アリオン「あらら……こりゃ参ったね」
レーツェル「フッ……
荒馬の扱いは慣れているのでな」
アリオン「気に入ったぜ、あんたら。
俺様の名前はアリオン・ルカダ……
自由を愛する男だ」
アリオン「会いたい時は、
風に行き先を聞いてくれ。あばよ」
フェルナンド「待て!
貴様、退く気か!?」
アリオン「言ったはずだ、風に聞けとな。
……お前もあんまり無理するなよ」
(アガレスが撤退)
フェルナンド「ア、アリオンめ!!」
カーラ「何なの、あいつ……?」
マサキ「気障な野郎だぜ、まったく」
レーツェル「修羅の中にも
変わり種がいるようだな」
カーラ(他人のこと、言えないと思うけど)
ティス「くっ、やってくれるね……!」
(テュガテールに通信)
ティス「!」
デュミナス「……戻りなさい、ティス」
ティス「え!?
でも、コンパチブルカイザーと
エクサランスが目の前に……!」
デュミナス「手に入れたものを確実に
ヘルゲートまで到達させることの方が
大事です」
デュミナス「私の下へ帰ってきなさい」
ティス「わ、わかりました……」
(テュガテールが撤退)
コウタ「消えた!!」
ロア「転移したか……!」
コウタ「ショウコはどうなったんだ!?」
ロア「おそらく、一緒に……」
コウタ「く、くそっ! ショウコが!
あいつがそこにいたのに!!」
コウタ「俺は……俺はっ!!」
ラウル「コウタ……」
フェルナンド「ぬうっ!
俺は倒れん! まだ倒れんぞ!!」
フェルナンド「フォルカ!
貴様をこの手で屠るまではな!!」
フォルカ「!」
フェルナンド「ビレフォール!
轟撃の修羅神よ!!」
フェルナンド「俺の覇気をくれてやる!
今一度、お前の力を見せろっ!!」
(フェルナンドに『気迫』)
フェルナンド「さあ、フォルカ!
我が機神轟撃拳を受けろ!!」
フォルカ「俺も
ここで倒れるわけにはいかない……!」
フォルカ「ヤルダバオト!
俺の覇気をお前に!!」
(フォルカに『気迫』)
フォルカ「行くぞ、フェルナンド……!」
フォルカ「俺の……いや、修羅の新しき道を
切り開くために!!」
フェルナンド「修羅の新しき道を
切り開くのは、貴様ではない!
修羅王様だ!」
フォルカ「それでは
同じことの繰り返しだ!」
フェルナンド「何を言う!
戦って、戦って、戦い抜いて!
立ちはだかる者を倒すことが修羅の本懐!」
フェルナンド「俺は貴様を超え、
阿修羅の頂点を目指す!!」
フェルナンド「くおおおっ!
俺の……俺の負けだ!!」
フォルカ「フェルナンド……!」
フェルナンド「く、ううっ……!
フォルカ……!」
フェルナンド「修羅の掟に従い、
とどめを刺せ……お前のその手で……!」
フォルカ「………」
フェルナンド「敗れた修羅が……
情けをかけられることは
最大の屈辱……!」
フォルカ「………」
フェルナンド「お前は
また俺を汚辱の中へ突き落とす気か?
あの御前死合の時のように……!」
フォルカ「お前の……
命を奪うことは出来ん」
フェルナンド「フォルカァッ!」
フォルカ「勝敗が決した今、
これ以上の戦いに何の意味がある?」
フォルカ「勝利を得たからと言って、
何故、友や家族の命を奪う必要がある?」
フォルカ「何のために
そんなことを……!?」
フェルナンド「それは
俺達が修羅だからだ!
掟からは何人たりとも逃れられん!」
フォルカ「俺はもう……その掟には従わん」
フェルナンド「貴様……!」
(ビレフォールに爆煙)
フェルナンド「ぐううっ!!」
フォルカ「脱出しろ、フェルナンド!」
フェルナンド「覚えておけ、フォルカ!
貴様が見逃したこの命によって、
貴様は死を迎えることになる!」
フェルナンド「この汚辱……必ず!
必ず晴らしてみせるぞ!!」
(ビレフォールが撤退)
フォルカ「フェルナンド……」
マサキ「何なんだ、あいつら……?
