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ロンデニオンへ来た男 アラド ~ 第2話 ~

《サイド1 ロンデニオン・EARTH AREA》

[ラー・カイラム・ブリッジ]

ブライト「…ティターンズの残党が 潜伏していたとはな」
エマ「…規模的には大きいものでは ありません。それより、問題は……」
ブライト「…所属不明のモビルスーツ隊。 今のところ、我々がデラーズ・フリートの 残党だと想定している連中か」
エマ「はい。連邦軍が管理しているとは 言え…彼らの心の拠り所であるアクシズは まだ存在しています」
エマ「そして、 デラーズ・フリートを含むジオン軍は、 その全てが壊滅したわけではありません」
ブライト「ああ…。 少なくとも、ハマーン・カーンの一派は 潜伏していると見て間違いないからな」
エマ「一刻も早く、ロンド・ベル隊の 戦力を再結集し、アクシズの警備を 強化しませんと……」
ブライト「部隊の分散化が裏目に出ると?」
エマ「ええ…。アムロ大尉とケーラ中尉は 月に、レディさんやルー、万丈君達は 火星に行っていますから…」
ブライト「戦力増強の手配はすでにしてある。 新任のロンド・ベル隊指揮官と共に このロンデニオンへ向かっている途中だ」
エマ「新任の、ですか…。 正直言って、私達の指揮官は ブライト中佐以外に……」
ブライト「どうやら、私は新体制になった 軍上層部から疎まれているようでな」
エマ「そんなことは…」
ブライト「気にする必要はない。 一年戦争終結後の処遇に比べれば、 まだマシな方だ」
ブライト「それに、新任の指揮官となる方は 私以上の軍歴を持ち、経験も豊富だ。 肩の荷が下りて、かえって助かるよ」
エマ「…艦長がそうおっしゃるのなら。 では、ヒュッケバインMk-IIIの件は…」
ブライト「ああ、ヒイロと五飛に任せる。 エマ中尉はカミーユ達と共に ロンデニオンの警備に当たってくれ」
エマ「了解です」
(扉が開閉する・エマが立ち去る)
ブライト(…戦力が補充されるとは言え、 それでもまだ前大戦終結時の 半分以下か…)
ブライト(…戦災復興とオルファン問題、 そしてリクレイマーや地下勢力の対抗策に 力を注がなければならない以上…)
ブライト(贅沢を言うのは禁物だが… 今のままでは火星圏はともかく、 地球圏は手薄すぎる)
ブライト(…こんな時にクワトロ大尉が いてくれればな…)
ブライト(いや…時すでに遅し、か…?)

《L1宙域付近・EARTH AREA》

[ブリッジ]

ヤザン「獲物が掛かっただと?」
ラムサス「はっ。コンペイ島宙域から サイド1へ向けて移動中の戦艦を キャッチしました」
ラムサス「識別はペガサス級強襲揚陸艦です」
ヤザン「ペガサス級……。 だったら、ガンダムの母艦かも知れんな」
ラムサス「新型を輸送していると?」
ヤザン「可能性はあるが、気に入らんな」
ラムサス「罠…ですかね?」
ヤザン「妥当な線だな。もっとも、向こうの 獲物は俺達だけじゃないだろうが」
ラムサス「仕掛けますか?」
ヤザン「ああ、情報を得るためにもな」

[格納デッキ]

五飛「…ペガサス級が?」
ヒイロ「ああ。ロンデニオンへ 例のガンダムを輸送している可能性が高い」
五飛「誰だか知らんが、 思い切った罠を張ったようだな。 ならば、本命は…」
ヒイロ「俺達ではなく…ジオンだ」
五飛「フン…。 ここへ来たのは無駄足だったか」
ヒイロ「いや… これでデュオやカトル達の予想を 裏付けることが出来た」
ヒイロ「ただ…貧乏クジを引いたのは あいつらの方だったが」
五飛「フッ…そうだな」
ゼオラ「あなた達、何をやってるの?  すぐに出撃よ」
五飛「…いずれにせよ、そろそろ潮時か」
ヒイロ「ああ」


