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魔星へ集う者達 ~ 第46話 ~

〈グレイターキンのHP20%以下〉

(グレイターキンに爆煙)
メキボス「うぐっ!!」
カチーナ「! 奴がひるみやがった!!」
リューネ「なら、 このまま一気に勝負をつけてやるよ!」
メキボス「フッ、フフフ……」
リューネ「! 何がおかしいのさ!?」
メキボス「……以前よりも 力を増してやがる。 やはり、こいつらは……」
マサキ「その後の台詞は もう聞き飽きたぜ、メキボス!」
メキボス「……そうだな、まったくだ」
メキボス「単に戦闘能力や軍事技術力が 優れているというだけで、俺達を ここまで押したわけじゃなさそうだ」
マサキ「どういうことだ!?」
メキボス「……だが、 ウェンドロやあの連中は そのことに気づいちゃいねえ……」
メキボス「そして…… ヴィガジがお前らに敗れたのも そのせいだろう」
マサキ「いったい何が言いてえんだ、 てめえは!?」
メキボス「俺達より、お前達の方が 勝ってるかも知れねえって話だ。 ……メンタルな部分でな」
イルム「ほう、 随分と殊勝なことを言うじゃないか。 潔く負けを認める気か?」
メキボス「それは……」
(通信)
ウェンドロ「……それは許さないよ、 メキボス」
メキボス「ウェンドロ様……!」
ウェンドロ「あんな下等生物に 僕達が負けることは許されない……」
ウェンドロ「奴らを 僕達と同レベルの知的生命体だと 認めるわけにはいかないんだ」
メキボス「しかし、彼らは……!」
ウェンドロ「馬鹿なことを 言っちゃいけない。奴らの危険性は 過去に実証されているんだよ?」
ウェンドロ「だから、彼らも 野蛮人達に警告を与えるため、 色々と仕掛けをしたのさ」
メキボス「……」
ウェンドロ「地球人は人間じゃない、 病原菌なんだ。やがてはこの銀河を 覆い尽くす……忌むべき存在だよ」
ウェンドロ「バルマーの者達のように 兵器として利用するならともかく…… 対等に接するなんて以ての外さ」
メキボス「……」
ウェンドロ「メキボス…… つまらない情に流されちゃいけない。 彼らは人に似た動物に過ぎないんだ」
メキボス「その彼らに 我々はここまで押されたんですよ」
ウェンドロ「動物だって、 仲間を守って戦うぐらいのことは するだろう?」
メキボス「では、それが出来ない人間は 動物以下と言うことになりますね」
ウェンドロ「……情に流される者もね」
メキボス「……」
ウェンドロ「それでも、 奴らを認めると言うのなら…… もう君に用はない」
ウェンドロ「そして、君が帰る場所もない。 ヴィガジのように戦って死ぬんだね」
メキボス「そうか……それがお前の意思か」
ウェンドロ「ふふふ…… 君の代わりなど、いくらでもいる。 そう、捨て駒はね」
メキボス「……」
ウェンドロ「せめてもの情けだ、本国には 名誉の戦死と報告しておくよ」
ウェンドロ「それじゃ、さよなら…… 兄さん」
(通信切れる)
メキボス(ウェンドロ、お前は……)
メキボス(……)
メキボス(だが、 これで踏ん切りがついたぜ)
マサキ「……何をやってたか知らねえが、 もう逃げ場はねえぜ、メキボス!」
メキボス「……行けよ、マサキ・アンドー」
マサキ「!?」
メキボス「早くネビーイームへ行け。 今なら……お前達なら、あいつらを 止められるかも知れねえ」
マサキ「な……何だと!?」
リン「どういうことだ?」
メキボス「もう飽きたのさ、 お前達の相手をするのがな」
ライ「それを信じろというのか?」
メキボス「ああ」
カチーナ「ふざけんな!  こっちを油断させといて、後ろから 撃つつもりなんじゃねえのか!?」
メキボス「ま、 信じる信じないはお前らの勝手だが…… 損はさせねえぜ」
イルム「……いいだろう」
カイ「イルム!?」
イルム「出過ぎたことを言って すみません、カイ少佐」
イルム「ですが、 今のあいつは信じられる…… いえ、信じてみたいんです」
カイ「お前……」
イルム「ま……こういうことを言うのも、 俺のキャラじゃないんですがね」
メキボス「……すまねえな、イルム。 俺を信じてくれた礼ってわけじゃねえが、 一つ教えてやるぜ」
メキボス「俺達が使っている 空間転移装置は、ネビーイームの 第6層にある……」
メキボス「そいつを押さえられりゃ、 インスペクターは終わりだ」
イルム「メキボス……!」
メキボス「イルム…… 今度会うことがあったら、 ゆっくり話をしようぜ」
メキボス「お前とは 気が合いそうだからな」
イルム「……ああ」
リン「メキボス…… お前はこれからどうするつもりだ?」
メキボス「やらなきゃならねえことが 出来たんでな……ま、お前らの邪魔は しないから、心配すンな」
メキボス「じゃ……あばよ」
(グレイターキンが撤退)
イルム「メキボス………」
リン「………」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「艦周辺に敵の反応なし」
レフィーナ「警戒態勢を維持。 各機の修理、補給作業を急いで下さい」
レフィーナ「それらが終わり次第、 私達はL5宙域……ホワイトスターへ 向けて発進します」

