back index


『かつて』と『これから』 ~ 最終話 ~

[???(執務室)]

ブライアン「……そうか。 わざわざ報告してくれてありがとう」
秘書「いえ……」
ブライアン「結局、 最後の最後は彼らに頼ることになってしまったか」
秘書「ヒリュウとクロガネは 戻ってくるのでしょうか?」
ブライアン「ああ、L5戦役の時と同じようにね」
秘書「……」
ブライアン「待とう、彼らを。 今の僕達に出来ることは、それぐらいだ」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[地球連邦軍伊豆基地内]

レイカー「消息不明だと?」
サカエ「は、はい。司令部の方でも 騒ぎになっているようです」
レイカー「……」
サカエ「ホワイトスターは消え…… インスペクターもまた……」
サカエ「これで……戦いは終わったのでしょうか?」
レイカー「……まだだ。 戻るべき者達が戻ってきておらん」
サカエ「……はい」
レイカー「……」
レイカー(ダイテツ……彼らを導いてやってくれ……)

[地球連邦軍伊豆基地 SRX計画ラボ]

ロバート「そ、そんな!  捜索隊を出さないって……どういうことなんだ!?」
カーク「……捜しようがないからだ」
ロバート「しかし!」
カーク「軍と政府は、ノイエDC蜂起の事後処理…… そして、アインストの調査を優先させるようだ」
カーク「何故、彼らが時を同じくして活動を停止し、 崩れ去ったか……その謎を解くためにな」
ロバート「それはきっとあいつらが……!」
マリオン「憶測に過ぎませんわね」
ロバート「ラ、ラドム博士……!」
マルオン「でも…… 可能性は高いですわ、限りなく」
カーク「ああ。 今は彼らを信じるしかない」
マリオン「私達が作り上げた機体も、でしてよ」
ロバート「……」
ケンゾウ「……オオミヤ博士、彼らは必ず戻ってくる」
ロバート「コバヤシ博士……」
ケンゾウ「お前も、そう思っているのだろう?」
ロバート「……ええ、もちろんです」
ケンゾウ「……」
ケンゾウ(アヤ、マイ……私はここで待っている。 お前達の帰りを……いつまでも)

《テスラ・ライヒ研究所》

[テスラ・ライヒ研究所 管制室]

(扉が開閉する)
ソフィア「……」
エリ「……久しぶりね、ソフィア。 大学の同窓会以来かしら」
ソフィア「エリ、あなた……どうしてここに?」
エリ「それは…… 超機人の解析を行うために……」
ソフィア「そう……。 もしかして、あなたも……?」
エリ「ええ……彼らに助けられたわ」
ソフィア「……」
エリ「ソフィア……アースクレイドルの方は?」
ソフィア「現状ではもう……」
ソフィア「事後処理について、 テスラ研の協力を得るために私はここへ……」
エリ「そう……」
ソフィア「でも、彼らは…… 私を救ってくれたゼンガー少佐は……」
(扉が開閉する)
フィリオ「心配はいりませんよ、 ソフィア・ネート博士」
ジョナサン「彼らは 不可能を可能にする力を持っている。 そのことはあなたもご存じでしょう?」
ソフィア「……」
エリ「彼らには超機人もついているわ。 だから、必ず……」
リシュウ「そう、ゼンガーは…… ワシの弟子達は必ず戻ってきおる。 後は……待つだけじゃ」
ソフィア「はい……」
フィリオ(待っているよ、ツグミ、アイビス……)
フィリオ(僕達の夢はまだこれからだ……)

《マオ・インダストリー》

[マオ・インダストリー 社内]

ジョイス「……左様ですか……。 そちらでは何も……」
ユアン「ですが、 我が社の方で準備をしております」
ユアン「何かあれば……すぐ出られるように」
ジョイス「では、あなたは……?」
ユアン「無論、信じていますよ。 社長や私の娘達が生きていると」
ジョイス「……」
ユアン「ルダール卿…… あなたもそうなのでしょう?」
ジョイス「ええ。 シャイン王女は……私達の姫様は必ずや……」

《東京》

[東京 ベネルディ家]

(通信切れる)
ジャーダ「チッ!  あの連中、機密機密ってうるせえんだよ!」
ガーネット「どうしたの!?」
ジャーダ「ラトゥーニ達がどうなったか、 伊豆基地に問い合わせたんだが……なしのつぶてだ」
ジャーダ「こうなったら、 オオミヤ博士に直接連絡して……!」
ガーネット「やめなよ、迷惑でしょ」
ジャーダ「おめえはあいつらのことが 心配じゃねえのかよ!?」
ガーネット「もちろん、そうだけど……」
ジャーダ「だけど?」
ガーネット「あたし、信じてるもの」
ガーネット「あたし達の子が……ラトゥーニが、 みんなと一緒に必ず帰ってくるって……」

《日本・藤沢地区》

[藤沢地区]

