ジュドー「異星人だから地球人だからって、
差別するのは今時流行らないぜ?」
トビア「そうですよ。
敵に属する人間だって、正しい考えを
持った人はいるはずです」
ピート「だが、異星人や地下勢力との
戦いで敵に情けをかけていたら…
やられるのはこちらだ」
ジュドー「そうやって最初から
決めつけるの、おかしいんじゃない?」
ピート「何だと?」
ジュドー「プルやプルツー、それに
フォウさんは前の戦いで俺達の敵だった」
ジュドー「けど、互いに
わかりあえることが出来たから…
こうしてみんな一緒にいられるんだ」
ピート「そんな特例には
いちいち付き合ってられんな」
大文字「いい加減にしたまえ、諸君。
本件については真相が解明されるまで、
一切の発言を禁ずる」
大文字「今は地球へ向かったバーム軍と
サイド3を目指しているネオ・ジオン
艦隊への対処が最重要問題なのだぞ」
ジュドー「………」
ピート「………」
シナプス「大尉、サイド3の状況について
何か判明したか?」
バニング「いえ…音信が途絶えたままです。
民間レベルでも情報は入って来ません」
コウ「…既にネオ・ジオン艦隊に
占領されてしまったんでしょうか?」
シナプス「もしそうなら、何らかの情報が
入るはずだ。元ジオン公国のサイドとは
言え、今は連邦の管轄下にいるのだからな」
ベラ「シナプス大佐…あのサイドには
戦災避難用の応急コロニー、
スウィート・ウォーターがあります」
キンケドゥ「そして、そこには
ティターンズによって追われた反地球連邦
主義者が数多くいます。もしかすると…」
シナプス「…コロニーぐるみで
ネオ・ジオンに協力する可能性が
あるということか?」
キンケドゥ「ええ。俺達は
バルマー戦役後のコロニーの動きは
知っているつもりです」
キンケドゥ「最悪の場合、サイドごと
ネオ・ジオンを受け入れることも…」
シモン「艦長、サイド3の情報が入りました!
ネオ・ジオンがスウィート・ウォーターを
占拠したようです!!」
シナプス「!」
コウ「な…何だって!?」
シナプス「連邦軍の
駐留部隊は何をしていたのだ!?」
シモン「お、おそらく、
ネオ・ジオン艦隊に…」
キンケドゥ「いや、違うな…。
コロニー駐留艦隊の一部が
ネオ・ジオンに協力したんだろう」
コウ「そんな馬鹿な!」
ベラ「いえ…それが真相よ。
そうでなければ、ネオ・ジオンの
動きはあまりに早過ぎるわ」
コウ「……!」
シナプス「…スペースノイドの中には
ネオ・ジオンの賛同者も少なくはない。
それは軍内部でも例外ではないのだ」
シナプス「ネオ・ジオンがここまで
我々に実態をつかませなかったのは、
連邦軍内の協力者の力にもよる…」
シナプス「そして、シャア・アズナブルが
難民収容コロニーであるスウィート・
ウォーターを狙った目的は…」
キンケドゥ「ザビ家による血の支配ではなく、
コロニー自治権の獲得を掲げることで…」
キンケドゥ「スペースノイドの
反地球連邦思想を結集させるつもりでしょう」
シナプス「おそらくはな。
シャアは軍事力ではなく、政治力で
連邦を圧迫する気か…」
ベラ「そして…
ジオン・ダイクンの息子であり、前の
大戦でダカール演説を行ったあの人は…」
バニング「かつての
クイーン・リリーナ以上に地球圏の
シンボルになり得る条件を備えている…」
シナプス「………」
シモン「か、艦長!
シャア・アズナブルの演説が
地球圏に向けて放送されています!」
シナプス「何!?」
シャア「我々がこのスウィート・ウォーターを
占拠した目的…それは地球圏に新たな
混乱を生じさせることではなく…」
シャア「過去の宇宙戦争で生じた難民を救い、
地球連邦政府によって弾圧を受けるスペース
ノイドを真の意味で自立させるためである」
シャア「そのための手始めとして、我々は
地球連邦にスウィート・ウォーターの
自治権の獲得を要求したい」
シャア「そして同時に恒久の平和を得るため、
我らネオ・ジオンが地球圏の防衛の
先頭に立つことを約束する」
シャア「そのためにも、
まずは連邦政府が我々と同じ交渉の
テーブルにつくことを希望する」
シャア「この要求が受け入れられない場合、
我々は地球連邦政府に対し、実力行使を
行う心構えである……」
ファ「アムロ大尉! 大変です!」
チェーン「ネオ・ジオン艦隊が
スウィート・ウォーターを占拠しました!」
アムロ「ああ…知っている。
さっき、放送を見た」
カミーユ「やはり、
クワトロ大尉はネオ・ジオンに…」
アムロ「奴が姿を消した時から
この日が来ることはわかっていたさ」
アムロ「前の大戦が集結した後、
不本意とは言えティターンズに
与していたシャアは…」
アムロ「地球連邦内部の腐敗ぶりを
目の当たりにしたからな」
カミーユ「あの人は本当に連邦と平和的な
交渉を希望しているんでしょうか…?」
アムロ「半分は本気だろう…」
アムロ「だが、シャア・アズナブルと
ジオンの名を出したからには、
奴も相応の覚悟をしているに違いない」
カミーユ「その覚悟って、まさか…」
アムロ「………」
カミーユ「アムロ大尉、今すぐ
スウィート・ウォーターに行きましょう!
そして、クワトロ大尉を止めるんです!」
アムロ「…いや、それは得策じゃない。
今、戦いを仕掛けたら俺達は
世論を敵に回すことになる」
アムロ「真意はどうあれ、シャアは
連邦との交渉を望んでいるからな…」
カミーユ「しかし!」
アムロ「今の政府にネオ・ジオンの要求を
はねのける度胸はない。それに、シャアも
異星人が現れたことを知っているはずだ」
アムロ「現状で不要に戦力を削る真似は
しないだろう。だから、俺達も
今の内に戦力を結集させるべきだ」
カミーユ「………」
アムロ「チェーン、
俺達はアクシズへ向かい特務部隊と
合流する。機体の整備を頼む」
チェーン「わかりました、大尉。
では、νガンダムの先行量産機を
用意します」
アムロ「νガンダムとオーキスの
再調整は君とニナに任せる。
スケジュールは前倒しで頼むぞ」
チェーン「はい!」
ファ「カミーユ…
私達、クワトロ大尉と戦うしかないの?」
カミーユ「…ファ、認めるしかない…。
あの人はもうクワトロ・バジーナじゃない」
ファ「……!」
カミーユ「…シャア・アズナブルなんだ」