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紅の幻想 ~ 第34話 ~

[ハガネ ブリッジ]

エイタ「哨戒中の友軍艦から連絡あり。 ポイントS3448で、シロガネらしき 艦影をキャッチしたとのことです」
ダイテツ「方向は南南西…… 本艦の位置からも割と近いな」
エイタ「はい。その先には 我が軍の中継基地があります」
ダイテツ(シロガネがそこを目指している 可能性もあるか……)
ダイテツ「本艦は これよりポイントS3448へ向かう。 その旨をヒリュウにも伝達しろ」
エイタ「はっ」
ダイテツ「テツヤ、偵察隊を先行させろ」
テツヤ「……了解です」
テツヤ(リー……お前は……)
テツヤ(お前はそれほどまでに連邦軍が…… そして、俺達が信用できないというのか……)

[ハガネ 個室]

ライ「俺達に話とは何だ? クスハ少尉」
クスハ「あの子の…… マイちゃんのことなんですが……」
リュウセイ「……!」
クスハ「もしかして、あの子は……」
ライ「……悪いが、 俺達も彼女についての詳細は聞かされていない」
クスハ「え……?」
リュウセイ「すまねえ、クスハ。 今はまだ答えられねえんだ」
クスハ「リュウセイ君……」
リュウセイ「頼む…… もう少し時間をくれ」
クスハ「う、うん……」
(扉が開閉する・クスハが立ち去る)
ライ「リュウセイ……」
リュウセイ「もうこれ以上は無理だぜ。 お前だって、そう思ってんだろ?」
ライ「……」
リュウセイ「クスハだって気づいてる…… 誤魔化し切れるもんじゃねえ」
ライ「……どうするつもりだ?」
リュウセイ「今から 隊長とアヤに話をつけてくる」
ライ「話?」
リュウセイ「ああ。 中途半端なままじゃ、いずれは……」
ライ「そうだな」
リュウセイ「それに、マイは 俺達と違って自分の意思で戦ってんのか どうかわからねえ……」
リュウセイ「もしかしたら、 ゼオラやオウカみてえにあいつも……」
ライ「わかった。俺も行こう」
リュウセイ「ライ……」
ライ「隊長に確認したいことがあるのでな」

[不明]

レビ「……目を覚ませ、マイ……。 マイ・コバヤシ……」
マイ「うう……う……」
レビ「お前も見たはずだ……あの女を……」
マイ「!?」
レビ「お前が置かれている状況は あのラミアという女と同じ……」
マイ「ど、どういうことだ……?」
レビ「……お前の周りの者は全て『敵』……」
レビ「我らを打ち倒した憎むべき『敵』……」
マイ「て、『敵』……!?」
レビ「そうだ……アヤ・コバヤシ…… リュウセイ・ダテ…… ハガネとヒリュウの者達は……」
レビ「全て我らの『敵』だ」
マイ「そ、そんな……嘘だ……!」
レビ「嘘ではない……。 あの者達は我らを……ジュデッカを 打ち倒した……」
マイ「う、うう……う……!」
レビ「私と一つになるのだ、 マイ・コバヤシ……」
レビ「我らの『敵』を倒すために…… 再びジュデッカを甦らせるために……」
マイ「わ、私は……『敵』になりたくない……!  アヤ達の『敵』には……!」
レビ「『敵』だ……!  あの者達は我らの『敵』……!」
(念動感応)
マイ「ううっ! あああっ!!」
レビ「『敵』を倒せ……!  我らの『敵』を……!」
レビ「アヤ・コバヤシ達を倒せ……!」

[ハガネ 個室]

マイ「嫌だ! 私は……!!」
シャイン「マイ、しっかりなさいませ!」
マイ「!!」
ラトゥーニ「マイ……」
マイ「ど、どうして……お前達が……?」
ラトゥーニ「あなたが うなされているのが聞こえたから……」
マイ「……」
シャイン「大丈夫でございますか……?」
マイ「……」
マイ(ラトゥーニや…… シャイン王女が私の『敵』……?)
マイ(アヤ達が……私の……)
ラトゥーニ「マイ……?」
マイ「ち、違う……!」
ラトゥーニ「!?」
マイ「違う! そんなことはない!  そんなことは!!」
(扉が開閉する・マイが立ち去る)
シャイン「ど、どこへ行かれますの!?」
ラトゥーニ「マイ……!」

[ハガネ 艦内]

