キョウスケ「存在しないはずの機体、か。
そのカラクリ、暴かせてもらうぞ」
オウカ「私の機体よりも
自分の命を気にかけることですね」
エクセレン「はぁい、お姉さん。
ラトちゃんは、私達と一緒にいたいって
言ってるんだけど…そこんとこどうなの?」
オウカ「それは、あなた達が
そう思わせているからでしょう?」
エクセレン「……アラド君も
月で私達に協力してくれたんだけど?」
オウカ「黙りなさい!
弟を殺しておいて、よくもそんなことを!」
エクセレン「いや、だから……
あの子は生きてるんだってば」
ラミア「まさか、このタイミングで
『エルアインス』を投入するとはな」
オウカ「あの動き……
エキドナに似ている?」
オウカ「あなた達などに
私のラトを私はしません」
リュウセイ「あんた、
あいつの話を信じねえのかよ!?」
オウカ「ええ、今のラトは。
でも、あなた達を倒せば、
あの子も目が覚めるはずです」
リュウセイ「冗談じゃねえ!
あいつは俺達の仲間だ!
あんたには渡さねえぞ!!」
ライ「どうやら、お前達は
ただのDC残党ではないようだな」
オウカ「私達はDC再興のために
訓練を重ねてきたのです……!」
オウカ「その成果は
あなた達の死を以て示しましょう!」
オウカ「ラトを利用し続けてきた罪、
死んでいったアラドの苦しみ……
その身で思い知りなさい!」
ブリット「くっ!
少しはこっちの話を聞けっ!!」
オウカ「あなた達などに
私の邪魔はさせません!」
カイ「ラトゥーニを
上回る実力の持ち主だと言うのなら、
油断はならんか……!」
イルム「見れば見るほど
エルシュナイデに似てやがるぜ。
いったい、どうやって作ったんだ?」
オウカ「この機体の由来など、
私にとってはどうでもいいこと……」
オウカ「アラドの仇を討ち、
ラトを取り戻す力があれば
それでいいのです!」
オウカ「さあ、ラト……
私の所へ来なさい」
ラトゥーニ「姉様こそ、私と一緒に来て」
ラトゥーニ「そうすれば、
本当のことがわかるから……!」
オウカ「可哀想……それほどまでに
再教育されてしまっているなんて」
ラトゥーニ「!」
オウカ「でも、安心なさい。
私達があなたの呪縛を解いてあげる」
オウカ「ラト、あなたは自分の意思で
戦っているのではない」
オウカ「それに……
あなたでは私に勝てないわ」
ラトゥーニ「……!」
オウカ「この程度で落ちはしません。
私は……」
(鋭いノイズ)
オウカ「!」
ラトゥーニ「!?」
オウカ「く、うう……!」
ラトゥーニ「姉様……!?」
オウカ「ううっ……あ、頭が……!
くっ!!」
ラトゥーニ「も、もしかして……!?」
オウカ「ア、ASRS展開……
ブースト……!」
(オウカ機が撤退)
ブリット「逃げた!?」
イルム「あの加速……
やはり、ブースト付きの
テスラ・ドライブか」
ラトゥーニ「ね、姉様……」
エイタ「敵機の反応、全て消えました!」
テツヤ「後退した2機の追跡は!?」
エイタ「トレース出来ません!