執念深いのもいれば、あっさり
帰っちまったのもいる」
ユウキ「これまでの戦いからも、
修羅のメンタリティが俺達と違うことは
わかっていたが……」
ユウキ「彼らは仲間同士の戦いでも、
本気で命のやり取りをしているようだ」
シロ「でも、
あの赤い修羅神は青い修羅神に
とどめを刺さニャかったニャ」
マサキ「そうだな……
赤い方は今までの修羅と
どことなく違うような気がするぜ」
フォルカ「………」
コウタ「おい、雷神野郎。
さっき言ったこと、覚えてるだろうな?」
フォルカ「……ああ……」
コウタ「あんたには
聞きてえことが山ほどある!
いや、その前に!」
コウタ「一発ぶん殴ってやらなきゃ、
気がすまねえ!」
ロア「コウタ」
コウタ「止めるな、ロア!
あいつのせいで、ショウコは!!」
フォルカ「覚悟は……出来て……いる」
コウタ「ん?」
ロア「様子が変だぞ」
フォルカ「くっ……!
覇気を……吸われ過ぎたか……」
(ヤルダバオトがシステムダウン)
ミズホ「動きが止まった……!?」
カーラ「ど、どういうこと……?」
コウタ「おい、雷神! どうした!?」
(ヤルダバオトの反応なし)
コウタ「返事がねえ……!」
ゼンガー「……レーツェル」
レーツェル「あの修羅神を回収する。
彼には聞きたいことがあるのでな」
コウタ「俺は……」
レーツェル「コウタ、お前も一度
艦へ戻れ。浅草へ行くのは、その後だ」
コウタ「……あ、ああ」
フォルカ「う……うう……」
カーラ「あ、気がついたみたいね」
フォルカ「こ、ここは……?」
カーラ「クロガネの医務室だよ」
フォルカ「クロガネ……黒い衝角船か。
俺は捕らえられたのだな」
カーラ「それ以前に……
あんた、あの機体の中で気を失っててさ」
フォルカ「ヤルダバオトは……俺の修羅神は……?」
ゼオラ「私達が回収しました。でも……」
マサキ「ハッチを開けようとした
ラージやミズホがブッ倒れちまった。
いったい、てめえのマシンは何なんだ?」
フォルカ「修羅神は……
操者の覇気を吸って動く……」
マサキ「覇気……!?」
フォルカ「修羅以外の者が操縦座へ近づけば、
覇気を吸い取られ……消耗する」
クロ「覇気って、プラーナみたいなものニャの?」
フォルカ「………」
クロ「どうしたニャ?」
フォルカ「この世界のビョウは喋るのか?」
シロ「ビョウ?」
クロ「もしかして……猫のこと?」
フォルカ「喋るビョウがいるとは……
ショウコからそんな話は聞いていなかった」
ゼオラ「ショウコからって……」
フォルカ「……」
(扉が開閉する)
コウタ「………」
ゼオラ「コウタ……」
フォルカ「お前は……」
コウタ「てめえ……! てめえがショウコを!!」
(鈍い打撃)
フォルカ「ぐっ……!」
カーラ「やめなよ、コウタ! 相手は病人だよ!」
ゼオラ「リルカーラ少尉の言う通りよ!
それに、この人は……」
フォルカ「………」
コウタ「てめえ、なんで俺の拳を止めなかった!?」
フォルカ「………」
コウタ「何のつもりだ!?
まさか、これでチャラにしろってか!?」
フォルカ「俺には……
他の償いの方法が思いつかん」
コウタ「ふざけんな!!」
マサキ「やめな、コウタ。
こいつをぶん殴ったって、お前の妹は戻ってこねえ」
コウタ「だけどよ!!」
マサキ「お前の気持ちはわかる。
……俺にも大事な妹がいるからな」
コウタ「……!」
コウタ「わかっ……た」
ゼオラ「……許してあげるの?」
コウタ「許すも何も、
無抵抗の奴をこれ以上殴れるかよ」
フォルカ「………」
コウタ「ショウコによく言われたぜ。
もめ事が起きても、無闇に
喧嘩すんじゃねえって……」
コウタ「他の解決方法も探してみろって……」
フォルカ「俺も……彼女に同じことを言われた」
コウタ「何……?」
フォルカ「彼女は俺に色々なことを話してくれた。
この世界のことを……戦い以外のことを……。
だから、俺は……」
コウタ「おい、調子に乗るなよ」
フォルカ「……!」
コウタ「ショウコはお人好しだから、
