アーク「……どちらかといえばシーラさんの
グラン・ガランですね」
ブライト「ふむ……他に意見は?」
ブライト「……ないようならそれでいくか。
では我々はこれからバイストンウェルの
シーラ女王との合流に向かう
ことにする。各自持ち場につけ」
(扉が開閉する)
グレスコ「……ル・カインか」
(足音)
ル・カイン「父上、うかがいたいことがあります。
なぜレイズナーとの接触を
はばませたのです。それともうひとつ、
父上が連れ去らせた聖女を
どうされたのです。このグラドスタワーの
どこかへ連れ込んだことは
調べがついております。
父上、今日こそお聞かせください」
グレスコ「ル・カインよ。レジスタンス
掃討作戦の成功により
反乱勢力の大部分を壊滅
させたと聞く
占領軍司令官として、お前は
まだまだ地球の平定に全力を
尽くさねばならん。くだらぬことに
固執し、詰めを誤らせるつもりか?」
ル・カイン「ごまかされるおつもりですか、父上!
奴らなど
私が直接指揮をせずとも、
まもなく完全に制圧できましょう
今は父上が何をお考えなのかを
お聞かせいただきたいのです
聖女の行方について、民衆は
おろか兵士の一部までもが
騒ぎはじめております。父上!」
グレスコ「……ル・カイン……
すべてはお前のためなのだ」
ル・カイン「……なんですと?」
グレスコ「お前は帝国人が地球人より
すぐれた人種だと思っている」
ル・カイン「事実ですから、いたしかたありません」
グレスコ「すぐれた者によるよりよき指導。
それに従う無垢なる従順
それがお前の支配の原理だと
いったことがあったな」
ル・カイン「その通りです……
何をおっしゃりたいのです、父上?」
グレスコ「……ル・カイン、
明日もう一度ここへくるがよい」
ル・カイン「……わかりました。
明日こそ明解なお答えを
いただけるものと信じております、
父上」
(足音、扉が開閉する)
グレスコ「…………」
(アルビオンで北西へ移動、ホンコン辺りで停止)
(草原にアルビオンのみ)
クワトロ「艦長、たった今ブレックス准将と
連絡がついた」
ブライト「そうか、准将はご無事だったか。
それで、どうなっている?」
クワトロ「こちらの推測通り、
地球解放戦線機構も
カラバも、再建は難しいくらい
ダメージを受けている」
ブライト「やはりそうか……今後のことはなんと?」
クワトロ「准将ご自身はイゴール将軍と
ともに、アジア地区にある
帝国の攻撃をまぬがれた拠点を
中心に、組織の立て直しを
はかっているそうだ。が……」
ブライト「やはり我々が最後の
有効戦力というわけか」
クワトロ「そうだ。我々が倒れれば、もはや
レジスタンスの再建はできんな
准将もそれをご承知の上で、
我々に独自の判断で行動を
してほしいといっておられた」
アムロ「厳しいな、それは。バックアップは
できないということなのだろう?」
クワトロ「我々が大陸へ向かうということを
聞き、現状で可能なかぎりの
補給は行うということだ」
ブライト「それが……最後というわけか」
クワトロ「補給部隊と合流できればの
話だが」
アムロ「場所は?」
クワトロ「例の戦艦との合流に
合わせるとのことだ
どちらに向かうのかは
決まったのだろう?」
ブライト「ああ」
クワトロ「ではあとはうまくいくことを祈るとしよう」
リョウ「ここからはどこへ向かっても敵に
発見される可能性はあるな」
忍「ああ。艦長さん、ここまでは
なんとか敵と遭遇せずにすんだが
例の戦艦が攻撃を受けている
可能性は高いんじゃないのか?」
ブライト「そうだな。お前たちは
出撃準備をしておいてくれ」
忍「了解だ」
アムロ「しかし君が艦橋にくるなんて
めずらしいな」
忍「シャピロと会ってから、沙羅のやつが
イライラしっぱなしでね。顔をあわせる
たびにつっかかってきやがるから、あんまり
近くによらないようにしてんですよ」
アムロ「シャピロ・キーツか……。帝国との
交戦前から降伏を進言して
参謀本部からつまはじきされたと
聞いていたが」
忍「それで奴は帝国に寝返ったんだ。
あのとき俺がとめなきゃ
沙羅のやつも
くっついていっちまう所だった」
ブライト「だが終戦後にもシャピロが帝国に
いるという話は聞かなかったがな
彼がバイストンウェル軍と
一緒にいたというのも気になるな」
ベルトーチカ「ブライト艦長」
ブライト「なんだ?」
ベルトーチカ「先行させた連絡員から報告が
入りました。グラン・ガランらしき
船影を発見したとのことです。
山間部に着陸して擬装して
ベルトーチカ
いるようです」
ブライト「航行できないのか? 敵影は?」
ベルトーチカ「現在のところ、ないそうです」
アムロ「敵がいないのは幸いだったな。
あとは補給部隊の方だけか」
ブライト「よし、これよりグラン・ガランとの合流
に向かう。ショウ、マーベル
近くまでいったら、先に出て状況
を確認してくれ」
ショウ「はい」
(グラン・ガランが出現)
(ダンバイン、ボチューン出現し北へ移動)
ショウ「やられたのか?」
マーベル「そのようね。
シーラ様は大丈夫かしら」
(ショウとマーベルがグラン・ガランに近づく)
ショウ「こちらダンバイン、ショウ・ザマだ。
グラン・ガラン、応答してくれ!」
シーラ「ショウ……? ショウ・ザマ?
