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密会 ~ 第7話 ~

《神聖ラングラン王国 バルディア州》

[バルディア州 酒場]

(喧噪)
兵士「おーい、酒だぁ! もっと酒を持ってこ~い!」
サフィーネ「あーら、景気がいいこと」
兵士「そりゃあ、いい女がお酌をしてくれてるんだ。 酒も進むってもんよぉ」
サフィーネ「うふふ、お上手ね♥ それで……王女様達の居場所って、どこなの?」
兵士「ふぃ~、何でそんなことを聞くんだぁ?」
サフィーネ「私、王室マニアなのよ。 だから、色々と気になってね」
兵士「う~ん、どうしようかなぁ。ヒック!」
サフィーネ「あん、意地悪しないで教えて。お・ね・が・い♥」
兵士「しょうがねえなぁ。通信で聞いたんだけどよぉ、 特殊工作隊がよぉ、双子の王女を捕まえて…… 王都近くの教会に閉じこめたんだとさ」
サフィーネ(これで3人目……どうやら、間違いなさそうね)
兵士「それより、姉ちゃんよぉ。 静かな所でさぁ、二人きりで飲み明かそうぜぇ」
サフィーネ「ふふっ、いいわよ。 でも、ちょっと用事を済ませてくるから、 ここで待っててね」
(足音・サフィーネが立ち去る)

(カフェ)

(喧噪、通信)
セレーナ(……エルマからの定時報告……問題なし、か)
(足音)
サフィーネ「お待たせ、セレーナ」
セレーナ「……酒場で、しかも色仕掛けで情報を聞き出すっていう ベタな手を使うとはねぇ」
サフィーネ「基本でしょ、基本」
セレーナ「よくバレないものね。地上人の私もだけどさ」
サフィーネ「末端の兵士にまで顔を知られてるわけじゃないからね。 名乗らなきゃ、大丈夫」
セレーナ「それでも、ここは敵拠点の近くでしょ 不用心じゃない?」
サフィーネ「昨日、補給物資が届いたみたいでね。 昼間から浮かれてるのが多いし、大丈夫よ」
セレーナ「……とりあえず、謝っとくわね。 色仕掛け作戦に何の貢献も出来なくて」
サフィーネ「あら、そんな格好をしてるのに?」
セレーナ「服の趣味とは関係ないでしょ」
サフィーネ「その気になれば、あなたにだって出来るわよ。 任務じゃなくてもね」
セレーナ「……で、手に入れた情報って、何なの?」
サフィーネ「フェイル王子が生きてるって話は、事実ね。 それに、フェイル軍は、王都の奪還を狙って 色々と動いてるみたい」
サフィーネ「カークス軍もそうでしょうけど、 どっちが早くゴールに辿り着くかしらねぇ」
セレーナ「……フェイル王子って、どんな人なの?」
サフィーネ「シュウ様ほどじゃないけど、イケメンね。 ラングラン国民の人気も高いわよ。ただ……」
セレーナ「ただ……何?」
サフィーネ「平和主義者ってわけじゃないし、 陰があるのよねぇ、どことなく。 色々溜め込んだ末に爆発するタイプかもね」
セレーナ「ふ~ん……。 あと、モニカ王女やテリウス王子は?」
サフィーネ「それは、その内にわかるわよ」
セレーナ「どういうこと?」
サフィーネ「次の目的は、その二人の身柄を確保することだもの」
セレーナ「王女様と王子様を誘拐か……。 ホントに悪役街道まっしぐらね」
サフィーネ「あら、怖じ気づいたの?」
セレーナ「そういうのをどうこう言えるほど、 こっちも綺麗な身体じゃないけど…… 相手は王族でしょ」
セレーナ「いくら情勢が混乱してると言っても、 さすがに警固は厳重じゃないの?」
サフィーネ「そうでしょうけど、不可能な話じゃないわ。 モニカの方は以前に誘拐したことがあるし」
セレーナ「えっ……」
サフィーネ「だから、実績ありってわけ」
セレーナ「そういうのは前科って言うべきね。 ここに来た本当の目的って、王女様と王子様の 居場所探ることだったんだ」
サフィーネ「そうよ。 残念ながら、テリウスがどこにいるかまでは わからなかったけどね」
セレーナ「……何のために二人を?」
サフィーネ「ふふっ、それもすぐにわかるわ」
セレーナ「こないだ、チカが口を滑らせてたけど…… シュウが王位継承者だっていうことと 関係があるのかしら?」
サフィーネ「……ないけど、シュウ様には そういう話をしない方が身のためよ」
セレーナ(王位継承権を持ってるってこと、 暗に認めたわね……)
サフィーネ「今度はこっちから質問。いいかしら?」
セレーナ「ええ、何?」
サフィーネ「ずばり聞くわね。 あなた、シュウ様のことをどう思ってるの?」
セレーナ「え? どうって……」
セレーナ(作戦目標だなんて言えないわよね)
セレーナ「そうね、強いて言うなら…… ミステリアスなツアコンかな?」
サフィーネ「ふ~ん……」
セレーナ「どうしてそんなことを聞くのよ?」
サフィーネ「別に……」
セレーナ(もしかして……これって、いわゆる恋バナ?)
サフィーネ「さて、と。そろそろ出ましょうか」
セレーナ「わかったわ」


