ヒューゴ「フォリア!
輸送機から離れるな!」
フォリア「臨機応変な対応って奴だよ!
フォローを頼むぜ!」
ヒューゴ「フォリア!」
フォリア(すまんな、ヒューゴ。
親父への示しってもんがあるんでな)
アルベロ「……」
ラミア「敵機、全機撃墜。
エリア・クリア」
カイ「輸送機は……何とか無事のようだな」
アルベロ「支援を感謝する。
後は我々に任せて、そちらは帰投せよ」
カイ「……アルベロ少佐、
輸送機には何が積まれているのです?」
アルベロ「我々は輸送命令を受けただけだ。
中身のことは知らん」
カイ「では、輸送機はどこから?」
アルベロ「機密事項だ。教えられん」
ラミア「……」
カイ「……」
カイ「……了解。
ラミア、こちらの保持は出来るか?」
ラミア「はい。
……ですが、よろしいので?」
カイ「帰投するぞ」
ラミア「……了解」
(アンジュルグがカイ機に隣接後、カイ機とアンジュルグが北端へ移動し撤退)
アルベロ「……」
ヒューゴ「フォリア、大丈夫か?」
フォリア「ああ……」
ヒューゴ「教えてくれ。
アースクレイドルから
何を運んできたんだ?」
フォリア「そいつは俺も知らない。
ミタールの部下から、コンテナを積んだ
輸送機を守れと言われただけなんでな」
ヒューゴ「……」
フォリア「またロクでもない物だろうぜ。
ノイエDCの残党に狙われるぐらい
だからな」
ヒューゴ(隊長はコンテナの中身を
知っているんだろうか……?)
アルベロ「……ウルフ9。
何故、俺の命令に逆らった?」
フォリア「……!」
アルベロ「俺は輸送機の護衛に
専念しろと言ったはずだ。
どうして輸送機から離れた?」
フォリア「臨機応変な状況判断を
行った結果であります」
アルベロ「手柄を焦ったのではないか?」
フォリア「……いえ」
アルベロ「次に同じような行動を取った場合、
お前を任務から外す。いいな?」
フォリア「……了解です、隊長」
ラミア「カイ少佐、
あと2時間で伊豆からの迎えが到着します」
カイ「ああ。
アンジュルグとゲシュペンストの
搬入準備は完了している」
カイ「輸送機が来るまで、一息入れるか」
ラミア「はいな~」
カイ「ところで……
クライウルブズの行き先はわかったか?」
ラミア「ゴホン……。
いえ、アビアノに連絡は入っていないようです」
カイ「彼らの現時点での駐屯地は?」
ラミア「それも不明です。
クライウルブズのミッションについては、
ダブルAクラスの機密扱いとなっています」
カイ「特殊作戦PT部隊という性質上、
当然の処置だろうが……妙に引っ掛かるな」
ラミア「シャドウミラー隊……
と言っても、これは“向こう側”での話ですが、
連邦軍内でその立場を利用、暗躍を続けました」
ラミア「そして……最終的には叛乱を」
カイ「アルベロ少佐の性格から判断すれば、
クライウルブズがシャドウミラーと
同じ道を歩むとは思えん」
ラミア(そう……“向こう側”のクライウルブズは、
シャドウミラーの敵となった)
ラミア(彼らは政治的思想を持った部隊ではなかった。
それは“こちら側”でも変わらんだろう……)
カイ「……それに、
輸送機を襲った連中のことも気になる」
ラミア「もう少し踏み込んだ調査をしてみますか?
もしかしたら……」
カイ「いや、今はいい。
ダブルAの機密へ下手に噛みつけば、
大火傷を負いかねん」
カイ「それに、
次期主力機トライアルのこともある。
あれには我々も無関係ではいられんしな」
ラミア「また、
ここへ戻ってくることになりそうですね」
カイ「だろうな。仕事は山積みだ」
ラミア「負荷の少ない通常モードで遂行できます。
私は別にかまいませんが」
カイ「とは言え、
お前には仕事をさせ過ぎてしまっている。
たまには休みをやらんとな」
ラミア「いえ、人造人間であるWシリーズの
必要睡眠時間は、少佐ちゃん達と比べて遥かに
少ないっちゃあ少なかったりしちゃうのですのよ?」
カイ「無理をするな。
ほら、ろれつが回ってないだろうが」
ラミア「……普段はスルーしてるんだから、
こういう時もそうしやがり下さい」
(速い足音)
アクア「あ、あのっ、失礼しますです!