(念動感応)
ユキコ「!」
ユキコ「今、あの子の声が……?」
ユキコ「……」
ユキコ「リュウ……あなたは……」

〔戦域:アインスト空間〕

リュウセイ「! おふくろ……!?」
アヤ「どうしたの、リュウ!?」
リュウセイ「感じる……!  感じるぞ、外側からの念を!」
クスハ「わかる……!  距離が離れていても……!」
リョウト「人の想いが…… つながっていく……!」
アヤ「T-LINKコネクター、全接続!  ……ここが……正念場よ……!」
リュウセイ「バ、バカ!  そんなことをしたら、お前は!」
マイ「大丈夫、私も手伝う……!」
リュウセイ「だ、だけどよ!」
アヤ「今やらなくてどうするの!  向こうとみんなの念を 私達でつなげるのよ!」
リュウセイ「……!!」
ヴィレッタ「リュウセイ、SRXを 信じなさい。お前達のマシンには それを可能にする力がある」
リュウセイ「わ、わかったぜ、隊長!」
ヴィレッタ「T-LINKシステム 搭載機のパイロットは念の集中を!」
リョウト「は、はい!」
ヴィレッタ「お前達の念をSRXに集め、 あれをブースターにして皆の念を 一気に増幅させる!」
タスク「合点承知!!」
ヴィレッタ「アヤ、任せる!」
アヤ「了解!  やるわよ、リュウ、マイ!」
リュウセイ「おう!」
マイ「わかった!」
アヤ「ライ、 あなたはシステムXN起動のために 出力の維持を!」
ライ「了解です、大尉!」
アヤ「コネクター、全解放! 接続!!」
アヤ「T-LINK マキシマムコンタクトッ!!」
(念動感応・SRXに一瞬赤い光が集まる)
ラージ「SRXから光が……!?」
ミズホ「あれが思念の力……!」
ヴィレッタ「………」
アヤ「くううっ!!」
マイ「うう……うううっ!!」
リュウセイ「う、うあああっ!!」
アラド「リュ、リュウセイ少尉!!」
リュウセイ「え、遠慮はいらねえ!  お前らの念をぶつけてこい!」
(念動感応・SRXに赤い光が集まる)
アルフィミィ「思念の……想いの『力』が…… さらに強く……!」
アルフィミィ「これが……人間の…… 始まりの地に生まれた者達の…… 『力』……!?」
(念動感応・SRXに爆煙)
リュウセイ「ぐうっ! 耐えろ、SRX!  みんなの念を受け止めるんだ!!」
アヤ「ううっ! くううっ!!」
リューネ「アヤ!!」
アヤ「だ、大丈夫よ!  それより、みんなも念じて!」
リューネ「わ、わかったよ!」
エクセレン「まさに正念場って感じ……!  キョウスケ、大丈夫?」
キョウスケ「ここまで来て……諦めはしない。 おれ達の……意思を……」
ゼンガー「我らの力を……!」
ラーダ「想いを一つに……!」
クスハ「そして……!」
ブリット「帰るんだ……!  俺達の世界へ……絶対に!」
カーラ「絶対に生きて帰る!」
アイビス「そう!  ここで死んでたまるもんか!」
(龍虎王に赤い光が集まる・念動感応)
龍虎王「ウウウゥゥ……!」
ブリット「りゅ、龍虎王!?」
龍虎王「オオオオ……!」
クスハ「私達に 力を貸してくれるの!?」
龍虎王「オオオォォ……!」
クスハ「お願い、龍虎王!  私達の念を向こう側へ!」
クスハ「私達の世界へ届けてぇぇっ!!」
(龍虎王に赤い光が3回集まる、念動感応×3)
龍虎王「ウゥオオォォォォォォオ!!」
(ツヴァイザーゲインから紫の光が何回か出る)
ギリアム「! 次元測定値が…… 転移座標軸が定まっていく!」
ラミア「少佐!  これなら完璧でございまっしょいでは!?」
ギリアム「ああ!  ライ、エネルギーをこちらに!」
ライ「了解!  トロニウム・エンジン、 オーバー! ドライブッ!!」
(ツヴァイザーゲインに赤い光が集まる)
ギリアム「転移フィールド、展開!  転移座標軸、固定!」
ギリアム「さあ、アギュイエウスよ!  最後の扉を開け!」
ギリアム「我らが戻るべき世界への扉を!」
(ツヴァイザーゲインに赤い光が3回集まる)
ギリアム「システム、起動!  エクストラ・コード、インプット!」
ギリアム「『ゼウス』………ッ!!」
(システム起動、赤い光が集まる、閃光、転移)

〔戦域:地球の衛星軌道上周辺宙域〕

(北西端に味方機が並んでいる)
テツヤ「こ、ここは…… ここはどこだ……?」
エイタ「艦長代理!  艦の真下に惑星が見えます!」
テツヤ「!  空間座標軸を確認しろ!」
エイタ「りょ、了解!」
アラド「あ、あれ……地球だよな?」
ゼオラ「……」
エイタ「座標軸の確認、終了しました!  現在位置は地球の衛星軌道付近、 WA5470です!!」
テツヤ「で、では!?」
エイタ「はい!  コルムナとコロニーも確認しました!  我々は元の世界へ戻ったようです!」
エクセレン「わぁお!」
カチーナ「いよっしゃあ!!」
リューネ「やったね!」
クスハ「帰って……来られた……」
ブリット「ああ、俺達の星へ……」
ギリアム「……何とか……保ったか……」
ラミア「ギリアム少佐……」
ギリアム「どうやら……この世界は 我々を再び受け入れてくれたようだな」
ラミア「……はい」
ラウル「ギリアム少佐……」
ギリアム「……俺にとっては、 あれが最後だ」
ラウル(最後……の転移、か。 だが、俺達は……)
ギリアム「ラウル、諦めるな」
ラウル「え……?」
ギリアム「想いが通じれば……必ず」
ラウル「はい……。 その言葉、肝に銘じます」
ライ「リュウセイ、大丈夫か?」
リュウセイ「ああ、何とかな。 もう少しでブレーカーが 落ちちまう所だったぜ」
ライ「大尉……」
アヤ「平気よ、ライ。 マイがいてくれたおかげで……」
マイ「アヤ……」
リュウセイ「よく頑張ったな、マイ。 ありがとよ」
マイ「う、うん……」
ヴィレッタ「お前もだ、リュウセイ」
リュウセイ「いや…… 俺達だけじゃないぜ、隊長」
リュウセイ「ここへ戻ってこれたのは…… みんなが頑張ったおかげさ」
ヴィレッタ「ああ……」
カチーナ「それにしても、驚いたぜ。 ホントに帰ってこられるなんてよ」
タスク「おろ?  中尉、ロマンチックが止まらないとか 言ってませんでした?」
カチーナ「そうそう。銀河の果てまで、 OH I CAN DO」
カチーナ「なんてこたぁ、言ってねえ!  だいたい、どさくさに紛れて ロマンこいてたのはてめえらだろうが!」
レオナ「え!?」
タスク「き、聞かれちゃってたぁ~ん」
キョウスケ「せめて、プライベート通信に しておくべきだったな」
レオナ「は……はい。迂闊でした」
アイビス「でも…… レオナやタスク達ならともかく……」
アイビス「あたし達の 想いの力であんなことが……」
アヤ「念の力は人によって 強弱や発現の仕方に差異はあっても、 その本質は同じ……」
アヤ「あなたの強い想いが、 この世界へ結びついたのよ」
ツグミ「アイビス……あなたの場合は 宇宙にかける情熱ね」
アイビス「うん…… それだけは誰にも負けないよ……」
レーツェル「……人の想いの力、か」
ゼンガー「それは 不可能をも可能にする……」
エクセレン「アインストちゃん達、 そこんとこがわかってなかったってことね」
アルフィミィ「……」
エクセレン「とにかく…… 母艦に帰りましょっか。 アルフィミィちゃんも、ね?」
アルフィミィ「え?」
シャイン「あなたは 私達に協力して下さいましたもの」
シャイン「あの恐ろしい者達から、 私達の宇宙を救うお手伝いを……」
シャイン「だから、 もう立派なお仲間だったりしますわ」
アルフィミィ「……」
マイ「行こう……アルフィミィ。 お前の居場所も…… きっとみんなの所にある」
ラミア「そう…… お前が自分の意志で決めるのなら…… 受け入れてもらえる」
アルフィミィ「……」
エクセレン「こういう人達ばかりなのよね、 こっちの宇宙は」
エクセレン「……いらっしゃいな」
アルフィミィ「この気持ち…… エクセレン、あなたのものなんですの?  それとも……」
キョウスケ「自分で思うのなら…… そうなんだろう」
アルフィミィ「嬉しいですの……。 でも……私はもう……」
(ペルゼインを正面から見る、ペルゼイン・リヒカイトに煙、排出)
マイ「ペ、ペルゼインが!」
クスハ「く、崩れていく……!!」
エクセレン「アルフィミィ!  早く脱出して!!」
アルフィミィ「残念……ですが……。 私は……ペルゼインで生まれた……」
アルフィミィ「そして…… ここから外に出ることは……できない…… 欠陥品に……過ぎませんの……」
キョウスケ「アルフィミィ!」
アルフィミィ「私は……結局……誰にも なれなかったんですの……」
アルフィミィ「私は…… 私になりたかったのに……」
エクセレン「アルフィミィ!」
アルフィミィ「さよなら……ですのよ…… エクセレン……キョウスケ……」
アルフィミィ「最期に…… 私を……受け入れて……くれて……」
アルフィミィ「ありがとう…… です……の…………」
(ペルゼイン・リヒカイトに煙、その後爆発)
エクセレン「!!」
マイ「ア、アルフィミィ!!」
クスハ「あ、ああ……そんな……!」
エクセレン「嘘……嘘でしょう……!?」
ラーダ「あの子も他の個体と…… 同じで……」
アヤ「宿命から…… 逃れられなかったと言うの……?」
エクセレン「で、でも……私は……」
キョウスケ「……言うな」
エクセレン「……」
キョウスケ「アルフィミィは…… 最後に自分の意志で決断を下した。 そして、それは……」
ラミア「紛れもなく、 彼女が彼女であった証か……」
キョウスケ「……そうだ」
エクセレン「……」
キョウスケ「残酷な結末だな……」
キョウスケ「だが、これは…… アルフィミィ自身が望んだもの だったのかも知れん……」
キョウスケ「居るべき世界を失った者の…… 宿命を全うするために……な」