第7話
密会

〔戦域:荒地周辺〕

(崖下にセレーナ機とウィーゾルがいる)
セレーナ「ただいま、エルマ。お留守番、ご苦労様」
エルマ「お帰りなさい、セレーナさん」
セレーナシュテドニアスの連中には、気づかれずに済んだわね」
エルマ「一度、グラフ・ドローンが上空を 通過していきましたけど……それだけです。 ところで、成果はありました?」
セレーナ「うん。ワインみたいな果実酒と、何かの腸詰め」
エルマ「何かの腸詰めって、ちょっと不気味ですね」
セレーナ「まあ、アルはかえって喜ぶかもね」
エルマ「……って言うか、そういう成果じゃなくて」
セレーナ「囚われの王女を助け出すために 必要な情報は手に入ったわよ」
エルマ「王女……もしかして、モニカ王女をボク達で?  それ、本当なんですか?」
セレーナ「そうよ」
エルマ「でも、ボク達がラングランの王女を救い出しても、 誘拐したと見なされるだけじゃ……」
セレーナ「下手したら、国際指名手配犯ね。 王女を連れ去る理由は、追々わかると言ってたけど」
(ウィーゾルに通信)
サフィーネ(あら……意外な相手から連絡が来たわね)
セレーナ「どうしたの?」
サフィーネ「あなた達は先に帰っていいわよ。 私はもうしばらく情報を集めるから」
(ウィーゾルが東端まで移動し撤退)
セレーナ「あっ、ちょっと!」
エルマ「レーダーからウィーゾルの反応が消えました。 ステルス機能の類を使ったかと思われます」
セレーナ「どうも怪しいわね。追跡できる?」
エルマ「熱反応を追えば何とか。 でも、サフィーネさんもそれは承知の上でしょうから、 ボク達を撒きにかかると思いますが……」
セレーナ「………」

《神聖ラングラン王国 バオダ州》

[地下神殿跡]