[格納庫]

リョウト「……タスク、 そっちの方の補給作業はどう?」
タスク「もう終わったぜ。 ユウの奴がえらいペースで 仕事をこなしてくれたからな」
リョウト「え? どうして?」
タスク「もうすぐ3時だから。 あいつ、その時間のお茶は 欠かせないんだと」
リョウト「そうなんだ……」
(扉が開閉する)
カーラ「ハーイ!  みんな、集まってー!  今度はあたし達が補給する番だよ!」
アラド「え? 本当ッスか!?」
リオ「私達でお食事を用意したの。 作戦前だから、軽食系だけどね」
レーツェル「ささやかながら、 私も協力させていただいた」
カイ「そりゃありがたい。 お前の料理を味わうのは久しぶりだ」
リューネ「大事な作戦の前のお約束だもんね」
レーツェル「食事だけではない。 デザートも用意してある」
アイビス「レーツェルさんの作るデザート……」
ツグミ「アイビス! よだれ、よだれ!」
アイビス「ウソ……!?  あたし、そんな大口空けてた!?」
アヤ「ええ、かなり」
レーツェル「今日は アップル・ストゥリューデルだ」
レーツェル「綿々と伝えられてきた ウィーン菓子の真髄を堪能してくれたまえ」
アヤ「では、遠慮なく……」
アイビス「いただきます!」
リューネ「いいよね、 アヤ大尉もアイビスも……。 食べても食べてもスリムだもん」
アヤ「そう?  でも、私も見えない所で努力してるのよ」
リューネ「あたしだって やってるよ、ダイエット……。 でも……」
リューネ「食べたもの全部が 筋肉になるってどういうことよ!?」
レーツェル「ふむ…… アスリートとしては理想的だな」
リューネ「あたしは アスリートじゃなくて女の子だよ!」
アイビス「まあまあ、リューネ……。 食べたものが全部、バストに 行っちゃう人よりいいじゃない」
ツグミ「アイビス…… それは誰のことを言ってるのかな……?」
アイビス「さあね……」
リューネ「ツグミって、そんな体質なんだ?」
ツグミ「まあ、こういう悩みは アイビスにはわからないでしょうね、永遠に」
アイビス(うっ……! 本気で怒ってる……)
ユウキ「では、スイーツに合わせて 俺が淹れた紅茶も味わっていただこう」
タスク「ほらな、リョウト。 あいつ、やっぱ用意してただろ?」
リョウト「うん……いい香りの紅茶だね」
ユウキ「そう……まずは香りを楽しんでくれ。 そして、次は色合いを……。 そうすれば、心が落ち着いてくる」
ユウキ「産地であるヒマラヤ山岳地帯の景色が まぶたの裏に浮かんでくる……」
ユウキ「そうして初めて、“紅茶のシャンパン”を 堪能することが出来るのだ」
ラウル「へ、へ~え……」
ユウキ「お前も飲んでみるか?」
ラウル「あ、ああ。 ヒマラヤには行ったことないけど……」
クスハ「……あと、他の飲み物もありますよ」
ラミア「!!」
クスハ「あ、あの…… 普通の飲み物ですから、大丈夫です」
ラミア「そ、そうか……助かった」
レオナ「食欲のない人には お粥も用意してありますから、どうぞ」
ライ「レオナ……お前が作ったのか?」
レオナ「そ、そうよ」
ライ「……」
タスク「あ、大丈夫ッスよ。 以前に毒味してありますから」
レオナ「毒味……!?  あなた、やっぱりあの時、そんなつもりで……!」
タスク「味見の間違いでした、レオナ様」
マサキ「どれどれ……」
マサキ「お! うめえぜ、これ。 ライ、おめえも食ってみろよ」
ライ「……」
ライ「……うまい」
タスク「ま、お粥以外は相変わらずッスけど」
レオナ「その言葉……挑戦と受け取っておくわ」
タスク「大失言でした、レオナ様」
ゼオラ「他にもたくさんありますから、 遠慮なく食べて下さいね」
アラド「ゲ!! まさか、お前も……!?」
ゼオラ「な、何よ、その反応!  ちゃんとレーツェルさんに 教わって作ったんだから!!」
レーツェル「ああ、味は私が保証しよう」
エクセレン「んじゃ、ちょっと味見をば」
シャイン「では、私も」
アラド「あ!!」