[クロガネ ブリッジ]

エイタ「……艦長代理、 統合参謀本部との連絡が取れました」
エイタ「アインスト群は 全て活動を停止し、消滅したそうです」
テツヤ「そうか……。 では、各機を収容しろ」
エイタ「はっ」
テツヤ「……」
テツヤ(ダイテツ艦長……ご報告致します)
テツヤ(我々は…… 現時刻をもって、全作戦を完了しました……)

[不明 (執務室)]

ブライアン「そうか…… クロガネとヒリュウが無事に帰還したか」
ニブハル「はい」
ブライアン「……彼らこそがイージスの盾であり、 ハルパーの鎌だと思いたいものだね」
ニブハル「ですが…… この世界は、ゆっくりと変わっていくことでしょう」
ニブハル「住人達が 望む、望まないにも関わらず……」
ブライアン「君が言うと妙に説得力があるね。 それに、いつもより饒舌だ」
ニブハル「……」
ブライアン「ま、ともかく…… 僕はしばらくの間、傍観者に徹するしかない」
ニブハル「そうですね」
ブライアン「ふっ……はっきり言ってくれるよ」
ニブハル「……では、私はこれで」
ブライアン「ああ、わざわざ報告しに 来てくれてすまなかったね。 君にも立場があるというのに」
ニブハル「いえ……」
ブライアン「で、 君は今回の結果で良かったのかな?」
ニブハル「……」
ニブハル「もちろんですよ、 ミッドクリッド前大統領……」
ニブハル(今回の件で、礎が出来ましたからね……)

《L5宙域(クロガネ)》

[L5宙域]

ギリアム「白き魔星、ホワイトスターは消えた…… 様々な思惑や呪縛と共に」
ラミア「しかし、我々には……あと二つ…… 消し去らねばならない物があります」
ギリアム「ああ、 システムXN・アギュイエウスをな」
ギリアム(む……? “二つ”……?)
ラミア「……少佐、爆破装置のチェック完了。 機外に射出したりしなかったりも…… いえ、射出します」
ギリアム「頼む」
(射出)
ラミア「アギュイエウスの射出を確認」
ギリアム「……」
ギリアム(さらばだ、システムXN……)
ギリアム(いや、XNガイスト…… かつての我が半身よ)
(スイッチを押す、閃光、大きな爆発)
ギリアム「……」
ラミア「……」
ラミア「……システムXN、 アギュイエウスの消滅を確認」
ギリアム(これで、俺は……)
ラミア「……」
ギリアム「すまなかったな、ラミア。 俺の後始末に付き合わせて」
ラミア「いえ」
ギリアム「……では、クロガネに帰還しよう」
ラミア「はい……」
ラミア(これで…… 消し去るべき“物”は……あと一つ)

[クロガネ ブリッジ]

