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オーディター・ガール ~ 第4話 ~

《ヌエット海 バグレ群島》

[ヌエット海 バグレ群島 海岸]

シュウ「……では、引き続き協力していただけるのですね」
アルバーダ「ああ。 こっちは何としても地上に戻らなきゃならねえし」
ガエン「……本当にそれだけか?」
アルバーダ「そうさ。 この世界がどうなろうと、俺達には関係ねえからな」
セレーナ「ガエンだって、 地上で何が起ころうと興味ないでしょ」
ガエン「………」
サフィーネ(ふうん……この二人、思っていたよりドライね)
セレーナ「言っとくけど、魔神の生け贄なんていうオチは ノーサンキューよ。地上へ帰すっていう約束は きっちり果たしてもらうからね」
シュウ「もちろんです」
ガエン(俺達の計画を知って、 無事に戻れるとでも思っているのか……?)
セレーナ(シュウとサフィーネはともかく、 ガエンは黙って私達を帰さないでしょうね……)
アルバーダ「ところでよ、500万人も信者がいるんだったら、 あんたらを手伝う人間がもうちょっといても いいんじゃねえか?」
シュウ「残念ながら、教団は一枚岩ではないのです。 大司教は複数いますが、それぞれ独自に動いて いますし、協力することは滅多にありません」
シュウ「ただし、今回の計画は、私と同じく大司教である ルオゾールと共同で立案し、遂行していますが……」
アルバーダ(ルオゾール…… こないだの話に出て来た、シュウを甦らせた奴だな。 そいつも教団のお偉方か)
シュウ「私達の行動を快く思っていない者…… または、傍観を決め込んだ者もいるはずです。 そうでしょう、ガエン?」
ガエン(ふん……俺に振るか)
エルマ「シュウさん、ヴォルクルス教団の全貌は、 あなた達でもかわらないものなんですか?  その……記憶喪失とかではなくて」
シュウ「……ええ」
アルバーダ「つまり、あんたは信用できる少人数で 動かざるを得ないってわけか」
シュウ「なので、利害が一致している あなた達に協力を要請したのです。 ある意味、教団の人間より信用できますからね」
アルバーダ(信用、ね。 それに、こいつ……記憶がどこまで戻ってるのか、 わからなくなってきやがったな)
サフィーネ「それで、シュウ様。次の目的地ですが…… ラングラン王都方面へ直行さないます?」
シュウ「いえ、バルディア州へ向かいましょう」
チカ「えっ? あそこにはカークス軍がいますから、 面倒なことになりますよ。下手をすれば、 シュテドニアス軍と三つ巴戦になる可能性も……」
シュウ「情勢を混乱させることも目的の一つですからね。 それに、今後の私達にとって必要なものの 情報を集める必要もあります」
セレーナ(必要なもの……?)
シュウ「その役目はサフィーネ……あなたに任せますよ」
サフィーネ「わかりましたわ」
アルバーダ「ええっと、カークスってのは…… シュテドニアス軍に対抗してる ラングラン軍の将軍だったよな」
チカ「そうです。カークス・ザン・ヴァルハレヴィア…… 以前は、家柄のみで将軍になったとか言われてて、 昼行灯だったんですが……」
チカ「シュテドニアスの侵攻がきっかけとなって、 眠ってた才能が開花しちゃったようで。 メキメキと頭角を現し、用兵も堅実みたいですよ」
アルバーダ「上手くシュテドニアス軍を押し返せたら、大手柄…… 救国の英雄だな」
サフィーネ「それで議会に対し、発言権を強めて…… いえ、もっと上を狙ってるかも」
アルバーダ「英雄ならぬ奸雄ってわけかい?  だけど、フェイルロード王子は 死んだって決まったわけじゃねえんだろ?」
サフィーネ「……そうね」
セレーナ「ねえ、王位継承者は他にもいるの?」
チカ「ええ。第二王位継承者のモニカ王女や 第三王位継承者のテリウス王子、実はご主人様も……」
シュウ「お喋りはそこまでです、チカ。 出発しましょう」
チカ「あっ、はいはい」
アルバーダ(ご主人様も、だと?)
セレーナ(まさか、シュウがラングランの王位継承権を 持ってるって言うの……?)