第2話
ロンデニオンへ来た男

〔戦域:地球周辺宙域〕

モンシア「…やれやれ、 こんな所でエサの役ですかい?」
バニング「艦長達の 出迎えに文句でもあるのか、モンシア?」
モンシア「そいつとこいつじゃ話は別でさ、 バニング大尉。そりゃあ、出迎えだけなら 喜んで出てきますが…」
モンシア「何もこんなヤバい賭けに 俺達が駆り出されなくても…」
バニング「危険な賭けだからこそ、だ。 こういう任務こそ、経験と勘が物を言う」
モンシア「そいつは百も承知ですがね。 ただ、荷物がアレだってんなら、ガンダムに 乗ってる小僧共の方が適任ってモンで…」
(敵機が出現)
ベイト「どうした、モンシア?  まだガンダム乗りになれなかった事を 恨んでいやがるのか?」
モンシア「て、てめえは!?」
ベイト「噂で聞いてるぜ?  新人にガンダム1号機どころか、 3号機のシートを……」
ベイト「いや、美人のシステムエンジニアまで 獲られたってなぁ」
モンシア「な、何でそんなことまで 知ってやがんだ、ベイト!!」
バニング「フッ…相変わらずだな、 奴の口の悪さは」
アデル「お久しぶりです、 バニング大尉。これで不死身の第4小隊が 揃ったわけですね」
バニング「貴様らも元気そうで何よりだ。 よく前大戦を生き残ってくれた」
ベイト「バニング大尉達が前線で 頑張ってくれたおかげですよ。ま、 モンシアの野郎は知りませんがね」
モンシア「何だと、てめえっ!!」
シナプス「再会を喜ぶのは そこまでにしたまえ。我々の任務は まだ終わったわけではない」
バニング「申し訳ありません、 シナプス艦長。ですが………」
バニング「貴艦のロンド・ベル隊への合流、 心から感謝すると共に歓迎致します」
シナプス「フフ… 相変わらず世辞が下手だな、バニング大尉」
バニング「は…?」
シナプス「ロンド・ベル隊の 新指揮官としての私は歓迎しかねる… それが君の本音ではないのかね?」
バニング「いえ…。 その件に関して、自分に異存はありません」
シナプス「まあいい。話は後にしよう」
シナプス「早速だが、 ロンデニオンへ案内してもらおうか。 積み荷のこともあるのでな」
シモン「艦長! 所属不明の モビルスーツ隊が接近中です!!」
シマプス「掛かったか…。 総員、迎撃態勢を取れ!」
(ヤザン達が出現)
ヤザン「護衛はジムばかり……となれば、 本命はあのペガサス級の中か?」
ベイト「何だぁ?  あいつら、連邦軍じゃねえか!」
アデル「おそらく、 ティターンズの残党ですね」
ゼオラ「アラド、Mk-IIIの調子はどう?  ちゃんと使いこなせる?」
アラド「…エンジンを換えてあるって 言っても、こいつはかなりの ジャジャ馬だな」
アラド「…まるでゼオラみたいだ」
ゼオラ「それ、どういう意味よ!?」
アラド「まあ、付き合ってりゃ そのうち何とかなるだろ」
ゼオラ「何ですってぇ!?」
アラド(いや、 使いこなさなきゃ生き残れねえ…!)
バニング「あれは…Mk-IIIの同型機…。 そして、トーラスが2機…」
ヒイロ「………」
バニング「ウラキ少尉達が接触した部隊と 見て間違いないようだな」
シナプス「…いずれにせよ、 狙いは本艦か。シモン、回線を開け」
シモン「全回線で…ですね?  では、どうぞ」
シナプス「総員に告ぐ! 我々は本艦に 搭載しているガンダム2号機を、何としても ロンデニオンへ運ばねばならん!」
ゼオラ「ガンダム2号機ですって!?」
ダンゲル「ヤザン大尉!」
ヤザン「ああ、聞いた。 俺の読みは当たっていたようだな」
アラド「ガンダム2号機って、 前の大戦でジオンの残党に奪われた…」
ゼオラ「ええ、核搭載型のガンダムよ!」
シナプス「繰り返す!  我々はガンダム2号機を何としても ロンデニオンへ運ばねばならん!」
シナプス「総員の奮闘を期待する!」
ヤザン「…気に入らんな」
ダンゲル「どういうことです?」
ヤザン「連邦にとって、2号機は 汚点中の汚点だ。こっそりと輸送するなら ともかく…」
ヤザン「何故、そのことを俺達に 教えるような真似をする?」
ダンゲル「い、言われてみれば……」
ヤザン「様子を見る。各機、適当に仕掛けろ」
ゼオラ「了解です!」
ヤザン(…ま、2号機がブラフだったとしても ハゲ狸へのネタにはなる)
バニング「モンシア、ベイト、アデル!  手はずはわかっているな!?」
モンシア「合点でさ!」
ベイト「不死身の第4小隊の 再デビュー戦としちゃ、 ちょいとシケた舞台だが…」
アデル「これも任務ですからね」
バニング「よし、攻撃開始!!」
(作戦内容表示)

〈2EP〉

シモン「艦長!  新たな敵モビルスーツ部隊が接近中!  本命ですっ!」
シナプス「来たか…! 各機、警戒せよ!!」

〈vs バニング〉

[ヤザン]

バニング「ティターンズの ヤザン・ゲープル…生きていたか!」
ヤザン「貴様もしぶとい男だな。 だが、そろそろ引退させてやる!」

[ヒイロ]