シュウ(……この違和感……以前とは違う……。 理由は分かりませんが、そう感じます)
シュウ(これは記憶が完全に戻っていないせいか、 それとも……)
シュウ(しかし、まだ肝心な事柄を 思い出せていないような気がしますね……)
(足音)
アルバーダ「……驚いたぜ、 地下神殿ってのがここまで広いとはな」
シュウ「………」
アルバーダ「邪魔だったか?」
シュウ「いえ、構いませんよ」
アルバーダ「悪いな、色々と物珍しくてよ」
シュウ「遥か昔、ラ・ギアスには巨人族がいましてね。 彼らは私達と同等か、それ以上の知性を 持っていたようです」
シュウ「ここは、巨人族文明の名残……とは言え、 人間の手によって神殿として造り変えられ、 さらに放棄されて、かなりの年月が経っていますが」
アルバーダ「巨人族、ね。 地上にもその手の伝承はあるが、ここじゃリアルかよ。 そいつらは今もいるのか?」
シュウ「大異変によって、絶滅していますよ。 生あるもの全てに対する凄まじい怨念を残してね」
アルバーダ「そいつぁ、単なる怪談じゃ済まなさそうな話だな」
シュウ「いずれ、それを垣間見ることになるでしょう」
アルバーダ(いずれって…… ヴォルクルスと関係があるってことか?)
アルバーダ「それにしても、あんた…… だいぶ記憶が戻ってきたみてえだな。 元通りになるのは、時間の問題じゃねえか?」
シュウ「ええ……忘れていた、忘れたいと思っていたことまで 甦ってしまうかも知れませんがね」
アルバーダ(そうだ……てめえにはきっちり思い出して もらわなきゃならねえ……南極事件のことをな)
アルバーダ「あと、あんた自身に聞きたいことがある」
シュウ「何です?」
アルバーダ「あんたは地上人なのか?  それとも、ラ・ギアスの人間なのか?」
シュウ「その中間……と言っておきましょうか」
アルバーダ(地上人とラ・ギアス人のハーフってことか……?)
アルバーダ「……じゃあ、何でEOTI機関に入り、 DCに荷担したんだ?」
シュウ「………」
アルバーダ「答えたくなきゃ、いいけどよ」
シュウ「……私がDCに協力した理由、それは……」
シュウビアン・ゾルダーク博士に恩義があり、 来るべき星間戦争の中で、地球人類の主権を 確立するという彼の目的に賛同したからですが……」
シュウ「他にも理由があったような気がしますね」
アルバーダ「………」
シュウ「あと、DCの蜂起が大きな混乱を呼び、 ヴォルクルス様を復活させるために好都合だと 考えていたかも知れません」
アルバーダ「何……?  あんた、ヴォルクルスを地上に 呼び込むつもりだったのか?」
シュウ「……その可能性は否定できませんね」
アルバーダ「チッ、冗談じゃねえぜ。 他人事のように語りやがって」
シュウ「何せ、記憶を失っていますから」
アルバーダ「ふん……今でもそのつもりなのか?  ヴォルクルスの災厄を地上にも振りまく気かよ?」
シュウ「……あなたも承知の通り、 地上は様々な外敵の脅威にさらされています」
シュウ「地球に存続の危機が訪れれば、ラ・ギアスにも 少なからず影響が出るでしょうからね……」
シュウ「この世界と地上の接点は、 最小限に止めておくべきだと考えています」
アルバーダ「つまり、地上へヴォルクルスを 引きずり出すつもりはねえってことか?」
シュウ「……そう考えていただいて構いませんよ」
アルバーダ(それが本当かどうか、いずれ確かめてやるさ)
シュウ「もういいですか?  グランゾンの再調整を行わねばなりませんので」
アルバーダ「ああ、悪かったな。だけど、意外だったぜ…… こっちから質問しといて何だが、あんたが 自分のことを話すとは思ってなかったんでな」
シュウ「……私もですよ」
アルバーダ「………」

〔戦域:荒地〕

(南西端にグランヴェールがいる)
ヤンロン「……約束の時間は過ぎたな」
ランシャオ「本当に来るでしょうか?」
ヤンロン「気まぐれな女だからな…… 反故にされるのは覚悟の上だ」
ランシャオ「ご主人様、レーダーに反応が。 どうやら、現れたようです」
(グランヴェールの西側にウィーゾルが出現)
ヤンロン「遅かったな、サフィーネ」
サフィーネ「ふふっ、いい女は男を待たせるものでしょ」
ヤンロン「……自分で言うな」
サフィーネ「で、私をこんな所に呼び出して、何の用?  私達は敵同士なのよ」
ヤンロン「わかっている。 お前に直接聞きたいことがあって、連絡した」
サフィーネ「直接、ねぇ。何かしら?」
ヤンロン「フェイルロード殿下のことだ。 ……本当に身罷られたのか?」
サフィーネ「そんなことを聞くために呼び出したの?  私じゃなく、カークスに聞けばいいじゃないの」
ヤンロン「将軍は何も言わんのだ」
サフィーネ「ふ~ん、そうなんだ。 カークスは隠してるのね。ふ~ん」
ヤンロン「どうなんだ? 殿下は生きておられるのか?」
サフィーネ「どっしよっかなー」
ヤンロン「……いつぞやの貸しは、これでなしにしておく。 ならば、文句はなかろう」
サフィーネ「じゃ、教えてあげる。 フェイルロード王子は生きてるわよ」
ヤンロン「やはり、そうか……。 それで、殿下は今、どこに?」
サフィーネ「話はここまでよ。何かが近づいて来てるみたい」
ヤンロン「……!」
サフィーネ「あなたと会ってる所を見られたら、 私だってただじゃ済まないものね」
(ウィーゾルが南端まで移動)
ヤンロン「待て、サフィーネ!」
サフィーネ「……今、フェイル王子は西の方にいるわよ。 色々と画策してるみたいだから、 その内に会えるかもね」
(ウィーゾルが撤退)
ヤンロン(画策……? どういうことだ?)
ヤンロン(だが、フェイルロード殿下が生きているのであれば、 約束を果たさねばな……あの方との)

