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守るべきもの、倒すべき敵 アラド ~ 第4話 ~

[真っ暗]

アラド(…うう…っ。ここは……?)
アラド(…おれ… どうなっちまったんだ?)
ゼオラ「…アラド…。 ねえ、アラド……」
アラド(ゼオラ……)
ゼオラ「アラド、 私達の配属先が決まったわよ」
アラド(配属先……? どこだ…?)
ゼオラ「喜んで。 ティターンズよ、ティターンズ。 私達、地球を守るために戦うのよ」
アラド(…地球を守るため、か……)
ゼオラ「ね、アラド。私と約束して…」
アラド(約束……?)
ゼオラ「そう。これから先…何があっても 二人で頑張って、生き残りましょ…」
アラド(………)
ゼオラ「そして……自由の身になったら、 散り散りになったスクールの子達を…」
ゼオラ「私達の仲間を探すの」
アラド(ああ……そうだったな…。 それが……お前との約束だった……)
アラド(…でも…すまねえ、ゼオラ…。 おれは……………)

[医務室]

アラド「……おれは…………」
ファ「…気がついた?」
アラド「! こ、ここは…!?」
ファ「アルビオンの医務室よ」
アラド「アルビオン!?  敵の戦艦かよ!?  お、おれはいったい……!!」
ファ「…あなたは撃墜されて… この艦に収容されたの」
アラド「…そ、そうか…。 おれは…あの時、ゼオラを……」
ヒイロ「ヒュッケバインに感謝するんだな。 …あれの装甲が強固でなければ、 お前は今頃死んでいた」
アラド「あ、あんた!  うっ! い、いててて!!」
ファ「動いちゃ駄目よ。 命には別状ないけど、安静にしてなきゃ…」
アラド「ゼ、ゼオラは… ゼオラはどうなったんだ!?」
五飛「…心配はいらん。 あの女なら、ヤザンと共に撤退した」
アラド「そ、そうか…。 なら、良かった……」
五飛「…俺達は艦長に報告してくる。 後は頼む」
ファ「わかったわ」
アラド「ま、待ってくれよ」
ヒイロ「何だ?」
アラド「…デュオ、あんた…… どうしておれを助けたんだ?  それに、あの時…狙いを外して……」
ヒイロ「…俺の任務には ヒュッケバインMk-IIIの奪回も 含まれていた。それだけだ」
五飛「………」
アラド「だったら、 おれまで助ける必要なんて なかったんじゃないのかよ、デュオ?」
ヒイロ「…一つ言っておく」
アラド「?」
ヒイロ「俺の本当の名はヒイロ・ユイだ」
(扉が開閉する・ヒイロ達が立ち去る)
アラド「…結局、 だまされっぱなしだったってこと…?」

[通路]

五飛「…甘いな。何故、奴を助けた?」
ヒイロ「…コックピットを潰せば、 後で手間が増えるだけだ」
五飛「だが、奴はティターンズの亡霊だ。 生かしておく価値があるのか?」
ヒイロ「…あいつの育てられた境遇は 俺達と少し似ている」
五飛「…同情でもしたというのか?」
ヒイロ「…リリーナやカトルが あの場に居合わせれば、アラドを 助けようとしただろう」
五飛「お前………」
ヒイロ「それに、奴は悪運も強い」
五飛「フッ…まあいい。ブリッジへ行くぞ」

[アルビオン・ブリッジ]

