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現れた「影」 ~ 第19話 ~

《アースクレイドル内部》

アクセル「……北米地区が インスペクターの手に落ちただと?」
レモン「ええ」
アクセル「ふん…… やはり、連邦軍は奴らの戦法に 対処できなかったようだな」
レモン「無理ないわね。 私達だって、そうだったもの」
アクセル「だが、今は違う」
レモン「そうね……手段はあるわ。 だからこそ、私達はここにいる」
アクセル「……危険な賭けだがな」
レモン「またそれを言う。 こっちの戦力は、あの時以上に 揃いつつあるのよ?」
アクセル「その一つがあの黒い人型か」
レモン「ええ、アシュセイヴァーの カスタムタイプよ」
レモン「W17が送ってきた ATX計画の機体データや、 手に入れたビルトファルケン……」
レモン「それらを参考にして 改造した機体なの」
アクセル「名前は?」
レモン「ラピエサージュ。見た目通り、 『継ぎ接ぎ』っていう意味よ」
レモン「完成したら、あなたに乗って もらおうと思ってるんだけど……」
アクセル「断る。 奴らの機体を真似たものなど、 願い下げだ」
アクセル「お前の人形共か、 スクールの連中にでも使わせろ」
レモン(……やっぱり、 ベーオウルフへのわだかまりは 残ってるみたいね)
レモン(それが悪い方向へ 行かなければいいんだけど……)

《アースクレイドル内部》

バン「……作戦を予定通りに 第3段階へ移すだと? 異星人共を 放っておけと言うのか、貴公は?」
ヴィンデル「その通りだ」
バン「奴らは北米地区の制圧に力を 傾注しており、まだ他地区へ 現れておらん。叩くなら今の内だ」
ヴィンデル「それは 連邦軍に任せておけばいい」
バン「彼らに任せておけぬから 我々はノイエDCを結成し、 行動を起こしたのだ」
バン「現に連邦の北米方面軍は 異星人に敗北したではないか」
ヴィンデル「そのため、 連邦は他方面軍部隊を 北米へ投入するだろう……」
ヴィンデル「そして、我らはその隙を 突き、本懐を遂げる。異星人と 戦うのはそれからでも遅くない」
バン「彼らに制宙権を 握られているのにも拘わらずか?」
ヴィンデル「そうだ」
バン「貴公、まるで彼らのやり方を 知っているかのような口ぶりだな?」
ヴィンデル「こちらで得たデータに 基づく判断だ」
バン「……」
ヴィンデル「バン大佐、 今が連邦の中枢を掌握する 絶好の機会なのだ」
バン「いや……我々は異星人に 対処するため、態勢を整える。 第3段階への移行はその後だ」
ヴィンデル「それはノイエDC首魁としての 判断なのだな?」
バン「無論だ」
ヴィンデル「……よかろう」
(扉が開閉する・ヴィンデルが立ち去る)
バン「……」
バン(フン……本性を現したか?  ヴィンデル・マウザー……)
バン(だが、異星人が現れた以上、 ノイエDC本来の使命を はき違えるわけにはいかん)
バン(軍事政権の樹立が 目的とは言え、異星人の台頭を 許すようなら本末転倒だ)
バン(連邦軍に組み込まれた同胞、 現行の態勢に不満を持つ軍人達に 訴えかけ……)
バン(いや、連邦軍そのものと 一時的に手を組み、異星人を撃退 することを考えねばならんか……)