クスハ「え?  ゼンガー少佐やレーツェルさんとは ここでお別れなんですか?」
ゼンガー「うむ」
レーツェル「実に今さらの話で恐縮だが…… この艦は、公式には存在していない物なのでな」
レーツェル「お前達と共に 伊豆へ帰還するわけにはいかんのだ」
ライ「では、これから兄さん達は?」
レーツェル「我らはレイカー司令の依頼を受け、 お前達の影となりて動く者……」
レーツェル「故に、然るべき所へ行くつもりだ」
タスク「つまり…… 要はどこかに隠れるってことッスか?」
レーツェル「そうとも言うな」
クスハ「で、でも、それで大丈夫なんですか……?」
ギリアム「確かに、 ケネス・ギャレット少将あたりは 納得しないだろうが……」
ギリアム「修理中のハガネの件も含めて、 根回しは俺の方でする」
カイ「それに、 あのタコ親父の小言は俺の方で受けておくさ」
レーツェル「……申し訳ありません、カイ少佐」
カイ「気にするな。 それが、表側にいる俺の役目でもあるからな」
ブリット「……」
ユウキ「ブリット…… 俺とカーラは、クロガネへ残ることにした」
ブリット「え……?」
タスク「もしかして、 レーツェルさん秘蔵の紅茶目当て?」
ユウキ「まさか。 ……まあ、興味がないわけじゃないが」
ブリット「じゃあ、何故?」
ユウキ「俺とカーラはノイエDCにいた身だ……」
ユウキ「レーツェルさん達と共に行く方が 何かと煩わしくなくていい」
レオナ「カーラ…… あなた、自分の夢はどうするの?」
カーラ「もちろん、諦めちゃいないよ。 でも、今はまだそれをかなえる段階じゃないって 思うんだ」
カーラ「いつまた地球を狙ってくる 異星人が現れるかわからないし……」
カーラ「ゼンガー少佐や レーツェルさんと一緒にいれば、 何だが退屈しなさそうだしね」
タスク「それどころか、目一杯振り回されちまうぞ。 斬艦刀みてえに」
カーラ「あははは、望む所だよ。 あたし、派手好みだし」
クスハ「何だか、かえって目立ちそう……」
ギリアム「ラウル、ラージ、ミズホ。 お前達のことは、レーツェルに託す」
ラウル「わかりました」
タスク「お前らもクロガネ行きかよ?」
ラージ「ええ。 エクサランスを僕達の手で完成させるためにね」
ミズホ「それに、 メカニック担当としても働くつもりなんです」
クスハ「そうなの……」
ラウル「俺はこの世界へ…… あ、いや……みんなと出会えて良かったよ」
ラウル「色んな世界があって…… 色んな人達がいて……みんな一所懸命に生きてる。 それがわかって良かった」
タスク「カッコいいこと言っちゃって。 俺は泣かねえからな」
ラウル「そ、そんなつもりで 言ったんじゃないって」
ミズホ「……そうですよね……。 ラウルさんの言う通りだと思います……。 あたし達は1人じゃない……」
ミズホ「色々な所で多くの人達と出会い、 助けてもらったからこそ、ここまで 来られたんです……」
タスク「泣いちゃってるよ!」
クスハ「……泣かないで、ミズホ」
ミズホ「は、はい……」
ブリット「これで最後ってわけじゃないんだ。 笑顔で別れよう」
カーラ「そうそう。湿っぽいのはなし」
ミズホ「ええ……」
ラージ「………」
ラージ(一時はどうなることかと思いましたが…… 結果的には貴重な体験になりましたね)
ラージ(この世界で…… このまま生きていくのも悪くない、と 思える程に……)
テツヤ「……では、レーツェルさん。 あなたにクロガネをお返しします」
レーツェル「フッ…… 言ったはずだ、この艦は私だけの物ではないと」
テツヤ「……そうでしたね」
ギリアム「ゼンガー、レーツェル……いずれまた」
ゼンガー「うむ」
カイ「ユウキとカーラを頼むぞ」
レーツェル「ええ」
ギリアム「そして、ラウル達を……」
レーツェル「……ああ、わかっている」
ライ「兄さん……」
レオナ「エルザム様、どうかお元気で」
レーツェル「お前達もな」
レオナ「はい」
レーツェル「では、諸君…… 再会の時まで、しばしの別れだ」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「艦長、 クロガネからの人員と機体、 物資の移送作業が終了しました」
レフィーナ「了解です」
ユン「コンベアチューブ、分離。 クロガネ、発進します」
レフィーナ「発光信号上げ。 内容は『貴艦の航海の安全を祈る』で」
ユン「はい」
レフィーナ「本艦も 伊豆基地へ向けて発進します。 準備を急いで下さい」
ショーン「了解致しました」
レフィーナ「……」
ショーン「……今回はレイカー司令の 先見の明に助けられましたな」
レフィーナ「ええ。 あの方がクロガネをレーツェルさんに 託していなければ、今頃は……」
ショーン「……しかし、これから先は 上の体制が変わったせいで、 やりにくくなるでしょうな」
レフィーナ「でも、私達がやるべきことに 変わりはありません」
レフィーナ「それに…… レイカー司令もあのままで 終わられる方ではないでしょう?」
ショーン「そうですな。 今の体制もどこまで長続きするか わかりませんし……」
(通信)
ユン「!?  艦長、第1デッキでアンジュルグが 発進態勢に入っています!」
レフィーナ「え!?」
ユン「応答せよ、アンジュルグ!  発進命令は出ていない!  応答せよ、アンジュルグ!」
(発進)
ユン「艦長、 アンジュルグが艦外に出ました!」
レフィーナ「ラミア……!」

《地球周辺宙域》

[地球周辺宙域]