例のECMを使用しているせいだと
思われます!」
テツヤ「くっ……!」
ダイテツ「大尉、艦を停止させろ。
撃墜したゲシュペンストの破片を
回収し、調査する」
テツヤ「……了解です」
リョウト「……送られてきたデータを
こちらでも検討してみました」
リョウト「製造番号は
巧妙に削除されているようですが、
部品は同じ物が使われてます」
イルム「ああ……
ハリボテじゃないな、あれは」
テツヤ「あのゲシュペンストがどこで
作られたか、見当はつくのか?」
リョウト「ご存じの通り、マオ社の
生産ラインは量産型ヒュッケバインに
移行しています」
リョウト「やはり、DC残党によって量産された物と
考えるのが妥当だと……」
キョウスケ「では、
量産型のアルブレードについては?」
リョウト「試作1号機と2号機はこちらにありますし、
3号機はリュウセイが使っています」
リョウト「また、データが
ハッキングされた形跡もありません」
キョウスケ「DC残党が
独自に開発した物だという線は?」
リョウト「あり得ません。
あそこまでこちらのプランと
そっくりだなんて……」
リョウト「仮にデータが
ハッキングされているとしても、
開発期間の辻褄が合いません」
テツヤ「だが、あれは現実に存在している。
それについて、お前の見解は?」
リョウト「あの……
呆れずに聞いてもらえますか?」
テツヤ「? ああ……」
リョウト「非現実的だと思いますが……
あれが未来から来た物だとすれば、
納得がいきます」
テツヤ「み、未来からだと!?」
キョウスケ「……」
イルム「う~ん……そういう考えもあるか」
テツヤ「しかし、いくら何でも……」
イルム「ま、それぐらいに
非現実的な話だっていうことですよ」
リョウト「とにかく、僕達の方でも
ゲシュペンストMk-IIの件と
一緒に調査を進めてみます」
テツヤ「わかった。
また新たなデータを入手したら、そちらへ送る」
リョウト「お願いします」
イルム「じゃあ、
リンやリオ、ラーダによろしくな」
リョウト「はい。
そちらもお気をつけて……」
(通信切れる)
ダイテツ「……斬艦刀装備の特機の件も
含めて、謎が深まったようだな」
テツヤ「ええ。
今回のDCには腑に落ちぬ点が多すぎます」
ダイテツ「ああ。
やはり、彼らはただの残党ではない」
ダイテツ「新しいDCと
言うべきなのかも知れん……」
エクセレン「え? あのゲシュちゃんには
誰も乗ってなかったの?」
ライ「ああ。
パイロットが外へ脱出した形跡もない」
カチーナ「じゃあ、
無人機だったんじゃねえのか?」
ライ「コックピットは有人仕様でした。
普通、無人機ならモジュールを
丸ごと入れかえるはずです」
レオナ「なら、何者かが乗っていた
可能性は高いわね」
ライ「……ああ」
ラミア「……」
カチーナ「パイロットが煙みてえに消えたってのか?
信じられねえな」
エクセレン「外側も内側も幽霊だったってこと?
ナンマンダブナンマンダブ…」
カチーナ「んなワケあるか!」
ラミア(……機密保持のために
消去コードを発動させたか)
ラミア(私も任務に失敗すれば、
同じ結末を迎えることになる。
……それが我々の宿命だ)
エクセレン「ん? どうしたの、ラミアちゃん?
気になることでもあるの? 幽霊が怖いとか?」
ラミア「な、何でもございませんでしょうですわ」
ラミア(それより、
指令の内容を確認せねば……)
ラミア(……よし、これで
アンジュルグの機密回路が使える。
先日のディスクの内容確認を……)
(機密通信)
ラミア(指令コード、0605……)
ラミア(デザートクロス作戦の
スケジュールに基づき、潜入任務の続行……)
ラミア(さらに、
ヘリオスに関する情報の入手……。
可能であれば、身柄を確保)
ラミア(……私にまでその指令が下ったか……)
ラミア(どうやら、
まだ本隊の方でも奴の行方を
つかめていないらしいな)
ブリット「……ラミアさん、
そこで何をやってるんです?」
ラミア「ブルックリン少尉…。
アンジュルグの整備をしたりしちゃって
おりましたのですのよ」
ブリット「そうなんですか。ところで、
ラトゥーニを見かけてませんか?」
ラミア「いいえ」
ブリット「……あの子、
どこへ行ったんだろうなあ。
リュウセイも捜してるのに……」
ラミア「もしや、あのオウカという敵パイロットの
情報を彼女から聞き出しちゃったりしますのですか?」
ブリット「いや、
そういうわけじゃないんですけど」
ラミア「……」
ラミア「…少尉達は、本気で彼女を『助ける』おつもりで
ございまするのでしょうですか?」
ブリット「ええ……。
いくら戦争だとは言え、身内同士で
戦うのは悲しいじゃないですか」
ラミア「……」
ラミア(…相変わらずわからんことを。
この男だけならまだしも、何故感情に流され、
その上で戦争を継続しようとする?)
ブリット「実は、
俺にも似たような経験があるんです」
ブリット「だから……ラトゥーニには
そういう思いをさせたくないんです」
ラミア「…甘い考えだな。戦争に理屈など通用せん。
ましてや個人の感情など、一番最初に
切り捨てなければならん…ものですのことよ」
ブリット「……わかってますよ。
でも、俺は憎しみのためだけに
戦ってるわけじゃありません」
ラミア「そうでしょうのことですとも。
…任務だから戦っているのでございましょう?」
ラミア「兵士から任務を取ったら、何が残ったり
いたしますのです?」
ラミア「そこには…何も…」
ブリット「俺は難しい事はよくわかりませんけど…」
ブリット「“心”とか“生き様”とか…
人間自身が残るんじゃないかと…」
ブリット「いえ、残ると思います…!」
ラミア「……!」
ラトゥーニ「……」
ラトゥーニ(あの時の姉様の反応……
もしかして、まだ……?)
