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崩壊する理想 ~ 第9話 ~

〈ガーリオン・カスタム“無明”撃墜〉

ムラタ「うぬっ……!  俺に焦りがあったと言うのか!?」
リシュウ「進退窮まったな、ムラタ。 観念せい」
ムラタ「この身を刃が貫かぬ限り、 それは有り得ん……!」
マサキ「負け惜しみを言いやがって!」
ムラタ「勘違いするなよ、小僧。 俺の目的は、勝つことではない。 斬ることだ」
クロ「どっちにしたって、 負け惜しみニャ!」
ムラタ「修羅道を往くためならば、 怪猫の誹りにも耐えよう!  さらばだッ!」
(ガーリオン・カスタム“無明”が撤退)
リシュウ「ムラタよ……。 修羅の道の先にあるものは、破滅ぞ……」

〈カイル機撃墜〉

カイル「ぐふっ! がはぁっ!!」
セルシア「カイル!!」
カイル「お、俺は……まだ……!」
シュウ「フッ……見せていただきましたよ、 ユルゲン博士の研究成果を」
シュウ「おかげで 彼の最終目的がわかりました」
カイル「だ、だが……もう手遅れだ……」
カイル「バルトールは すでに動き出している……。 貴様と言えど、止めることは出来ん……」
シュウ「そうでしょうか」
カイル「な、何……!?」
シュウ「私がこれ以上手を下さずとも、 ユルゲン博士の計画は潰えますよ」
シュウ「ODEシステムでは 制御不可能な“規格外の存在”によって」
カイル「規格……外……」
シュウ「それが何なのか、 あなたはよくご存知のはずです」
マサキ「………」
リューネ「………」
アイビス「………」
カイル「ふ、ふふふ…… 奴らとて駒の一つに過ぎんさ……。 いずれは俺と同じ運命を……」
(カイル機に爆煙)
カイル「ぐあっ!!」
シュウ「あなた方は初手で仕損じました。 いずれユルゲン博士もそのことを 思い知るでしょう」
カイル「ば、馬鹿な……!」
セルシア「カイル!!」
カイル「セル……シア……」
カイル「俺が…… 間違っていたというのか……」
カイル「俺が……間違っ……て……」
(カイル機が爆発)
セルシア「カイルゥゥゥゥゥッ!!」
シュウ「………」
マサキ「シュウ、てめえ……!」
シュウ「私に構っている暇など ないはずです。ここから脱出し、 バルトールを阻止しなければ……」
シュウ「あなたの友人達を 救うことが出来ませんよ?」
マサキ「……!」
シュウ「理解できたようですね。 それでは、ご機嫌よう」
(グランゾンが撤退、アラート)
エイタ「艦長!  まもなくジェネレーターが 臨界点を突破します!」
テツヤ「スティール2より各機へ!  直ちにこの空域から離脱せよ!」
(サイバスター、ヴァルシオーネ、アステリオンAX以外の味方機が撤退、3機は工場の中央へ移動)
リューネ「……これでいいんだね、 セルシア?」
セルシア「すみません、リューネさん。 こんな危険なことに付き合って もらって……」
リューネ「気にしないでよ。 あたし、結構スリルを楽しむ タイプなんだ」
リューネ「それより、急ぎなよ。 本社のメインコンピュータに ダイレクトアクセスするんでしょ」
セルシア「はい……!」
ツグミ「フォローするわ、セルシア。 ここまで来たら、乗りかかった船だもの」
マサキ「大丈夫か、アイビス?  ブルってんじゃねえか?」
アイビス「マ、マサキこそ!  あたしはツグミのパートナーなんだから 残らなくちゃ!」
アイビス「あ、あんたこそ 関係ないんだから、早く行きなよ!」
マサキ「サイバスターのスピードなら、 爆発が起きたって逃げられらぁ」
シロ「そ、それは 幾らニャんでも無理ニャ!」
マサキ「とにかく!  俺にはセルシアがやることを 見届ける義務があるんだよ!」
リューネ「へへ……あんたの そういうとこ好きだよ、マサキ」
セルシア「ありがとうございます、 皆さん……」
(キー操作)
セルシア「もう少し……!  あと少しで機密情報の プロテクトが解除できる……!」
ツグミ「でも、これ以上の試行は 時間が足りない……!」
(アステリオンAXに通信)
ツグミ「サポートプログラムが 送られてくる……! これは……!?」
フィリオ「あきらめては駄目だ、ツグミ。 僕も手伝うから」
ツグミ「!!」
アイビス「フィリオ!」
(ヴァルシオーネで成功音)
セルシア「プロテクト、解除!  これで……!」
クロ「早く! 早く逃げるニャ!!」
マサキ「よし! 離脱するぞ!!」
(サイバスターなどが撤退してから工場のあちこちに爆発、閃光)

