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紅蓮のサフィーネ ~ 第2話 ~

<味方機が平原を疾走している>

アルバーダ「それにしても、 ここが地底世界だなんて思えねえなぁ」
セレーナ「そうね…… 止まってる太陽が、まだ馴染まないけど」
エルマ「あの、セレーナさん……お腹空いてません?」
セレーナ「何よ、突然」
エルマ「さっきからお腹の音…… ボクのセンサーで拾ってますよ」
セレーナ「あらら?  レディに対して言ってくれるじゃない」
エルマ「ボクのデータの中のレディは、 お腹なんて鳴らしません!」
セレーナ「わかった、わかった。 じゃあ、後で何か作ってよ」
エルマ「と言われても、食材は母艦にあるので……」
アルバーダ「なら、後で俺のカップ・フィデウアを分けてやるぜ。 アルファ米を入れりゃ、ミックス・パエリアの 出来上がりだ」
エルマ「駄目ですよ、そんなの!  ボクがいる限り、アルバーダさんのものぐさ料理は 絶対に認めませんから!」
アルバーダ「何言ってんだ、日本にもソバメシっていう 食い物があってだな……」
ガエン「……お前達、いい加減にしろ。 先程の戦闘でシュテドニアス軍は警戒網を 展開したはずだ。敵はいつ現れるかわからんぞ」
アルバーダ「OK、OK。悪かったよ」
セレーナ「真面目なのね、ガエン君は」
ガエン「貴様らの緊張感が足りんだけだ」
チカ「……何か気楽ですよねぇ、あの二人。 自分達が置かれている状況を ちゃんと把握してるんでしょうか」
シュウ「経験を積んでいるが故の余裕……だといいのですが」
チカ地上人……しかも連邦軍の軍人なら、だいたいは ご主人様を見て逃げるか、襲い掛かってくるかの どっちかだと思いますけど……」
チカ「いくら地上へ帰るためとは言え、 あたし達についてくるなんて、物好きですよね」
シュウ「別の目的があるのかも知れませんよ」
チカ「目的って……ご主人様絡みの?」
シュウ「それより、精霊レーダーを」
チカ「えっ? あっ、この反応は!」
シュウ「シュテドニアス軍の魔装機…… 思っていたより、動きが早かったですね」


第2話
紅蓮のサフィーネ

〔戦域:荒地〕

(中央で出撃準備。敵機が出現)
エルマ「セレーナさん、このままだと 完全に囲まれてしまいますよ!」
セレーナ「やれやれ、ランチどころじゃないわね」
ガエン「先程の戦闘が仇になったな、シュウ」
シュウ「ここはシュテドニアス領内です。 いずれはこうなっていましたよ」
アルバーダ「さあて…… 逃げるか、迎え撃つか、どっちだ?」
シュウ「その両方です。 突破口を開き、戦域から離脱しましょう」
アルバーダ「わかったぜ」
セレーナ「行くわよ、エルマ!」
エルマ「ラジャ!」
(作戦目的表示)

〈敵機10機以上撃墜〉

(セレーナ機に警告シグナル)
エルマ「セレーナさん、 魔装機らしき物体群が接近中です! 数は9!」
セレーナ「追撃の手を緩めるつもりはないみたいね……!」
(北東端に魔装機が9機出現)
シュウ「フッ、このネオ・グランゾンに 数で挑んだ所で……」
(セレーナ機に警告シグナル)
エルマ「セレーナさん、さらに接近してくる物体が!」
セレーナ「まだ増援が来るの!?」
エルマ「今度は1機だけです!」
(北西端にウィーゾルが出現)
アルバーダ「何だ、ありゃ?」
ガエン(あの機体は……)
サフィーネ「シュウ様、お手伝い致しますわ」
シュウ「すみませんが、記憶が欠けているもので…… どなたか思い出せないのですが」
サフィーネ「あら。 そう言えば、ルオゾールがそのようなことを……」
サフィーネ「でも、私のことまでお忘れになるなんて、 あんまりですわ。あなたと過ごしたあの甘い夜のことも 覚えていらっしゃらないの?」
チカ「サフィーネ様!  いい加減なことを言わないで下さい!」
サフィーネ「あら、チカ……いたの? でも、人のことが言えて?  どうせあなたのことだから、貸してもいないお金を 返してくれ、とか言ったんじゃない?」
チカ「そ、そそそ、そんなことないですっ!」
シュウ「サフィーネ……紅蓮のサフィーネ?」
サフィーネ「思い出していただけましたの?」
シュウ「何となく、ですが」
アルバーダ「……どうやら、 あの色っぽいセニョリータは味方らしいな」
エルマ「服装の趣味がセレーナさんと似ているような……」
セレーナ「悪くないわね。 仲良くなれば、服を借りられるかも」
エルマ「セレーナさんの胸が入るような服は 限られると思いますけどね」
セレナ「エルマのえ・っ・ち」
エルマ「ボ、ボクはサボットとして、 セレーナさんの体型管理もしてるからですよ!」
サフィーネ「何なの、あなた達は?  その機体、地上の物よね?」
シュウ「彼らは、訳あって協力してもらっている地上人です」
サフィーネ「そうですか……そちらのガディフォールは?」
ガエン「………」
シュウ「彼はガエン……教団本部から派遣された者です」
サフィーネ(ガエン……?  名前はともかく、あの坊やは見たことないわね)
アルバーダ(今、教団って言ったな。 あいつら、宗教関係者なのか?)
シュウ「では、サフィーネ……ここを突破しますよ」
サフィーネ「わかりましたわ」
(作戦目的表示)

〈初戦闘〉

[サフィーネ]

