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白騎士の心 ~ 第37話 ~

《クロガネ艦橋》

エイタ「艦長代理、 まもなく本艦は月宙域に入ります」
テツヤ「了解した。 周辺の状況は?」
エイタ「アインスト、 インスペクター共に反応ありません」
レーツェル「アインストはともかく、 ムーンクレイドルとヴィガジを 失ったインスペクターが……」
レーツェル「何の動きも見せないのは 不自然だな」
エイタ「彼らはホワイトスターで足止めを 食らってるんじゃないでしょうか」
テツヤ「アインストの攻撃が 激しくなったせいでか?」
エイタ「ええ……」
レーツェル「地上では アインストの出現頻度が 低下しつつあると聞く……」
レーツェル「彼らはホワイトスターに 狙いを絞りつつあるのかも知れんな」
テツヤ「しかし、 いったい何のために?」
レーツェル「……ヴィレッタ大尉、 何か見当はつくか?」
ヴィレッタ「ホワイトスターを 自分達の拠点にする、と言うのが 妥当な線でしょうけど……」
ヴィレッタ「現状の彼らの攻撃方法に 大きな疑問が残るわ」
レーツェル「うむ…… ホワイトスター内部へ大量のアインストを 転移させれば事は済むからな」
ヴィレッタ「にも拘わらず、 彼らが未だその手段を使っていないと 言うことは……」
ヴィレッタ「何かを 待っているのかも知れない」
テツヤ「何か……?」
レーツェル「刻か……それとも我々か。 いずれにせよ、真相はホワイトスターへ 行かねばわからんか……」
(通信)
エイタ「艦長代理、合流ポイント上に ヒリュウ改を確認しました」
テツヤ「半速前進。先方と合流するぞ」

《PT格納庫》

カチーナ「……そうか。 アーチボルドとのケリがつけられたか」
ライ「ええ。 そして、地上側のシャドウミラーとも」
カチーナ「こっちもムーンクレイドルで ヴィガジを倒した。メキボスの方は 逃げちまったがな」
ユウキ「逃げた……?」
カチーナ「ああ。 あたしらが来たのを見て観念したのか、 あっさりとな」
ユウキ「では、月面基地や月面都市にいた インスペクターのバイオロイドが 活動を停止した理由は?」
マサキ「連中のネットワークに ウイルスを仕込んだ奴がいたのさ」
ライ「ウイルス?」
マサキ「ああ…… 多分、シュウの仕業だ」
ライ「……!」
マサキ「あいつのことだ、俺達のために やったわけじゃねえだろうが……」
マサキ「結果的にインスペクターは 月を失うことになった」
カチーナ「素直に喜べねえが、 これで奴らの足場は崩れたってわけだ」
ライ「では、残る敵は……」
ユウキ「ホワイトスターにいる者達と アインストシリーズか」

《ブリーフィングルーム》

ブリット「そうか…… お前達の姉さんは……」
ラトゥーニ「……」
クスハ「そんな……」
アラド「けど…… いつまでも悲しんではいられません」
アラド「姉さんのことを 忘れないためにも、これからの戦いで 生き残らなきゃ……」
ゼオラ「そして……姉様の分も 生きていこうって決めたんです」
アイビス「そうだよ、ゼオラ……」
アイビス「そうすれば…… ゼオラ達の心の中で あの人は生きていける……」
アラド「それで……あの…… エクセレン少尉は?」
ツグミ「少尉は…… 私達の前に敵として現れたわ……」
アラド「え!?」
アイビス「あたし達が ストーンサークルに行った時、 アルフィミィと一緒に……」
ゼオラ「も、もしかして、 アインストに操られて……!?」
アイビス「それだけじゃない……」
ラトゥーニ「え……?」
クスハ「アルフィミィは エクセレン少尉が純粋な存在に 戻ったと言って……」
ラトゥーニ「純粋な存在……?」
ゼオラ「ど、どういうことなんです?」
ツグミ「わからないの。 確かなのは、今のエクセレン少尉が 私達にとって敵だと言うこと……」
アラド「……」