シナプス「…ヤザンの背後にいるのは アナハイム・エレクトロニクスだと?」
ヒイロ「…確固たる証拠は つかめなかったが…」
五飛「補給物資や補充のモビルスーツから 判断して…その可能性は高い」
バニング「シナプス艦長…」
シナプス「うむ。アナハイムの暗躍は 前大戦の時から言われておったことだ」
シナプス「ただ…黒幕が誰であるか わからなかったのは残念だな」
ヒイロ「見当はついている。 後は確証を得るだけだ」
シナプス「では、引き続きプリベンターの 特別任務を続行するつもりか?」
五飛「いや…任務は終わった。 次の司令があるまで、行動を共にする」
シナプス「それは助かる。以後は バニング大尉の指示に従ってくれ」
ヒイロ「了解した」
(扉が開閉する・ヒイロ達が立ち去る)
シナプス「…それで、バニング大尉。 ヒュッケバインMk-IIIの方は?」
バニング「現在、修理中です」
シナプス「使えるのかね?」
バニング「あの機体は動力源を通常の物に 交換しているようなので、何とか なりそうですが…パイロットがいません」
シナプス「そうか…。 ヒイロと五飛に加え、少しでも戦力を 増強しておきたかったところだが…」
バニング「そのことですが、艦長。 自分に考えがあります……」

[休憩室]

コウ「自分達にアラドを説得しろと?」
バニング「そうだ。出来れば、 Mk-IIIと共にこちらの戦力としたい」
コウ「…ヒイロの話では、 彼はティターンズ再建のために養成された パイロットだと聞きますが…」
キース「そうそう。女の子の方は ガチガチの地球至上主義だったし…」
エマ「そう教えられてきたのでは 仕方がなくてよ」
キース「え?」
エマ「私もティターンズに入ったばかりの 頃は、その主義主張にあまり疑問を 感じていなかったわ」
カミーユ「…放っておけば、 ジェリドのようになる、と?」
エマ「…ええ。 ティターンズだって、全員が全員 彼のような人間じゃなかった…」
エマ「最初は皆、地球圏の秩序を守るという 使命感を持っていた…。でも、途中で 進むべき道を間違えてしまったのよ」
カミーユ(そして、 ティターンズは滅びた……)
バニング「アラドはまだヒヨッコだ。 これからの鍛え方次第で何とでもなる」
キース「じゃあ、説得するのは 自分達よりバニング大尉の方が 適任ではありませんか?」
バニング「俺は、お前達やモンシアの 面倒を見るだけで手一杯でな」
コウ「しかし、上手くいくかどうか…」
エマ「ウラキ少尉やキース少尉だって、 いずれは自分の部下を持つようになるわ」
エマ「ここで上司や先輩としての在り方を 勉強しておくのもよくてよ」
コウ「…了解です。 出来るだけのことはしてみます」
(扉が開閉する・コウ達が立ち去る)
ベイト「…バニング大尉、 ジオン共は仲良しゴッコをやっていて 勝てる相手じゃありませんぜ」
バニング「だからこそ、だ。今の内に 少しでも戦力を確保しておきたい」
ベイト「それで寝首をかかれちゃあ、 笑い話にもなりませんよ?」
エマ「大丈夫だと思いますよ、 あの子は…」
バニング「…身体検査の結果、 薬物投与などの痕跡は見られるが… 強化されているわけではない」
バニング「無論、精神操作を 受けている可能性は捨てきれないが… 情緒は安定している方だ」
エマ「今のところ、ドクターも彼は 強化人間の類ではないと言ってますしね」
ベイト「だが、奴は敵なんだぞ?  そいつをあっさりと引き入れるなんざ…」
モンシア「ま、おめえは知らねえだろうが… ロンド・ベル隊じゃあ、よくある話でな」
ベイト「本当か?」
エマ「ご存じのとおり、自分もかつては ティターンズに所属していました。 そして今は…ご覧のとおりです」
モンシア「それに、あのヒイロや五飛だって 以前は敵だったんだぜ?」
モンシア「おまけによ、五飛の奴は マリーメイア軍戦の時も、青筋立てて 敵に回りやがった」
モンシア「それが今やお仲間…。 そういうもんさ」
ベイト「ま、郷に入れば郷に従え… お前とバニング大尉が そこまで言うのなら、構わんがね」

[独房]