本当にあなたなのですか!?」
ショウ「シーラ・ラパーナ? ご無事ですか?」
シーラ「かなり攻撃を受けました。
あまり、無事とは申せませんね」
マーベル「シーラ様、私たちは地上の
反政府勢力に協力しています
まもなく戦艦が1隻
こちらへまいります
接近をお許しいただけるでしょうか」
シーラ「マーベルもいるのですね。
地上人の反政府軍……
信用できるのでしょうか? 地上は
星の世界からきた者たちに
侵略されたと聞いています」
ショウ「ドレイク軍がそちらにつきました。
彼らはドレイク軍とも
戦っているのです」
シーラ「ドレイク・ルフトが……やはりそうでしたか
わかりました
その方々とお会いしましょう」
チャム「よかったぁ」
シーラ「……ショウ・ザマ、マーベル・フローズンも
……よく来てくれました」
ショウ「いえ、遅くなってしまい
申しわけありませんでした」
マーベル「ショウ、アルビオンがくるわ」
(アルビオンが出現)
ブライト「あれがグラン・ガランか……」
銀鈴「ダンバインの信号弾を確認。
大丈夫のようです」
ブライト「よし、接弦用意」
ベルトーチカ「補給部隊を護衛中のコウ・
ウラキ少尉より緊急通信!!
敵の攻撃を受けている
とのことです!」
アムロ「なんだって!? 場所は?」
ベルトーチカ「すぐ近くよ、アムロ」
ブライト「くそっ! 総員戦闘配置!
パイロット各員は発進を急げ!!
何か見えるか!?」
銀鈴「……ッ! 来ました、補給部隊の
ミデアと護衛機です!」
(補給部隊が出現、敵機が出現)
コウ「くっ、追いつかれた!? こちら補給
部隊のコウ・ウラキ!
頼む、
急いでくれ!」
マーベル「ショウ、補給部隊が!!」
シーラ「お行きなさい、ショウ・ザマ。
グラン・ガランは大丈夫です」
ショウ「わかりました。
シーラ・ラパーナ、ご無事で」
(出撃選択)
(ギウラ隊が出現)
ギウラ「サルどもめ、好きかってやりおって。
全力で奴らを叩け!」
ブライト「……終わったか」
ベルトーチカ「待ってください。未確認機が
数機接近しています」
ブライト「敵か?」
(牛剣鬼隊が出現)
牛剣鬼「ようやく追いついたわ。
息子を殺したのは貴様たちだな?
わしは百鬼一族の牛剣鬼
息子の仇、討たせてもらうぞ!」
牛剣鬼「おのれ、おのれぇぇーっ!!」
(爆発)
リョウ「……百鬼の老兵士か……」
レイン「どうですか、アストナージさん」
アストナージ「ああ、これだけあれば当分は
大丈夫だ。整備も楽になる」
レイン「ふふふ、このところ
ずいぶん無理をしてましたものね」
アストナージ「まったく、勘弁してほしいよ」
ドモン「レイン、余計なおしゃべりをしている
ヒマがあったら、シャイニングガンダムの
調整をやってくれ。
右手の反応が遅い」
レイン「もうっ! 私だって
疲れてるんですからね!