《ブリーフィングルーム》

カイ「各作業が終わり次第、 我々はL5宙域のホワイトスターへ 向かう」
カイ「その前にキョウスケ…… お前とエクセレンについての話を 詳しく聞かせてもらいたい」
キョウスケ「……」
カイ「そこからお前達二人の共通点…… そして、アインストとの関連性が わかるかも知れんからな」
キョウスケ「……了解です」
キョウスケ「おれとエクセレンの 共通点……そして、アインストの声が 聞こえるようになった理由……」
キョウスケ「それらについて 色々考えた結果、シャトルの墜落事故 ではないかと思います」
イルム「あの事故か……」
レーツェル「どのような事故だったのだ?」
ゼンガー「キョウスケが 伊豆基地に配属される前……」
ゼンガー「士官候補生達が 乗ったシャトルが大気圏突破直後に 爆発炎上し、墜落……」
ゼンガー「生存者はわずか2名という 大惨事となった」
レーツェル「その生存者が キョウスケ中尉とエクセレン少尉か」
ゼンガー「ああ、 連邦軍の一部では有名な話だ」
イルム「伊豆にいた俺達の間でも、 えらく運の強い新人が来ると 話題になりましたからね」
ヴィレッタ「……事故の原因は?」
イルム「機体に不備があったせいだと 聞いてますが……」
ギリアム「……事実は違う」
イルム「!」
カイ「調べたのか、ギリアム?」
ギリアム「ええ。 ストーンサークルの件が気になり……」
ギリアム「俺の方でも キョウスケ中尉とエクセレン少尉の 経歴について調査したのです」
レーツェル「その結果、 シャトル事故が引っ掛かったのか」
ギリアム「ああ」
ヴィレッタ「それで、事実とは?」
ギリアム「……あの事故は シャトルに何者かが衝突して 引き起こされたものだったようだ」
キョウスケ「!」
ゼンガー「何が衝突したのだ?」
ギリアム「資料によれば……あの当時、 各地に出没していたエアロゲイターの 偵察機だと推測されている」
ゼンガー「推測? 何故だ?」
ギリアム「それは……衝突した物体の 破片が回収されなかったからだ」
キョウスケ「……」
ヴィレッタ「不自然な話ね」
ギリアム「ああ。レーツェルが初めて バグスと接触して以来……」
ギリアム「こちらで撃墜…… あるいは墜落したエアロゲイター機の 破片は回収されていたからな」
キョウスケ「……」
ギリアム「そして……不自然な点は 破片の件だけではなかった」
ギリアム「あれだけの事故にも拘らず、 キョウスケ中尉とエクセレン少尉は 生きていたばかりか……」
ギリアム「彼女に至っては、 焼け焦げどころか、身体や衣服に 何の損傷もなかったという」
キョウスケ「……!」
イルム「そいつぁ、運が良かったって 言葉だけで片づけられはしないな」
ヴィレッタ「キョウスケ中尉、あなたは?」
キョウスケ「……おれは 病院送りになりました。 重傷ではありませんでしたが……」
ヴィレッタ「事故の瞬間のことは?」
キョウスケ「目の前が 爆煙で覆われた時……おれは 隣にいたエクセレンをかばった……」
キョウスケ「そこから助け出されるまでの 記憶はない……」
ギリアム「……」
キョウスケ「いや……あの時、 エクセレンは致命傷を負っていた」
カイ「何だと……?」
キョウスケ「だから、 無傷であったはずがない……」
ギリアム「……」
ギリアム「もしかしたら、 シャトルに衝突したのは エアロゲイターではなく……」
(アラート)
ギリアム「!」
ユン「本艦へアンノウンが接近中!  総員第一種戦闘配置!」
ユン「繰り返す!  本艦へアンノウンが接近中!  総員第一種戦闘配置!」
レーツェル「アンノウンだと?」
キョウスケ「まさか……!?」


