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望まれぬ訪問者 宇宙ルート ~ 第12話 ~

〈エレオスのHP30%以下〉

???(デスピニス)「うう……死ぬのはイヤ……。  死ぬのは……」
???(ティス)「何やってんのさ、もう!  こうなったら、今日は帰るよ!」
???(デスピニス)「ごめんなさい……。  ごめんなさい……」
???(デスピニス)「でも、死ぬのはイヤ……。  私……生きていたい……」
(テュガテール、エレオス、アーチンが撤退)
レーツェル「退いたか……」
カーラ「よくわかんない連中だったけど、 手強い敵だってのは確かみたいね……」
ユウキ(そして、連中の片方は 明らかにラウルを標的にしていた……)
ユウキ(奴の狙いはラウル個人か……?  それとも……)
コウタ「ロア! 雷神野郎を追うぞ!  どっちへ行けばいい!?」
ロア「………」
コウタ「おい! どうしたんだ、ロア!?  奴らがどこへ行ったか教えろ!」
ロア「無駄だ、コウタ……。 奴らは空間転移を行った……」
コウタ「何? そ、それじゃあ……」
ロア「……追跡は不可能だ」
コウタ「そんな……そんな……!」
ラウル「どういうことだ、ロア?  お前……誰としゃべっているんだ?」
コウタ「ちっきしょおおおおおおっ!!」
(コンパチブルカイザーが南端まで移動し撤退)
ラウル「待てよ、ロア! ロアーッ!」
ゼンガー「追うな、ラウル。 我々が成すべきことは別にある」
ラウル「は、はい……」
カーラ「そうだよ!  晴海の方はどうなったの!?」
ゼンガー「レーツェル、状況は?」
レーツェル「ギリアムからの報告によれば、 バルトールは式典会場を襲撃し、 民間人を拉致したそうだ」
カーラ「ら、拉致!?」
ユウキ「いったい、何のために……!?」
レーツェル「各機は帰還しろ。 これより今後の対策を検討する」
ラウル「………」
ミズホ「ラ、ラージさん……。 あの気味の悪い機体、ラウルさんを 狙っていたみたいですけど……」
ラージ「ええ……。 そして、彼らは限定的ながらも 空間転移技術を有しているようです」
ラージ(もし、彼らが エクサランスの時流エンジンの意味を 知っているのなら……)
ラージ(急がなければなりませんね……)

[クロガネ ブリッジ]

レーツェル「……あの2体の異形に関する情報は、 全く存在していなかった」
ゼンガー「では、 我らは未知の敵と遭遇したということか」
レーツェル「ああ。 『髪の毛』については目撃例があるものの、 その正体については謎のままだ」
カーラ「パチンコカイザーについては?」
ユウキ「コンパチカイザーだ。 今回はわざと言ったな?」
カーラ「えへへ、バレちゃった」
レーツェル「パチ…… いや、コンパチカイザーに関しては、 心当たりがある」
カーラ「ええっ!?」
ユウキ「本当なんですか?」
レーツェル「ああ。 あの機体の形状、使われている技術は、 ダブルGのそれと似ている」
カーラ「い、言われてみれば、 あのバリッとした感じが……」
ゼンガー「ビアン総帥が設計したダブルGは、 合計4機……だが、残り2体はどこにあるか不明。 形状や仕様もわからん」
レーツェル「……コンパチカイザーが 残りのダブルGである可能性は低いだろう」
ゼンガー「では?」
レーツェル「あの機体の開発に関わった人間は、 かつてのEOTI機関やDCに関与していた者 かも知れん……」
ゼンガー「心当たりがあるのは、そちらの方か」
レーツェル「確証はないが……私の方で調べておこう」
ゼンガー「頼む」
レーツェル(あれだけの特機を作り上げるとなると…… おそらくはキサブロー・アズマ博士…… そして、カオル・トオミネ博士)
レーツェル(だが、 アズマ博士は、EOTI機関がDCへ移行する前に ビアン総帥の下を去っている)
レーツェル(トオミネ博士だとすれば…… 面倒なことになるな)
ユウキ「問題とすべきは、 こちら側に仕掛けてきた異形の機体と 『髪の毛』の方ですね」
レーツェル「機体形状などに共通性は見られなかったが、 両者は互いを認識し、協力関係にあったようだ」
ゼンガー「我らの知らぬ組織同士が 手を組んでいるということか」
レーツェル「そして、『髪の毛』は “ロア”の妹である“ショウコ”という少女を 連れ去った」
ユウキ「彼女に特別な意味があるとでも?」
レーツェル「現時点では情報が少な過ぎる。 推測すら出来んな」
ユウキ「異形の機体と『髪の毛』……。 バルトールのテロに乗じて、 行動を開始したのでしょうか?」
ゼンガー「連中は このクロガネを標的としていたようだがな」
レーツェル「我々の存在を排除しようとしたか、 あるいは別の目的があったか……」
ユウキ「………」
レーツェル「ユウキ……ラウル達はどうしている?」
ユウキ「格納庫で、エクサランスの修理をしています」
レーツェル「そうか……」
ユウキ「レーツェルさん、自分はエクサランスが……」
レーツェル「そこまでだ、ユウキ。 今は余計なことは考えるな」
ユウキ「しかし……」
レーツェル「以後はバルトールに関する情報を集め、 その上でこちらの行動を再検討する」
レーツェル「無論、新たな敵の存在も 考慮に入れながらな」
ユウキ「……わかりました。 自分としても疑心から余計なトラブルや遅れを 招くのは避けたいと思っています」
レーツェル「いつも心はニュートラルに、か。 いい心がけだ」
ゼンガー「レーツェル、 我らはこのまま日本へ向かうのか?」
レーツェル「いや、ギリアムから要請があった。 我らは我らで情報を集めてくれとな」
ゼンガー「承知した。ならば、機を待とう」
レーツェル「うむ。このクロガネは“影”だ。 影には影としての役目がある」
レーツェル「そして、影は闇に紛れる。 ……我らは我らにしか出来ぬ戦をしよう」