特殊戦技教導隊のカイ・キタムラ少佐で
いらっしゃられますでしょうか!?」
カイ「ん? な、何だ?」
ラミア「ろれつが回っていない、とは
こういうことです、少佐」
アクア「あ、わ、私ったら、何を!?」
カイ「君は?」
アクア「は、はい!
PTパイロット候補生のアクア・ケントルムです!」
カイ「ほう」
アクア「少佐にお会いできて、大変光栄です。
それで、あの……もし、よろしければ……」
カイ「?」
アクア「サ、サインを
いただけませんでしょうかっ!?」
カイ「サ、サイン……?
う~む、柄じゃないんだが……」
アクア「ぜ、是非お願いしますっ!
少佐や教導隊の方々は、私達候補生の憧れなんです!」
カイ「……わかった、わかったよ。
で、何に書けばいいんだ?」
アクア「え? あっ! ええっと……」
アクア(い、いけない!
こんな所で会えると思ってなかったから……)
ラミア「そうだな……
このメモパッドで良ければ、提供するが?」
アクア「は、はい。ありがとうございます……」
アクア(わ……凄く綺麗な人……。
お人形さんみたい……)
アクア「あの、あなたも教導隊の……
いえ、もしかして、カイ少佐の奥様……?」
カイ「ぶっ! お、おい!
何でそういう発想になるんだ!」
ラミア「残念ながら、私はただの部下にすぎん。
教導隊所属、ラミア・ラブレス少尉だ」
アクア(教導隊のウェーブって、変わってるのね。
あんなセクシー全開の服を普通に着てるし……
私じゃ絶対に耐えられないわ……)
アクア「で、出来ましたら、
少尉のサインもいただければ……」
ラミア「了解した。
……………………よし、これでいいか?」
アクア「は、はい!
……うわっ、でか!」
ラミア「では、少佐……」
カイ「ふう。まさか、こんな若い娘にサインを……
っと、でかいな! お前のサイン」
カイ「書く所がないぞ。
……しょうがない、ではこの辺りに……
カ・イ・キ・タ・ム・ラ、と」
アクア「あ、ありがとうございます!
一生の宝物にしますっ!」
カイ「訓練をきちんとこなして、
いいパイロットになれよ」
アクア「はい! では、失礼します!」
(速い足音・アクアが走り去る)
カイ「やれやれ。元気なことだ」
ラミア「……新兵、か。
私達Wシリーズにはない概念です。
ですが、見ていて不思議と悪い感じはしない……」
カイ「フッ、
母性本能をくすぐられた……というところか。
子を見守る母親のような顔だな、ラミア」
ラミア(母親……? 私が……?)
カイ「さて……今の内に土産物を買いに行くか」
(放送チャイム)
アナウンス「特殊戦技教導隊、カイ・キタムラ少佐。
レベル4、マウロ・ガット准将の執務室まで
出頭して下さい。繰り返します……」
カイ「……ふう。
これで時間がなくなりそうだな」
マウロ「……ラミア・ラブレス少尉、
ラトゥーニ・スゥボータ少尉、アラド・バランガ曹長、
ゼオラ・シュバイツァー曹長、以上4名を……」
マウロ「このアビアノで開催される
次期主力機トライアルに参加させろ」
カイ「はっ。
彼らにはトライアル機の評価試験を?」
マウロ「任務内容、及び開催期日等については
追って通達する」
カイ「了解です」
マウロ「……資料を見たところ、彼らはまだ若い。
と言うか、内3名は子供だ」
マウロ「アビリティ・データを信じぬわけではないが……
大丈夫なのだろうな?」
カイ「彼らはインスペクターやシャドウミラー、
アインストとの激戦を生き抜いた猛者です。
故に教導隊へ配属させました」
マウロ「とは言え、
旧教導隊のメンバーと比べると……どうも、な」
カイ「見た目の迫力に欠けるのは、致し方ありませんな」
マウロ「そういう意味で言ったわけではない」
カイ(体裁を気にしていることに
違いはないだろうが)
カイ「准将……
自分は、彼らの将来性を見込んで
選抜したつもりです」
マウロ「まあいい。今回の次期主力機トライアルは、
イージス計画の中でも重要な位置を占める。
部下にそのことをよく言い聞かせておけ」
カイ「はっ。
……ところで、自分はトライアルに参加しなくて
よろしいのですか?」
マウロ「ああ。
これ以上、ケネスに借りを作りたくないのでな」
カイ(あのタコ親父と知り合いか……)
マウロ「他に質問は?」
カイ「一つあります。
ツェントル・プロジェクトの機体は
トライアルに参加するのですか?」
マウロ「ツェントル・プロジェクト……?