《ヌエット海》

[シュテドニアス軍 ソディウム級移動要塞 ブリッジ]

ゴドル「……大体の情勢は、わかっていただけましたかな?」
ヨン「えっと……ラングランでは、カークス軍の他に フェイルロード軍が決起したんですよね」
ヨン「それで、両軍の合流を防ぐためにも、 ヌエット海を渡った先にあるバルディア州の カークス軍を叩く、と」
ゴドル「ご理解が早くて助かります」
(扉が開閉する)
ディック「ノーランド少佐、ご報告が……」
ゴドル「少々待って下さい。 ……それで、少尉。我々シュテドニアス軍に 協力していただく決心はつきましたかな?」
ヨン「再確認させていただきたいことがいくつかあります。 あなた方の戦争が終われば、本当に地上へ帰して もらえるのですね?」
ゴドル「ええ」
ヨン「早期に終結する見込みはあるんですか?」
ゴドル「……我々はこの戦いが長引くことを望んでいません」
ゴドル「我が祖国、ひいてはラ・ギアスに平穏をもたらすため、 魔装機神を擁して隣国を脅かす神聖ラングラン王国を 一刻も早く完全制圧する所存です」
ヨン(魔装機神が脅威に……それはわかるけど)
ゴドル「他には?」
ヨン魔装機の件なんですが……」
ゴドル「ああ、制限と監視は付きますが、 見て触る程度なら構いませんよ」
ディック「どういうことです、少佐?」
ゴドル「彼女……ヨン・ジェバナ少尉は 魔装機に関心を持っておられましてね」
ヨン「私、地球連邦軍の人型機動兵器開発実験隊に 所属していまして……いわゆるロボット兵器に 興味があるんです」
ディック「それで知り得たデータを 地上の兵器に転用する気か……!?」
ヨン「……お互い様でしょう?  私の機体も調べられましたし、コンテナを どこかへ持って行こうとしてるじゃないですか」
ディック「む……」
ゴドル「あなたを無条件で保護するわけにはいかないのですよ」
ヨン(保護、ね。 断れば、どういう扱いを受けるか……)
ヨン「では、最後にもう一つ。 お話を聞いた限りでは、ラングラン側にも 地球連邦軍の者がいそうな感じですが……」
ヨン「もし、彼らと戦場で遭遇したら、 私は戦闘を行うわけにはいきません」
ゴドル「基本的に、敵側に地上人がいない状況でしか 出撃を要請しませんよ」
ディック(そう、ラングランに寝返られたら、 元も子もないからな)
ゴドル「あるいは、後方で地上の機体解析に ご協力いただくか……ですな」
ヨン「………」
ヨン(ああ、マスター…… まさか、こんなことになるなんて)
ヨン(この世界は脅威的です。想定外の事態です)
ヨン(ここから抜け出した方がいいんでしょうけど、 他に地上へ戻れる方法があるかどうか わからないし……)
ヨン(かと言って、シュテドニアス軍に協力したら、 帰還するのに時間が掛かりそうだし……)
ヨン(こんな所でぐずぐずしていたら、 マスターのお仕事に支障が……)
ゴドル「どうでしょう、少尉?」
ヨン「……もう少し考えさせてもらえませんか?」
ゴドル「構いませんが…… 当面の間は監視を付けさせていただきますよ」
ヨン「はい……」
(扉が開閉する・ヨンが立ち去る)
ディック「……地上人など、あてになるのですか?」
ゴドル「上の意向ですよ。 地上人は高いプラーナを持っている者が多く、 使用している兵器も強力ですからね」
ディック「ラングランの魔装機神に対抗し得る力を 手に入れようという話はわかりますが……」
ゴドル「地上人の大量召喚は、我々にとって 想定外の事態だと言え……彼らを巻き込んでいけば、 戦況はさらに混迷しかねません」
ゴドル「軍上層部の中には、地上人の登用を疑問視し、 反対している者も少なからずいるようです」
ディック(少佐も否定的な意見を持っておられるようだな……)
ゴドル「それで、シャイエール中尉……報告とは?」
ディック「はっ。 キストバ地区でザレス・クワイアー大佐の部隊が グランゾンと接触したそうです」
ゴドル「では、クリストフ・グラン・マクソード…… いや、ゼオ・ヴォルクルスか、あの男が領内で 動いているのですか……」
ディック「ええ。その後、紅蓮のサフィーネや地上人らと共に 我が方の追撃を振り切り、ヌエット海をバゴニア方面へ 向かったそうです」
ゴドル「それなら、我らと接触する可能性は 低いでしょうが……相手がグランゾンとなると 警戒を怠るわけにはいきませんね」
(警告シグナル)
ゴドル「どうしたのです?」
兵士「哨戒機より報告! 11時方向の海上で グランゾンを発見したそうです!」
ゴドル「!」
ディック「何故、奴がこんな所に……!  バゴニアとは逆方向だぞ」
ゴドル「グランゾンは、こちらへ向かってくる素振りを 見せていますか?」
兵士「いえ、バルディア方面へ離脱しつつあるようです!」
ディック「バルディアへ行くつもりか……?  我が軍とカークス軍の挟み撃ちに遭うぞ」
ゴドル「陽動かも知れません。総員戦闘配置。 中尉、しばらく様子を見ますが、機乗して待機を」
ディック「はっ!」