ラミア(……静かだ。 宇宙はこれぐらい静かな方が いいのかも知れない……)
ラミア(ヴィンデル様、アクセル隊長…… そして……レモン様。あなた達が求めた世界より…… いいかも知れません)
ラミア(シャドウミラー隊は私を除いて全滅……。 この世界に否定された……結果です)
ラミア(アギュイエウスが消滅した今…… 残った私が機能を停止すれば……全てが終わります)
ラミア(任務を放棄し、敵組織へ寝返り、 創造主を殺し……未だ生きながらえている……)
ラミア(レモン様…… やはり私は……Wシリーズの失敗作…… イレギュラーに過ぎないのでしょう)
ラミア(『こちら側』でも…… 『向こう側』でもない世界で……)
ラミア(あなたは……隊長と会えましたか……?)
ラミア(人形の私では…… あなたの傍に逝くことはできないでしょうが……)
ラミア(もしかしたら……もしかしたら、 W15や16……散っていった多くの兄弟達には…… 会えるかもしれません)
ラミア(…………)
ラミア(W17…… Wナンバーズ最後の活動を……停止します)
(通信)
アラド「ラミアさん!  ちょっと待った! 待ったぁぁっ!!」
ラミア「なに……? アラド・バランガか……?」
カチーナ「ラミア!  暴れるだけ暴れといて、さっさと おさらばしようなんざ甘えんだよ!」
ラミア「カチーナ中尉……」
ブリット「ラミアさん、 これからが大変なんですよ」
ブリット「壊すよりも、 創って、守っていく方が何倍も……」
ラミア「ブルックリン少尉……しかし、私は……」
クスハ「お願いです……! ラミアさん」
ラミア「クスハ……」
ギリアム「何故、君は死に急ごうとする?  この世界は君を受け入れたと言うのに」
ラミア「……ですが、世界を混乱させたのは 我々シャドウミラー隊です……」
ラミア「そして、 私は直接手を下したWナンバーズ……」
ラミア「命じられるがままに実行した人形。 この世界は……私の居るべき世界ではないのです」
マサキ「最初は敵だったかも知れねえ。 でも、今は違うだろ?」
ラミア「マサキ……」
エクセレン「ラミアちゃん…… 最後は自分の意思で私達と一緒に 戦ってくれたじゃない」
ラミア「エクセ姉様……」
アイビス「それとも…… 残った自分の可能性を、自分自身の手で 消そうって言うの?」
ラミア「だが、私は地球人…… いや、人間ですらないのだぞ」
ヴィレッタ「それが……どうしたと言うのだ?」
ラミア「……!」
リュウセイ「素性なんて関係ねえぜ。 ……仲間なんだからさ」
ラミア「だが、私はW17……」
ラトゥーニ「ううん……。 あなたはラミア・ラヴレス…… もうW17じゃない……」
ラミア「……」
キョウスケ「もし自分の心変わりを 心配しているのなら、気にするな」
キョウスケ「その時は……おれ達が止める。 それが出来るか出来ないか…… お前が知らないとは言わさん」
ラミア「キョウスケ中尉……」
キョウスケ「だから、戻ってこい。 生きる道……居るべき場所があるからこそ、 お前はここにいる」
ラミア(……生きる道……要るべき場所。 アクセル隊長……もしや、そのために…… 私にその言葉を残したのですか……?)
ラミア「人間でも……Wシリーズでもない…… そんな私が……この世界に居てもいいのですか……?」
キョウスケ「フッ……お前は本当に優秀だな、ラミア」
ラミア「……え?」
キョウスケ「おれはそんなに思い悩んで生きてはいない。 いつかは死ぬ……それまでは精一杯生きればいい。 ……その程度だ」
キョウスケ「それが……おれにとっての 生きる道や、居るべき場所……なのだろう」
ラミア「……」
エクセレン「あらら、なんかカッコいいこと言ってる!  ……とか思ったら、全然何にも考えてないんじゃない」
エクセレン「ま、そこまで考えてる人が、 無謀なギャンブルを繰り返したりはしないか」
タスク「しかも、 命が懸かってないと、てんで弱いッスからねえ」
タスク「あ、昼メシがもう3週間分溜まってるッスよ」
キョウスケ「……うるさい」
ラミア「……フ……フフフ」
エクセレン「わお、笑ってくれたわね!  ラミアちゃん」
ラミア「W17……」
ラミア「いえ、ラミア・ラヴレス…… これより帰還しちゃいまんね……」
ラミア「もとい」
ラミア「帰還します……」
キョウスケ「……了解した。 本作戦……これで本当に終了だ」
(通信切れる)
ラミア「……」
ラミア(レモン様…… 永劫の闘争をするために生まれた私を…… この世界は……受け入れてくれるようです……)
ラミア(どこまで行けるかはわかりません…… そして、いつ拒絶されるかもわかりません)
ラミア(ですが、あなたのくれた命…… それが尽きるまで……精一杯歩き続けようと思います)
ラミア(いつか……たどり着けますか……?  私を……自分の子だと言ってくれた…… あなたのいる所まで……)
ラミア(……お母さん……)

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[地球連邦軍伊豆基地 司令室]

レフィーナ「……報告致します。 ヒリュウ改、伊豆基地へ帰還致しました」
ケネス「ふん……帰ってくる者の数が、 こちらで得た情報とは違っているようだな」
テツヤ「我々の部隊には 軍属でない者もおりますので」
ケネス「まあいい。 とりあえず、貴様らにはご苦労だったと言っておく」
テツヤ「……ケネス少将、 レイカー司令やサカエ副指令は どちらにいらっしゃるのですか?」
ケネス「前司令、だ。 そういう所はダイテツと同じだな、 テツヤ・オノデラ」
テツヤ「誉め言葉として受け取っておきます」
ケネス「……覚悟しておけ。 貴様はワシの下でこき使ってやる」
テツヤ「……それで、 レイカー司令とサカエ副指令は?」
ケネス「フン、案ずるな。 連中には、これからも休暇を与えるつもりだ。 ……この伊豆基地でな」
テツヤ「……」
ケネス「貴様らの今後については、 すでに決定が下されている。 今からその詳細を伝える……」

《マオ・インダストリー》

[マオ・インダストリー 社内]

リン「……そうか。 皆、然るべき所へ行くことになるのだな」
イルム「意外に温情的な処置でね。 こっちからの希望もだいぶ受け入れられた」
イルム「ま、俺達以外の誰かが根回しをしたとは思うが」
リン「……」
イルム「で、そっちの様子は?」
リン「一からの出直しに近いな。 連邦軍からも援助が出るが、 極力自分達の力で何とかしたい」
イルム「……やっぱり、 イスルギとの合併吸収の話は蹴ったんだな?」
リン「無論だ」
イルム「……こっちとの合併話はどう、かな?」
リン「条件は厳しいぞ」
イルム「うっ……。 取引先は一つにしろってことか?」
リン「ああ」
イルム「かる~く他で営業するのはナシ?」
リン「なしだ」
イルム「わ……わかりました、社長」

[日本 伊豆地区]

リューネ「そっか、マサキはラ・ギアスに……」
マサキ「ああ。今回の件は何とか一段落ついたし…… あれからシュウの野郎も動きを見せていねえ」
クロ「それにあたし達、ニャんだかんだで 長い間地上にいたし……」
シロ「ここいらで ラ・ギアスへ帰っておきたいんだニャ」
リューネ「そうだね…… あんた達には帰る所があるもんね」
マサキ「リューネ、おめえはどうすんだ?」
リューネ「レフィーナ艦長から誘いを受けててね。 ヒリュウのみんなと一緒に月へ行くんだ」
マサキ「月へ? ヒリュウが?」
リューネ「うん。 ムーンクレイドルの警備任務に就くんだってさ」
マサキ「ふうん……」
リューネ「艦長は今のままの 扱いにしてくれるって言うし…… みんなとは気も会うからね」
マサキ「そうか。 ……じゃ、俺達はそろそろ行くぜ」
リューネ「道に迷うんじゃないよ、マサキ」
マサキ「ヘッ、言われなくてもわかってらあ」
シロ「でも、きっと迷うに決まってるニャ」
クロ「……お約束だもんニャ」
マサキ「その反応もお約束だってんだよ!」
リューネ「じゃ、マサキ……元気でね」
マサキ「ああ。 また地上で何かあったら戻ってくるぜ」
マサキ「お前や……仲間達を助けにな」