お前みてえな奴にも親切にしただけだからな。
だいたい、お前……お前は……」
フォルカ「フォルカ……フォルカ・アルバーク。
それが俺の名だ」
フォルカ「そして、俺はもう修羅ではない。
帰る所も……ない」
コウタ「……」
ラウル「大丈夫か? ミズホ」
ミズホ「ええ、ちょっとフラフラしますけど……」
マサキ「クスハの栄養ドリンクがあったら、
バッチリ回復できるんだけどな」
ラトゥーニ「その前にもう1回倒れてしまう……」
マサキ「そりゃそうだ。
……で、ヤルダバオトについては?」
ラージ「ああいう仕様の兵器は、どうかと思いますね」
マサキ「どういうこった?」
ラージ「そうですね……。
まず、彼が言う覇気とは、プラーナと
同性質のものだと考えていいでしょう」
シロ「でも、魔装機神は近づくだけで
人が倒れることニャんてニャいニャ」
ラージ「ヤルダバオトは、文字通り操縦者の命を
削って動いているようです」
ラトゥーニ「つまり、
全ての動力を生体エネルギーで賄っていると?」
ラージ「ええ。対応訓練を受けているはずの
フォルカ・アルバークが、あの激しい戦闘の後で
気を失ったのなら……」
ラージ「普通の人間である僕達が、近づいただけで
倒れてしまうのは当然でしょう」
マサキ「ちょい待ち。ヤルダバオトは
しょっちゅう人間のプラーナを吸収してんのかよ?」
ラージ「それは
もう少し調べてみないとわかりませんが……
程度や条件はあるでしょう」
ラージ「でないと、
パイロットや整備員が死んでしまいます」
ユウキ「確かにな」
ラージ「完全分解して調査したいところですが……
バイタリティが高い人間でないと、
ヤルダバオトに近づくのは危険ですね」
ラトゥーニ「バイタリティが高い……」
シロ「アラドとか?」
マサキ「後はゼンガーの大将とかな」
クロ「ニャんか二人共、
壊しちゃいそうニャ気がするニャ」
ユウキ「……で、他にわかったことは?」
ミズホ「駆動系は
ヴァルシオーネやダイゼンガーなどと同じく、
人体の筋肉に似たものとなっています」
ミズホ「また、構成材は地球の物と似て非なる物で、
ある程度の自己再生機構を持っているようです」
マサキ「メンテいらずってことかい?」
ミズホ「完全にというわけではないでしょうが、
迂闊に近づけない機体であるという問題点を
それで補っているのかも知れません」
ミズホ「あと、今までに入手した量産型修羅神の
データとの相似点ですが……」
ミズホ「構成材の経過年数調査により、
ヤルダバオトは製造されてから
かなりの年月が経っていることが判明しました」
ユウキ「どれぐらいだ?」
ミズホ「ざっと300年です」
マサキ「300年!?」
シロ「骨董品だニャ~」
ミズホ「最近になって
修復された所もあるみたいなんですけど、
最も古い部分だと、それぐらいの経過が……」
ユウキ「そういう所は、龍虎王に似ているな。
……個人的には信じ難いが」
ラージ「これは僕の仮説ですが……
ヤルダバオトのような修羅神は、修羅にとって
ロスト・テクノロジーなのかも知れません」
ラウル「それって、つまり……」
ラージ「ある程度の改造や補修は可能でしょうが、
新しいヤルダバオトクラスの機体を作り出すことは
不可能……」
ラージ「量産型の修羅神は、
古い修羅神のデッドコピーではないでしょうか」
ミズホ「私も同意見です。
量産型に自己修復機能はありませんし、
構造も簡略化されているみたいですから」
ラージ「ヤルダバオトを作り出した技術は、
今の僕達以上のレベルだと思いますが……」
ラージ「現在の修羅は、技術面において
退化が進んでいるのかも知れません」
ラージ「転移装置であるダガーも
今ひとつ使いこなせていないようですからね」
ラウル「なるほど……」
ラージ「あと、修羅神に関する件ではありませんが、
判明したことがあります」
マサキ「何だ?」
ラージ「ソーディアンの結界についてです。
あれは生体エネルギーの類まで
遮断しているわけではないようですね」
ラウル「そうか……!