[シュテドニアス軍 ソディウム級移動要塞 格納庫]

(アラート)
ディック「魔装機操者各員は、急ぎ機乗しろ!」
ヨン「あ、あの、すみません。何があったんです?」
ディック「本艦前方の海域にグランゾンが現れたのだ!」
ヨン「!!」
ディック「地上の軍人なら、奴を知っているのではないか!?」
ヨン「こ、こうしちゃいられない!」
(キー操作)
ヨン(メインターム、アクセス! モード・アクティブ!)
ディック「貴様、何をしている!? その腕時計は……」
ヨン「そこをどいて下さい!」
(システムが起動し、機動兵器が動く)
ディック「地上人の機体が! 誰か乗っているのか!?」
兵士「いえ、無人です! 勝手に起動しました!」
ディック「ヨン、貴様の仕業か!?」
ヨン「これ、ただの腕時計じゃないんです!  すみませんが、ここで失礼させてもらいます!」
ディック「な、何だと!?」


第4話
オーディター・ガール

〔戦域:海上〕

(東端で出撃準備)
セレーナ「哨戒機は何とか振り切れたみたいね」
アルバーダ「このまま逃げれば、ドンパチやらずに済む。 弾丸も心許なくなってきたしな」
セレーナ「ツアー・コンダクターが 気まぐれを起こすかもよ?」
アルバーダ「あり得るな。 トラベルじゃなく、トラブルが目的だし」
(セレーナ機に警告シグナル)
エルマ「セレーナさん、6時方向より パーソナルトルーパーらしき物体が接近中です!  地球連邦軍の識別信号を出しています!」
セレーナ「連邦軍のパーソナルトルーパー……」
サフィーネ「あら、お仲間かしら?」
セレーナ「私達と同じで、ラ・ギアスに招待されたのならね」
アルバーダ「だが、やって来た方向が気になる。 シュテドニアスの連中にろ獲された機体って 可能性もあるぜ?」
ガエン「……こんな所で油を売らず、 さっさとバルディアへ向かうべきだ」
シュウ「いえ、何者なのか興味があります。 相手の出方を見ましょう」
ガエン(何を悠長な……)
チカ「まもなく、こちらのレンジ内に入って来ます。 攻撃してくる素振りはないみたいですよ」
(中央南西よりにプファイルIIIが出現)
アルバーダ「あれは……量産型ヒュッケバインMk-IIだな」
エルマ「でも、頭部や肩部、背部の形状が違います。 改造機ではないでしょうか」
アルバーダ「推測してるってことは、該当データなしってわけね」
エルマ「はい」
ヨン「あれは……」
(グランゾンを指す)
ヨン「グランゾン……間違いないわ……!  なら、搭乗者は……!」
ヨン「それに、どうして地球連邦軍の機体が一緒に……?」
アルバーダ「どこの所属なんだ、あいつ?」
セレーナ「私じゃなく、向こうに聞いてみれば?」
アルバーダ「そりゃそうだ」
(プファイルIIIに通信)
ヨン「!」
アルバーダ「地球連邦軍第5特殊作戦PT部隊、 チーム・ジェルバのアルバーダ・バイラリン少尉だ。 そっちは?」
ヨン「私は地球連邦軍開発実験団、 第3人型機動兵器開発実験隊所属の テストパイロット、ヨン・ジェバナ少尉です」
アルバーダ「君みたいに若くて可愛い子がテスターとは意外だな。 俺の乗り心地も試してもらいたいもんだ」
ヨン「えっ?」
セレーナ「……アル、時間と手間を掛けて口説くとか 言ってなかったっけ?」
アルバーダ「ケース・バイ・ケースだっつーの」
セレーナ「軽いポリシーだったのね。 で、エルマ……データはあった?」
エルマ「連邦軍人型機動兵器開発実験隊は、 量産型パーソナルトルーパーやアーマードモジュールの 研究・開発・実験部署ですが……」
エルマSRX計画ATX計画の機体、 ゲシュテルベンとは違い、民間との共同ではなく、 軍独自で開発や実験を行っています」
セレーナ「ふ~ん」
エルマ「でも、ボクが保有しているデータによれば、 第3人型機動兵器開発実験隊は、 インスペクター事件時にMIAとなってます」
セレーナ「え? 何よ、それ?」
ガエン「どういうことだ?」