コウ「……これは……」
カミーユ「…………」
アラド「ウマい!  やっぱ、強い部隊ってのはメシも違うな。 おかわりしていいッスか?」
ファ「え? い、いいけど……」
アラド「じゃあ、ライス大盛りで!」
ファ「お、大盛り…ね…」
カミーユ「…ファ、これは?」
ファ「見てのとおりよ。 もう三人前も食べてる…」
キース「捕虜になって…落ち込んでるか、 暴れてるか、脱走する算段でもしてるのかと 思ってたけど…」
アラド「パイロットは 食える内に食っておけ…」
アラド「あのホワイト・ベースの ブライト・ノア艦長も一年戦争中に そう言っていたって聞きます」
キース「ホントなのか、カミーユ?」
カミーユ「さあ…?  今度会った時にでも聞いておくよ」
コウ「アラド・バランガ 曹長…だったね。歳はいくつなんだ?」
アラド「15です」
コウ「15……。 君はどうしてスクールに入ったんだ?」
アラド「気づいたら、あそこにいたんです。 それ以前のことは、よく覚えてません」
コウ「何だって…?」
カミーユ(…まるで フォウやロザミィみたいだ……)
コウ「過去の記憶がない…ということか?」
アラド「まあ、そうッスけど… 別に気にしてません」
アラド「スクールなんかに 入れられたくらいだから、どうせロクな 過去じゃないんだろうし」
キース「何て言うか、さばけてるねえ。 もうちょっと悲愴感が漂ってるかと 思ってたけど」
コウ「アラド… 君は何のために戦っているんだ?」
アラド「…生きてくためです。 おれ、他に出来ることはないし…」
カミーユ(…そう仕込まれたと言うのか?)
アラド「それに…ティターンズの再建とか、 ジャミトフやバスクの仇討ちとか… 正直、そんなのどうでもいいし」
コウ「そうか…」
アラド「あの… おかわり、もう一杯いいッスか?」
(アラート)
カミーユ「何だ!?」
シモン「総員、第1種戦闘配置!  繰り返す、総員第1種戦闘配置!」
キース「コウ、俺達も行かなくちゃ!」
コウ「ああ!  アラド、ここを動くんじゃないぞ!」
(扉が開閉する)
アラド(……行ったか)
アラド(さて…。 メシまで食わせてもらって、 抜け出すのは気が引けるけど……)
アラド(あいつとの 約束を守るためには……)

[アルビオン・ブリッジ]

(アラート)
シモン「間違いありません!  サイド4の駐留軍が何者かの攻撃を 受けています!」
シナプス「最大戦速でサイド4へ向かえ!」
パサロフ「了解!」
シナプス「シモン、 敵の識別は出来んのか?」
シモン「通信を傍受した限りでは、 小型の無人機動兵器に襲われていると…」
シナプス「無人機動兵器だと!?  まさか……!」


第4話
守るべきもの、倒すべき敵

〔戦域:サイド4コロニー周辺宙域〕

ジレ「……テストの結果は?」
CB兵「良好です。 コロニー駐留軍をほぼ壊滅させました」
ジレ「ふむ…。 例の連中への手土産としては充分か」
ジレ(それに、 いざという時の切り札にもなる…)
ジレ「よし、次段階へ移行せよ」
(ビーコン)
CB兵「艦長! この宙域へ接近する 連邦軍の戦艦をキャッチしました!」
ジレ「何…?」
(アルビオンが出現)
シナプス「む……やはりな」
コウ「あの部隊は…!!」
バニング「クロスボーン・バンガードか!」
キース「ええっ!?  あいつらって、壊滅したはずじゃ…!」
カミーユ「ああ…イージス計画の後、 総帥のマイッツァー・ロナが死亡し…」
カミーユ「ベラ・ロナ…いや、セシリーが 貴族主義を否定して、クロスボーン・ バンガードの組織は瓦解した…」
エマ「その後、セシリー達は 行方不明になってしまったけどね…」
カミーユ「ええ…」
エマ「…でも、 今頃どうしてクロスボーンが?」
キース「さ、さあ…?」
バニング「何にせよ、奴らが 目の前にいるのは紛れもない事実だ。 過去を詮索しても仕方がない」
コウ「は、はい!」
シナプス(デラーズ・フリートのみならず、 クロスボーン・バンガードまで活動を 再開していたとは……)
シナプス(これはただの小競り合いでは 済まん…場合によっては、大規模な 戦争に発展するかも知れん)
シナプス「よし、本艦はこの位置に固定!  モビルスーツ部隊、出撃せよ!」
(出撃準備)
ジレ「モビルスーツを出したか。 各機、迎撃せよ!」
(作戦目的表示)