《アースクレイドル内部》

レモン「……状況はほぼ同じね。 インスペクターが次の行動に出るまで しばらくかかるはずよ」
ヴィンデル「機は熟しつつあるな」
レモン「そうね。 そろそろ、あの娘を呼び戻した方が いいのではなくて?」
レモン「量産型Wシリーズの生産が 軌道に乗ったとは言え、ナンバーズは 数少ないんだし」
アクセル「……W17はヘリオスの 行方を掴んだのか?」
レモン「報告がない所を見ると、 まだみたいね」
アクセル「与えられた指令を 満足に遂行できんデク人形が……。 だから、おれは反対したんだ」
ヴィンデル「W17には まだあの部隊にいてもらわねば ならない。こちらの切り札としてな」
アクセル「あの人形の機能が 完全だと言う保証はあるのか?」
レモン「確かに、W16の報告では 少し異常があるみたいだけど…… 任務遂行に問題はないと思うわよ」
アクセル「……」
レモン「それとも、 やっぱり信用できないの?」
アクセル「特に 10番台のナンバーズはな」
レモン「……」
ヴィンデル「……いずれにせよ、 現状のあの部隊の力を 調べておきたい」
レモン「……仲間に出来ないかしら?  ハガネとヒリュウ改を」
アクセル(何だと……?)
ヴィンデル「今は難しいだろう。 だが、状況を整え、現状と未来を 理解させれば……あるいは」
レモン「自分達が勝つと 考えている内は……ということね」
ヴィンデル「勝利への道は 自ら踏み外す者はいまい」
レモン「了解。 ところで、誰を行かせるの?  W15? それともW16?」
ヴィンデル「私が行く」
レモン「まさか…… 『ツヴァイ』を使うつもり?」
ヴィンデル「ああ、そうだ」
アクセル「もう修復できたのか?  『システムXN』を……!」
ヴィンデル「それは……」
(扉が開閉する)
イーグレット「……現状の システムXNはまだ完全ではないが、 通常機能の使用に支障はない」
レモン「フェフ博士……」
イーグレット「ヴィンデル、 ツヴァイの出撃準備が整った。 いつでも出られるぞ」
ヴィンデル「了解した」
アクセル「……どういうことだ?  あのシステムの存在を部外者に 教えるどころか、触らせるとは」
イーグレット「心外だな。 俺はお前達の素性や目的を知った上で 協力しているのだぞ?」
アクセル「……」
レモン「ま、技術提供って奴ね。 こっちも色々提供したし」
ヴィンデル「システムXNの調整には 彼の頭脳が必要だった」
ヴィンデル「それに、我々の最終目的を 忘れたわけではあるまい?」
アクセル「……もちろんだ。 そのためにヘリオスが要る」
レモン「でも、ヴィンデル…… 一人で大丈夫? 何だったら、 私も付き合うけど」
ヴィンデル「お前には お前の仕事があるはずだ」
ヴィンデル「ソフィア・ネート…… いや、『メイガス・ゲボ』の調整がな」
レモン「だけど、 ハガネやヒリュウ改の戦力は 以前よりも増強されているわ」
レモン「いくら少数とは言え、 油断は禁物よ」
アクセル「ならば、俺も行く。 W17のこともあるからな」
レモン「ソウルゲインは調整中よ。 それに……本命はあの娘じゃなく、 ベーオウルフでしょ?」
アクセル「……ラーズアングリフを 使う。場合によっては W17を排除するぞ」
(扉が開閉する・アクセルが立ち去る)
レモン「あ、ちょっと待ってよ、 アクセル……!」
レモン「あ~あ、 どうしてああなのかしらねえ…… 彼ってば」
ヴィンデル「放っておけ。 ……フェフ博士、例の子供達は 使えるか?」
イーグレット「いや、 まだ調整に時間がかかる」
イーグレット「代わりにスクールの者を 使うがいい。ちょうどセトメ博士が 再調整を終えたところだ」
ヴィンデル「了解した。 アクセルと共に前衛をやらせる。 手配を頼むぞ」
イーグレット「ああ」
(扉が開閉する・イーグレットが立ち去る)
レモン「……フェフ博士の子供達、か。 どうも好きになれないわ、私は」
ヴィンデル「戦争は 好きか嫌いかで行うものではない。 それに……私は嫌いではない」
レモン「どうして?」
ヴィンデル「目的を達成するためだけに 創られていながら、それがさも自分の 意思のように自覚し、行動する……」
ヴィンデル「風体の問題ではなく、 このコンセプトはむしろ美しいとさえ 言えるだろう」
レモン「……」
ヴィンデル「お前のWシリーズも…… そうではないのか?」
レモン「私、本当は嫌なのよ。感情や 判断力を個々に持たせるのは、ね」
レモン「それによって引き出せる力は 大きいけど、ひどく不安定だもの。 ……スクールの子供達みたいに」
ヴィンデル「潜入しているW17にも その心配が?」
レモン「……」
ヴィンデル「ヘリオスの件は ともかく、今のところ指令通りに 行動している」
レモン「……そうね」
ヴィンデル「なら、話はここまでだ。 ツヴァイで出る」
レモン「行ってらっしゃい。 向こうでは、この段階の 前後でつまづいた」
レモン「こちらでは……今度こそは……」
ヴィンデル「……私もそのつもりだ」