セレーナ「あの子の部隊、記録上じゃ行方不明になってるのよ」
サフィーネ「それ、訳ありって言葉じゃ済まないわね」
ガエン「ああ、怪しいな」
セレーナ(ガエンは他人のことを言えないと思うけどね)
ヨン「あの……もしかして、私の部隊のことを 疑問に思ってらっしゃいます?」
セレーナ「勘がいいわね、その通りよ」
ヨン「実は、私の部隊はMIA認定されているんですが、 それは表向きのことで……実際には特命を受け、 秘密裏に任務を遂行していたんです」
セレーナ「どうしてそんなことになったの?」
ヨン「機密に抵触するため、 詳しく申し上げられないんですが、 あのバルトールに関わっていて……」
アルバーダ「幻の次期量産主力機……人食い暴走マシンね。 俺達もやり合ったな」
ヨン「それで、対外措置として、 今の所は諸々なかったことに……」
アルバーダ「何だ、そりゃ。ひでえ話だな」
セレーナバルトール事件のとばっちりを受けたってわけ。 ふ~ん……」
ヨン「あの……私のアクセス・コードを使ってもらえれば、 その裏付けの一部がお分かりいただけるんですが……」
セレーナ「と言われても、ここはラ・ギアスだもの。 連邦軍のデータ・ベースにアクセスなんて 出来ないでしょ」
ヨン「そうでしたね……」
アルバーダ「この世界へ来たのは、お前さんだけか?」
ヨン「はい。宇宙で輸送艦からコンテナを降ろしていた時、 ラ・ギアスへ引き込まれてしまって……」
サフィーネ「その後、シュテドニアス軍に捕まり、 彼らから逃げて来たってわけね」
(南西端にシュテドニアス軍が出現)
ディック「地上人め、我らの情報を持って クリストフ・ゼオ・ヴォルクルスの下に 走るつもりか!」
ヨン「クリストフ……?」
シュウ「私のことですよ」
ヨン「!!」
シュウ「どうしました?  私が生きていたと知って、驚きましたか?」
ヨン「え、ええ……!」
チカ「言っときますけど、本物のご主人様ですからね」
ヨン「と、鳥が喋った!?」
チカ「これも言っときますが、 ロボットなんかじゃありませんから。 あたしはチカ、シュウ様のファミリアです」
ヨン「は、はあ」
ディック「ヨン・ジェバナ!  貴様をこのまま行かせるわけにはいかん!」
ヨン「あなた達と戦闘するつもりはありません。 見逃してもらえませんか?」
ディック「何を馬鹿な!  さては貴様、最初から我らの情報を得るつもりで 保護を受け入れたな!?」
ヨン「保護って…… 無理矢理捕まえられたに等しいんですけど……」
シュウ「……ヨン・ジェバナ少尉、 私の所へ来るつもりがあるのでしたら、 助けて差し上げますよ」
ヨン「ほ、本当ですか!?」
ガエン「シュウ、まだ地上人を引き込むつもりか……!?」
シュウ「教団から人員が派遣されないのなら、 現地調達するしかないでしょう?」
ガエン(ぬけぬけとそのようなことを……)
ヨン(マスター、渡りに船です……!  捨てる神あれば、拾う神ありです……!  道が開けてきました……!)
シュウ「どうですか、少尉?」
ヨン「は、はい、よろしくお願いします!」
アルバーダDCの関係者ならともかく、 シュウの誘いにあっさり乗るなんざ、物好きだな」
エルマ「むしろ、同じ連邦軍の所属であるボク達と 接触したかったのでは?」
セレーナ「そうね……」
シュウ「……シュテドニアスの皆さん。 ヨン少尉を見逃すというのであれば、 こちらも大人しく退きますが?」
ディック「クワイアー大佐の部隊に仕掛けておいて、何を言う!  貴様は我が軍に対し、弓を引いたのだ!  看過するわけにはいかん!」
サフィーネ「あれだけの戦力で私達と戦うつもり?  健気だこと」
ディック「連中を仕留めれば、大手柄だ! 昇進も夢ではない!」
サフィーネ「昇進どころか、昇天することになるかもね」
ディック「ほざけ! 各機、攻撃を開始せよ!」
シュウ「仕方ありませんね。では、お相手致しましょう」
(作戦目的表示)

