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アル=ヴァンの真意 カラチへ向かう ~ 第25話 ~

[ガウ=ラ・フューリア 玉座の間]

シャナ=ミア「このままでは、 地球人の疑念が深まるばかりでありましょう。 ヴォーダの門が沈静化せぬようであれば……」
シャナ=ミア「彼らに事実を明かした上で交渉を行い、 玉座機を取り戻した後、最悪の事態に備えて 協力態勢を取るべきだと判断します」
ダ=ニーア「しかし、殿下…… それでは先帝のご遺志に反することになりますぞ」
グ=ランドン「左様。 我らがこのガウ=ラ・フューリアで 長き眠りを繰り返した理由……」
グ=ランドン「それは、環境が変わり、世代を重ねることによって フューリーという種とその叡智を劣化させぬがため」
グ=ランドン「ましてや、 我らより劣る地球人と協力態勢を取るなど、 あり得ませぬな」
シャナ=ミア「父は、先住民である彼らの存在を尊重しておりました。 故に我らがこの星へ辿り着いた時、 干渉することを禁じたのです」
グ=ランドン「その後の歴史を振り返れば、早期の段階で 我らが支配しておくべきだったと思いますが」
シャナ=ミア「フューリーの歴史も同じようなものでありましょう」
グ=ランドン「千年単位の帝政を否定なさるおつもりか」
シャナ=ミア「それも私の代では 細々と続いているだけに過ぎません……」
グ=ランドン「とは言え、我らはこのような辺境の惑星で 終焉を迎えるわけにはいきませぬ」
シャナ=ミア「……父は申しておりました。 我々が放浪の末、地球へ辿り着いたのは、 創世神フューレイムのお導きではないかと」
シャナ=ミア「そして、 あの星には大いなる運命の力が作用していると」
シャナ=ミア「故に、玉座機は過去のヴァウーラとの戦いで ヴォーダの門を封じることが出来たのだと思います」
グ=ランドン「あれは……先帝の類い希なる お力あってのことでありましょう」
シャナ=ミア「ならば、フューリー本星での最終決戦で ヴォーダの門を封じられたはず」
シャナ=ミア「グランティードのあの力は、 地球だからこそ発揮されたのかも知れません……」
グ=ランドン「賛同できかねますな」
シャナ=ミア「しかし、地球にもヴォーダの門があったのですよ。 フューレイムはそれをご存じだったのでは?」
グ=ランドン「グランティードの超常の力は認めますが…… あれに創世神が宿っているのであれば、 本星の滅亡を看過した理由が解せませぬ」
シャナ=ミア「ですが、生き残った私達、そして地球人が 玉座機によってヴァウーラから救われたことは事実」
グ=ランドン「では、我らの現状は何と説明される?  神話にあるトウ=ラウザの千夜行のような 神から与えられた試練だとでも?」
シャナ=ミア「そうかも知れません……」
グ=ランドン「ならば、それに打ち勝つまで。 ヴァウーラは紛い物でも押し戻せたのです」
グ=ランドン「まもなく完成するズィー=ガディンでは それ以上の結果をご覧に入れましょうぞ」
ダ=ニーア「とは言え、ガウ=ラ・フューリアの守護神である グランティードの不在は心許ない。 従士達の士気にも関わる」
ダ=ニーア「前回の失敗を踏まえ、確実にあれを取り戻すには、 2機のラフトクランズがラースエイレムを 用いるしかないと考えるが、どうか?」
グ=ランドン「つまり、グランティード奪還作戦を 我ら騎士ではなく、諜士に任せよと仰る」
ダ=ニーア「本来ならば、皇女殿下に 騎士によるラースエイレムの使用を ご承認いただきたい所だが……」
シャナ=ミア「新たなエイテルムを得られぬ今、 あれを使える回数は限られています」
シャナ=ミア「万が一の事態に備え、私達の切り札の一つである ラースエイレムは温存すべきでありましょう」
カロ=ラン「確かに、現存するラフトクランズは 過去の大戦であの装置を駆使したため、 あと何回使用できるかわかりませぬが……」
カロ=ラン「玉座機を取り戻すためならば、 私とソ=デスが出向きましょう」
グ=ランドン(……こちらのエイテルムは温存しておきたいが、 こやつに必要以上の貸しを作るのは面白くない)
シャナ=ミア「カロ=ラン、 これ以上のラースエイレムの使用は許可できません」
グ=ランドン「ならば、我ら騎士団にお任せあれ」
シャナ=ミア「そのつもりですが、 出撃する騎士は私が直々に指名します」
グ=ランドン(何……?)
シャナ=ミア「アル=ヴァン・ランクス」
アル=ヴァン「はっ」
シャナ=ミア「あなたに任せます。その理由はわかりますか?」
アル=ヴァン「地球人となるべく事を荒立てずに 玉座機を取り戻せ、と?」
シャナ=ミア「ええ、後々のために」
カロ=ラン(甘いな、皇女殿下は。 この期に及んで、そのようなことが叶うものか)
シャナ=ミア「よろしいですね、グ=ランドン?」
グ=ランドン(アル=ヴァンがどちら側につくか、 見極める時が来たか……)
グ=ランドン「承知致しました、殿下。 アル=ヴァン、失態続きの貴様に与えられた好機だ。 見事、玉座機を奪還してみせよ」
アル=ヴァン「はっ」
アル=ヴァン(後は……もうないかも知れんな)