ラーダ「アヤ…… みんながあの子とレビの関係に 気づくのは、もう時間の問題よ」
アヤ「……」
ヴィレッタ「……」
ラーダ「何よりも本人が 事実を知らないのなら尚更…… 隠し通すことは出来ないわ」
アヤ「……」
ヴィレッタ「そうだな……。 マイも私達も……事実を 受け入れなければならない」
アヤ「隊長……」
ヴィレッタ「私達から話すしかない。 今、マイが抱えている問題も含めて……」
ラーダ「問題……?」
アヤ「ええ……。 それが……マイにまだ事実を教えられない理由……」
アヤ「あの子には…… レビの記憶が残っているんです」
ラーダ「え……!?」
アヤ「マイの中には レビ・トーラーの残留思念が……」
(扉が開閉する)
リュウセイ「な、何だって……!?」
アヤ「!」
ライ「その話は本当なのですか!?」
アヤ「リュ、リュウ……ライ……!」
リュウセイ「あいつにレビの記憶が…… 俺達の敵だった頃の記憶が残ってるなんて!」
(扉が開閉する)
マイ「……そんな……」
リュウセイ「!!」
アヤ「マ、マイ!」
マイ「わ、私が……レビ……!?」
アヤ「あ……!」
マイ「私は『敵』……!  お前達の……『敵』……!」
マイ「う、うあああっ!!」
(速い足音・マイが走り去る)
リュウセイ「マイ!!」
アヤ「ま、待って! どこへ行くの!?」

[不明]

レビ「……ようやく真実に気づいたか……」
マイ「や、やめろ……!」
レビ「恐れることはない…… 全てを……私を受け入れろ……」
マイ「わ、私は……お前じゃない……!」
レビ「お前はこの私…… ジュデッカの巫女、レビ・トーラー……」
(念動感応)
マイ「くっ! ああっ!!」
レビ「さあ……我に身を委ねよ……」
(念動感応)
マイ「あ……ああ……!」
レビ「我と共に『敵』を倒すのだ……」
マイ「『敵』を……倒す……」
レビ「そうだ…… 我らの『敵』を打ち倒せ……。 そのための力を手に入れろ……」
マイ「ち……か……ら……」
レビ「そして……我が玉座に戻るのだ……」

[ハガネ ブリーフィングルーム]

シャイン「マイがいなくなった……!?」
リュウセイ「あ、ああ。 あいつを見かけてねえか?」
シャイン「い、いえ……私達も あの子の様子がおかしかったので、 捜していたのですが……」
アラド「マイに何かあったんスか!?」
リュウセイ「俺のせいだ……!  俺が余計なことを言っちまったせいで、 あいつは……!」
ラトゥーニ「も、もしかして…… 自分のことを……?」
リュウセイ「! お、お前……」
ラトゥーニ「うん…… 何となく気づいてた……」
ラトゥーニ「それに…… あの子は昔の私達と同じような 感じだったから……」
リュウセイ「ラトゥーニ……」
ラトゥーニ「でも、今は違う……違うと思うの……」
リュウセイ「……」
ラトゥーニ「マイを 守ってあげなきゃ……私達で……」
ラトゥーニ「あの子は私達の仲間だもの……」
リュウセイ「……!」
ラトゥーニ「そうでしょ? リュウセイ……。 例えどんな過去があっても、今のあの子は……」
リュウセイ「ああ……!」
シャイン「とにかく、 皆で手分けしてマイを捜しましょう!」
アラド「わ、わかりました!」

[ハガネ ブリッジ]

(アラート)
ダイテツ「何事だ!?」
エイタ「20番ハンガーの機体が起動!  発進シーケンスに入っています!」
テツヤ「20番!?  偵察任務の機体じゃないぞ!」
ダイテツ「搭乗者を確認せよ!」
エイタ「は、はい!」
(通信)
エイタ「パーソナルデータ識別…… マイ・コバヤシです!」
ダイテツ「!」
テツヤ「すぐに発進を止めさせろ!」
エイタ「向こうでALCを切っています!  間に合いません!」
(発進)
エイタ「は、発進しました!」
ダイテツ「ヴィレッタ大尉に連絡!  SRXチームに後を追わせろ!」
テツヤ「了解!」

[ハガネ 格納庫]