〈vs ディック〉

[シュウ]

ディック「我が軍とラングラン軍の交戦地帯で 何をするつもりだ!?」
シュウ「ラ・ギアスに平穏を取り戻す……と言えば、 信じますか?」
ディック「誰がそのような戯れ言を!  むしろ、その逆だろうが!」
シュウ「それは過程に過ぎませんよ」
ディック「貴様、いったい何を企んでいる!?」

[サフィーネ]

サフィーネ「ふふっ、逃げるなら今の内よ?」
ディック「邪教の信徒風情が何を言うか!」
サフィーネ「あらあら、痩せ我慢しちゃって。本当は怖いんでしょ?  でも、安心して。快感に変わるから」

[ガエン]

ディック「ガディフォール……ラングランの者が クリストフに手を貸しているのか!?」
ガエン「それはどうかな」

[アルバーダ]

アルバーダ「同胞を見捨てるわけにはいかないんでな。 悪く思うなよ」
ディック「地上人め!  我らに敵対するのなら、容赦はせんぞ!」
アルバーダ「売られた喧嘩なんだけどな、これ」

[セレーナ]

ディック「地上人め、邪教の信徒に拐かされたか!」
セレーナ「入信したつもりはないんだけど、 こっちにも色々と事情があるのよね」

[ヨン]

ディック「よりにもよって、クリストフ側につくとは!  やはり、地上人などあてにならん!」
ヨン(こんな所で死ぬわけにはいかない…… マスターのためにも!)

[撃墜]

ディック「くううっ、機体が! 脱出する!」
(ディック機が爆発)