名前は聞いておるが、詳細は知らん。
少なくとも、そこから提出される機体はない」
カイ「了解です」
カイ(ドナのウェンディゴは
試作段階の物だった……)
カイ(ツェントル・プロジェクトの機体は、
公の場へ出すまでには至っていないということか……)
エリック「ほう、アースクレイドルからのう」
ミタール「根気よく捜索を続けていた甲斐があった」
エリック「じゃが、あれから随分時間が経っておるでの。
再生できるのかの」
ミタール「ラズムナニウムを使う。
適合するかどうかはやってみなければ
わからんが……」
ミタール「極端な拒絶反応が出た場合は
一時凍結して、あの男の目覚めを待つ」
エリック「もう1人の眠り王子……
いや、眠りトカゲじゃの。
こっちの言うことを聞くかの」
ミタール「腹の探り合いは以前にもやっていたのでな。
利用できる所までは利用する」
エリック「やれやれ、扱いの難しい客人が多いの。
この……“ヘッド”を含めて」
???「……………………」
ミタール「だが……制御できれば、
これは強力無比な生体兵器となる」
エリック「失敗すれば、ただでは済まんがの」
ミタール「こいつの細胞を組み込んだ
フラットフィッシュでテストを行う」
エリック「んむぅ……あまり良くないと思うがの、
アインストを兵器として利用するのは」
エリック「ラズムナニウムを打ち込んだせいか、
見た目が変わってきておるし……」
エリック「人の言うことを
聞かなさそうな顔をしておるしの」
ミタール「……顔で判断するな、顔で」
エリック「何にせよ、ワシはこの手のモノは好かんの」
ミタール「受け入れてもらうぞ、ワン博士。
場合によっては、我らの本命になるかも
知れんのだ……」
ミタール「このアインスト……
いや、“イェッツト”がな」
???「……………………」
(液体の中で何かが動く)
(扉が開閉する)
カイ「……戻ったぞ」
ゼオラ「お帰りなさい、カイ少佐。
それにラミア少尉」
ラミア「ああ。
そちらは変わりなかったか?」
ラトゥーニ「はい、特に問題はありません」
アラド「どうでした、出張は?
なんか美味いものとか食べたッスか?」
カイ「どちらかと言うと飲んでた方が多かったが……
まあ、多少はな」
アラド「行った先はトルコのインジリスクですよね。
つーことは、本場のトルコライスを?」
カイ「あれの発祥地はな、トルコじゃない。
日本の長崎だ」
アラド「え? そうだったんスか」
ゼオラ「アラド、トルコライスって何なの?」
アラド「ピラフとスパゲッティの上へ
トンカツを乗せて、さらにその上から
ドミグラスソースをかけた奴」
ゼオラ「カ、カロリー高そう……」
ラトゥーニ「いかにもアラドが好きそうな料理ね」
アラド「そういうのもたべとかないと、
おっきくなれないぞー」
ラーダ「……少佐、奥様や娘さんのお土産は?」
カイ「結局、買いに行く時間がなかった」
ラーダ「そうだろうと思って、
私の方で取り寄せておきましたわ」
カイ「重ね重ねすまん。
それから、出張中にたまっていた電子文書を
俺の端末に送っておいてくれ」
ラーダ「もう用意してありますが……
今日中に処理されますか?」
カイ「ああ。
それと……アラド、ゼオラ、ラトゥーニ」
カイ「お前達にはラミアと一緒に
アビアノで行われる次期主力機トライアルへ
参加してもらうことになった」
ラトゥーニ「はい」
アラド「アビアノと言ったら、イタリア。
イタリアと言ったら、パスタ、ピザ、
リゾット。楽しみ~!」
ゼオラ「アラド、遊びに行くんじゃないんだから」
カイ「しばらくは忙しくなるだろう。
お前達には明日から2日間、休みをやる」
アラド「え!? ホントですか!?」
カイ「ああ。
査問や転属手続きのせいで、満足に
休ませてやれなかったからな」
カイ「それに
今週のメニューはシミュレーター訓練だから、
俺の方で融通が利く」
カイ「これからに備えて、英気を養っておけ。
ラミア……向こうでも言ったが、お前もだ」
ラミア「ですが、2日も……」
アラド「いいじゃないッスか、少尉。
ゆっくり羽を伸ばしましょうよ」
ラミア「そう言われても……
休暇に何をやっていいかよくわからん」
ラミア「2日…………
睡眠時間を2時間ずつ取るとして、44時間か。
いや、現時点から考えれば……」
アラド「うむむ……
少尉らしいっていうか、何て言うか」
ラーダ「じゃあ、ラミア……こうしない?