《地球連邦軍極東方面軍 伊豆基地》

[伊豆基地内]

マウロ「ま、待て! 私は何も知らん!  まさか、バルトールがあのような……!」
???「……依頼主から伝言がある」
マウロ「!?」
???「これが“最上級のお仕置き”だとな」
マウロ「!  い、依頼主はあの女か!?」
???「………」
マウロ「待て!  私は本当に知らなかったんだ!  全ては奴が! ユルゲンが……!!」

[伊豆基地 滑走路上]

ギリアム「……伊豆基地がこの有り様とはな。 ここを襲撃したバルトールは?」
情報部員「3機撃墜しましたが…… 残り15機はロストしました」
ギリアム「バルトールに拉致された人数は?」
情報部員「ざっと100名…… 大半がハンガーにいた整備員やパイロット達です」
ギリアム「そうか……。 本部ビルの方は?」
情報部員「そちらの被害はほとんどありません。 ただ、指揮系統はかなり混乱しています」
ギリアム「マウロ・ガット准将は、 こちらに来ているのだな?」
情報部員「ええ。 本部ビルへ行っていたはずですから、 おそらく無事かと」
ギリアム「では、彼の所へ行くぞ」
情報部員「はっ」

[真っ暗]

(扉が開閉する)

[伊豆基地内]

ギリアム「むっ?」
情報部員「マウロ准将が……!」
ギリアム「一足遅かったか……」
情報部員「……死後、1時間ほど経っているようですね」
ギリアム「バルトールがここを襲う前か……。 死因は?」
情報部員「毒物と思われます。自殺でしょうか?」
ギリアム「それはどうかな」
ギリアム(今回の件……バックにいるのは、 イスルギだけではないかも知れん)
ギリアム(そして、現在活動中のバルトールが 我々の目を欺くための囮だとしたら……)
ギリアム「……私はラーダ・バイラバンと共に ハガネと合流し、大連へ向かう」
情報部員「では、ウォン重工業の本社へ?」
ギリアム「ああ、新たな手がかりを得るためにな。 ……もっとも、すでに手遅れかも知れんが」

《日本 東京地区・晴海(ハガネ)》

[ハガネ ブリーフィングルーム]

リオ「……ブリット君…… 負傷者や避難した人達の中に、 クスハやアラド達はいなかったわ」
ブリット「じゃ、じゃあ!?」
イルム「……バルトールに拉致られたか」
リオ「……おそらく……」
リュウセイ「くそっ……!  バルトールに乗ってた奴は何者で、 何が目的なんだ!?」
ブリット「俺達が…… もっと早く晴海にたどり着いていれば……!」
キョウスケ「ブリット、 起きてしまったことを後悔しても始まらん。 おれ達がすべきことは……」
ブリット「わかっています。 敵の目的を明らかにし、その上で さらわれた人達を救出することです」
エクセレン「わお、言うようになったじゃなぁい?  これも私の蜂蜜授業のおかげね」
ブリット「……そんな甘いものではありません。 自分だって軍人ですから…… やるべきことは、弁えているつもりです」
(扉が開閉する)
ヴィレッタ「撃墜したバルトールの収容が完了したわ。 今からリョウトがコックピットの中を調べるそうよ」
イルム「了解。 中に乗っている奴の顔を拝むとするか」
キョウスケ「ええ」

