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バゴニアの傭兵 ~ 第3話 ~

〈ガーリオン・カスタム撃墜〉

トーマス「ガ、ガッデム! こんな所で死ねるか!  ベイルアウトだ!!」
(ガーリオン・カスタムが爆発)

〈敵機全滅〉

チカ「ご主人様、敵機の反応は全て消えました」
シュウ「もうここに用はありません。 このままラングラン方面へ向かいましょう」
アルバーダ「……シュウ、あんたに聞きてえことがある」
シュウ「ヴォルクルス様の件ですね?」
アルバーダ「ああ。 余計な詮索はしねえつもりだったが、 ああいう話を聞いちまった以上はな」
シュウ「いいでしょう。ラングラン方面へ向かう 途中にあるバグレ群島であれば、落ち着けます。 そこでお話ししましょう」
アルバーダ「わかった」

《ヌエット海 バグレ群島》

[ヌエット海 バグレ群島 海岸]

アルバーダ「あんた達が邪神を崇める教団の一員だってのは、 本当なのか?」
サフィーネ「私達信者の前で、ヴォルクルス様を 邪神呼ばわりして欲しくないわね」
アルバーダ「そいつぁ悪かったな。 だが、優しい女神様とかじゃねえんだろ?」
サフィーネ「あら、女神なら目の前にいるじゃない」
アルバーダ「あんたはむしろ女王様だろうが」
サフィーネ「うふふ、それでもいいわよ♥」
ガエン「……貴様らは、神という存在を 素直に受け止めるのだな」
アルバーダ「まあ、地上にも神はいるからな。見たことはねえが」
セレーナ「色んな宗教があるし、 神様を信じている人間はたくさんいるからね」
ガエン「概念ではない、実在する神の話だ」
アルバーダ「実在、ねえ。俺達は地上でアインストっていう モンスターと戦ったことがある。その中の “ヘッド”って奴は、悪魔みてえな風体だった」
アルバーダ「だから、この世界に邪神もどきがいるって言われても、 真っ向から否定はしねえ」
ガエン「……言っておくが、ヴォルクルス様は邪神ではない」
アルバーダ「じゃあ、どういう奴なんだよ?」
シュウ「ヴォルクルス様は全てを破壊し、再生することによって この世界を救済される神です」
アルバーダ「全てを破壊するだと?  おいおい、典型的な邪神じゃねえか」
シュウ「主観の相違ですね。 破壊と創造を司る神々は、地上世界の 神話や教典でも散見できますよ」
アルバーダ「じゃあ、ヴォルクルスも 神話とか伝説上の存在なんじゃねえか?」
シュウ「ラ・ギアスに住まう多くの者は、 ヴォルクルス様の存在に懐疑心を抱いていますが……」
ガエン「………」
シュウ「間違いなく実在します」
アルバーダ「あんた、実際に見たことがあんのかよ?」
シュウ「いえ……しかし、ヴォルクルス様のお力は グランゾンに宿っています」
アルバーダ(……鋼龍戦隊の報告書じゃ、 グランゾンは短時間でネオ・グランゾンに “変貌”したと書かれていた……)
アルバーダ(もしかして、ヴォルクルスの力で そうなったとでも言うのか?)
セレーナ「サフィーネとガエンは ヴォルクルスを見たことがあるの?」
サフィーネ「いえ」
ガエン「……ない」
アルバーダ「何だ、結局誰も見たことがねえのかよ」
セレーナ「……ねえ、ヴォルクルス教団って、 どれぐらいの規模なの?」
シュウ「正確な人数は私も掴んでいませんが、 最低でも500万人はいるでしょう」
アルバーダ「ほ~う、結構な規模だな」
シュウ「そのネットワークは驚異的であり、 各国も無視することは出来ません」
サフィーネ「そして、大司教であらせられるシュウ様が動けば、 シュテドニアスやバゴニアも警戒せざるを得ないのよ」
サフィーネ「私達だけでなく、 教団も動き出すかも知れないっていう 猜疑心に駆られてね」
セレーナ(なるほど……。 シュウとグランゾンは、私が思ってたより 遥かに大きな餌だったわけね)
アルバーダ「それで、大司教様の目的ってのは何だ?」
シュウ「各地に眠るヴォルクルス様の分身を 実体化させることです。そうすれば、 この世界はさらなる混乱に彩られ……」
シュウ「ヴォルクルス様の真の復活が容易となります」
セレーナ(邪神の復活……完全に悪役のノリね)
アルバーダ「ヴォルクルスの分身とやらは、 どうやって実体化させるんだ?」
シュウ「それは……いずれわかりますよ」
セレーナ(後でこっそりチカに聞いたら、 ペラペラ喋りそうだけどね)
アルバーダ「……何にせよ、俺達はこのラ・ギアスを破滅に導く 手伝いをしてるってわけだ」
シュウ「怖じ気づいたり、罪悪感に苛まれるのであれば、 私の下から去っていただいても構いませんよ」
ガエン(何を今更……引き込んでいなければ、 それで終わっていた話を)
アルバーダ「とか言って、後ろからズドンか?  口封じのためによ」
シュウ「フッ……そのようなことはしませんよ」
アルバーダ(だが、こいつは南極でしでかしやがった。 それで、ジェシカは……)
シュウ「ともかく、以後どうするかについては、 あなた達で話し合って決めて下さい」
アルバーダ「ああ、そうさせてもらうぜ。 行くぞ、セレーナ」
セレーナ「うん……」
(足音・アルバーダとセレーナが立ち去る)
チカ「……ご主人様、 あたしが様子を探ってきましょうか?」
シュウ「その必要はありませんよ」
サフィーネ「でも、さすがにテンションは下がったようですわね」
ガエン「こちらの目的をいつまでも隠し通せるわけがない。 あの二人の反応は予測できたことだ」
ガエン「だから、俺は最初から部外者を…… ましてや、地上人を同行させるのは反対だったのだ」
シュウ「心配せずとも、 彼らは今後も私達に協力してくれますよ」
ガエン「何を根拠にそのようなことを……」
シュウ「私の勘……とでも言っておきましょうか」
ガエン「冗談ではない。 あの連中が俺達の目的を知った上で去ると言うのなら、 それなりの処置を施さねばなるまい」
シュウ「フッ……杞憂ですよ」