第37話
白騎士の心

〔戦域:月周辺宙域〕

(クロガネとヒリュウ改が南端に出現)
エイタ「アンノウン、 依然本艦へ接近中!」
テツヤ「識別は!?」
エイタ「そ、それが……目標は 特殊な力場に包まれているらしく、 確認できません」
テツヤ「何だと……!?」
ショーン「いずれにせよ、 現状でアンノウンと言えば、 アインストの可能性が高いですな」
レフィーナ「ええ。 迎撃機を出撃させましょう」
(アルトアイゼン・リーゼが出撃)
ショーン「おや、 あれはキョウスケ中尉…… 随分と迅速な対応で」
レフィーナ「いえ、あの…… まだ命令を出していないんですけど」
ショーン「では、無断出撃ですな」
カイ「どういうつもりだ、中尉!?  何故、勝手に出撃した!?」
キョウスケ「処罰は後で受けます。 しかし、今は……」
カイ「今は? 何だ!?」
ブリット「キョウスケ中尉、 もしかして……!」
キョウスケ「ああ、 あいつが来ている……!」
(ライン・ヴァイスリッター(味方)が北端に出現し、戦艦の方へ移動)
アヤ「あ、あれは!」
ライ「ヴァイスリッター……なのか?」
(通信)
ユン「!?」
ユン「艦長、ヴァイスリッターから 通信が入ってきています!」
レフィーナ「すぐにつないで下さい!」
エクセレン「お待たせ!  エクセレン・ブロウニング、 ただいま帰還致しました~!」
ラミア「エクセ姉様……!」
ブリット「帰還って…… 少尉、元に戻ったんですか!?」
エクセレン「んふふ~、 心配かけてごめんね、ブリット君」
クスハ(でも……あの感じは……)
マイ(何かが違う……)
キョウスケ「……」
タスク「エクセ姐さん、 今まで何やってたんスか!?  心配してたんスよ!」
エクセレン「色々あるのよ、色々とね。 大人の事情……ってやつ?  ね、キョウスケ」
キョウスケ「………」
アイビス「エクセレン少尉、 相変わらずみたいだけど……」
マイ「でも、あれは……」
アヤ「何かの念が…… 彼女にまとわりついている……?」
マイ「そう……大きな念……。 人ならざるモノの……」
エクセレン「ん~、 確かにヴァイスちゃんはちょっと 変わっちゃったけど……」
エクセレン「私に そういうのは憑いてないわよん?」
ギリアム(だが……この違和感は何だ?)
エクセレン「とにかく、 早いとこ着艦させてくれません?」
ユン「艦長……」
レフィーナ「……」
ショーン「疑いたくはありませんが、 事情が事情ですからな」
ショーン「今はヴァイスリッターを 着艦させぬ方がいいでしょう」
レフィーナ「……ええ。 エクセレン少尉、すみませんが 先に機体を調べさせてもらいます」
エクセレン「いやん、 別に怪しい所はありませんってば」
キョウスケ「……」
エクセレン「ねえ、キョウスケ。 あなたからも言って」
キョウスケ「お前…… エクセレンじゃないな」
アラド「え!?」
エクセレン「ちょ、ちょっとぉ…… 冗談きっつくない?」
キョウスケ「普段はあんな調子でも…… あいつはこんな時に軽口を 叩くようなことはしない」
キョウスケ「そして、お前は何かが違う。 それだけは……確実だ」
エクセレン「……」
エクセレン「もう…… キョウスケったら……。 そ……んなこと言わ……な……」
キョウスケ「……ちっ」
(ライン・ヴァイスリッター(敵)からエネルギーフィールドが戦艦へ)
レフィーナ「!!」
テツヤ「な、何だ!?」
エクセレン「戦艦のハッチは 塞いダ……コれで出撃でキマい…… 地球人……!」
テツヤ「くっ! 状況知らせ!」
エイタ「本艦とヒリュウ改の周辺に 強力なエネルギーフィールドが発生!」
エイタ「本艦は身動きが取れません!  格納庫のハッチも開放不能です!」
リョウト「そ、そんな……!」
リオ「ハッチが開かなきゃ、 出撃できないわ!」
カーラ「もしかして、 このまま缶詰なの!?」
カチーナ「開かねえドアは ブチ破りゃあいいんだよ!  ブリッジ! ハッチを壊して出るぞ!」
ユン「駄目です! 外に出れば、 本艦と同じで行動不能に陥ります!」
カチーナ「じゃあ、どうすんだ!?  この状態で新手が出てきたら、 袋叩きどころじゃ済まねえぞ!!」
エクセレン「……」
キョウスケ「エクセレン、お前は……!」
エクセレン「……キョウ……スケ……」
(アインストが出現)
カーラ「ホ、ホントに アインストが出てきたよっ!」
カチーナ「チッ、言わんこっちゃねえ!」
キョウスケ「いかん、 このままでは……!」
エクセレン「……」
キョウスケ(この状況を打開するには……)
エクセレン「……」
キョウスケ(エクセレン……お前を……!)
レフィーナ「キョウスケ中尉!  こちらは出撃できるよう 何とか手を考えます!」
レフィーナ「それまでの間、 保たせて下さい!」
キョウスケ「……」
レフィーナ「どうしました、 キョウスケ中尉!?」
キョウスケ「……レフィーナ艦長、 クロガネとヒリュウに 仕掛けをしたのはあいつだ……」
レフィーナ「!」
キョウスケ「ならば、 おれがあいつを落とせば……!」
レフィーナ「ちゅ、中尉!?」
キョウスケ「方法は……それしかない」
シャイン「ダメ! ダメでございます!」
キョウスケ「!」
シャイン「助けられます! 絶対に!  でないと、後悔なさいますわよ!」
アラド「そ、そうだ!  諦めちゃダメだ、キョウスケ中尉!」
ゼオラ「中尉が諦めたら、 エクセレン少尉はどうなるんですか!?」
キョウスケ「だが、あいつは既に……」
アヤ「いいえ、取り戻せるわ!  それが出来るのはあなたしかいない!」
アヤ「あなたがエクセレンの心に 強く訴えかければ、必ず……!」
キョウスケ「……!」
イルム「どのみち、 いま動けるのはお前しかいないからな。 それに……」
イルム「惚れた女を助けるのは、 男の役目だぜ、キョウスケ君?」
キョウスケ「……」
リューネ「それでも エクセレンを落とすなんて言ったら、 承知しないよ!」
キョウスケ「しかし、 そちらがその状況では……!」
マサキ「ヘッ!  てめえに心配されなきゃならねえほど 俺達はヤワじゃねえ!」
リュウセイ「だから、 中尉はエクセレン少尉を!」
キョウスケ「マサキ……リュウセイ……」
ブリット「キョウスケ中尉、 チャンスは今しかありませんよ!」
クスハ「キョウスケ中尉の声なら、 必ずエクセレン少尉に届くと思います!」
キョウスケ「ブリット……クスハ……」
ゼンガー「皆の言う通りだ、キョウスケ」
キョウスケ「ゼンガー少佐……!」
ゼンガー「エクセレンに 取り憑いたものを……斬れ。 撃ち貫け」
ゼンガー「そして…… お前の手で彼女を取り戻すのだ」
キョウスケ「……」
キョウスケ「…………」
キョウスケ「了解」
ゼンガー「それでいい。 後は我らがいかにして 外へ出るかだが……」
ギリアム「エネルギーフィールドはこちらで 解析する。ラミア、タカクラチーフ…… すまんが、作業を手伝ってくれ」
ツグミ「は、はい!」
ラミア「了解」
テツヤ「よし……!  パイロット各員はデッキで待機!  すぐに出られるようにしておけ!」
エクセレン「……」
キョウスケ「行くぞ、エクセレン……」
(キョウスケに『集中』『必中』『鉄壁』『加速』『気迫』)
キョウスケ「お前を取り戻す。 このリーゼと……おれの手でな」