サフィーネ「シュウ様の行く手を阻もうだなんて、 百万年早いわよ」
サフィーネ「この紅蓮のサフィーネが たっぷりとお仕置きしてあげる。 さあ、盛大にお鳴き!」
エルマ「な、何なんですか、あの人……」
アルバーダ「そっちの気がある奴には、たまらんかもな」
セレーナ「え? アルって、もしかして……」
アルバーダ「馬鹿言え、俺はノーマルだ」
エルマ「料理の好みはアブノーマルですけどね」
アルバーダ「お前、1億5千万人のB級グルメ好きを 敵に回すことになるぞ」
エルマ「1億5千万人って…… それ、どこの統計データなんですかっ!」

〈敵機全滅〉

シュウ「……終わりましたね」
サフィーネ「また追手が掛かるかも知れません。 速やかにこの場から離れましょう。 落ち着ける所までご案内致しますわ」
シュウ「わかりました。では、お願いします」

《シュテドニアス連合国領内》

(夜の渓谷)

アルバーダ「……やれやれ、やっと休憩か」
セレーナ「今日はここで一晩明かすのかしら?」
シュウ「ええ、そのつもりです」
セレーナ「じゃ、アル。カップ・フィデウアを分けて。 今、お腹でパルマが鳴らせるぐらいなのよ」
エルマ「駄目ですよ、セレーナさん」
セレーナ「食べられりゃ、何でもいいわよ。 この際、細かいこと言いっこなし」
エルマ「いえ、この先は何があるかわからないんですから…… 長期保存可能な食品はとっておかないと」
セレーナ「言われてみれば、その通りね」
アルバーダ「近くに川があったな。魚でも釣ってくるか」
エルマ「ここは地上じゃありませんから、 食物の可食判断はボクがやります。 周辺の見回りついでに食材を探してきますよ」
(エルマが立ち去る)
サフィーネ「ふ~ん、役に立つお供を連れてるわね」
セレーナ「本格的な料理も出来るのよ、あの子。 それに、お姉さんキャラ登場で 張り切ってるみたい」
アルバーダ(お姉さん……つーか、女王様じゃねえの?)
サフィーネ「ふふ、可愛い子ね。 うるさいだけの誰かさんとは大違いじゃない」
チカ「失礼な! あたしだって、その気になれば、 料理の一つや二つ……」
アルバーダ「焼き鳥とか?」
チカ「そうそう……って、 縁起でもないこと言わないで下さい!」
アルバーダ「はは、悪かった、悪かった」
サフィーネ「……それじゃ、改めて自己紹介するわね。 私はサフィーネ・ゼオラ・ヴォルクルス。 シュウ様の忠実な部下よ♥」
セレーナ(ヴォルクルス…… こないだ、チカが言ってたヴォ何とかのことかしら?)
アルバーダ「お手柔らかに、セニョリータ。 俺はアルバーダ・バイラリン少尉だ」
セレーナ「セレーナ・レシタールよ。 とりあえず服の趣味は合いそうね、私達」
サフィーネ「うふふ、そうね。 そのトゲトゲ、とってもセクシーよ」
アルバーダ「サフィーネ、あんたに聞きたいことがある。 俺達みたいな地上人を……チーム・ジェルバの マークを付けた機体を見たことがあるか?」
サフィーネ「いえ、ないわ」
アルバーダ「そうか……」
サフィーネ「ところで……あなた」
ガエン「……俺か?」
サフィーネ「ええ。あなた、どこの所属?」
ガエン「答える必要はない」
サフィーネ「あら、あなたも教団の一員でしょ。 それに……ガエンって、偽名よね?」
ガエン「………」
セレーナ「え? どういうこと?」
サフィーネ「ガエンは、ラングラン神話に出てくる 裁きの神の一柱……普通、そんな名前を付けないもの」
ガエン「……本名は知らん。 幼い頃の記憶がないのでな」
セレーナ「ふうん……」
ガエン「同情など無用だ」
セレーナ「そうじゃないわよ。 ただ、ちょっと親近感を感じてね」
ガエン「何故だ?」
セレーナ「ナイショ。女の過去は詮索するものじゃないわよ」
アルバーダ(あいつ……セレーナと同じってことか……)
サフィーネ(ま、所属は教団の暗殺実行部隊…… シュウ様と私の監視役として 送り込まれてきたんでしょうね)
サフィーネ「それで、ガエン…… あなた、どうして靈装機じゃなく、 ガディフォールに乗っているの?」
ガエン「あれはろ獲した機体だ。 ラングランで行動するのなら、連中の量産機を 使った方が好都合だからな」
チカ「目立たないってんなら、意味ありませんよ。 グランゾンやサフィーネ様のウィーゾルが 一緒なんですから」
ガエン「単独で行動する場合の話だ。 それより、シュウ……明日の行程についてだが」
ガエン「遠回りしてでも、シュテドニアス軍に 発見されにくいコースを進むべきだ」
シュウ「遠回りには賛成です。私はヌエット海を渡り、 バゴニア近辺を調べてみようと思っています。 何か動きがあるきも知れませんので」
ガエン「待て。 海方面へ向かえば、シュテドニアス軍と 遭遇する確率が上がるぞ」
シュウ「構いません。 彼らの力を少しでも落としておきたいので」
シュウ「力のバランスが取れてこそ、 混乱は長く続きますからね」
サフィーネ「ですが、バゴニアの領海内に侵入すれば、 バゴニア軍とも……」
シュウ「私達の目的を果たすためには、混乱が必要なのです。 そうでしょう、サフィーネ、ガエン?」
ガエン「………」
サフィーネ「……わかりました。 シュウ様がどのような道を歩まれても、 このサフィーネ、命ある限りお供致しますわ」
シュウ「その言葉、胸に刻んでおきましょう」
セレーナ(混乱を続行させて…… その後に何をやるって言うの、こいつら……?)


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