[ハガネ 格納庫]

テツヤ「……妙だと?」
リョウト「ええ。 機体内部から生体反応が検出されていて、 中に人がいるのは確実なんですが……」
リョウト「コックピット部分にハッチがないんです。 いったい、どうやって乗り込んだのか……」
エクセレン「リョウト君、頭が固いわよ?  パイロットが乗り込んだ後で、ハッチを溶接…… これで謎は全て解決よん」
キョウスケ「無理矢理解決するな。 乗り込む度に溶接される機体など、 聞いたことがない」
エクセレン「ま、トイレにも行けなくなるしね」
リョウト「………」
リョウト「……いえ。 エクセレン少尉が仰ったことは、 あながち間違いではないかも知れません」
リオ「えっ……?」
アヤ「中のパイロットと話は出来ないの?」
リョウト「何度も試みてますが、全く応答がないんです」
ブリット「じゃあ、強引に開けるしかないか」
リョウト「うん……中の状態を確認するためにもね」
テツヤ「許可する。 だが、くれぐれも中のパイロットを 傷つけないよう気をつけてくれ」
リョウト「了解です。 では、レーザートーチを使います」
(レーザートーチでハッチを切断)
リョウト「切開完了です」
(ハッチ解放と液体が溢れる音)
リオ「! み、水が!」
イルム「何かの溶液か!?」
リュウセイ「お、おい! 中を見ろ!!」
リオ「ひ、人が……組み込まれてる……!」
ヴィレッタ「ああ……機械の中に、な」
アヤ「ひ、ひどい……!」
イルム「パイロットじゃなく、パーツってことか。 確かに、これじゃハッチは要らんわな」
リュウセイ「これ、何なんだ……!?  いったい、何なんだよ!?」
(扉が開閉する)
ギリアム「……ODEシステムだ」

《日本 東京地区・浅草》

[アズマ研究所 居間]