[ヌエット海 バグレ群島 海岸]

アルバーダ「……エル公は?」
セレーナ「見張りをしてもらってる。 チカが盗み聞きをしに来るかも知れないしね」
アルバーダ「確かに、あいつならやりかねんな」
セレーナ「それで……このまま悪役一直線ってわけ?」
アルバーダ「チーム・ジェルバの任務の全てが いわゆる正義だったわけじゃねえさ」
セレーナ「ま、そうだけどね……」
アルバーダ「……迷いはあるか?」
セレーナ「そう言うアルはどうなの?」
アルバーダ「任務は任務さ。そこにブレはねえ」
セレーナ「じゃあ、どうして返事を保留したの?」
アルバーダ「これからは行く先々、敵ばかりだろうからな。 一応、お前の考えを聞いておこうと思ったのさ」
セレーナ「……正直言って、 この世界の運命を変えかねないってトコに 引っ掛かりはあるけど……」
セレーナ「ミッション・デビルを遂行し、 地上に帰還することが第一だと考えてるわ」
アルバーダ「………」
セレーナ「でも、ミッションの成功は、 ヴォルクルスの復活阻止につながるかも知れない……。 それで気持ちの整理をつけとく」
アルバーダ「お前……以前と違って、いい方向に変わったな」
セレーナ「シンフォーニア隊長も そう言ってくれたことがあるけど……」
セレーナ「私が変われたのは、ジェルバのみんなのおかげよ」
アルバーダ「しおらしいことを口にするじゃねえか」
セレーナ「時に変化球を投げると、 簡単に男はオチるって言うからね」
アルバーダ「危ねえ、危ねえ。 異世界に二人ってシチュエーションも合わせて、 騙される所だったぜ」
セレーナ「……でも、本音よ。 あの時、あなた達に投降して…… 隊長がチームに引き入れてくれなかったら……」
アルバーダ「………」
セレーナ「アルの本音は?」
アルバーダ「俺はな……シュウの本当の目的が何なのか、 見極めようと思ってる」
セレーナ「目的って……ヴォルクルスの復活でしょ」
アルバーダ「それ以外にも、何かあるような気がするんだよ」
セレーナ「………」
アルバーダ「俺はな……南極事件の顛末を聞いた時、 あの男は悪人だと思った」
アルバーダ「だが、鋼龍戦隊の報告書を読んで、 その認識が少し揺らいだ。真意はどうあれ、 何度か連中の手助けをしたんだからな」
セレーナ「でも……結局、シュウは彼らと敵対した。 そして、今度は邪神の復活を目論んでる」
アルバーダ「ああ、善悪で簡単に割り切れる奴じゃねえ。 だから、お偉方と同じようにあいつの真意を 知りたくなった。個人的にもな」
セレーナ「……彼に恨みはないの?」
アルバーダ「ないと言えば、嘘になる。 だが、こういう稼業だ……逆に俺達も 色んな連中から恨まれてるだろう」
アルバーダ「復讐は何も生み出さねえ……。 俺は、そう思うことで気持ちの整理をつけてんのさ。 今の所はな」
セレーナ「……そんな風に過去を振り切れるアルは強いよ……」
アルバーダ「そうじゃねえ。 自分の意志で、完全に過去を捨て切れる 人間なんざ、いやしねえよ」
アルバーダ「誰だって、何かに縛られて生きてんのさ。 例えば、いずれは死ぬ運命……とかな」
セレーナ「………」
アルバーダ「あのシュウ・シラカワだって、死を乗り越えても ヴォルクルスという存在に縛られてる……」
アルバーダ「大事なのは、どう割り切るか…… 心の拠り所を、どう設定するかだ」
セレーナ「任務は任務、人生は人生…… 隊長がいつも言ってることね」
アルバーダ「……任務と自分の人生を完全に切り離すことなんて 出来ねえ。しかも、俺達の稼業は他人の人生に 斬り込むことが多々あるからな」
アルバーダ「だけど、そいつは隊長だってわかってるさ。 だからこそ、そうやって割り切って、 任務を成し遂げる……」
アルバーダ「でなきゃ、 俺達の存在意義がなくなっちまうからな」
セレーナ「それも呪縛よね……」
アルバーダ「そこはモットーって言い換えるんだよ。 ま、どのみち、完全な自由なんてものはあり得ねえ」
アルバーダ「死の運命から逃れられたら、もう人間じゃねえし…… この世のしがらみを全て捨て去っちまったら……」
アルバーダ「そいつぁ、存在しねえってことと同義だからな」


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