1日は休んで、アラド達とどこかへ行ってらっしゃい」
ラーダ「もう一日はメンテをやりましょう。
忙しくなるんだったら、今の内にね」
ラミア「……了解」
ゼオラ「ラミア少尉、
どこか行きたい所とかありますか?」
ラミア「……別にないが」
アラド「ん~、おれは……海に行きてえなあ」
ラトゥーニ「浅草にいる
ジャーダとガーネットに会いたい……」
ゼオラ「海……か。
何となく不純な動機が見え隠れするけど……
いいかもね」
ゼオラ「じゃあ、1日目は海。2日目は浅草。
これでどう?」
アラド「異議なし!」
ラトゥーニ「私も」
ラミア「……異論はない」
アラド(やった!
ゼオラはともかく、ラミア少尉の水着!
ドすげえモンがおがめそうだぜ~~?)
ラトゥーニ「……アラド、ジャーダから返事が来たわ。
明日の件、OKだって」
アラド「そっか、よかった。
……ところでラト、ラミア少尉とゼオラは?」
ラトゥーニ「もうすぐ来ると思うけど……」
ゼオラ「おまたせ!」
ラミア「……装備が変わると、落ち着かんな」
アラド「予想通りとはいえ……スゲー……」
ラトゥーニ「……大きい……」
ラミア「あ、あまりジロジロ見ないでくれ」
アラド「すごいド派手な水着ッスね~」
ラミア「うむ、以前エクセ姉様からいただいた。
少々キツいが……悪くない感じだ」
ゼオラ「……ね、ねえ、アラド。
わ、私の水着、どう?
ラーダさんに買ってもらったの」
アラド「うむむむ……」
ゼオラ「………」
アラド「こっちもこっちでツインボムって感じ……」
ゼオラ「えっ……?」
アラド「あ、いやいや。似合ってるよ」
ゼオラ「良かった……」
アラド(う~ん、何にしても新鮮だねぇ)
ゼオラ「じゃ、早く海に入りましょ!」
アラド「まあ待てよ、ゼオラ。
この日差しだぜ? オイルくらい塗らせろって」
ゼオラ「そんなこと言って……
いつまでも少尉を見てるんじゃないわよ?
行きましょ、ラト」
ラトゥーニ「あ……待って、ゼオラ」
アラド「あ、ラト。
行く前にサンオイルを貸してちょんまげ」
ラトゥーニ「え? いいけど……」
ラミア「……ふむ、海に来て着替えてはみたが……
やはり何をしたらいいのかわからんな」
ラミア(ゼオラは楽しそうに走り回っている……。
これも心身のケアと考えれば、悪いことではないか)
アラド「あの~ ラミア少尉?」
ラミア「む? どうした、行かないのか?」
アラド「いやあ、まずは紫外線対策をしないと!
それを少尉に手伝っていただけたらな~……と」
ラミア「別に構わんが……どうしたらいいのだ?
私にそのあたりの知識はないが?」
アラド「そんなに難しくないッス!
紫外線を遮断するサンオイルを塗るんスけど、
塗り方に……ちょっとコツがあって」
ラトゥーニ「まさか……」
ラミア「ほう。どうすればいいのだ?」
アラド「え~、まずオイルを水着の前面にたらすッス」
ラミア「……こ、これでいいのか?」
アラド「ええ。たっぷりしみ込ませたら、
塗りつける相手の背中に……押し付けるッス。
スキンシップッス」
ラミア「了解した。
海で休暇を取るというのは、面倒なものだな。
では……」
(速い足音)
ゼオラ「くぉらーーーーッ!!
あんた、ラミア少尉に何をやらせてんのよっ!!」
アラド「あ、いや、これは……」
ゼオラ「いいから、こっちに来なさいっ!
塩漬けにしてあげるわ!」
アラド「いや、その、誤解だってば!」
(アラドとゼオラが立ち去る)
ラトゥーニ「引きずられていった……」
ラミア「……わけがわからんな。
だいたい、このオイルはどうするのだ?
私には必要のないものなのだが……」
ラトゥーニ「……」
ラミア「……」
ラミア「……ラトゥーニ」
ラトゥーニ「はい?」
ラミア「当然、お前にもオイルが必要だろう?
大丈夫だ。私に……任せろ」
ラトゥーニ「え? しょ、少尉……?
あの、押しつけないで……」