(扉が開閉する)
リュウセイ「ラトゥーニ、
ここにいたのかよ」
ラトゥーニ「リュウセイ……」
リュウセイ「お前の……
姉さんのことなんだけど……」
ラトゥーニ「私は大丈夫……。
姉様の誤解は予測がついていた
ことだから……」
リュウセイ「あの人は
ああ思い込まされてるってことか?」
ラトゥーニ「多分……」
リュウセイ「そうか……。
でも、アラドが生きていることを知ったら、
考えが変わるかも知れねえ」
リュウセイ「だから、諦めるなよ。
俺も……手伝うしさ」
ラトゥーニ「うん……」
ラトゥーニ(……オウカ姉様……)
アウルム1「……ラトゥーニ……」
ラトゥーニ11「………」
アウルム1「……どうしたの? 泣いているの?」
ラトゥーニ11「……姉様……うう……」
アウルム1「……訓練が厳しかったのね。
可哀想に……」
ラトゥーニ11「………」
アウルム1「……いいわ、私の方から
コッホ博士に言ってあげる。
あなたのメニューを考え直すようにって」
ラトゥーニ11「……でも……
あの人は……私を……」
アウルム1「安心なさい。
私がいる限り、あなたに妙な真似はさせないわ。
今度の実験は私が変わってあげる」
ラトゥーニ11「……」
アウルム1「私が守ってあげる。
あなたを……そして、弟や妹達を」
ラトゥーニ11「姉様……」
アウルム1「だから、泣かないで。ね?」
ラトゥーニ11「はい……姉様……」
クエルボ「どうですか、セトメ博士……
オウカの状態は?」
アギラ「拒否反応が出ておるの。
まあ、予測しておったことじゃが」
クエルボ「スクール時代、彼女は
ラトゥーニを可愛がっていました。
やはり、その記憶のせいで……」
アギラ「いや、
原因はそれだけではなさそうじゃ」
クエルボ「え?」
アギラ「どうやら、ブロンゾ28が生きておるらしい。
レコーダーにそれらしい会話が記録されておった」
クエルボ「アラドが……!」
アギラ「そのせいで
アウルム1の深層意識に乱れが生じ、
拒否反応を起こしたのじゃろうな」
クエルボ「……」
アギラ「ブロンゾ28め、欠陥品のくせに
悪運だけは強いようじゃの」
アギラ「フェフが目をつけただけのことは
あるということか」
クエルボ「では、睡眠調整中のゼオラに
アラドが生きていることを……」
アギラ「この際じゃ、
奴に関するアウルム1とブロンゾ27の
記憶をリセットし、再構築しよう」
クエルボ「もしや、それは……」
アギラ「そうじゃ。ブロンゾ28を
完全に敵だと思い込ませる……」
アギラ「その方がアウルム1とブロンゾ27も
任務を遂行し易かろう、フェフェフェ」
クエルボ「……」
ヴィンデル「……テストの結果は
どうだったのだ?」
レモン「全機撃墜されたけど、
改良点のヒントが得られたわ」
レモン「それに、ハガネの足止めも
出来たみたいだしね」
ヴィンデル「証拠の隠滅は万全なのだろうな?」
レモン「それはもちろん。
仮に不具合があったとしても、
W17が何とかするでしょうしね」
ヴィンデル「……そのW17に
問題はないのだろうな?」
レモン「W16の報告によれば……」
レモン「今まであの子から連絡がなかったのは、
アンジュルグの機密通信装置が壊れていたためよ」
レモン「本人は言語機能の故障で済んでるだけって
話だし…大したものよ」
ヴィンデル「……だといいがな」
レモン「あら……あなたもアクセルと
同じようなことを言うのね」
レモン「Wシリーズは、今後の作戦になくてはならない
存在だということは理解してるでしょう?」
ヴィンデル「だからこそ、ミスは許されん。
データが揃うまでの損失は問わんが、
後期ロットの調整は完璧にな」
レモン「ええ…重々承知よ」
ヴィンデル「……そろそろ、
バンの演説の時間だな」
レモン「連邦軍にも映像を流すんですってね。
遅まきながらの宣戦布告ってことかしら?」
ヴィンデル「ああ、
これで奴らも本気になるだろう。
そして……」
ヴィンデル「我々が望む混沌の時代が
いよいよ始まるのだ」
バン「……然るに、
東京宣言を経て、連邦政府の
執ってきた施策はどうか?」
バン「一部特権に偏った
巨大な官僚機構は、無為無策のまま
旧世紀からの諸問題を解決せず……」
バン「会議と選挙工作に明け暮れ、
問題を先送りするための立法に
日々を重ねてきたに過ぎない」
バン「だが、地球圏全体を覆っている事態は、
すでにそのような思考の時間が終わったことを
告げている」
テツヤ「艦長、これは……」
ダイテツ「ああ……DC戦争の再来だ」
バン「地球と宇宙に生きる全ての
人類諸君、私はここに宣言しよう!」
バン「我々こそが
地球圏を守り得る力であることを!」
バン「私は宣言しよう!