[ガウ=ラ・フューリア 内部(ブリーフィング・ルーム)]

ジュア=ム「何故、俺を連れて行って下さらないんです……!?」
アル=ヴァン「私はお前の前途を閉ざしたくないのだ。 我が配下の中では、最も騎士に近い男だからな」
ジュア=ム「それはアル=ヴァン様のお導きあってのこと。 だからこそ、お力になりたいのです」
アル=ヴァン「お前が騎士を目指すもう一つの理由にも 差し障りかねんのだぞ」
ジュア=ム「まるで作戦が失敗するかのような 仰りようではありませんか」
アル=ヴァン「最悪の事態を想定しているだけだ」
ジュア=ム「ならば、玉座機の奪還を成功させれば良いのです。 そのために俺は全力を尽くします」
アル=ヴァン「お前の気持ちはありがたいが、今回は待機せよ。 これは厳命である」
ジュア=ム「……はっ」
ジュア=ム(アル=ヴァン様は手柄の独占を 目論むような御方ではない……)
ジュア=ム(俺を次の作戦に参加させない理由…… やはり、あの女か?)

《パキスタン カラチ地区(鋼龍戦隊)》

[ヒリュウ改 食堂]

タスク「ああ、腹減ったぁ!」
ラッセル「自分は空腹感よりも眠気ですね……」
カチーナ「あたしらはいったん戻ってから、 すぐに哨戒任務に就いたからな」
クスハ「お疲れ様です、皆さん」
ブリット「この席、空きましたからどうぞ」
カチーナ「おう」
レオナ「次はATXチームが準待機?」
クスハ「そうなの」
タスク「あれ?  交代時間って、もうちょっと後じゃないか?」
ブリット「先に休ませてもらった分、任務時間は長くなるからな。 機体チェックを念入りにやっておかなきゃ」
クスハ「それじゃ、お先に」
(足音・ブリットとクスハが立ち去る)
タスク「俺は後の任務が長くてもいいから、 すぐに休みたかったなあ」
ラッセル「ローテーションだから、恨みっこなしですよ」
カチーナ「ま、あたしらの休憩中に 敵襲がねえことを祈るんだな」
タスク「うっ……嫌な予感がする」
カチーナ「何だと!?  あたしが言ったら、敵が来るってのか!」
タスク「いやほら、言ったことが現実になるって あるじゃないッスか」
テニア「ええっ、それは困る! 早く食べないと!」
メルア「テニアちゃん、カチーナ中尉の言動と 敵の行動には何の関係もないわ」
テニア「じゃあ、もう一杯お代わりする余裕あるかな」
カティア「本当によく食べるわね」
テニア「駄目?」
カティア「もうすぐ哨戒任務の時間だけど、一杯ぐらいなら」
トーヤ「………」
テニア「あれ、トーヤ……もう食べないの?  残したら、もったいないよ」
トーヤ「……だったら、食べていいよ」
テニア「ホント!?」
カティア「駄目よ。パイロットは食事をちゃんと取るのも 仕事の内だって聞いたわ」
トーヤ「………」
カティア「もしかして、フューリーのことを考えていたの?」
トーヤ「……ああ。 あいつらのこと、よくわからないままだなって」
カティア「焦っても仕方がないわ。いつかは……」
トーヤ「わかる時が来る、か。 そうだな、連中はグランティードを狙ってるんだ。 捕まった時には色んな疑問が解けるかも知れない」