《???》

クエルボ「……ブロンゾ27……」
ブロンゾ27「……何ですか、 セロ博士?」
クエルボ「今日からお前とコンビを 組むことになる子を紹介するよ」
(扉が開閉する)
ブロンゾ28「……」
クエルボ「彼の番号は28。 君と同じクラスの子だ」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ27「私、ブロンゾ27。 よろしくね」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ27「? どうしたの?」
ブロンゾ28「おれの相手が こんな子だなんて……」
ブロンゾ27「ちょっと!  それ、どういうことよ!?  私に何か不満があるの!?」
ブロンゾ28「そ、そういう 意味じゃねえっての!」
ブロンゾ27「じゃあ、 どういう意味よ!?  言ってごらんなさいよ!」
ブロンゾ28「い、いや…… あの、その……」
ブロンゾ28「む…… 胸がおっきい子だな、って」
ブロンゾ27「な、な、な……!」
ブロンゾ27「なに言ってんのよ!  バカ! エッチ! スケベ!!」
クエルボ「お、おい、お前達…… ケンカするんじゃない」
ブロンゾ27「す、すみません……」
クエルボ「これからは 二人で訓練を行うことになる。 だから、仲良くするんだ」
ブロンゾ27「は、はい」
クエルボ「いいね? ブロンゾ28」
ブロンゾ28「へ、へ~い」
ブロンゾ27「……私が27で あなたが28ってことは…… 私の方がお姉さんね」
ブロンゾ28「そ、そういうことになるな」
ブロンゾ27「じゃ、 さっきのことは許してあげるわ。 あらためて、よろしくね」
ブロンゾ28「……ああ、こっちこそ」

《???》

ブロンゾ27「……え?  私達の名前が変だって?」
ブロンゾ28「だってさ、 セロ博士はクエルボ・セロだし……」
ブロンゾ28「アギラばあさんは アギラ・セトメ……」
ブロンゾ28「アードラーのじじいは アードラー・コッホって名前がある」
ブロンゾ28「クラスと番号で 呼ばれてるのって、 おれ達ぐらいだぜ?」
ブロンゾ27「そういう名前なんだから 仕方ないじゃない」
ブロンゾ28「でも、 何か変なんだよな…… 何か嫌なんだよな」
ブロンゾ28「それに…… おれ達ここへ来る前の 記憶がねえのは……何でだ?」
ブロンゾ27「そんなこと 気にしてんの、あなただけよ」
ブロンゾ28「いや、 ラトゥーニも同じことを言ってたぜ」
ブロンゾ27「え……?  ラトゥーニ11が……?」
ブロンゾ28「ああ、こないだあの子が アードラーのクソじじいに いじめられて泣いててさ……」
ブロンゾ28「姉さんの代わりに おれが話を聞いてやったんだ」
ブロンゾ27「そう……。 あの子、また泣いてたの……」
ブロンゾ27(ラトゥーニクラスで 残っているのは11号だけだもの…… 無理ないわね……)
ブロンゾ28「……な、やっぱ変だよ。 何でおれ達はセロ博士みてえな 名前じゃねえんだ?」
ブロンゾ27「そ、そんなこと…… 私にもわからないわよ」
ブロンゾ27「だって、 セトメ博士やメイガス・ケーナズが 私達のことそう呼んでるんだし……」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ28(でも、やっぱ変だ……)
ブロンゾ28(おれ達の名前も…… おれ達に昔の記憶がねえのも……)

《???》

アギラ「……ブロンゾ27……」
ゼオラ(違う…… 私はゼオラ・シュバイツァー……)
アギラ「……ブロンゾ27……」
ゼオラ(違う……私はゼオラ。 ゼオラなんです……)
アギラ「よくお聞き、ブロンゾ27。 ブロンゾ28はもういない。 28号は死んだんじゃ」
ゼオラ(28号じゃない……。 あの子の名前はアラド…… アラド・バランガ……)
アギラ「ブロンゾ28はもういない」
ゼオラ(違います、セトメ博士……。 アラドです……)
アギラ「28号はもういない」
ゼオラ(アラドです……あの子は……)
アギラ「28号はもういないんじゃ」
ゼオラ(ア……ラド…… あの子……は……)
アギラ「ブロンゾ28は死んだ」
ゼオラ(あの……子は……)
アギラ「ブロンゾ28は死んだのじゃ。 連邦軍の者共の手にかかってな」
ゼオラ(死……んだ……?  ブロンゾ……28……は……)
アギラ「そうじゃ、28号は死んだ」
ゼオラ(死んだ……もういない……)
アギラ「じゃから、忘れるんじゃ。 ブロンゾ28のことを……完全にな」
ゼオラ(忘れる……)
ゼオラ(忘れる……忘れる……)
ゼオラ(忘れる、忘れる、忘れる、 忘れる、忘れる、忘れる……)