〈vs エクセレン〉

[キョウスケ]

キョウスケ「エクセレン!  目を覚ませ、エクセレン!!」
エクセレン「……」
エクセレン「……我の目的は監査……。 始まりの地……乱す者達を……」
エクセレン「もう一つの…… 眠る……」
キョウスケ「何だ!? 何のことだ!?」
エクセレン「…………」
キョウスケ「くっ……!」

[HP90%以下]

ツグミ「ギリアム少佐、 類似データの検索が終了しました」
ギリアム「結果は?」
ツグミ「最も性質が似ているのは…… 念動フィールドです」
ギリアム「何……?」
ツグミ「もちろん、あれは T-LINKシステムによって 形成されるものではありませんが……」
ツグミ「何者かの意思の『力』によって 発生している点は同じです」
ラミア「何者かの意思? まさか」
ギリアム「……エクセレン少尉か」
ツグミ「おそらく……。 そして、消去の方法は……」
ギリアム「タカクラチーフ、 それを選択するわけにはいかん」
ツグミ「無論です」
ラミア「あのフィールドを 展開しているのがエクセ姉様なら……」
ラミア「キョウスケ中尉との接触で 力が弱まるかも知れません」
ギリアム「ああ。それを機に 強行突破するしかあるまい……!」

[HP80%以下]