〔戦域:胞子の谷周辺〕

(西端にウィーゾルが出現)
サフィーネ(さっきの反応、かなり巨大な飛行物体だったわね。 シュテドニアス軍やカークス軍の物じゃない みたいだし……)
サフィーネ(何にせよ、あんなのがうろついてるなら……)
(ウィーゾルに警告シグナル)
サフィーネ「!」
(東側にシュテドニアス軍が出現)
サフィーネ「あー、やっぱり」
兵士「紅蓮のサフィーネか!  本隊に報告しろ! 我らは奴に仕掛ける!」
兵士「了解!」
サフィーネ「多勢に無勢、囲まれる前に突破しないとまずいわね。 こうなったら……」
サフィーネ「天の理、地の理、逆しに行へば、逆しに生ず。 冥府の怨み、煉獄の焔、血をもちて盟す。 闇に依りて盟す」
サフィーネ「アク・サマダ・ビシス・カンダク」
(ウィーゾルの周りにデモンゴーレムが5機出現)
サフィーネ「さあ、私の可愛いしもべ達……やっておしまい!」
(作戦目的表示)

〈3PP〉

(ウィーゾルに警告シグナル)
サフィーネ「この反応は……」
(北端にセレーナ機が出現)
セレーナ「ようやく追いついたわよ、サフィーネ」
サフィーネ「あら、私の居場所がよくわかったわね」
セレーナ「こっちには優秀なナビゲーターがいるからね」
エルマ「危うく見失ってしまう所でしたけど……」
サフィーネ「あ、デモンゴーレムは味方だから、壊さないでね」
セレーナ「あれが味方? むしろ、退治する対象じゃないの」
サフィーネ「まあ、見てくれが悪いのは認めるわ。 それより、敵の援軍が来るかも知れないから、 時間は掛けられないわよ」
セレーナ「OK! 行くわよ、エルマ!」
エルマ「ラジャ!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

エルマ「……戦域内の敵機反応、全て消失しました」
セレーナ「ふう……結局、敵の増援は現れなかったわね」
エルマ「あの、セレーナさん…… 40秒ほど前、5時方向の上空に 飛行物体を視認しました」
セレーナ「そんなの、見えなかったわよ」
エルマ「かなり距離が離れてましたし、 遠ざかっていったので……」
セレーナ「で、それがどうしたの?」
エルマ「映像を解析した所、 ヒリュウ級汎用戦闘母艦に酷似していました」
セレーナ「!」
エルマ「ヒリュウ級はヒリュウ改1隻だけですから…… 鋼龍戦隊もラ・ギアスへ召喚されている 可能性が高いと思います」
セレーナ「……そう」
サフィーネ「どうしたの、セレーナ?」
セレーナ「ううん、何でもないわ」
サフィーネ「じゃあ、シュウ様達の所へ戻るわよ」
セレーナ「OK。今度は寄り道なしでお願いね」

《神聖ラングラン王国 バオダ州》

[地下神殿跡]