《京都》

[京都]

ライ「……ヒリュウの出航日が決まっただと?」
レオナ「ええ、明後日に」
ライ「俺達のハガネが出る日と同じか」
レオナ「でも、私達の今回の行き先は月だから、 長い航海ではなくてよ」
シャイン「では、 またすぐにお会いできるかも知れませんね」
レオナ「ですが、王女……あなたは」
シャイン「もちろん、リクセント公国に帰りますわ」
シャイン「でも、その後…… 連邦政府からの依頼で、各地の視察と 慰問を行うことになっておりますの」
ライ「そうなのですか」
シャイン「ラトゥーニやライディ様達と お別れするのは寂しいですけど……」
シャイン「私は、 私の責務を果たすつもりでございます」
ライ「……」
シャイン「よろしかったら、 一度皆様でリクセントへ遊びに来て下さいませ」
シャイン「皆様は私達の恩人ですもの。 国を挙げて超歓迎致しますわ」
ライ「わかりました」
レオナ「ライディース……あれを見て」
ライ「……!」
レオナ「カレトアの花……エルザム様ね」
ライ「フッ……相変わらずだな、兄さんは」
シャイン「私達も カトライア様のお墓にお花を……」
レオナ「はい……」
ライ「……」
ライ(義姉上……。 約束通り、カトレアの花を捧げに……)
ライ(そして、あなたに本当の別れを 告げるために来ました……)
ライ(どうか、義姉上……安らかにお眠り下さい………)

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[地球連邦軍伊豆基地 ブリーフィングルーム]

アラド「え!?  おれとゼオラを教導隊に!?」
カイ「ああ。 それにラトゥーニとラミア……」
ラーダ「私も外部スタッフとして、 あなた達の面倒を見ることになったの」
アラド「……」
カイ「何だ、その顔は?」
アラド「い、いや、あの……。 ラトとラミアさんはともかく、おれなんかが……」
カイ「その点は心配するな。 俺がこれからもお前をみっちりと鍛えてやる」
アラド「ゲ!!」
カイ「だから……何だ、その顔は?」
アラド「い、いえ……今後とも宜しくお願いします」
カイ「おう! 覚悟しておけい!」
アラド「もうしてるッス」
ラーダ「大丈夫よ。 ヨガを体得すれば、厳しい訓練にだって 絶えられるようになるわ」
アラド「その前に 何かが終わっちまいそうな気がするッス」
(扉が開閉する)
ゼオラ「アラド、準備が出来たわよ」
アラド「わかった。ラトは?」
ゼオラ「荷物がたくさんあるから、 先に行ってるって。地図はもらっておいたわ」
ラーダ「……アラド、ゼオラ。 ジャーダ達によろしく伝えてね」
カイ「双子が生まれたら、俺達も顔を見に行くとな」
ゼオラ「はい。 じゃ、行きましょう、アラド」
アラド「ああ」

[地球連邦軍伊豆基地 正門]

ゼオラ「……ね、アラド。一つ聞いていい?」
アラド「何だよ、藪から棒に」
ゼオラ「あなた、別れ別れになる前に 私との約束以外に守るものがあるって 言ったわよね?」
アラド「そ、そうだったっけ?」
ゼオラ「あれって……何だったの?」
アラド「え、え~と……」
ゼオラ「……地球圏に住む人達のこと?」
アラド「それもあるけど……」
ゼオラ「じゃあ、自分のプライドとか……」
アラド「そんなの、 あってねえようなもんだからなあ」
ゼオラ「オウカ姉様達との想い出?」
アラド「そりゃ、当たり前だろ」
ゼオラ「うん……」
アラド「……」
ゼオラ「……じゃあ、何なの?」
アラド「お前って…… そういう所は鈍いんだよな、昔から」
ゼオラ「え?」
アラド「あの時に言ったおれが守るものって……」
アラド「お前だよ」
ゼオラ「!」
アラド「そう、ゼオラ……お前のことなんだ」
ゼオラ「アラド……あなた、私のことを……?」
アラド「う、うん……まあ、付き合い長いからね」
ゼオラ「どうして、今まで……」
アラド「ほ、ほら、そういうのって…… いちいち口に出すもんじゃないしさ」
ゼオラ「……」
ゼオラ「……バカ……」
ゼオラ「本当にバカなんだから……」

《東京》

[東京 ベネルディ家]

ガーネット「お帰り、ラトゥーニ」
ラトゥーニ「ガーネット……」
ジャーダ「何だ何だ、この荷物は!?」
ラトゥーニ「みんなからの出産祝いなの……」
ジャーダ「まだ生まれてねえのに、気がはええな」
ラトゥーニ「それと……これを……」
ガーネット「家のカタログ? どういうこと?」
ラトゥーニ「家族が増えて大変だろうからって、 シャイン王女が……」
ガーネット「さ、さっすがお金持ち……」
ジャーダ「いや、そんな物までもらうわけには……」
ガーネット「いいじゃない。 あんたの今の稼ぎじゃ、これ以上 広い所に引っ越せないんだし」
ガーネット「王女様の気持ち、 ありがたくもらっておこうよ」
ジャーダ「まあ、お前がそう言うんなら……」
ガーネット「さあさ、中に入って、ラトゥーニ。 ご馳走たっくさん作ってあるんだから」
ジャーダ「ああ。 アラドとゼオラもすぐに来るんだろ?」
ラトゥーニ「……でも……オウカ姉様は……」
ガーネット「ラトゥーニ…… 姉さん達の分も作ってあるの」
ラトゥーニ「え……?」
ジャーダ「……お前達の心の中にいるんだろ、 姉貴達は」
ガーネット「きっとあなたの 姉さんも喜んでくれるよ。ここへ 無事に戻ってこれたことを……」
ジャーダ「だから、みんなで……な?」
ラトゥーニ「うん……」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[地球連邦軍伊豆基地 格納庫]