(精神感応)
キョウスケ「う……!」
クスハ「こ、この感じは!?」
マイ「来る……!!」
リョウト「あ、あのアインストが!」
(アインストが出現)
アルフィミィ「……キョウスケ……」
キョウスケ「またお前か……!  今日こそはここで決着をつける……!」
アルフィミィ「……エクセレン」
エクセレン「……我の目的は監査……。 始まりの地……乱す者達を」
キョウスケ「!」
マサキ「始まりの地だと!?」
リューネ「確か、 こないだもそんなことを……!」
ラミア「監査……。 そのためにアインストが 現れたと言うのなら……」
ラミア「始まりの地とは 地球のことか?」
アルフィミィ「そうですの……」
キョウスケ「監査の対象は何だ?  地球なのか?」
エクセレン「我の役目は…… 宇宙の監査」
アルフィミィ「我の望みは静寂の宇宙」
キョウスケ(何が…… 何をエクセレンに言わせている?)
キョウスケ(もしや、 先程アヤ大尉やマイが言った…… 人ならざるものの念……なのか?)
エクセレン「始まりの地…… それはまた宇宙を変える……」
アルフィミィ「我は…… 宇宙を変えた始まりの地に 新たな力を生むもの……」
アルフィミィ「そして…… 今度こそは正しき血脈を……」
アルフィミィ「もう一つのルーツを排除し、 純粋なる静寂の宇宙を……」
キョウスケ「わけのわからんゴタクは そこまでにしろ」
アルフィミィ「キョウスケ……!」
キョウスケ「何を言いたいのかは知らん。 だが、お前の都合とエクセレンは 関係ない……!」
アルフィミィ「!」
キョウスケ「返してもらうぞ!」
エクセレン「……!」
アルフィミィ「関係……ない?  いえ、あなたにはわかっている はずですの……」
アルフィミィ「キョウスケ…… そんなことは……ないですのよ。 私と……エクセレンは……」
エクセレン「……」
キョウスケ「関係ないと言った!」
エクセレン「キョウ……スケ……私……」
キョウスケ「!?」
エクセレン「なんとか……するから…… あと……よろしく……ね……」
アルフィミィ「! エクセレン!?」
(戦艦を中心に光り、戦艦に張られたバリアが破れる)
ツグミ「ギリアム少佐!  フィールドが消滅しました!」
ギリアム「!」
ラミア「もしや、エクセ姉様が……?」
キョウスケ「エクセレン、お前……」
エクセレン「……」
アルフィミィ「どこまでも…… 私の邪魔をしますのね、 エクセレン……!」
テツヤ「今だ! 各機を出撃させろ!」
エイタ「しかし、 先程の影響でハッチに異常が!」
テツヤ「構わん、内側からブチ破れ!」
ラミア「……了解」
(クロガネに爆煙)
ブリット「ハッチが開いた……!」
アラド「ラ、ラミアさん、 思い切りやっちゃって……!」
ラミア「時間がないのでな。 先に行く」
ブリット「クスハ、俺達も出るぞ!」
クスハ「ええ!」
(アンジュルグ、龍虎王が出撃)
ブリット「大丈夫ですか、 キョウスケ中尉!?」
キョウスケ「ああ。 そちらも何とか出られたようだな」
クスハ「やっぱり、 あのフィールドが消えたのは……!」
キョウスケ「……あいつのおかげだ」
エクセレン「……」
キョウスケ「すまん、エクセレン。 必ずお前を助ける……!」
クスハ「中尉、私達も……」
(精神感応)
クスハ「!!」
ブリット「! 龍虎王が!?」
龍虎王「グウウウ……!」
アルフィミィ「……」
クスハ「龍虎王が あの子に反応してる……!」
アルフィミィ「守護者のしもべ…… また邪魔をするつもりですのね」
龍虎王「ウウウゥゥ……!」
アルフィミィ「でも 新しい主に欺かれ…… 互いに滅ぼし合い……」
アルフィミィ「唯一生き残ったあなたに…… 私達を倒すことは出来ませんの……」
ブリット「それでも 龍虎王や虎龍王がお前達と 戦うのなら、俺は彼らに力を貸す!」
アルフィミィ「何のために……ですの?」
クスハ「それは……あなた達から この世界を守るためです!」
アルフィミィ「始まりの地を……?  それは無駄……無駄ですの」
ブリット「何!?」
クスハ「無駄って…… どういうことなの!?」
アルフィミィ「……」
ユン「艦長、 残りの各機も発進可能です!」
レフィーナ「では、順次出撃を!」
(出撃準備)
レフィーナ「ドラゴン2より各機へ!  メインターゲットは赤いアインストです!」
レフィーナ「あれを撃墜するまで、 ヴァイスリッターへの 手出しはなりません!」
アイビス「エクセレン少尉を 助けるのは、赤い奴を倒してからと 言うこと……?」
レフィーナ「ええ!  それまで皆さんにはキョウスケ中尉の 援護をお願いします!」
アイビス「了解!」
ラミア「中尉、取り巻きのアインストは 私達で片づけます」
キョウスケ「……すまん、ラミア」
ラミア「いえ……。 エクセ姉様を失うわけには 参りませんから」
アルフィミィ「面白くないですのね……」
キョウスケ「世の中、そんなものだ」
アルフィミィ「始まりの地の者達に…… 未来などないと言うのに」
キョウスケ「未来は 自分の手で切り開く……などと 青臭いことを言うつもりはない」
キョウスケ「だが、 今戦う意思だけは曲げん……!」
アルフィミィ「それでも無駄ですの…… あなた達に……未来はありませんの」
キョウスケ「あいにくだが、 分の悪い賭けは嫌いじゃない」
アルフィミィ「そう言うと思いましたの」
キョウスケ「なら、 後はジョーカーを切るだけだ」
アルフィミィ「そうはいきませんの。 後はあなたを……」
キョウスケ「心配するな。 エクセレンよりも先に…… お前の所へ行ってやる」
アルフィミィ「え……?」
キョウスケ「ただし、鋼鉄の塊付きだ。 ただで済むと思うな……!」
(作戦目的変更)