エクセレン「わお!  これ、おいしいじゃなぁい?」
シャイン「本当ですわ。 お城の料理番も顔負けでございます」
アラド「マ、マジ!?」
ゼオラ「ほら見なさいよっ!」
アラド「すみません……ありがたく頂戴致します」
ゼオラ「じゃ……はい、これあなたの。 大サービスで5人分よ」
ラーダ「あら……太っ腹なのね、ゼオラ」
アラド「へ~え、太いのは足だけじゃ……」
(打撃)
アラド「いてっ!!」
ゼオラ「どう!? これでも太いって言うの!?」
アラド「あ、あのさ、ゼオラ……その……見えてるよ」
ゼオラ「え? 何が?」
ラッセル「ク、クマさんパンツだ……!」
アラド「お前、意外と可愛いパンツはいてんだな」
ゼオラ「バ、バカ! エッチ! スケベ!  あんたなんか最低よぉぉぉっ!!」
アラド「じ、自分で見せといて そりゃねえだろ!?」
ゼオラ「も、もうお嫁に行けないわ!  どうしてくれるのよっ!?」
アラド「お、お前…… 今時そんなこと言ってる奴いねえって」
イルム「……見事なカカト落としだったねぇ」
リョウト「え、ええ。 彼女、いい空手家になれるかも……」
カチーナ「それにしても、ラッセル。 おめえ、見る時はしっかり見てやがんな」
ラッセル「い、いえ、自分はあくまでも自然…… もとい、偶然に……」
カチーナ「な~に言ってやがんだ、 このムッツリスケベ!」
ラッセル(本当に偶然だったのに……。 あ、あんまりだ……)
ラトゥーニ「……リュウセイ、これ……」
リュウセイ「おにぎりか。 確か、前も作ってくれたよな」
ブリット「か、変わった形だな。 何か眼鏡みたいだ」
ラトゥーニ「うん……SRXのマスクの形なの……」
リュウセイ「あ、な~るほど。 ありがとよ、ラトゥーニ」
マイ「……」
マイ(何だろう……この感じ…… 胸がもやもやする………)
カーラ「……あれ?  ゼンガー少佐とキョウスケ中尉は コーヒーだけでいいの?」
ゼンガー「うむ」
キョウスケ「……乗っている機体に問題があってな。 コックピットが悲惨なことになりかねん」
カーラ「どういうこと?」
ギリアム「彼らが乗る機体は、 特に加速度がきついからだろう」
カーラ「ふ~ん……。 でも、お腹に何か入れとかないと力が出ないよ?」
ゼンガー「……一理あるな。 では、軽めで栄養があるものを頼む」
カーラ「はーい!  レーツェルさん、オーダー入ったよ!」
レーツェル「承知した。では、これを」
ゼンガー「む……?」
レーツェル「アフリカのパニという料理だ。 軽めで栄養価が高い」
ゼンガー「では、もらおうか」
キョウスケ「いただきます」
カーラ「レーツェルさん、パニって何なの?」
レーツェル「聞かぬ方が身のためだ」
カーラ「またまたぁ、教えてよ」
レーツェル「実は……………」
カーラ「え、ええっ!?  ホントのことを知ったら、パニくるよ!?」
レーツェル「ああ。 故にあの二人ぐらいにしか出せん」
ゼンガー「うむ……なかなかの味だ」
キョウスケ「そうですね」
カーラ「……素材の正体を知っても 同じ反応だったりして」
ヴィレッタ「……相変わらず、 こういう時はみんな賑やかね」
ギリアム「決意と覚悟はある…… 気負いもある。だが、それだけでは ない所に彼らの強さがあるのさ」
ヴィレッタ「……ええ」

[ヒリュウ改 ブリッジ]

ユン「艦長、本艦とクロガネの補給作業が 終了しました」
レフィーナ「では、 総員に第二種戦闘配置命令を出して下さい」
ユン「了解です」
ショーン「いよいよですな、艦長」
レフィーナ「ええ。 私達をここまで送り出してくれた 人達の想いに応えるためにも……」
レフィーナ「今もアインストと 戦っている同胞達のためにも……」
レフィーナ「我々は、ホワイトスターに潜む 敵の中核を叩かねばなりません」
ショーン「ええ」
レフィーナ「全艦発進!  これより我々はL5宙域ホワイトスターへ 向かいます!」


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