ドモンも他の人たちを見習って
少しは覚えたらどうなの!?」
ドモン「整備はお前の担当だろう」
雅人「まぁまぁレインさん。
ドモンはレインさんが他の男と
楽しそうにしゃべってるいるのが
気にくわないんだよね」
ドモン「なっ……」
シモーヌ「ドモンってばダメねぇ。
そういうのはハッキリいわなくちゃ」
ドモン「勝手なことをいうな!!」
亮「バイストンウェルの女王様が
いらしてるんだ
少しは静かにしたほうがいいんじゃ
ないか? 品性を疑われる」
ドモン「ちっ」
ブライト「……という状況です。
ご協力いただけますか?」
シーラ「……わかりました。ドレイクは倒さねば
なりません。協力いたしましょう」
ブライト「それでは、いろいろと
大変なことばかりですが
これからよろしくお願いいたします」
シーラ「地上では我々にはわからぬことも
多いのです。こちらこそ頼みます」
チャム「ね、シーラ様はちゃんと
わかってくれるんだからっ」
ショウ「チャム、口をはさむな」
チャム「なによぉ」
クワトロ「それで、修理の方は
どうなっているのです?」
シーラ「ここしばらく攻撃が
ありませんでしたから
もうまもなく作業を終えると
思います」
クワトロ「それはよかった。ではそれを待って
移動することにしましょう」
ブライト「ウラキ少尉といったか。君もこちらに
加わるというのだな?」
コウ「はい。ブレックス准将から、そのように
指示を受けています」
クワトロ「やはり准将は、この部隊を可能
な限り強化しておくつもりのようだな」
ブライト「戦力を分散させていても、しかたな
いということなのだろう。先が見えない
状況だが、よろしく頼む、少尉」
コウ「了解であります。しかし、この部隊
にはガンダムがあります。大丈夫だと
思いたいですね」
アムロ「そうかい?」
コウ「そうです! 自分はそう思います!」
(扉が開閉する)
グレスコ「……来たか……」
(足音)
ル・カイン「父上、お聞かせいただきましょう」
グレスコ「うむ……」
(扉が開閉する)
カルラ「……連れて参りました」
ジュリア「…………」
ル・カイン「やはりでしたな、父上」
グレスコ「ジュリアよ……ル・カインに話すがよい」
ジュリア「……ル・カイン様、
帝国人が地球人よりも
すぐれた存在であるという、あなたの
お考えは、間違っておられます
帝国人は……少なくとも
あなた方グラドス人は、地球人と
同等なのです。もとをただせば
地球人もグラドス人も
同じ根から発生した
種族なのです」
ル・カイン「フッ、あらわれたとたん、
奇異なことをいう」
ジュリア「いいえ、ウソではありません。
グラドス人と地球人の先祖は
同一なのです」
ル・カイン「黙れジュリア! 父上、いつまで
世迷いごとをいわせておくつもりです」
ジュリア「お聞きください、ル・カイン様。
あなたのお父上が私を
連れ去ったのも、レイズナーとの
接触を避けられたのも
この秘密があなたの耳に入るのを
恐れたからなのです
秘密を知ったときにあなたの受ける
衝撃を、恐れたがゆえのことです」
ル・カイン「無礼だぞジュリア!! いわせておけば
調子にのりおって!!
父上、まだジュリアにいいたい放題
いわせておくおつもりですか!?」
グレスコ「……ル・カイン、ジュリアの言葉は
すべて真実だ。嘘はない」
ル・カイン「父上!?」
グレスコ「グラドスの権力の中枢にあり、
帝国においてもまた
地位を持つ者は、
いずれは知ることになる秘密なのだ」
ル・カイン「何をいっておられるのです、父上!」
グレスコ「ル・カイン……お前は支配の
原理を学ばねばならない
支配とは自らを悪と
認める所から始まるのだ
支配力を維持するために、
多くの星々の無数の血が
流されたことを、知らなければならない」
ル・カイン「だからこそ、流された血を
ムダにしないためにも
支配する者は、
すぐれていなければならないのです!」
グレスコ「すぐれているとはどういうことだ?
知識か肉体か。文化か
それとも、家柄か容貌か。
あやういものだ。確たるものはなにもない
支配とは力だ。
他者を押さえつける力だ
力とはすなわち、悪なのだ」
ル・カイン「…………」
グレスコ「自らをまず、悪と認めることが
できる者が必要なのだ
すべてを知った上で、なお超然と
君臨できる者が必要なのだ
帝国はムゲゾルバドス帝王のもと
そうして星々を支配してきたのだ」
カルラ「…………」
グレスコ「やはり占領軍司令官としては
まだまだ未熟なようだな、ル・カイン」
(足音)
ル・カイン「それは父上のお考え!
私の場合はあくまでも
すぐれた者こそが支配すべきという
考え方です!」
グレスコ「支配だけなら愚者でも可能だ」
ル・カイン「いえ! すぐれている者こそです!」
グレスコ「まだわからんのか、ル・カイン!!」
ル・カイン「父上こそおわかりになっていない!
父上は支配の高みから
お逃げになろうとしている!!」
グレスコ「口がすぎるぞル・カイン!! さがれ!!」
ル・カイン「お待ちください父上!!」
グレスコ「私はお前をかいかぶりすぎていたな。
お前は幼すぎる」
ル・カイン「卑怯ですぞ父上。私が父上の
意にそぐわぬからといって
それが父上の支配の論理ですか」
グレスコ「ル・カイン……
私はお前の司令官の任をとく」
ル・カイン「父上……父上!!」
グレスコ「さがれ!!」
ル・カイン「ク……ゥゥ………………」
カルラ「ッ!? ル・カイン様おやめください!」
(暗転、銃声)
グレスコ「……グッ……あ……ぅル・カイン……」
ル・カイン「あ……あぁ……」
グレスコ「ぬうぅ……。帝国の支配と……
お前の……お前自身のために……
私の……死の真相は……
秘密に、秘密にするのだ……」
ル・カイン「ち……父上ぇぇーっ!!」
グレスコ「…………カルラ……」
(銃声)
カルラ「ッ!? な……なぜ……?」
ル・カイン「ち、父上……」
グレスコ「秘密は……守らねばならん……
ジュリアも……
ジュリアも殺せえぇぇぇぇ…………」
ル・カイン「父上!? ……父上ぇぇーっ!!」