〈vs アルフィミィ〉

[キョウスケ]

キョウスケ「落ちてもらう!  エクセレンを使って好き勝手 やってくれたこと……高くつくぞ!」
アルフィミィ「何故……?  私と……エクセレン…… 何が違うと言うんですの……?」
キョウスケ「何……!?」
アルフィミィ「私は…… ここから出られない……」
アルフィミィ「始まりの地の終焉…… そして、新たな始まり…… その世界でならば……あるいは」
キョウスケ(こいつ…… やはり、エクセレンの……?)

[HP20%以下]

アルフィミィ「うう……!」
アルフィミィ「でも、 これで……揃いましたの」
キョウスケ「何……!?」
エクセレン「……」
アルフィミィ「始まりの地…… 新たなる……種子……」
エクセレン「始まりの地…… 地球……」
キョウスケ「答えろ!  揃ったとはどういうことだ!?」
アルフィミィ「……キョウスケ……。 そうすれば……私は……」
(ライン・ヴァイスリッター以外が転移撤退)
ブリット「消えた……!!」
クスハ「エクセレン少尉は!?」
エクセレン「う……うう……」
キョウスケ「エクセレン!」
エクセレン「キョウ……スケ……」
キョウスケ「後はお前だけだ……!」
ライ「策はあるのか、中尉?」
キョウスケ「機体を行動不能にする。 その後、あいつを引きずり出す」
マイ「それだけでは駄目だ。 何者かの念は……額の赤い玉に 集まっている」
キョウスケ「赤い玉……?」
ヴィレッタ「なるほど……あの部分が 受信機の役割を果たしているのね」
ラトゥーニ「じゃあ、赤い玉を破壊すれば エクセレン少尉は元に戻るの……?」
マイ「ああ…… 操り糸はそれで消えるはずだ」
カチーナ「できるか、キョウスケ?」
キョウスケ「……やるしかない。 いや、やってみせる」
レーツェル「やらば、 我々が全面的にバックアップしよう」
レオナ「ヴァイスの動きは 私達で何とか止めてみます」
キョウスケ「すまん。 ……後は撃ち貫くのみ……!」
(作戦目的変更)