(襖開閉音)
コウタ「……ただいま……」
ジャーダ「コ、コウタ! お前、今までどこに!?」
コウタ「……」
ガーネット「キサブローさん!  コウタが帰って来たよ!」
コウタ「…………」
ガーネット「お披露目会場で見失ってから、 ずっと心配してたのよ」
ジャーダ「何にせよ、お前が無事で良かったぜ……」
コウタ「うるせえ!」
ジャーダ「!」
コウタ「ちっとも良かねえよ!  ショウコがさらわれちまったってのに、 俺は……俺は……!」
キサブロー「やめんか、コウタ。 ジャーダとガーネットは、ずっとお前達を 心配しとったんじゃ」
キサブロー「二人はお前だけでも 無事だったことを喜んでくれとるんじゃ」
コウタ「………」
ジャーダ「いや……キサブローさん。 俺も悪かったんですよ。 コウタの気持ちも考えずに……」
ガーネット「ごめん……ごめんね、コウタ……。 あたし達がショウコを見失ったせいで……」
コウタ「……あんた達のせいじゃねえ。 俺が……俺が全て悪いんだ……」
コウタ「俺は ショウコを守らなきゃならねえのに…… このていたらくだ」
ジャーダ「コウタ……」
キサブロー「ジャーダ、ガーネット…… 済まんかったな」
キサブロー「もう夜も遅い……。 二人共、今日は家に帰るんじゃ」
ジャーダ「すんません……何の力にもなれなくて」
ガーネット「コウタ……自分を責めないでね。 悪いのは、あんたじゃないんだから……」
(襖開閉音・ガーネットとジャーダか立ち去る)
コウタ「………」
キサブロー「疲れたじゃろう、コウタ。 まずは風呂にでも入ってこい」
コウタ「……ショウコをさらったのは、 バルトールじゃねえ。この間の雷神野郎だ……」
キサブロー「知っておる。カイザーの動きは、 こちらでもある程度モニターしておったからな」
コウタ「雷神野郎を追って行ったら…… 見たことのねえ変なロボットに邪魔されて……」
コウタ「黒いドリル戦艦とラウルって奴に 助けてもらったけど……結局、ショウコは……」
キサブロー「……そうか」
コウタ「教えてくれ、爺ちゃん!  ショウコをさらった奴らは、何者なんだ!?」
コウタ「爺ちゃんが言ってた ロアを狙う敵だってのか!?」
コウタ「だったら、何故俺じゃなく ショウコをさらうんだ!?」
キサブロー「落ち着け、コウタ。 ワシにも奴らの正体や目的はわからん」
コウタ「じゃあ、ロアならわかるのか!?  ……おい、ロア! 聞いてんなら、答えろ!  てめえの知っていることを全部話しやがれ!!」
キサブロー「やめんか、コウタ。 長時間カイザーを稼動させた以上、 ロアには休息が必要じゃ」
コウタ「だけどよ!  俺はショウコを助けなきゃならねえんだ!  それには、あいつの力が必要なんだ!」
コウタ「相手が誰であろうと、 俺はショウコを守るんだ!!」
キサブロー「その覚悟……本気じゃな?」
コウタ「もちろんだ!」
キサブロー「ならば、ロアの使命を受け入れろ、コウタ。 それがショウコを救うことにつながるはずじゃ」
コウタ「爺ちゃん……!」
キサブロー「ロアは、こことは違う世界で生まれ、 ワシの前へ現れた男……」
キサブロー「彼は、多くの世界を守るために 戦ってきた戦士なんじゃ」
コウタ「じゃあ、あいつの敵ってのは?」
キサブロー「異次元の扉を開き、 様々な世界の支配を目論む邪悪な存在。 ロアと浅からぬ因縁があるらしい」
コウタ「!  もしかして、あいつが身体を失っちまった原因は……」
キサブロー「そう。 彼はこことは違う世界で宿敵と戦い、敗れ……」
キサブロー「大破したコンパチブルカイザーと共に この世界へ飛ばされてきた」
コウタ「……!」
キサブロー「DC戦争よりも前の話じゃ。 ワシは偶然ロアと出会い、彼からカイザーと ロア・アーマーを託された」
キサブロー「そして、 ワシは来るべき脅威に備えるため……」
キサブロー「市井に身を潜め、長い年月をかけて 秘密裏にコンパチブルカイザーを修復したのじゃ」
コウタ「……ロアの宿敵は、 俺達の世界へやって来るのかよ……!?」
キサブロー「その可能性は高いじゃろう。 奴はコンパチブルカイザーの力を 欲しておるらしいからの」
コウタ「じゃ、じゃあ、 爺ちゃんがコンパチカイザーを直さなきゃ……」
キサブロー「ロアの宿敵を完全に倒すには、 カイザーの力が必要らしいのじゃ」
コウタ「コンパチカイザーはモロバレの剣ってことか」
キサブロー「両刃じゃ、両刃」
コウタ「ああ、それそれ」
キサブロー「……ともかく、ロアとカイザーが ワシらの世界へ飛ばされて来た時点で、 戦いは避けられぬものとなった」
コウタ「……」
キサブロー「そして…… ロアがお前を選んだのは、奇しき運命だった」
キサブロー「ワシがもっと若ければ、 ファイター・ロアとなってカイザーに 乗り込んでおったのじゃが……」
コウタ「よせやい。 その体型じゃ、あのアーマーは着られねえぜ」
キサブロー「……コウタ。 ロアと彼に選ばれたお前は、 異世界からの侵略者と戦う宿命にある」
コウタ「ショウコをさらった雷神野郎や、 俺の邪魔をした変なロボットも そいつの仲間なのか?」
キサブロー「そうかも知れん。 彼らはコンパチブルカイザーの目覚めを知って、 浅草へ現れたようじゃからの」
コウタ「なら、何でショウコをさらう!?  ロアを狙うんだったら、俺を襲えばいいのに!」
コウタ「それに、あの雷神野郎は 一度俺達を助けたじゃねえか!」
キサブロー「その謎を解くためにも、 お前はロアと共に旅立て」
コウタ「……」
コウタ「……わかった、爺ちゃん。 俺は腹をくくったぜ」
コウタ「ごねたって、来るもんは来る。 逃げたって、敵は襲ってくる。そうなんだろ?」
キサブロー「……うむ」
コウタ「なら、俺はロアと一緒に戦う!  俺達の世界へちょっかい出してくる連中をブッ叩く!」
コウタ「そして、必ずこの手でショウコを取り戻す!」
キサブロー「そうと決まったら、今は休め。 ワシはコンパチブルカイザーを整備し、 お前の旅支度を整えてやる」
コウタ「……ありがとよ、爺ちゃん。 必ず……必ずショウコを連れて帰るからな」
(襖開閉音・コウタが立ち去る)
キサブロー「コウタよ……。 ロアと共に旅し、そして知るがいい。 この世界の危機を……」
キサブロー「それを食い止める力は、 お前だけにあるのではない。お前が行く先で 出会うであろう戦士達と共にあるはずだ」
キサブロー「頼むぞ、コウタ、ロア。 世界の命運をお前達に託す……」


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