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星への翼 ~ 第7話 ~

〈アーチボルド機のHP40%以下〉

アーチボルド「そろそろ頃合いですね。 月並みな台詞で恐縮ですが…… また会いましょう、ATXチーム」
(ガーリオン・カスタムと残りの敵が撤退)
ラミア「隊長。 敵機の反応、消えちゃったりしたり してます」
キョウスケ「こちらでも確認した。 ……基地司令とコンタクトを取る」
ラミア「合点承知でございますです」
エクセレン「……キョウスケが 突っ込まないから突っ込ませて もらうげど……」
エクセレン「その喋り方、 何とかならないの?」
ラミア「お気に触りましたら 申し訳ござらんです。エクセ姉様」
ラミア(好きで こう喋っているわけではないが…… もう少し何とかならないものか)
エクセレン「う~ん、 別にカワイイからいいんだけど…… 緊張感ってものが、ねぇ?」
ブリット「……少尉、 人のこと言えないでしょ」
エクセレン「む? ブリット君。 今のでランキングポイントが 1000下がったわよ?」
ブリット「そ、そんなに!?  って、何のランキングなんですか!」
ラミア(緊張感がないのはどちらだ。 こいつらがあの部隊の中核になるとは 思えんな)
キョウスケ「……基地司令との 交渉が済んだ。弾薬の補給と 帰りの足を用意してくれるらしい」
エクセレン「わお! ついでに お風呂も用意してくんないかしら?」
キョウスケ「近くに湖がある。 そこで済ませろ。 ……全機、格納区画へ向かうぞ」

[地球連邦軍ヒューストン基地 格納庫]

スレイ「アイビス……さっきの無様なフライトは何だ!」
アイビス「………」
スレイ「わかっているのか! 成果を見せなければ、 我々のプロジェクトは即刻解散だ!  お前のミス一つで全てが終わるのだぞ!」
アイビス「わかっている……!  だから……だから……!」
スレイ「意気込みを見せるのなら、 結果を出してもらいたいな」
スレイ「それが出来ない者に シリーズ77のシートに座る資格はない……!」
アイビス「く……」
ツグミ「酷なようだけど、 スレイの言っていることは事実よ」
ツグミ「アイビス……認識してね。 私達はぎりぎりの所にいるのよ」
アイビス「そんなこと…… あたしだってわかっているさ……!」
(速い足音・アイビスが走り去る)
スレイ「フン……逃げたか。 まるで尻尾を丸めた負け犬だな」
ツグミ「彼女の熱意は認めるけどね……」
スレイ「だが、今のままでは無理だ。 怪我をする前にプロジェクトを脱退させた方がいい」
ツグミ「そうね……その方があの子のためかも知れない。 叶わない夢ならば、見ない方が幸せだから……」
スレイ「構わんさ。 カリオンはともかく、αプロトの テストパイロットは私一人で充分だ」
スレイ(そう……兄様の夢は 私が必ずかなえてみせる……!)
ツグミ「……」
(扉が開閉する)
エクセレン「わお! あれがさっきの実験機ちゃんね。 名前は……マリオンだっけ? なんか不吉よね」
ブリット「カリオンです。そんなこと言ってると、 ラドム博士に吊されますよ」
エクセレン「いやん、ブリット君…そっち系?  クスハちゃんはノーマルだと思うけど?」
ブリット「な、ななな……!」
エクセレン「あらら、お約束の反応ねえ。 もう少しバリエーションを増やしなさいな」
ラミア(……よくも続くな、こんな話が)
スレイ「……タカクラチーフ、後は任せる」
ツグミ「あ、スレイ……」
(足音・スレイが立ち去る)
エクセレン「あの子がマ……じゃなかった、 ミリオンのパイロット?」
ツグミ「いえ、あの、カリオンなんですが。 ……おっしゃった通り、彼女がテストパイロットです」
エクセレン「何だかご機嫌ななめだったみたいね」
ツグミ「申し訳ありません、 エクセレン・ブロウニング少尉。 初の実戦で疲れているようで……」
エクセレン「しょうがないんじゃない?  誰だって初めての時は緊張するもの」
エクセレン「あ、ブリット君。 初めてって言っても、そっち方面の話じゃ…」
ブリット「少尉はどうだったんです?」
エクセレン「え? ……う~ん、若かったわねえ。 それはそれは甘美かつ、めくるめく禁断の……」
エクセレン「って、ブリット君!  振り返しリアクションを覚えるなんて…… ランキングポイント、50ポイントアップよ」
ブリット「どこぞの組織じゃあるまいし。 それに、さっき1000も減ったから あまり嬉しくないですよ」
ラミア「あの、エクセ姉様…… 話が進みませんでございますのですが」
ツグミ「ま、ますのです?」
エクセレン「ああ、気にしないで。 この子、こういう喋り方なの」
ツグミ「は、はあ。 ……申し遅れました、私はプロジェクトTDの メンバー、ツグミ・タカクラと申します」
ラミア「プロジェクトTD?」
ツグミ「ええ、シリーズ77…… 恒星間航行機の開発計画です」
ラミア(なるほど。 そのための新型テスラ・ドライブか)
ブリット「恒星間航行機ってことは、 外宇宙へ行くんですか?」
ツグミ「はい。ですので、その試作機であるカリオンは 本来は戦闘機でなく、外宇宙探査船に分類されるべき 物であり……」
ツグミ「そのパイロットも アストロノーツとしての訓練を積んでいるんです」
ブリット「あんな小さな機体で 外宇宙へ行こうだなんて…… 随分と思い切った計画ですね」
ツグミ「最終的には探査用と居住用のモジュールを 付ける予定なのですが、それでも最小クラスの 恒星間航行機であることに違いはありません」
ラミア「何のためにそんな物を?」
ツグミ「人類が本格的に外宇宙へ進出するためです」
ツグミ「でも、こんなご時世ですから カリオンにはやむなく武装を……」
エクセレン「そうねえ。 ミッドクリッド大統領さんが、異星人の存在を 演説で正式に認めちゃったわけだし」
ツグミ「ですが、本来シリーズ77は平和利用のために 開発された機体なんです」
ラミア(平和利用?  くだらん、兵器は兵器でしかない ……この私のようにな)
(扉が開閉する)
キョウスケ「……ここにいたか。 輸送機の準備が整った。シロガネと合流するぞ」
ブリット「わかりました」
ツグミ「あの……キョウスケ・ナンブ中尉。 助けていただき、本当にありがとうございました」
キョウスケ「礼には及ばん。そのためにここへ来た。 ……ヒュッケバインは間に合わなかったがな」
エクセレン「まさにバニシング・トルーパー。 量産型になってもそうなのね」
ブリット「ふ、不吉なこと言わないで下さい。 自分の機体はその試作型なんですよ」
エクセレン「ん~、いつか消えちゃうかも」
ブリット「か、勘弁して下さい……ホントに」
キョウスケ「……では、おれ達はこれで」
エクセレン「縁があったらまた会いましょう、 ツグミちゃん」
ツグミ「はい。皆さん、どうかお気をつけて……」