〈ライン・ヴァイスリッターのHP5%以下〉

エクセレン「うう……う……!  ああああ……!!」
リュウセイ「ヴァイスがひるんだ!?」
ゼンガー「今だ! キョウスケ!!」
キョウスケ「了解……!」
(アルトアイゼン・リーゼがライン・ヴァイスリッターに隣接、機械音)
エクセレン「う、ううう……ああっ!!」
キョウスケ「動くな、エクセレン……!  今、助ける!」
(ライン・ヴァイスリッターが光る)
キョウスケ「何だ!?」
エクセレン「………」
???(レジセイア)(オマエノ役目ハ…… 終ワッタ……)
エクセレン「………」
キョウスケ「誰だ……!?  誰が喋っている? 貴様は何者だ!?」
???(レジセイア)(ヤハリ……混沌カラ 純粋ナル者ハ……生マレヌ……)
???(レジセイア)(ヤハリ……ルーツハ 一ツデアラネバ……ナラヌ……)
???(レジセイア)(理解シタ…… 理解シタ……理解……)
キョウスケ「何を理解したか知らんが…… 何故、エクセレンだけをさらった?」
???(レジセイア)(…………)
キョウスケ「おれにも貴様の声が聞こえる。 だから、無関係だとは言わせん」
???(レジセイア)(…………)
キョウスケ「どうして、 おれをさらわなかった?」
???(レジセイア)(オマエハ……不完全…… だから……不必要……)
キョウスケ「不完全だと……!?」
???(レジセイア)(不完全……不必要……)
(ライン・ヴァイスリッターに爆煙、青い光と『ひらめき』)
エクセレン「あああっ!  ああああ……!!」
キョウスケ「ヴァイスが!?  エクセレン! おいっ!!」
マイ「な、何かが抜けていく……!」
アヤ「あの念が……消える……!」
ラミア「エクセ姉様……!!」
(閃光、ライン・ヴァイスリッターが味方に)
キョウスケ「エクセレン!」
エクセレン「ん、んん……?  キョウ……スケ?」
キョウスケ「!!」
リオ「エクセレン少尉、 正気に戻ったんですか……!?」
ユウキ「だが、 あれは本当に少尉なのか?」
ギリアム「……」
キョウスケ「エクセレン……!」
エクセレン「うう~…… 頭がガンガンする……」
ラッセル「な、何か確かめる方法は……?」
アラド「……おれがやってみます」
ラッセル「え!?」
ゼオラ「確かめるって……どうやって!?」
アラド「ま、いいからいいから…… おれに任せてくれよ」
アラド「……エクセレン少尉、 おれと初めて会った時のことって 覚えてます?」
エクセレン「初めて会った時……?」
アラド「ええ。 その時、おれに言ってくれたことが あるじゃないッスか」
エクセレン「あ~……思い出した。 バニーちゃんのことね」
エクセレン「もち、覚えてるわよん。 一段落ついたら、お姉さんが 着て見せてあ・げ・る♥」
アラド「喜んで!」
ゼオラ「ちょっと、アラド!  バ、バ、バ、バニーちゃんて、 どーゆーことよっ!?」
アラド「し、知らねえの?  ほら、ウサミミに網タイツの……」
ゼオラ「そういうこと 聞いてるんじゃないわ!!」
ゼオラ「何でエクセレン少尉と そんな約束をしたのよ!?」
アラド「そ、それは その場の成り行きって奴でさぁ……」
ゼオラ「んも~、信じらんない!  バカ! エッチ! スケベ!!」
アラド「トホホ…… おれが頼んだわけじゃねえのに」
ゼオラ「同じことよ!」
エクセレン「んじゃ、 代わりにゼオラちゃんが着てみる?  バニーちゃんの服」
ゼオラ「えっ!?」
タスク「あ、そりやいいかも。 あの子、ラミアさんに負けず劣らず ボインちゃんだしなぁ」
ラミア「……」
ゼオラ「あ、あの……?」
エクセレン「あなただったら ブリット君の鼻血、8メートルは 間違いなしよん」
ブリット「な、な、何で 自分がそこへ出てくるんですかっ!?」
クスハ「ブリット君……もしかして」
ブリット「ち、違う! 誤解だ!  俺はまだ見てない!」
クスハ「まだ……!?」
ブリット「い、いや、 見るつもりもないって!」
エクセレン「はいは~い、 そっちのお二人さんもケンカは や・め・て、ね?」
リュウセイ「……あのノリ、 どう考えても本物だよなあ」
マサキ「ああ、間違いねえ」
シロ「周りを巻き込むあのペース…… そう簡単に真似できニャいもんニャ」
キョウスケ「……いつもの調子か」
リューネ「ようやく、だね。 何せよ元に戻って良かったよ」
クロ「でも、こんな時に 軽口を叩いたりしニャい……ねえ」
キョウスケ「……」
エクセレン「え? 何なの、キョウスケ?」
キョウスケ「……何でもない」
テツヤ「……こちらアイアン3。 これより本艦とヒリュウは L5宙域へ向かう」
テツヤ「各機は直ちに帰還せよ」
キョウスケ「了解」
エクセレン「……キョウスケ……」
キョウスケ「ん……?」
エクセレン「ありがと……本当に。 ……私……」
キョウスケ「……気にするな。 お前はいつものお前でいればいい」
エクセレン「……うん……」