〈2EP〉

ジレ「よし、ここで第2段階のテストを行う。 バグを放出せよ!」
(敵機増援が出現)
カミーユ「何!? バグだと!?」
モンシア「まさか、あいつら… あれでコロニーを乗っ取るつもりか!?」
ジレ「フフフ…コロニーへ向かうバグと 我々の部隊…その二つに対処できるか?」
五飛「コロニーの住人を抹殺する気か!?  それが貴様らの正義なのか!?」
ジレ「そうだ」
五飛「なら、邪悪な意思を持つ者は… この俺が全て倒す!」
ジレ「バグに意思などない。 誰の良心も痛めることなく… 無作為の粛清を行うだけだ」
五飛「貴様…!」
バニング「各機、優先してバグを落とせ!  あれがコロニーの中へ進入したら、 大変なことになる!」
キース「け、けど、あの距離じゃ 追いつけないかも知れませんよ!?」
(ビーコン)
シナプス「!?」
シモン「艦長! 格納庫で ヒュッケバインMk-IIIが 発進態勢に入っています!」
シナプス「!  アラド・バランガか!」
(ヒュッケバインMk-IIIが出撃)
カミーユ「アラド、どういうつもりだ!?」
アラド「…助けてもらった上に、メシまで ご馳走になって申し訳ないんだけど… おれ、行かなきゃならないんです」
コウ「行くって…どこへ!?」
カミーユ「まさか、 ヤザン達の所へ戻るつもりか!?」
アラド「…すみません。 あいつとの約束を…守らなきゃ」
コウ「あいつって…!?」
(ヒュッケバインMk-IIIが南東へ移動)
キース「お、おい! この状況を 放っておいて行くつもりなのかよ!?」
ファ「そうよ! バグを放っておいたら… コロニーの人達は全滅するのよ!?」
ファ「お願いだから、私達に協力して!」
アラド「…くっ…! でも、おれは…」
モンシア「ケッ、 大方ビビってんだろうよ、あいつは」
ベイト「ああ。 あんなガキに構ってる暇はねえ」
五飛「戦う意思のない者に用はない。 ここからさっさと去れ!」
アラド「う………」
コウ(アラド……)
ヒイロ(…奴の正念場か)
バニング「各機へ!  バグがコロニーへ到達する前に……」
(コロニーを指す)
バニング「何としても撃墜しろ!」
コウ「バニング大尉!  アラドを放っておいていいんですか!?」
バニング「奴がこの状況を見て、 何もせんようだったら… そこまでの男だったということだ!」
コウ「……!」
バニング「いいから、攻撃を開始しろ!」
(作戦目的表示)