アルバーダ「ふ~ん……鋼龍戦隊がこっちに来てるんなら、 危ない所だったな。もし、直接会ってたら……」
セレーナ「ええ。シュウ達と行動を共にしてる以上、 攻撃されたっておかしくないしね」
ヨン「……あの、鋼龍戦隊のPT特機は 確認できたのでしょうか?」
エルマ「いえ、ヒリュウ改らしき物だけです。 そして、ヌエット海方面へ去って行きました」
ヨン「彼らは単独で行動していたんですか?  それとも、シュテドニアス軍、フェイル軍、 カークス軍のいずれかと……」
アルバーダ「興味津々だねぇ、ヨン」
ヨン「え、ええ、まあ」
エルマ「ヒリュウ改は単独で動いているようでしたが、 シュテドニアス軍と戦闘を行っていたのかも 知れません」
エルマ「ボク達の所へ敵の増援が来るかと思っていましたが、 結局、現れませんでしたからね」
アルバーダ「……いかに鋼龍戦隊と言えど、 自力で地上世界には戻れねえだろうよ」
アルバーダ「俺達みてえに地上へ帰してやるって言われて、 どこかにスカウトされてる可能性は高いな」
セレーナ「そうね……」
アルバーダ「ただ、鍵となるのは、あいつらと縁がある サイバスターとマサキ・アンドーだな」
アルバーダ「鋼龍戦隊の連中は シュウならともかく、奴とは戦わねえだろう」
エルマ「マサキ・アンドーは、 どこの陣営についているんでしょうか」
セレーナ「シュウやサフィーネに直接聞いてみる?」
アルバーダ「駄目だ、藪蛇になるかも知れねえだろ」
ヨン「……おそらく、魔装機神は神聖ラングラン王国側に ついていると思われます。シュテドニアス軍の 移動要塞内で、そういう話を聞きましたので」
アルバーダ「ほ~う」
ヨン「ですが、シュテドニアス軍のノーランド少佐は、 ラングランが魔装機神を擁し、隣国を脅かしたことが 戦争の原因の一つになったと言っていました」
セレーナ「……この世界だと、魔装機神は 必ずしも正義の味方じゃないってわけね」
アルバーダ「シュウも言ってたがよ、 見方と立場が変われば、俺達だってそうだぜ」
ヨン「………」
アルバーダ「ヨン、お前は鋼龍戦隊と合流した方が いいんじゃねえか? 俺達と一緒にいるより、 確実に地上へ帰れるかも知れねえぜ」
ヨン「でも、それはアルバーダ少尉達も同じでは……」
アルバーダ「ま、こっちは色々と事情があってね」
ヨン(任務、ということかしら…… しかも、シラカワ博士絡みの……)
セレーナ「あなたは私達と違うでしょ。 地上へ戻ることを第一に考えた方がいいんじゃない?」
ヨン「あの、私……実はグランゾンに興味がありまして…… 間近で見られる機会は、滅多にないので……」
アルバーダ「仕事柄ってことかよ?」
ヨン「……はい」
アルバーダ「物好きだねぇ」
セレーナ「自分でそう決めたのなら、いいけどね」
アルバーダ「何にせよ、鋼龍戦隊と出くわさねえように 気をつけなきゃな。万が一、あの連中と やり合うことになっちまったら、面倒だ」
ヨン「そう……ですね」
アルバーダ「とりあえず、今の内に英気を養っとくか。 セレーナが持って帰ってきてくれた腸詰めは なかなかイケるぜ」
エルマ「何の肉を使ってるか、よくわからないんですけどね」
アルバーダ「ま、ソーセージの中身は肉屋と神様しか 知らないっていう諺もあるしよ」
アルバーダ「ちなみに、個人的には魚肉ソーセージの方が好みな」
エルマ「それって、ソーセージとしては亜流なんですけど」
アルバーダ「るせえ。 カップ焼きそばだってな、焼いてねえけど 焼きそばなんだよ」
セレーナ「どうでもいいけど、お酒は飲まないようにね。 多分、すぐにここを出ることになるから」
アルバーダ「つまり、次の目的地が決まったってことか……」

[地下神殿跡]

シュウ「……なるほど。 モニカの居場所は、ほぼ確定できたわけですね」
サフィーネ「ええ。テリウスの情報を集めるには、 もう少し時間と手間をかける必要がありますけど」
シュウ「今は、モニカがどこにいるかわかっただけでも 良しとしましょう」
ガエン「……ルオゾールに報告しないのか?」
シュウ「モニカを救出してからでもいいでしょう。 何でしたら、あなたから現状を伝えて もらっても構いませんよ」
ガエン「ふん……」
シュウ「サフィーネ、アルバーダ達を呼んで来て下さい」
サフィーネ「わかりました。 例の件は、話さない方がよろしいですわね?」
シュウ「ええ」
チカ「あの、ご主人様。 出掛けるのは、グランゾンの整備が 完全に終わってからにしませんか?」
チカ「グラビトロンカノンが使えるようになったとは言え、 ブラックホールクラスターはまだ……」
シュウ「今、優先すべきは、 モニカとテリウスの身柄確保なのです」
サフィーネ「シュウ様の仰る通りよ。 ヴォルクルス様復活の儀式には、 王族の生け贄が必要なんだから」