《ヒリュウ改医務室》

クスハ「……具合はどうですか?  エクセレン少尉……」
エクセレン「まだ頭がボーっとするけど、 大丈夫よん。お肌の張りもほら、 バッチリだし」
クスハ「診察の結果、 身体の方に異常はありませんでした」
クスハ「後はラーダさんの方で 何もなければ……」
エクセレン「う~ん…… そっちはあまり自信がないのよね」
マサキ「ま、どっからどう見たって いつものエクセレンだし、心配する こたあねえと思うけどな」
ギリアム「だが……疑問は残るな」
キョウスケ「ええ……。 奴らがエクセレンをさらった理由…… それがわからない」
ゼンガー「……」
エクセレン「ん~…… もしかして、私の美貌のせいとか?」
キョウスケ「あり得んな」
ゼンガー「うむ」
エクセレン「あらら、そんな…… 二人して」
ラミア(やはり…… エクセ姉様がああなっていたのは あのヴァイスのせいか……)
(扉が開閉する)
ラーダ「……エクセレン、 診察の結果が出たわ」
エクセレン「ラーダさん、 答えは……こっち?」
シロ「んニャ?」
エクセレン「それとも……こっちの方?」
クロ「……あんまり 嬉しくニャい例えだニャ」
ラーダ「結果は……シロちゃんの方よ」
ブリット「じゃ、じゃあ……!」
ラーダ「ええ、私の方でも 特に異常は見られなかったわ」
クスハ「良かった……」
マサキ「これで お墨付きが出たってわけか」
エクセレン「心配かけてホントにごめんね」
ブリット「いえ、 少尉がご無事ならそれでいいんです」
キョウスケ「……後は お前がさらわれた理由と アインストについて、だな」
ギリアム「何かわかるか、少尉?」
エクセレン「実は…… 向こうに行ってた時のこと……、 あんまり覚えてなくて」
ギリアム「では、例の事故とアインストの 関連性については?」
エクセレン「……あのこと、話したの?  キョウスケ」
キョウスケ「ああ」
ギリアム「これは あくまでも俺の予測だが……」
ギリアム「お前達の乗っていたシャトルに 衝突したのは、エアロゲイターの 偵察機ではなく……」
ギリアム「アインストだったのではないか?」
エクセレン「……」
ゼンガー「思い当たるフシはあるか?」
エクセレン「……よく……わかりません」
キョウスケ「……」
キョウスケ「……何故、お前だった?」
エクセレン「え、何が?」
キョウスケ「アインストは 何故俺ではなく、お前を操った?」
エクセレン「う~ん、無愛想な能面男より 若い女の方が……」
キョウスケ「真面目に答えろ」
エクセレン「……ごめん……わからない」
ラーダ「その事故とアインストに 関係があるのなら……」
ラーダ「キョウスケ中尉が 操られていてもおかしくないわね」
ラミア「しかし……中尉は伊豆の時、 アルフィミィの思念を拒絶した」
クスハ「……蚩尤塚に行った時、 あの子が操ったのは私達ではなく…… グルンガスト参式の方でした」
ブリット「ああ。アルフィミィは 参式のT-LINKシステムを介して 機体の動きを止めた」
マサキ「つまり、あいつは 人を思いのままに操れるほどの力を 持っていないってことか」
ブリット「多分な」
クスハ「でも、彼女の思念は徐々に 強まっていってるような気がする……」
エクセレン「……」
ラミア「エクセ姉様……アインストの ストーンサークルについては?」
エクセレン「あれはおそらく…… アインストがいる世界と私達の世界を つなげる『扉』の一つ……」
エクセレン「でも、それは不安定で…… いつでも開けるわけじゃない」
ラミア「つまり、 今のシステムXNと同じ……」
ラミア「しかし、アインストは個々が 転移機能を持っています。なのに、 何故『扉』が必要なのです?」
エクセレン「多分…… 別の目的のために……」
ギリアム「……」
ギリアム「では、その目的とは?」
エクセレン「……」
キョウスケ「奴らがいう始まりの地…… 地球とそこで生きるおれ達人類を 滅ぼすことか?」
エクセレン「それだけとは 思ってないでしょ? キョウスケ」
キョウスケ「ああ。地球と人類を 滅亡させることが最終目的なら、 もっと単純な攻めをしてくるだろう」
キョウスケ「奴らは おれ達や地球圏の情勢を探りつつ、 何かの準備をしている」
キョウスケ「そして、何らかの条件…… 自分達にとって必要な物が揃うのを 待っているように思える」
マサキ「必要な物だと……?」
ギリアム「……」
ゼンガー「もしや、キョウスケ…… お前か?」
キョウスケ「いえ、 もうおれは必要とされないようです」
ギリアム「……彼らの声を聞いたのか?」
キョウスケ「ええ」
ゼンガー「では、他に必要な物とは?」
キョウスケ「それは……」
キョウスケ「今、奴らが集中的に 攻撃を仕掛けているホワイトスター なのかも知れません……」
エクセレン「……」


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