バニング「話はウラキ達から聞いている。 …こちらの芝居にも協力してもらうぞ」
ヒイロ「了解した…」

[アラド]

バニング「ヒュッケバインMk-III… まさか同型機が存在していたとはな…!」
アラド「いや、実はおれも驚いて…」
ゼオラ「アラド! そんなことを 言っている場合じゃないでしょっ!!」
バニング「子供か!?」
ゼオラ「子供でもジャミトフ閣下と バスク大佐の仇は討てるわよっ!!」

[撃墜]

バニング「いかん…!  後は任せる!」

〈vs モンシア〉

[ヤザン]

モンシア「しつこさじゃ、 俺もちいとは自信があるが… てめえにゃ負けるぜ!」
ヤザン「なら、戦いの勝敗も ここでつけてやるよ!」

[ヒイロ]

モンシア「悪いが、手加減はしねえぜっ!」
ヒイロ「…望むところだ」
モンシア「だが、そっちは手加減しろよ!」
ヒイロ「………」

[ゼオラ]

ゼオラ「ティターンズを滅ぼした罪!  今こそ償いなさい!!」
モンシア「何だぁ!? ガキかよ!?」

[撃墜]

モンシア「ちっくしょお!  不死身の第4小隊が ザマぁねえぜ!」

〈vs ベイト〉

[ヤザン]

ヤザン「ロンド・ベルに関わったのが 貴様の運の尽きだな!」
ベイト「お呼びじゃないんだよ、 ティターンズの残党はな!」

[ゼオラ]

ベイト「話にゃ聞いていたが… ガキがパイロットをやってるとはな。 時代が変わったもんだぜ」
ゼオラ「モビルスーツへ乗るのに 年齢なんて関係ないわ!!」

[撃墜]

ベイト「ち…! ドジったか!」

〈vs アデル〉

[ヤザン]

アデル「この男…かなりの手練れか」
ヤザン「ここで俺に出会わなきゃ、 少しは長生きできたがな!」

[ゼオラ]

アデル「子供が相手か…。 何かの冗談かと思いたいが…」
ゼオラ「冗談で こんなことは出来ないわよっ!!」

[撃墜]

アデル「戦闘続行不能!  脱出する!」

〈3EP〉

(敵機増援が出現)
ゼオラ「! あれはジオン軍!?」
ヤザン「やはりな…!」
パサロフ「シナプス艦長…!」
シナプス「よし、狙いどおりだな」
シナプス「各機へ!  これより本艦はガンダム2号機輸送任務を 優先し…この宙域を離脱する!」
シナプス「繰り返す!  本艦はガンダム2号機輸送任務を 優先し…この宙域を離脱する!」
バニング「合図が掛かったぞ!」
モンシア「よ~し、まくりますぜ!」
モンシア「さあ、追ってきやがれ!  宇宙人共!!」
(戦艦とザク4機が撤退)
ゼオラ「撤退した…!?」
ダンゲル「ヤザン大尉、 敵部隊の一部が残りました!」
ヤザン「フン、追っていった連中の結末は 目に見えているな」
ダンゲル「どうします?」
ヤザン「…ここで奴らを始末するぞ」
ゼオラ「ロンド・ベル隊を 見逃すって言うんですか!?」
ヤザン「慌てるな。 こちらの存在を知った以上、 奴らは戦力を割かざるを得ない」
ヤザン「だから… 俺達はそいつを一つずつ叩き潰せばいい」
ゼオラ「漁夫の利を狙う…という事ですか?」
ヤザン「そうだ。相手がジオンなら… 火消し共も戦い易いだろうが?」
ヒイロ「………」
ゼオラ「この作戦がロンド・ベル打倒に つながると言うのなら、やりますっ!」
ゼオラ「いいわね、アラド!?」
アラド「…あんまり意気込みすぎると、 足元すくわれるぜ?」
ゼオラ「他人のことより、 自分の心配をしなさいよっ!!」
アラド「わ、わかってるよ!」

《サイド1 ロンデニオン・EARTH AREA》

[ラー・カイラム・ブリッジ]