[地球連邦軍ヒューストン基地 オフィス]

ツグミ「少佐、 本日のテストと交戦時のデータをお持ちしました」
フィリオ「ありがとう、チーフ。 まずは君の目から見た感想を聞きたいな」
ツグミ「結果は上々と言えます」
ツグミ「特にスレイ操縦時の各データは 予測数値の108%を達成しました」
フィリオ「うん……さすがはスレイだ」
ツグミ「嬉しそうですね」
フィリオ「僕達のエースであり、 自慢の妹でもあるからね。 それで、アイビスの方は?」
ツグミ「……93%程度です」
フィリオ「そうか……」
ツグミ「ですが、これでカリオンの 完成度の高さは実証されました」
ツグミ「交戦データにおいても、部分的には ガーリオンを上回る戦闘力を発揮しています」
フィリオ「戦闘力か。はたして、僕達はこの結果を 喜ぶべきなのだろうか……」
ツグミ「少佐……?」
フィリオ「かつてのDC総帥、 ビアン・ゾルダーク博士の地球圏防衛思想は、 確かに人類にとって必要なものだった」
フィリオ「だから、僕は博士の考えに賛同し、 リオンシリーズを設計した……機動兵器として」
ツグミ「………」
フィリオ「そして、戦いは終わった。 だが、僕達はいまだに戦争から解放されない……」
フィリオ「シリーズ77と僕達は、 永遠に戦いの呪縛から逃れることが 出来ないのだろうか……」
ツグミ「フィリオ……」
フィリオ「ごめんよ、ツグミ。 決して、ヤケになっているわけじゃないんだ」
フィリオ「ただ、カリオンとリオンシリーズが 戦っているのを見て、少しね……」
ツグミ「……フィリオ、今回の襲撃事件でプロジェクトの 本拠地が変わることになったの」
フィリオ「シリーズ77が ターゲットになり得るからかい?」
ツグミ「ええ……。 私達が開発したブースト・ドライブのデータも 外にもれているようだし……」
ツグミ「万が一を想定しての処置なの」
フィリオ「そうか……移動先は?」
ツグミテスラ・ライヒ研究所よ」
フィリオ「テスラ研か……懐かしいな。 でも、DC側についた僕が今さら どの面を下げて戻ればいいんだ……」
ツグミ「ジョナサン・カザハラ博士は そんなことを気になさらないわ」
ツグミ「それに……今回の処置で、少しはあなたに 休息を与えてあげることが出来る」
フィリオ「ツグミ……」
ツグミ「フィリオ…… 残りのデータ検証は明日にしましょう」
ツグミ「眠りにつくまで傍にいるわ。 いい夢が見られるように」
フィリオ「いや、 君こそゆっくり休んだ方がいい。 ここのところ、働き詰めだろう?」
ツグミ「ううん、いいの。 今はあなたの力になりたいの……」
フィリオ「ありがとう、ツグミ」
ツグミ「忘れないでね、フィリオ。 あなたの夢は私の夢であることを……」
フィリオ「ああ。 TD……テレストリアル・ドリーム…… 夢で終わらせたくないよ……」

『リペアキット』を入手した
『プロペラントタンク』を入手した
『スクリューモジュール』を入手した

『チャフグレネード』を入手した


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