〈敵機全滅〉

エルマ「戦域内の敵機反応、全て消えました」
セレーナ「ちょっと弾を使い過ぎたわね……」
エルマ「どこかで補給を受けられるといいんですが」
セレーナ「私達の武器に合う弾薬が ラ・ギアスにあればの話でしょ」
ヨン「あの、皆さん……助けていただいて ありがとうございました」
アルバーダ「何、いいってことよ」
セレーナ「色々と話を聞きたいけど…… 場所を変えた方がいいわね」
ヨン「その前に……弾薬のことでお困りなら、 私にあてがあります」
セレーナ「え? それ、ホントなの?」
ヨン「はい。私と一緒に転移してきたコンテナの中に、 PT用の武器や弾薬、強化パーツが入っているんです」
ヨン「あと……私の部隊で預かっていた グルンガスト弐式の2号機も」
アルバーダ「グルンガスト!? 特機があるってのか!」
ガエン「特機とは何だ?」
アルバーダ「特殊人型機動兵器の略だ。 だいたい50メートルぐらいの大きさで、 俊敏さには欠けるが、火力と防御力が高い」
エルマ「グルンガスト弐式は、飛行形態に変形可能ですね。 キャリアーとして使えるかも」
アルバーダ「ああ。手に入れたら、先々楽になるぜ。 このコンテナはどこにあるんだ?」
ヨン「……先程の部隊の母艦、 シュテドニアス軍の移動要塞内です」
アルバーダ「やれやれ、そういうオチかい」
ガエン「移動要塞の数は?」
ヨン「4です」
アルバーダ「うえっ、マジかよ」
サフィーネ「一苦労じゃ済まなさそうねぇ」
ガエン「1隻ならまだしも、4隻のソディウム級移動要塞に 俺達だけで仕掛けろと言うのか」
ヨン「そこで、あの……厚かましいご提案なんですが……」
シュウ「……グランゾンのグラビトロンカノンを 使うのですね」
ヨン「え? は、はい」
ヨン(さすがに鋭い……私、何も言ってなかったのに)
アルバーダMAPWで一気に移動要塞を沈めるってか?  だけど、今は使えねえんだろ?」
シュウ「他の武器に用いているエネルギーをチャージし、 グラビトロンカノンに回せば、使用可能です」
シュウ「ただし、発生させられるGは弱くなり、 移動要塞を圧壊させることは出来ません。 しかし……」
ヨン「動きを止めることは可能なんですね?」
シュウ「ええ、 あなた方で上手く陽動していただけるのであれば」
チカ「ちょ、ちょっと待って下さいよ、ご主人様!  チャージを始めてから発射するまで、あたし達は 移動ぐらいしか出来なくなりますよね!?」
チカ「そんなの、敵から見たら格好の的ですよ!」
サフィーネ「あんたはともかく、 シュウ様とグランゾンは私が守るわよ」
チカ「……あの、あたしも一緒に乗ってるんですけどね」
ガエン「それ以前に……何故、地上人のために 危険を冒してそんなことをする必要がある?」
シュウ「もちろん、私達の目的を果たすためですよ」
ヨン(目的……?)
シュウ(後々のことを考えれば、 彼らの戦力を増強しておいた方が いいですからね……)
ガエン「弾薬が残り少ないのなら、魔装機の手持ち武器を 使えるようにすればいいだろう?」
アルバーダ「そりゃサイズが合えば、剣とかは何とかなるけどさ。 こっちにとっちゃ、ユニバーサル・コネクターなしの 銃火器は、何かと調整が面倒なんだよ」
セレーナ「それとも、私達がすぐ乗れて、高性能で、 火力のある魔装機を2機用意してくれる?」
チカ「う~ん……そんなの、どこかから かっぱらってくるしかないですねぇ」
アルバーダ「だったら、目先のお宝を分捕った方がいいだろうが」
ガエン「そもそも、貴様ら地上人の手を借りずとも……」
シュウ「自信がなければ、 あなたは参加しなくても結構ですよ」
ガエン「自信ではない、リスクの話をしている」
シュウ「私達の計画は、危険を冒さずして 達成することは出来ません」
ガエン「地上人の弾薬を奪取することと、 ヴォルクルス様の復活に密接なつながりはないと 言っているんだ」
シュウ「何故、私がアルバーダ達の力を必要としているか…… 今のあなたには理解できないでしょうね」
ガエン「………」
アルバーダ「シュウ、あんたさえ良けりゃ、 こっちにとってはありがたい話なんだがな」
セレーナ「確かにリスキーだけど、背に腹は代えられないしね」
シュウ「わかりました。では、早速行きましょうか。 あまり時間を置かない方がいいでしょうから」
アルバーダ「ああ、わかったぜ」
シュウ「ガエン、どうしても賛同できないと言うのであれば、 ここで待っていて下さい」
ガエン「いや……俺も行く」
ガエン(貴様から目を離すわけにはいかんのでな)
ヨン(……シュウ・シラカワ……意外にいい人……?)
ヨン(でも、油断は出来ない…… そうですよね、マスター……)


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