〈3PP〉

キース「バニング大尉! バグは 真っ直ぐコロニーへ向かっています!」
アラド「………!」
ゼオラ(…アラド… あの時の約束………忘れたの?)
アラド「ゼオラ……!」
ゼオラ(…ね、アラド。私と約束して……)
アラド「…わかってる…」
ゼオラ(…これから先…何があっても 二人で頑張って、生き残りましょ……)
アラド「わかってるよ!!」
キース「こ、このままじゃ…!!」
バニング「泣き言を言うな、キース!  何としても追いついて、叩き落とせ!」
アラド「!!」
アラド「ち、ちきしょう……!  ちきしょぉぉぉっ!!」
(ヒュッケバインMk-IIIがコロニーの近くへ移動)
カミーユ「アラド!?」
モンシア「あのガキ、何をするつもりだ!?」
アラド「ちきしょう!!  さあ、どっからでもかかってきやがれ、 この野郎!!」
アラド「クロスボーンだろうが、 バグだろうが! どいつもこいつも、 おれが叩き落してやるっ!!」
ベイト「あいつ……!」
コウ「アラド……!」
ヒイロ「フッ…やはりな」
コウ「バニング大尉!」
バニング「ああ…。 あいつも一端の男だったようだな」
キース「で、でも…たった一機だけでは!」
シモン「艦長!  この宙域に急速接近してくる艦が!!」
シナプス「!!」
(マザー・バンガードと所属モビルスーツが出現)
???(ベラ)「…どうやら、間に合ったようですね」
???(キンケドゥ)「ああ。 コロニー側から回りこんで正解だった」
???(ウモン)「それにしても、バグを使うとは… あいつらも懲りん連中じゃな」
???(ザビーネ)「…鉄仮面の怨念に引きずられて、 同じ過ちを繰り返すつもりか」
ジレ「や、奴らは……まさか!!」
モンシア「な、何だぁ!? あいつら!!」
カミーユ「ガンダム…!?  しかも、クロスボーンの紋章を付けた…!」
キース「そ、それどころか、 ドクロのマークも付いてるけど…」
モンシア「おい、ありゃ何の冗談だ!?  海賊とでも言うのかよ!?」
シナプス「敵の増援か!?」
シモン「し、識別は……不明です!!」
シナプス「だが、連中は クロスボーンの紋章を掲げているぞ!」
???(ベラ)「…アルビオン隊へ。 これより貴隊を援護します」
シモン「艦長! 所属不明の艦より通信が!」
シナプス「こちらを援護するだと…?  クロスボーンがか?」
???(ベラ)「わけあって、 今は正体を明かすことは出来ません…」
???(ベラ)「しかし、私達はあなた方の味方です」
シナプス「…その言葉を信用しろと?」
???(ベラ)「ええ…それを今から証明します」
エマ(あの声……もしかして!?)
???(ベラ)「各機へ!  バグへ攻撃を開始して下さい!」
???(キンケドゥ)「了解だ。行くぞ、じいさん」
???(ウモン)「おう、任せとけ!  まだワシの腕がさびついておらん所を 見せてやるわい」
アラド「な、何なんだ、あの連中…!?」
???(キンケドゥ)「そこのパイロット…」
アラド「お、おれ!?」
???(キンケドゥ)「バグは機動性に優れている。 しっかり狙って攻撃するんだ」
アラド「ご、ご忠告…どうも」
ジレ「ロナ家の名を騙る逆賊め…!  ここで討ち取ってくれる!」

〈vs ジレ〉

[???(キンケドゥ)]

ジレ「そのガンダム… 貴様ら、海賊とでも言うのか!」
???(キンケドゥ)「そうだ。俺達は宇宙海賊…」
???(キンケドゥ)「クロスボーン・バンガード!」

[???(ベラ)]

ジレ「ロナ家の堕ちた偶像がクロスボーンの 旗を掲げると言うのか!」
???(ベラ)「ええ。 あなた達の指導者を倒すために…!」

[???(ザビーネ)]

ジレ「貴様…! この裏切り者めが!」
???(ザビーネ)「裏切りではない。 本来の主の下へ戻っただけだ」

[コウ]

コウ「クロスボーンの残党か…!  フロンティアIVの時と同じように お前達を止めてみせる!」
ジレ「フン、残党ではない。 私の部隊はごく一部の戦力に過ぎないのだ」
コウ「何…!?」

[バニング]

バニング「どうやら、デラーズ・フリートを 追っているだけでは済まないらしいな」
ジレ「活動を再開したのは我々だけではない… 仮初めの平和は終わったのだ」

[モンシア]

モンシア「ゴキブリは1匹見りゃ、 あと20匹はいるって言うが… てめえらもそのクチだろう?」
ジレ「ゴキブリだと!? 貴様!  クロスボーンを愚弄するか!」

[カミーユ]

カミーユ「一度は瓦解した組織が、 それだけの戦力を揃えるとは…!  背後にいるのは誰だ!?」
ジレ「我がクロスボーン・バンガードは 瓦解などしていない。 機を窺っていただけだ」

[ヒイロ]