それで修羅神は結界内でも動けるのか」
ラトゥーニ「動力源が生体エネルギーだから……」
マサキ「じゃ、
生き物なら結界内に入っても大丈夫ってことか」
ラージ「それについては、前から予測できていました。
あれが全てのエネルギーを遮断しているのなら、
修羅達も無事では済みませんからね」
ラトゥーニ「でも、ソーディアンは宇宙にいる……」
ラトゥーニ「私達の機体は、結界内に入った時点で
生命維持装置が停止してしまう」
マサキ「……だな。
裸で宇宙に出るわけにはいかねえし」
シロ「息を止めとくってのはどうニャ?」
クロ「シロ、水の中じゃニャいから」
マサキ「となると、結界破りの裏技を見つけるか、
ソーディアンの内部へ瞬間移動するしかねえな」
ラウル「……」
マサキ「ラウル、
時流エンジンで何とかならねえのかよ?」
ラウル「今は……無理だ」
ラージ「……」
ラウル「でも、これからも……」
マサキ「え?」
ラウル「俺達は事故により、こちらの世界へ来た。
だったら、その事実を受け入れて、
この世界で生きていくという選択肢もある……」
ラウル「争いの元になる時流エンジンは、
いっそのこと存在しない方が……」
ラージ「ラウル、あなたの言っていることは
全ての科学に対する冒涜です」
ラウル「ラージ……」
ラージ「科学によって生み出されるもの……
それ自体には何の罪もありません。
使う者次第で、善にも悪にも変わるのです」
ミズホ「ラウルさん……
あたしもその通りだと思います」
ミズホ「前に教えてくれたじゃないですか。
殺人刀と活人剣の違いを……」
ラウル「ゼンガー少佐が言っていた、
人を活かす剣か……」
ユウキ「お前に時流エンジンを守るという
意志がある限り、俺は協力するつもりだ」
ラウル「ありがとう、ユウキ」
ラージ「……」
ラージ(でも、
僕達はこの世界に長居するべきじゃない……)
ラージ(時流エンジンが次の段階へ進み、
ライトニング・フレームとエターナル・フレームが
完成した後……)
ラージ(僕達が選ばなければならない道は……)
ユウキ「……」
アルカイド「そうか……フォルカがな」
アルティス「は……」
マグナス「おのれ、フォルカめぇ~!
轟級以上の修羅神は残り少ないと言うのにぃ~」
メイシス「修羅神は乗り手を選ぶ。
超級や轟級なら、尚更な」
メイシス「長らく眠っていた双子の修羅神の操者が、
同時に輩出されたのは僥倖だったのだが……」
マグナス「フォルカ自体は惜しくないぃ~」
メイシス「だが、あの漢の離反によって、
こちら側の情報が漏れることになる」
マグナス「そぉだぁ。
アルティス、貴様が余計なことを言わなければ、
こんなことにはならなかったぁ~」
マグナス「ど~う責任を取るぅ?」
アルティス「……」
アルカイド「マグナス、
フォルカの同行を許したのは我だ。
アルティスだけを責めてはならぬ」
マグナス「は、ははっ」
アルカイド「アルティスよ……裏切り者には死を。
それが掟だ」
アルティス「……承知しております」
アルカイド「彼奴の首を我が前に。よいな?」
アルティス「はっ」
アルカイド「では、以上だ」
(足音・アルカイドが立ち去る)
マグナス「アルティスよ、
何なら俺様がフォルカの首を獲ってきてやるぞぉ。
グフフフ~」
(足音・マグナスが立ち去る)
アルティス「……」
メイシス「……で、どうなさるのです?」
アルティス「フォルカの件は……
私自らの手で始末をつけるつもりだ」
メイシス「それは……彼を切り捨てる意志表明だと
受け取ってよろしいのですね?」
アルティス「……ああ」
メイシス「……」
デュミナス「……ご苦労でした、ミザル」
ミザル「では、以後の助力……よしなにな」
デュミナス「わかっています。
そちらも二心なきよう」
ミザル「フン……」
(足音・ミザルが立ち去る)
ラリアー「……デュミナス様。
あの人を信用していいんでしょうか……」
デュミナス「ええ、今の所は。
それに修羅達には時間を稼いで
もらわねばなりません」
デスピニス「でも、
転空魔城がこちらに近づいてきたら……」
デュミナス「その時のために、
ティスが良い物を見つけてきてくれました」
ティス「ちょっと気持ち悪いけど、
あれなら転空魔城の結界内でも動けるよ」
デュミナス「ええ。
……ラリアー、バルトールの方は?」
ラリアー「新たなマスターコアの組み込みは、
デュミナス様のご指示通りに」
ラリアー「また、ウェンディゴの量産と
ODEシステムへの適応作業も進んでいます」
デュミナス「エクサランスの仕上がり具合は?」
ティス「進展はなさそうだけど、
後はあたい達でも何とかなりそうな気がします」
デュミナス「では、次の機会にでも」
デスピニス「あの……
コンパチブルカイザーの方は……」
デュミナス「その前に、あれを試しましょう。
……彼女を連れてきなさい」
ティス「はい」
(扉が開閉する)
ショウコ「…………」
ティス「やかましかったから、
薬で静かにさせときました」
デュミナス「では、あのお方からの預かり物……
『エミィ・アーマー』をここへ」
ラリアー「はい」
ショウコ「…………」