[ハガネ ブリッジ]

ジョナサン「危ないところだったな、少佐」
テツヤ「ええ。 まさか、あのような手を使ってくるとは……」
テツヤ「あれはカイル・ビーン……いえ、ユルゲン博士の 意志によるものだったのでしょうか?」
ギリアム「そう見て間違いないだろうな」
ジョナサン「私はユルゲン博士と面識はないが、 彼について調べてみた所……」
ジョナサンEOTI機関へ入る前は、 ドイツの連邦大学で教鞭を執っていて…… 学生達から慕われていた温厚な人物だったようだ」
テツヤDC戦争後の彼の動向は?」
ギリアム「それについては、現在調査中だ」
ジョナサン「私の方でも引き続き調べておくよ」
テツヤ「しかし、カザハラ博士…… あなたとフィリオ少佐のサポートのおかげで、 貴重な情報を入手することができました」
ジョナサン「私はフィリオを連れて来ただけに過ぎんよ。 彼がどうしても行くと言ってね」
フィリオ「すいません、カザハラ所長。 また僕のわがままに付き合っていただいて」
ジョナサン「君の想いは理解しているつもりだ。 それに、わがままを聞くのは慣れっこでね。 特に息子の」
イルム「そりゃこっちの台詞だぜ。 やれ雰囲気のいい店を教えろだの、 やれデートスポットの情報をよこせだの……」
イルム「仕事関連ならともかく、 どうでもいい頼み事までしてきやがって」
ジョナサン「それはまあ…… コミュニケーションの一環という奴だ」
イルム「誰とのなんだか」
フィリオ「……何にせよ、 カザハラ所長には感謝しています」
ツグミ「フィリオ少佐……」
フィリオ「心配しなくてもいい、タカクラチーフ。 自分のことは自分が一番わかっているから」
フィリオ「それに僕はどうしても知りたいんだ。 ユルゲン博士の心を……」
ギリアム「心?」
フィリオ「ええ。 ……僕はDCでアーマードモジュールの 開発に携わっていました」
フィリオ「結果として、僕の研究は DC戦争を激化させた要因の一つと言えます」
ツグミ「フィリオ……、 それは……あなたの責任ではないわ」
フィリオ「ありがとう、ツグミ。 でも、僕は自分のやったことを 自分なりのやり方で償いたいと思っている……」
フィリオ「そして、誰かが 僕と同じような過ちを犯そうとするなら それを止めたいんだ」
ギリアム「ユルゲン博士と ODEシステムもそうだと……?」
フィリオ「ええ。 艦長……僕もハガネと同行を希望します。 少しくらいはお役に立てると思います」
テツヤ「それはこちらとしてもありがたい話ですが、 我々は次の行動の目処が立っていない状態でして」
フィリオ「それでしたら、 もうすぐセルシアのデータ解析が終了します。 これで何らかの手がかりが得られるでしょう」
(受信完了)
エイタ「艦長、インテリジェンス・センターの セルシアさんから解析結果が送られてきました」
テツヤ「よし、こちらへ回してくれ」
(モニターオン)

[モニター (ヘルゲート外観)]