アヤ「マ、マイが外へ!?」
ヴィレッタ「ああ…… しかも、ALCを切った状態で」
リュウセイ「何!?  そ、それじゃ、行き先が……!」
ヴィレッタ「私達に追跡命令が出た。 手分けしてマイを追うわよ」
リュウセイ「りょ、了解!」
シャイン「私も行きますわ!」
ラトゥーニ「私も……!  あの子を放っておけない……!」
アラド「おれも出るッスよ!」
ヴィレッタ「わかった…… 艦長には私から言っておく。 すぐに発進を!」
アラド「は、はい!」
(速い足音・ライとヴィレッタ以外が走り去る)
ライ「……」
ヴィレッタ「ライ、どうした?」
ライ「出る前に 確認しておきたいことがあります」
ヴィレッタ「確認?」
ライ「ええ……あなたの真意について」
ヴィレッタ「……」
ライ「何故、俺達にマイの記憶の件を 教えなかったのです?」
ヴィレッタ「……SRX計画とマイ自身のためよ」
ライ「そうやって、 俺達を偽り続けるつもりですか?」
ヴィレッタ「……」
ライ「自分は…… いや、リュウセイもあなたの素性に 薄々感づいています」
ライ「しかし、 俺達はあの時のあなたの言葉を信じ、 今まで従ってきた」
ライ「素性についても、あなた自身の 口から語られるまではと……」
ヴィレッタ「……」
ライ「だが……今回の件には疑問が残ります。 何故、あのような中途半端な措置を?」
ヴィレッタ「それは……コバヤシ博士が マイの記憶を人為的に操作することを よしとしていないからよ」
ライ「……」
ヴィレッタ「博士は マイが自力でレビの残留思念を 振り払うことに賭けている……」
ヴィレッタ「彼女の自然な力の解放を 待っているのよ」
ライ「……」
ヴィレッタ「しかし、アヤとマイが ツインコンタクトを行わなければ、 今のSRXは安定しない……」
ヴィレッタ「動き出したシャドウミラーや インスペクター、そしてアインストに 対抗するには……」
ライ「今というタイミングで マイをSRXチームに加え、 荒療治をするしかないと?」
ヴィレッタ「ああ。だから、あの子を私達で守って いかなければならない……」
ヴィレッタ「これから私達が生き残るために、 SRXの下に集わねばならないのよ」
ライ「……」
ライ「……わかりました」
ヴィレッタ「もう一つ…… あなたに言わなければならないことがある」
ライ「……!」
ヴィレッタ「私は……」
ヴィレッタ「私はイングラムのクローン……」
ヴィレッタ「彼の分身…… そして、肉親とも言える存在……」
ライ「……」
ヴィレッタ「私の役目はあなた達と共に SRXで来るべき脅威を振り払うこと」
ヴィレッタ「あなたには信じて もらえないかも知れないけど…… それが私の真意よ」
ライ「……」
ライ「……行きましょう、隊長。 俺達の仲間を助けるために」
ヴィレッタ「ライ……」
ライ「例えどのような過去を持っていようとも…… 俺達はSRXの下に集ったチームなのでしょう?」
ヴィレッタ「……ええ」
ライ「それで充分です、隊長。 マイの後を追いましょう」
ヴィレッタ「わかったわ……ライ。 ……ありがとう」

《東シナ海域(移動中・ノイエDC戦艦)》

[ノイエDC戦艦 ブリッジ]

NDC艦長「セトメ博士、本艦は まもなく日本海域に入ります」
アギラ(……日本か。 特脳研時代以来じゃのう)
アギラ「艦長、ハガネは間違いなく こちらへ向かっておるのかえ?」
NDC艦長「はっ。 シロガネを追撃するため、伊豆から 出撃したという報告が入っています」
アギラ「シロガネの正確な位置は判明したのか?」
NDC艦長「いえ……。 現在、あの艦とは音信不通です」
アギラ(フェフェフェ…… ヴィンデルめ、本性を現しおったか?)
アギラ(もっとも、奴の目的が何であれ、 ワシはワシの研究が続けられれば良いのじゃが)
(通信)
一般兵「飛行物体の反応あり。 数は1、距離は5000です」
NDC艦長「識別は?」
一般兵「現在確認中ですが、 連邦軍だと思われます」
NDC艦長「ふむ……獲物が向こうから 飛び込んできたか?」
アギラ「……アウルム1、ブロンゾ27、 お前達の出番じゃ」
オウカ「わかりました、母様」
アギラ「任務はわかっておるな?」
ゼオラ「はい……!  ハガネにいるアラド・バランガを倒し、 ラトを取り戻します」

マイの機体は
ビルトビルガー・タイプL 量産型ヒュッケバインMk-II


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