ヒイロ「…お前達は デキムの反乱の時も姿を現さなかった」
ヒイロ「対抗勢力が減るのを 待っていたというわけか?」
ジレ「地球圏の支配者は 高貴なる者でなくてはならない」
ジレ「デキム・バートンには その資格がなかっただけの話だ」

[五飛]

五飛「貴様らは悪だ!  断じて正義ではない!」
ジレ「お前にそれを判断する 資格などない。正義は勝利を得た者に 存在するのだ」
五飛「フン…その言葉、忘れるな!」

[アラド]

ジレ「一度は逃げだそうとした者が… 我々の作戦を止めると言うのか?」
アラド「…コロニーの人間が 皆殺しにされるのを見過ごせるか!!」
アラド「おれは そこまでさばけちゃいないんだよ!!」

[撃墜]

ジレ「お、おのれ…!  だが、バグはまだ残っている!  貴様らに止められるか!?」

〈バグ全機撃墜〉

シモン「バグの全機撃墜を確認!  コロニーへの被害、ありません!」
シナプス「残るは……あの戦艦か」
???(ベラ)「…では、これより本艦は この宙域から離脱します」
カミーユ「待ってくれ! あなた達は…!?」
???(キンケドゥ)「……また会おう、カミーユ」
カミーユ「!」
(マザー・バンガードと所属モビルスーツが撤退)
カミーユ(俺の名前を…!?  それに、あの声は……)
シナプス(彼らはいったい……?)

[アルビオン・ブリッジ]

シナプス「…デラーズ・フリートのみならず、 クロスボーン・バンガードまで 活動を再開していたとはな…」
アデル「見たところ、彼らは一部隊に 過ぎませんでした。指導者を失ってもなお、 組織と戦力を持続させていると?」
シナプス「…おそらく、背後には 木星圏の勢力…ジュピトリアンがいる」
シナプス「彼らとクロスボーンの関係は 以前から指摘されていたことだからな」
アデル「しかし、ジュピトリアンこそ 前大戦で壊滅したのでは…?」
モンシア「ま、確かに…あの連中はデカい 天使の輪とかバイクとか…トンでもねえ 物ごと地球圏へ来やがったが…」
モンシア「本拠地はあくまでも木星だしな」
エマ「前大戦の時、ロンド・ベル隊は 木星圏を通過したに等しいですから… 勢力は残っていると考えられます」
ベイト「あの衝撃波の中でも 生き残ってたって言うのか?」
エマ「ジュピトリアンは 早期から異星人と接触し、彼らの 技術を研究していました」
エマ「おそらく、 イージス計画と同等か、それ以上の手段で 生き延びたに違いありません」
モンシア「それに加え、謎の海賊野郎共か。 いよいよキナ臭くなってきやがったぜ」
アデル「彼らは 我々の敵ではなかったようだが…」
ベイト「堂々とクロスボーンの紋章を 背負ってて、味方なわけがあるか。 多分、内部抗争でもやってるんだろう」
エマ(でも…… あの戦艦に乗っていた女性の声……)
エマ(確かに聞き覚えが……)

[休憩室]

コウ「アラドを独房から出す?」
バニング「ああ、俺達の部隊に 加わるという条件と引き換えにな。 艦長の許可も、もらっている」
キース「い、いいんですか? あいつ… Mk-IIIで脱走しようとしたんですよ?」
バニング「だが、あそこで逃げ出さず… このアルビオンへ帰還してきた。 それで充分だ」
キース(単に 腹が減ってただけだったりして…)
コウ「でも、大丈夫ですか?」
バニング「俺の目を信じろ。 お前達もトリントン基地へ来たばかりの 頃は、ピーピー鳴くヒヨッコだったが…」
バニング「今は立派に成長しただろうが?」
キース「…あんまり実感ありませんけど」
バニング「奴の腕前はまだまだだが… 筋はいい方だ。後はお前達で仕込んでやれ」
バニング「それに、 お前達も人に教えるようになって 初めてわかることもあるだろうからな」
コウ「了解です、バニング大尉」