テニア「何よ、それ。あいつらの所に行きたいっての?」
メルア「嫌です、私。 あの人達に捕まるのは、絶対に嫌」
トーヤ「あ、いや……本気で言ったわけじゃない」
カチーナ「おい、トーヤ。 ごちゃごちゃ考えるより、ちゃんと食って休め。 体力がなけりゃ、いざと言う時に困るぞ」
タスク「おっ、中尉もたまには……」
(殴る)
タスク「いてっ!」
カチーナ「たまには、が余計だ!」
タスク「たはは、全部喋ってなかったのに」
テニア「わ~、手が早~い」
メルア「上には上がいるんですね」
テニア「上って、誰の?」
カチーナ「とにかく、食えよ、トーヤ。 それが今、お前のやるべきこった」
トーヤ「……わかりました」
カティア「トーヤ君……」
トーヤ「心配はいらない。自棄になってるわけじゃないさ。 ちゃんと食べて、哨戒任務に行くよ」

[ヒリュウ改 格納庫]

キョウスケ「そちらからの申請だが、上からの許可が下りた」
カルヴィナ「了解」
エクセレン「まさか、司令がOKを出すとはねえ」
カルヴィナ「それ以前に、 キョウスケ中尉で話が止まると思っていたわ」
エクセレン「こう見えて案外真面目なのよ、うちの隊長さんは」
カルヴィナ「フォローになってないわよ」
エクセレン「あらん」
カルヴィナ(中尉は何も言わない。自然体でこうなのね。 それに比べて、あたし達は……)
カルヴィナ(いや、昔を思い出そうとするなんて、どうかしてる)
エクセレン「ん? 何?」
カルヴィナ「いえ……じゃあ、哨戒任務に就くわ」
(足音・カルヴィナが立ち去る)
ジョッシュ「……カルヴィナ少尉が ベルゼルートの方へ歩いて行きましたけど、 出るんですか?」
キョウスケ「ああ、本人から申請があった」
リム「あれ?  カルヴィナ少尉って、予備のシフトじゃなかった?」
ジョッシュ「そうだったはずだ」
ラウル「このままラマリスが再出現しなかったら、 哨戒をやらずに済むのにな」
ジョッシュ(今、わざわざ外へ出る理由か……)
デスピニス「このタイミングでグランティードと ベルゼルートが外にいるのは、 あまり良くないと思います……」
キョウスケ「おれも同感だが、司令が許可した」
エクセレン「それが意外なのよねえ」
キョウスケ「もしかしたら、さらに上からの指示かも知れん」
リム「司令の上って……」
ラウル「統合参謀本部だろ」
ジョッシュ(フューリーの目を引き付けるのは、 レフィーナ支隊の役目の一つだが……)
ジョッシュ(このタイミングで彼らを誘き出させる理由…… オペレーション・トリオンフか)


第25話
アル=ヴァンの真意

グランティードとベルゼルートのサブパイロットは

グランティードがカティア、ベルゼルートが テニア
メルア

グランティードがテニア、ベルゼルートが カティア
メルア

グランティードがメルア、ベルゼルートが カティア
テニア


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