エマ「ブライト艦長、 エイパー・シナプス大佐をお連れしました」
ブライト「ご苦労」
ブライト「自分がロンド・ベル隊指揮官、 ブライト・ノア中佐であります」
シナプス「エイパー・シナプス大佐だ」
シナプス「アルビオン、並びに 補充モビルスーツ、パイロット… そして、ガンダム試作2号機…」
シナプス「確かに このロンデニオンへ送り届けた」
ブライト「はっ。 では、参謀本部からの命令どおり…」
ブライト「現時刻を以って、ロンド・ベル隊の 全指揮権を大佐に譲渡致します」
シナプス「うむ。だが、それは形式上での 話…と言うことにしておこうか」
ブライト「は…?」
バニング「シナプス大佐…」
シナプス「私はただの監視役だ。 加えて、ガンダム開発計画の関係者として 軍上層部からは疎まれている身でな」
シナプス「アデナウアー参謀次官も 厄介払いが出来たと思っているはずだ」
ブライト「し、しかし……」
シナプス「気遣いは無用だ。 ロンド・ベル隊の指揮官は、 君をおいて他にいない」
シナプス「以降は君の指示に従おう」
ブライト「大佐……」
シナプス「ふふふ…バニング大尉も 君の実力を高く評価している。 今さら私の出る幕はないだろう?」
ブライト「いえ、歴戦の艦長である シナプス大佐に比べれば、自分など…」
シナプス「謙遜せんでもいい。 ホワイトベースの伝説は連邦内では もはや神話に等しい扱いだからな」
シナプス「ただ、そのおかげで常に 最前線へ送られるのは、奥さんに とっては不幸だろうが…」
ブライト「妻も息子達も今回の赴任には 納得してくれています。イージス計画の 後に長めの休暇をもらえましたので」
シナプス「そうか。 くれぐれも家族は大切にな」
ブライト「はい」
バニング(家族か…)
ブライト「ところで、シナプス大佐。 今回の作戦の件ですが…」
シナプス「うむ。網に掛かったのは デラーズ・フリートの残党と見て 間違いない」
ブライト「やはり……」
シナプス「核装備を排除した あのガンダムに以前の力はないが…」
シナプス「前大戦で連邦に対し、 鉄槌下したという『実績』は 色あせることがない」
バニング「デラーズ・フリートが 再びジオンの理想を掲げるために… 2号機の奪取を目論んでいると?」
ブライト「あれの存在価値を 戦力以外に見出すと言うのなら、 あり得る話だ」
ブライト「あの歌姫ほどではないにしろ… 軍や政府の上層部、スペースノイドに 対しては影響力を持っているからな」
シナプス「だが、先程の敵の動きは 氷山の一角に過ぎん。そして、2号機も 彼らの本命ではあるまい」
バニング「では、先程の部隊は こちらの様子見だったと?」
シナプス「おそらくな。 しかし、危険を冒して2号機の 輸送任務を行った甲斐はあった」
ブライト「はい。 我々が戦力を集めていると知れば、 敵は具体的な動きを見せるでしょう」
シナプス「後は、 いかにして事前にそれを叩くか…だな」

[格納庫]

キース「やれやれ… アルビオンを襲撃したもう一つの敵が デラーズ・フリートの残党だったとはね…」
キース「2号機を奪われなかっただけでも 幸いって奴かぁ…」
コウ(…しかし、エギーユ・デラーズは 前大戦で死んだ…。ならば、今の デラーズ・フリートをまとめているのは…)
ベイト「どうした、坊や。 難しい顔してよ」
コウ「! あなたは確か…」
ベイト「アルファ・A・ベイト中尉だ。 横にいるアデルと一緒にロンド・ベル隊へ 配属となった」
アデル「チャップ・アデル中尉だ」
キース「チャック・キース少尉であります」
コウ「コウ・ウラキ少尉です。 よろしくお願い致します」
ベイト「…ガンダム3号機の パイロットってのは、お前さんかい?」
コウ「そうです」
ベイト「やれやれ、モンシアも本格的にヤキが 回ったようだな。こんなひ弱そうな坊やに ガンダムを獲られちまうたぁ…」
ベイト「それとも、バニング大尉のメガネも 寄る年波に少々曇りが生じたかな?」
コウ「ベイト中尉…自分は 未熟でありますが、あなた方の足を 引っ張るつもりはありません」
キース「コ、コウ…」
ベイト「ま…お前さんのガッツは モンシアから聞いているさ。 せいぜい頑張ってくれ」
ベイト「因縁の『ソロモンの悪夢』が 出てきた時にな」
コウ「………!!」
(足音・ベイトが立ち去る)
アデル「気にするな、ウラキ少尉。 少々口は悪いが、あれでベイトも 君のことを認めているんだ」
コウ「アデル中尉…」
アデル「君も前の大戦を生き抜いた兵士だ。 もう充分に一人前と言ってもいい」
コウ「ありがとうございます、中尉。 ですが、あの男と決着をつけるまでは…」
キース「あの男って…ガトーのことか?」
コウ「…ああ」
アデル「アナベル・ガトー…ソロモンの悪夢。 前大戦を生き延びたという噂だが…」
キース「信じたくない話ですけどね…」
アデル「だったら、次の任務は デラーズ・フリート残党の追撃だと 思っておいた方が良さそうだな」
コウ「………」
キース「コウ…あまり思いつめるなよ」
コウ「わかってるよ、キース…」

『ガンダム試作1号機Fb』を入手した
『ザクIIF2型』を入手した


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