[通路]

五飛「あのガンダムのパイロットが お前のことを知っていただと?」
カミーユ「ああ、確かに俺の名を呼んだ」
ファ「あんなガンダムに 乗ってるぐらいだから、カトルや デュオだったりしないの?」
五飛「…どういう意味だ?」
ファ「だって、ほら…ドクロのマークに マントでしょ」
ファ「どっちかって言うと、あなた達が 乗ってたガンダム寄りじゃない?」
カミーユ「…それ、言えてるな」
五飛「確かに、カトルのサンドロックは マントを付けていたが… あんなガンダムは知らん」
ヒイロ「…あれがカトル達なら、 俺達に対して正体を隠す必要はない」
ファ「そうねえ」
ヒイロ「だが、俺は あのガンダムの動きに見覚えがある…」
ファ「ホントなの?」
ヒイロ「俺の予測が正しいなら、あれには かつてロンド・ベル隊に所属していた 男が乗っているはずだ」
カミーユ「…シーブックか?」
ヒイロ「…おそらくな」
ファ「そ、そんな…! どうしてシーブックが クロスボーン・バンガードに…!?」
ファ「彼らが何をして来たか… 一番良く知ってるのは、あの人なのに…」
五飛「良く知っているからこそ… かも知れんな」

[独房]

アラド「…ここから出ていいって、 ホントですか?」
コウ「ああ。 こちらの条件を受け入れてくれるならな」
アラド「条件?」
コウ「そうだ。ヒュッケバインMk-IIIと共に 俺達の戦力に加わって欲しい」
アラド「! それって…ロンド・ベル隊に 入れってことですか? おれは ウラキ少尉達の敵だった男ですよ?」
コウ「そうやって、味方になった人間は ロンド・ベル隊に何人もいるんだ。 …ヒイロや五飛のようにね」
アラド「え…? あの二人が…?」
コウ「ああ」
アラド(…そうだったのか…)
コウ「…アラド曹長、 君は守らなければならない約束が あると言ったな?」
アラド「…ええ」
コウ「君が戦っている理由… それは、その約束を守るために…」
コウ「いや、約束をした相手を 守るためじゃないのか?」
アラド「………!」
コウ「…図星か。じゃあ、俺達と一緒だな」
アラド「ウラキ少尉も… 守らなきゃいけない何かが あるんですか?」
コウ「そりゃ色々あるよ。 だが、その中でも一番大きなものは…」
コウ「平穏を願う人の命さ」
アラド「!」
コウ「…ご大層な話だと思うだろう?  でも、今まで自分が何のために 戦ってきたのか考えてみると…」
コウ「そういう結論に行き着くんだ。 甲児やリョウ、豹馬達なら…もっと ストレートに答えるだろうけどね」
アラド「…その人達もロンド・ベル隊の?」
コウ「ああ。今まで何度も一緒に 死線をくぐり抜けてきた仲間達さ」
アラド「けど、おれは… 正直言って、正義とか大義のために 戦うのは……」
コウ「なら、どうして あの時…バグを止めようとしたんだ?」
アラド「そ、それは………」
コウ「逃げようと思えば、逃げられたはずだ。 何故、そうしなかった?」
アラド「う………」
コウ「まあいい、ゆっくりと考えてみてくれ。 守るべきもの、倒すべき敵が何なのかと 言うことを……」
コウ「その後で君の答えを聞くよ」
アラド「…わかりました。 でも、その前に…」
コウ「?」
アラド「メシ、食わせてもらえませんか?  さっきから腹がグーグー鳴って…」
コウ「…仕方のない奴だな。 じゃあ、当番に頼んでくるよ。 …ただし、今度は逃げるんじゃないぞ」
(扉が開閉する・コウが立ち去る)
アラド「……………」
アラド(おれは…あの時……)
アラド(バグを使うクロスボーンが 許せなかった……)
アラド(…ゼオラ、おれ…)
アラド(守らなきゃならない物が 増えちまったかも知れねえ………)

『スラスターモジュール』を入手した


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