ツグミ「これは……宇宙プラント……!?」
イルム「こいつは…… 何というか、お仕置きされそうな形だねぇ」
ギリアム「あれはスカルヘッド……」
テツヤ「ご存知なんですか、少佐?」
ギリアム「ああ。 先の大戦でインスペクターが使用していたものだ」
ギリアム「その後、 イスルギ重工ウォン重工業によって、 修復作業が進められていたという……」
テツヤ「何ですって……!?」
イルム「嫌なつながり方だな……。 少佐、スカルヘッドの位置はわかるんですか?」
ギリアム「不明だ。 だから、気になって私の方で 調査を進めていたのだが……」
ギリアム「今の所、手掛かりはないに等しい。 ステルスシェードの類が展開されているのかも知れん」
テツヤ「エイタ、セルシアは何と言っている?」
エイタ「入手できたのは 『ヘルゲート』の画像ぐらいで、 所在位置に関するデータはなかったそうです」
テツヤ「ヘルゲート?」
エイタ「テロリスト側が スカルヘッドにつけた名前だとのことです」
フィリオ「ヘルゲート……地獄門か……」
ジョナサン「物騒な名前だねえ、どうも」
フィリオ「どうやら、ヘルゲートが 敵の本拠地であり……ODEシステムの マスターコアの所在地のようですね」
ジョナサン「そして、 拉致された人々もそこにいる可能性が高い」
イルム「とりあえず、目標は定まったか」
ツグミ「ですが…… もし、ステルスシェードが展開されているとしたら、 目視で位置を調べるしかないのでは……?」
イルム「ご、ご冗談を」
ギリアム「スカルヘッド…… いや、ヘルゲートでもバルトールが 生産されていると思われる」
ギリアム「陽動をかけられるのを覚悟の上で、 バルトールの動きから位置を割り出すのが 今の所ベストな方法だろう」
テツヤ「そうですね」
ギリアム「今回得た情報は、 俺の方から統合参謀本部へ報告する」
ギリアム「もはや、俺達や極東方面軍だけでは 対処不可能な状態となっているからな」
テツヤ「わかりました。 こちらの方は命令があり次第、 すぐに動けるようにしておきます」
ギリアム「俺はいったん別行動を取る。 ヘルゲートの情報や、それに関連する事柄を 調べるためにな」
テツヤ「了解です」
ギリアム「では…… 新たな情報が入り次第、連絡する」
(扉が開閉する・ギリアムが立ち去る)
ジョナサン「フィリオ…… 私はテスラ研へ戻り、今後の事態に備えるよ」
フィリオ「わかりました、所長。 お気をつけて」
イルム「アテにしてるぜ、親父」
ジョナサン「こちらもな」

[ハガネ 格納庫]

マサキ「……じゃあ、間違いなく 俺達は宇宙へ行くことになるな」
リューネ「やっぱ、あんたもそう思う?」
マサキ「ああ。 今までだって、主だった敵組織の本拠地に 飛び込んで行ってるじゃねえか」
マサキ「だから、今回もそうなるぜ。きっと」
セルシア「………」
シロ「元気ないニャ、セルシア」
クロ「無理ニャいニャ。 目の前であんニャことがあったんだから……」
セルシア「ううん、 落ち込んでいる暇なんてないわ」
アイビス「じゃあ、セルシアさん……」
セルシア「私も宇宙へ行きます。 許されるのなら、この戦いの結末を 自分の目で確かめたいのです」
マサキ「……わかった。 俺はもう何も言わねえよ」
セルシア「マサキさん……」
アイビス「マサキ……あんた、セルシアさんを……」
マサキ「まあ、 大連に最後まで残ったガッツを見りゃあな」
セルシア「ありがとうございます、マサキさん」
マサキ「べ、別に礼を言われることじゃねえよ!」
リューネ「何をそんなにあわててんの?」
シロ「マサキは、年上の女の人に弱いニャ」
クロ「一見おっとりタイプでも、 実は芯が強いっていうのがツボみたいニャ」
リューネ「じゃあ、 あたしはタイプじゃないってこと!?」
リューネ「もしかして、他に好きな人がいるっての!?」
マサキ「バ、バカ! 変な勘ぐりすんな!  シロ、クロ! お前らも余計なこと言うんじゃねえ!」
アイビス「何かアヤしい……。 そうやってムキになるところが……」
(足音)
リョウト「セルシアさん…… あなたに手伝って欲しいことがあるんですが」
セルシア「はい……何でしょう?」
リョウト「爆発を免れた工場棟から、 整備中だったと思われるミロンガが 1機見つかったんです」
リョウト「その解析を 手伝っていただけないでしょうか?」
セルシア「わかりました……」
リョウト「結果次第では、 フィリオ少佐とタカクラチーフが あれを使える状態まで持っていくそうです」
アイビス「え……少佐も このままハガネに乗るの!?」
リョウト「ええ、アドバイザーとして ハガネに乗り込むそうです」
リューネ「よかったね、アイビス。 憧れの人が一緒でさ!」
アイビス「そ、そんなんじゃないよ!」
マサキ「何かアヤしいぜ。 そうやってムキになるところがよ」
アイビス「う……もしかして、 さっきの仕返し……?」

セルシア「………」
セルシア(カイル……私はヘルゲートへ行き、 ユルゲン博士とODEシステムを止めるわ……)
セルシア(今のあのシステムは、 地球圏の守護者に成り得ないから……)
セルシア(マサキさんやリューネさん達のような 存在にはなれないから……)

『ミロンガ』を入手した。


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