[地下神殿跡]

アルバーダ「……セレーナやサフィーネから聞いたけどよ、 モニカ王女を誘拐しに行くんだって?」
シュウ「人聞きが悪いですね。 私達は、囚われの王女をシュテドニアス軍から 救出するのですよ」
アルバーダ「そりゃ、俺達がラングランの人間だったらの話だろ。 そもそも、モニカ王女とテリウス王子を 連れ出して、どうすんだよ?」
アルバーダ「まさか、ラングランに身代金を 要求するわけじゃあるめえ?」
チカ「あ、それ、いいですね。 金だけせしめて、トンズラしちゃいましょう」
エルマ「どうしてそういう発想につながるんです?  ホント、がめついんだから」
チカ「ふん、甲斐性なしのサボりロボットに そんなことを言われたくないですよ」
エルマ「甲斐性なしですって!?  ボクはコ・パイロットだけでなく、 炊事、掃除、洗濯をきっちりこなしてるんですよ!」
エルマ「現に、セレーナさんはボクがいないと 本当にだらしないんですから!」
セレーナ「そうやってレディのプライベートを さらっと暴露するの、やめてくれる?」
アルバーダ「……で、王女様と王子様を連れ出す理由は?」
シュウ「モニカとテリウスには大事な役目がある……とだけ 言っておきましょう」
アルバーダ「……そうかい」
ヨン「それで、シラカワ博士……救出作戦の内容は?」
シュウ「あなたとガエン、アルバーダ、セレーナは 囮となって、教会周辺にいる敵部隊を なるべく多く誘き出して下さい」
アルバーダ「つまり、敵の増援を引きずり出せってか?」
シュウ「ええ」
アルバーダ「やれやれ、気楽に言ってくれるぜ」
サフィーネ「シュウ様、私は?」
シュウ「あなたが動けば、私達の目的を 敵に知られてしまう恐れがあります。 近場で待機していて下さい」
サフィーネ「……わかりましたわ」
ガエン「シュウ、貴様はどうするのだ?」
シュウ「私は教会へ潜入し、モニカを連れ出します」
サフィーネ「えっ? シュウ様お一人で?」
シュウ「そうです。 隠形の術を使い、さらに持続時間と効果範囲を 絞り込めば、気配を完全に消し去ることが出来ます」
シュウ「それに、 常に見張られているのは、堅苦しいですからね。 たまには単独行動もいいでしょう?」
ガエン(ふん、嫌味のつもりか)
アルバーダ(まあ、こっちの目的に感づかれていても おかしくはねえがな)
シュウ「不服があるなら、命令だと思って下さい」
ガエン「……命令か。ならば、従おう」
アルバーダ(何だ、こいつ?  前も似たようなことを言ってやがったが……)
サフィーネ「シュウ様……モニカと二人きりになられても、 変な気を起こさないで下さいね」
セレーナ(はは~ん……そういうこと。 それで、私に探りを入れてきたのか。 サフィーネもああ見えて、女の子ってわけね)
サフィーネ「ちょっと、チカ。いらっしゃい」
チカ「な、何ですか?」
サフィーネ(モニカがシュウ様に手を出さないよう、 よく見張っとくのよ)
チカ(そりゃ、余計な心配ですよ。 ご主人様は女性に全然興味を示されませんからね)
サフィーネ(……そうなのよね。この私がいくら誘っても、 その気になって下さらないんですもの)
セレーナ(何の相談をしてるんだか)
シュウ「アルバーダ、 あなた達の機体に問題はありませんか?」
アルバーダ「エル公とヨンのおかげで、最低限の整備は出来たぜ。 腹ごしらえもバッチリだ」
シュウ「では、早速出発しましょう」


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