かつてビアン・ゾルダークが示唆した
異星人の脅威を払拭できるのは……」
バン「我ら新たなディバイン・クルセイダーズ、
『ノイエDC』をおいて他にいないと!」
リー「ノイエ……DC……!」
バン「先の東京宣言でもわかるように、
連邦政府は今まで多くの真実を
隠蔽していた」
バン「そんな者達に地球圏の舵取りを
任せることは、自殺行為に等しい」
バン「諸君らは為政者の捨て駒という、
意味の無い死を望んでいるのか?」
バン「そして、種族として
根絶やしにされる惨めな結末を
享受するつもりなのか?」
バン「否! 諸君らには
生を望む意思があるはずだ。
己の未来を欲しているはずだ」
サカエ「レイカー指令……」
レイカー「……」
バン「生ある者として、
今選ぶべき手段は一つ」
バン「それは人類の力と叡智を一つに集め、
来るべき脅威に立ち向かうことである」
バン「そして、
そのためには腐敗していくだけの
官僚機構を排除し……」
バン「強大な力の下に、多くの意思が
統一されねばならない!」
レイカー「……ビアン博士の……
もう一つの選択肢、か」
バン「今、この世界に必要な物は
イージスの盾ではなく、ハルパーの鎌である!」
バン「我らの意思に賛同する者は
ノイエDCに来たれ!」
バン「己の力を欲望ではなく、人類と
地球の未来のために使う者であれば、
何人であろうと拒みはしない!」
バン「心ある者達よ、
新たな聖十字軍の旗の下に集え!」
バン「そして、
我らの手で自らの自由と未来を勝ち取るのだ!」
ブライアン「……」
議員「大統領……」
ブライアン「仕掛けた直後じゃなく、
今というタイミングでの演説か。
バンという男、なかなかやるな」
議員「しかし、
連邦軍が本格的な反攻に出れば、
いくら彼らと言えど……」
ブライアン「あそこまでの大見得を切ったんだ。
ジョーカーの一枚や二枚、用意していそうだね」
議員「どうなさるのです?」
ブライアン「今のノイエDCに
話し合いは通じないだろう……」
ブライアン「だが、
いずれバンは振り上げた拳の
下ろし所を見極めることになる」
議員「……」
ブライアン「それまでは
混乱を最小限に食い止める努力を
するしかない」
ブライアン「もっとも、混乱の継続を
望む者もいるようだけどね……」
ミツコ「イージスの盾ではなく、
ハルパーの鎌……いい例えですわね」
ミツコ「どうでしょう?
私達の計画をそう名付けませんこと?」
グライエン「名前など、どうでもいい」
ミツコ「あら……
いいアイデアだと思いますのに」
グライエン「それより、ノイエDCの手綱は
きちんと引き絞れるのだろうな?」
ミツコ「ええ、もちろん。
念のため、鈴もつけてありますわ」
グライエン「ケースEが発生した以上、
急いで事を進めねばならん。奴らが
本格的に動いてからでは遅いのだ」
ミツコ「わかっております。
で、そちらの方の根回しは?」
グライエン「ぬかりはない。
北米方面軍のケネス・ギャレットも
我々への協力を約束した」
グライエン「後はムブハル特別補佐官を
どうするか、だ」
ミツコ「あの方は
SRX計画とATX計画の後押しを
なさってますから……」
ミツコ「我が社としては、少々困っておりますの」
グライエン「……何を考えているか
よくわからぬ所がある男だ」
グライエン「以前は、
EOT特別審議会と関わり合いを
持っていたようだが……」
ミツコ「ええ、
私の父とも面識があったようですわ」
グライエン「戦後、
どうやってブライアンに
取り入ったか知らぬが……」
グライエン「私の目をかいくぐって、
特別補佐官の座についた」
ミツコ「EOT特別審議会と関係を
持っていた以上、シュトレーゼマン派の
人間だったのは確実なのでしょう?」
グライエン「死んだカールの後を継いで
派閥を作るつもりはないようだが……
要注意の人物である事に違いはない」
ミツコ「……」
ミツコ(私とヴィンデル・マウザーの
読みが正しければ、ムブハル特別補佐官は……)
ミツコ(新しいビジネスへの
糸口になる方ですわね)
『チョバムアーマー』を入手した。
『アポジモーター』を入手した。
『防塵装置』を入手した。