カチーナ「トロロパブロフ・ビーフジャーキー!?」
エクセレン「ちゃうちゃう。 ペトロパブロフロクス・ガムスキー」
タスク「ペトロポロックス・カムタンスキーっしょ?」
ヴィレッタ「ペトロパブロフスク・カムチャツキーだ」
キョウスケ「……………………そうです」
アヤ「それ……どこなの?」
キョウスケ「ここから遥か北…… カムチャッカ半島にある基地です」
エクセレン「そうそう、もう限りなく北極。 外でペンギンちゃんと握手できるわね。 ……下手するとホントに凍死するけど」
アヤ「そ、そうね……。 ノースリーブじゃ、ちょっとね。 あと、ペンギンは北極にはいないけど」
リュウセイ「もしかしたら、 ちょっと可愛い顔したでっかい奴は いるかも知れねえぜ?」
マイ「それ……見てみたい」
リュウセイ「そうか!  じゃ、俺の秘蔵RVD、第14話を……」
アヤ「待ちなさい!  それ、特撮の怪獣か何かじゃないでしょうね!?」
リュウセイ「え?  ああ、まあ……………………そうだけど」
アヤ「リュウ~。 お願いだから、マイを染めるのはやめて~。 そっち方面はやめて~」
エクセレン「別の方面なら、ともかくねぇ」
カチーナ「おい、 トロロとビーフジャーキーはどうなったんだ?」
ラッセル「カムチャツキーですから、中尉。 でも、どうしてまたそんな所へ……?」
エクセレン「ん~、ケネス少将は ラングレーにいた時から私達のことを よく思ってなかったみたいだから……」
キョウスケ「有り体に言えば、 飛ばされたということだな」
カチーナ「ケッ…… 見た目に似合わず陰険なヤローだな、 あのハゲダコは」
リュウセイ「ブリットやクスハも その何とかチャッキーに行くのか?」
キョウスケ「ああ、 テスラ研での仕事を終えた後でな」
エクセレン「まあ、 辺境警備ってのもオツなものよん」
エクセレン「それに、 私達の愛で氷くらい溶かしてやろうかと。 ね、キョウスケ」
キョウスケ「……外でペンギンと協力して溶かせ」
エクセレン「ふふ……無知ね、キョウスケ。 聞きたてホヤホヤの新情報によると、 北極にペンギンちゃんはいないのよ?」
カチーナ「……ま、おめえらなら どこへ行っても相変わらずだろうな」
タスク「カチーナ中尉もッスね」
カチーナ「ああ。 グウの音って奴が出るまで 鍛えてやるからな、覚悟しとけ」
タスク「今、出しておくッス。 …………………グウ」
カチーナ「バッキャロー、 そりゃてめえの腹の虫だろうが!」
(通信)
ユン「出航30分前。ヒリュウ改クルーは 直ちに乗艦して下さい」
ユン「繰り返します。ヒリュウ改クルーは 直ちに乗艦して下さい」
エクセレン「……時間ね」
ヴィレッタ「アヤ、リュウセイ、マイ…… 私達もハガネに行きましょう」
アヤ「わかりました」
リュウセイ「了解」
キョウスケ「リュウセイ、お前達は?」
リュウセイ「SRXチームはハガネに乗って…… しばらくの間、色んな所をパトロールするんだ」
エクセレン「わお、そっちはそっちで大変そうねぇ」
リュウセイ「ホントはたらい回しだったりして」
カチーナ「ま……頑張れよ、SRXチーム」
アヤ「ええ、カチーナ中尉達もね」
エクセレン「マイちゃん、 お姉さんと仲良くするのよ?」
マイ「うん……」
リュウセイ「キョウスケ中尉、 みんなして風邪ひくなよ。 クスハのアレが出てくるぜ?」
キョウスケ「……それは厄介だな。気をつけよう」
エクセレン「みんな、元気でね」
ヴィレッタ「ええ、また会いましょう」

[ハガネ ブリッジ]

レフィーナ「……では、我々は先に出航します」
テツヤ「わかりました。どうかお気をつけて」
レフィーナ「ええ、そちらも」
ショーン「ダイテツ中佐の後を継ぎ、 しっかりとハガネの艦長職を務めて下さい」
テツヤ「はい」
レフィーナ「それでは…… またお会いしましょう、テツヤ艦長」
(通信切れる)
テツヤ「……」
テツヤ「エイタ、こちらの出航準備は?」
エイタ「後は、新しいクルーの到着を待つだけです」
テツヤ「了解した」
エイタ「ところで、艦長…… 新任のオペレーターが来るって 聞いたんですけど、誰なんです?」
(扉が開閉する)
リオ「私よ」
エイタ「ええっ!? な、何で!?」
リオ「人手不足だからって、 艦長に頼まれてね。ほら、私…… 前はハガネのオペレーターやってたし」
エイタ「し、新人だと思ってたのに……」
エイタ「そんでもって、色々教えて、 親密になっちゃったりして、格納庫の片隅で 告白されたりなんかするのを楽しみに……」
リオ「新人が来るまでの一時配置だから、 私で我慢しときなさい」
エイタ「ああ~、俺のバラ色のハガネライフが……」
テツヤ「何を言っとるんだ、お前は」
(扉が開閉する)
リョウト「……艦長、 機体のチェックが終わりました。 これがリストです」
テツヤ「ご苦労。 さあ、エイタ。仕事に戻れ」
エイタ「……いいんだ、いいんだ。 どーせ俺は独り者なんだ。きっと新人だって 男が来るんだ。あ~、そうに決まってる」
テツヤ「いつまでもブツクサ言ってると、 本当に男を配属するぞ」
エイタ「いえッ!  エイタ・ナダカ、職務に戻ります!」
テツヤ「……では、お前達。 これからもよろしく頼む」
テツヤ「ダイテツ艦長が遺してくれたこの艦を、 皆で力を合わせて運行していこう」
リオ「はい」
リョウト「了解です、艦長」
エイタ「新人は女の子でよろしくお願いします」
テツヤ「……男で決定だ」
エイタ(ガビ~ン)
テツヤ「では、本艦はこれより出航する!  総員、直ちに持ち場へつけ!」
エイタ「は、はいっ! 総員に伝達!  直ちに持ち場へつけ! 繰り返す……」
テツヤ「………」
テツヤ(見ていて下さい、ダイテツ艦長…… これが、ハガネの新たなる旅立ちです)

《テスラ・ライヒ研究所》

[テスラ・ライヒ研究所 格納庫]

エリ「……では、超機人は このテスラ・ライヒ研究所へ 預けると言うことでいいのですね?」
ブリット「ええ。 軍の管轄下においておくのは あまり良くないと思いますので……」
クスハ「それに……龍虎王や虎龍王を 休ませてあげたいんです」
リシュウ「そうじゃな……その方が良かろう」
エリ「わかりました。私の方の解析作業も 一時中断しましょう」
ジョナサン「それでいいのか、アンザイ博士?」
エリ「ええ。 超機人は、私だけのものではありませんし……」
エリ「また彼らの力が必要になる時が 来るかも知れません」
ジョナサン「……そうだな では、クスハ、ブリット。龍虎王は 私達が責任を持って預かるよ」
ブリット「お願いします」
ジョナサン「君は この後、キョウスケ中尉達と合流するのか?」
ブリット「ええ」
リシュウ「クスハ、おぬしはどうするんじゃ?」
クスハ「ブリット君と一緒に行きます。 先生に言われた使命を果たすために……」
リシュウ「うむ」
ジョナサン「なら、ちょうど良かった。 グルンガスト参式の3号機に乗っていきたまえ」
ブリット「こっちに戻って来ていたんですか?」
ジョナサン「ああ、 もう組み立ても完了している。 以後はATXチームで使ってくれ」
ブリット「わかりました」
リシュウ「息災でな、二人共」
クスハ「はい、先生達も……」
ジョナサン「暇が出来たら、いつでも遊びに来たまえ。 アイビスやツグミ達も待っているからな」
ブリット「ええ。 ……では、行ってきます」

[テスラ・ライヒ研究所]

フィリオ「アイビス、 一服して、お茶にしようか」
ツグミ「今日のケーキはブルーベリータルトよ」
アイビス「やったぁ!  朝からトレーニングしてたんで もうお腹ペコペコだよ」
ツグミ「ハードなトレーニングが続くのに、 随分と楽しそうね」
アイビス「当たり前だよ。 戦いが終わってプロジェクトTDが再開されたんだもの」
アイビス「やっぱり、あたし…… 戦うよりも飛ぶことの方が好きだしね」
フィリオ「僕も同じだよ、アイビス」
ツグミ「でも、うらやましいわ。 食べたカロリーが完全に燃焼されちゃうなんて……」
ツグミ「私もトレーニングに付き合おうかな……」
フィリオ「そうだね。 ナビゲーターとしての訓練を 再開したらどうだい?」
ツグミ「……そうね。 私もその時期が来たと思うわ」
フィリオ「ああ……」
アイビス「二人で何の話?」
フィリオ「大事な夢の話だよ。 君が宇宙を飛ぶための」
アイビス「それって、ツグミの体重と関係あるの?」
ツグミ「もう! アイビス!」
フィリオ(アイビス…… もうすぐ君の新しい翼『α』が完成する……)
フィリオ(そして、スレイが戻り 『β』が完成した時、 僕達の夢は銀河へ旅立つ……)
フィリオ(でも、僕はその時を迎えられないだろう……)
アイビス「どうしたの、フィリオ?  何だか顔色が悪いけど…」
ツグミ「出来の悪いナンバー04のせいよ」
アイビス「ぐっ!」
フィリオ「そんなことはないよ、アイビス」
フィリオ「今の君は アステリオンを駆るに足る勇気と 力を備えているさ」
アイビス「まだまだだよ……。 まだ、あたしはスレイに勝てない……」
アイビス「だから、スレイは あたし達の所に帰ってこないんだ……」
ツグミ「……スレイの消息は不明のままね……」
アイビス「そんな顔しないでよ、ツグミ。 あたし……まだまだ頑張るからさ」
フィリオ「それでこそだよ。 アイビス……君の力を信じてる」
アイビス「はい!」
フィリオ(その笑顔……君ならきっといつか飛べる……)
フィリオ(アイビス、ツグミ……そして、スレイ。 僕の夢、君達の翼に託すよ……)

[輸送機・機内]

エクセレン「……キョウスケ、 ペトロ中略チャッキー基地まで あと2時間だって」
キョウスケ「ああ、わかった」
エクセレン「今、ブリット君とクスハちゃんも ペチャッ基地に向かってるみたいよん」
キョウスケ「略し方が適当になってきてるな」
エクセレン「だって、舌噛みそうな名前だし…… いちいち完全に言うのもうっとおしいでしょ?」
キョウスケ「……まあ、確かにな」
エクセレン「……ラミアちゃんが カイ少佐にスカウトされちゃったから、 寂しくなったけど……」
エクセレン「また会えるわよね?  みんなとも……きっと……」
キョウスケ「……」
キョウスケ「……どうした?  何か気になることがあるのか?」
エクセレン「うん……」
エクセレン「あの時、アインストシリーズは 全部塵になったじゃない?」
キョウスケ「ああ……」
エクセレン「だけど……私は残った。 ラインなヴァイスちゃんも……」
キョウスケ「……」
エクセレン「後は私がいなくなれば…… あいつらの……」
キョウスケ「以前、 お前はお前のままでいろと言ったぞ」
エクセレン「……」
キョウスケ「もしもの時は……おれがお前を殺してやる」
キョウスケ「……だから、心配するな」
エクセレン「ふふふ、 そんな慰め方ってあり?  これがホントの殺し文句って奴?」
キョウスケ「……その調子だ おれの傍にいればいい、エクセレン」
エクセレン「うん。 ……じゃ、殺し文句ついでにお願いが あるんだけど……いい?」
キョウスケ「何だ?」
エクセレン「近い将来…… ううん、もっと先でいいけど…… 私、双子の赤ちゃんが欲しいな」
キョウスケ「……気が早い話だな」
エクセレン「ふふ……しかもね、女の子の双子。 お姉ちゃんの名前は……レモン。 それで、妹は……」
キョウスケ「……アルフィミィ……か」
エクセレン「駄目? 不謹慎……かしらね」
キョウスケ「いや……嫌いじゃない」

<スタッフロール>

SUPER ROBOT WARS OG
THANKS FOR YOUR PLAYING

THE END


back index