《アースクレイドル内部》

イーグレット「……どうだ?  セトメ博士」
アギラ「だいぶ手間がかかったわい。 任務を完遂させるための特殊思考 パターンが裏目に出おった」
イーグレット「オリジナルなら ともかく……紛い物かつ不要な感情や 記憶を与えるからそうなる」
イーグレット「アードラー・コッホが ブーステッド・チルドレンを 見限ったのはそのせいだろう?」
アギラ「フェフェフェ、お前は わかっておらん。人としての感情や 記憶がスペック以上の力を引き出す」
アギラ「例え、 それが偽物であってもな」
イーグレット(フン……下らん。 俺の子らにそのような物は不要だ)
クエルボ「……それで、ゼオラは?」
アギラ「シングルとしての 再調整は成功した。戦場で28号に 出くわしても大丈夫じゃろう」
(扉が開閉する)
ゼオラ「……」
クエルボ「ゼオラ……」
ゼオラ「おはようございます、博士」
アギラ「具合はどうじゃ、27号?」
ゼオラ「大丈夫です、母様」
クエルボ「母様……だって?」
アギラ「フェフェフェ…… そうじゃ、クエルボ。ブロンゾ27は ワシの可愛い娘じゃ」
クエルボ「……ゼ、ゼオラ…… アラドのことは……」
ゼオラ「アラド?  アラド・バランガのことですか?」
クエルボ「あ、ああ……そうだ。 あの子は……」
ゼオラ「アラド・バランガ……。 ラトを連れ去った連邦軍の兵士。 倒すべき私の敵……」
ゼオラ「そう認識しています」
クエルボ「ゼオラ……!」
イーグレット「ブロンゾ27、 お前の次の任務はわかっているな?」
ゼオラ「はい。 アラドを始めとするハガネの者達を 倒し、ラトをここへ連れて帰ります」
イーグレット「うむ。 ビルトファルケンを用意してある。 ヴィンデル達と共に出撃しろ」
ゼオラ「わかりました」
(扉が開閉する・ゼオラが立ち去る)
アギラ「……フェフェフェ、 上手くいったようじゃの」
イーグレット「フッ、記憶操作と 暗示にかけてはさすがだな」
アギラ「伊達に 特脳研におったわけではないわ」
アギラ「もっとも…… あそこにここまでの設備は 整っておらんかったがのう」
クエルボ「……」

《アースクレイドル内部》

ゼオラ「アクセル隊長、 自分はゼオラ・シュバイツァー 曹長であります」
ゼオラ「今回の任務では 何卒よろしくお願い致します」
アクセル「ああ。 お前には前衛をやってもらうぞ。 いいな?」
ゼオラ「はっ!  栄光あるノイエDCのために!」
アクセル(ふん、所詮こいつも人形か)
アクセル「一つ言っておくぞ、曹長。 SMSCとゲシュペンストMk-IIIには 手を出すな」
アクセル「奴らの相手はおれがする」
ゼオラ「了解です」
アクセル「では、出撃準備を急げ」
(足音・アクセルが立ち去る)
ゼオラ「……」
オウカ「……ゼオラ」
ゼオラ「オウカ姉様……」
オウカ「くれぐれも ラトのことをお願いね」
オウカ「本当は私も行きたいのだけど…… ラピエサージュの調整に 立ち会わなくてはならないの」
ゼオラ「心配しないで、姉様。 ラトは必ずこの私が連れて帰ります」
オウカ「ええ……頼むわね、ゼオラ。 行ってらっしゃい」
ゼオラ「はい、姉様」

《連邦軍・アビアノ基地》

マリオン「試作機の搬出は 終了しましたわ。後はこの基地での 調整作業ですが……」
カーク「ああ。一人につき、一機種で 分担するしかないな」
カーク「とりあえず、 タカクラチーフはフェアリオン2体の 組み立て作業に専念してくれ」
ツグミ「わかりました」
カーク「参式の1号機は 後々のエンジン交換作業と……」
カーク「T-LINKシステムの 調整のこともあり、私が担当する」
ツグミ「3号機の方は?」
カーク「総司令部から命令で、 このアビアノ基地へ預けることになった」
マリオン「では、AMボクサーは?」
カーク「あれに関しては、伊豆にいる ロブの力を借りねばならん……。 調整作業は一時保留だ」
マリオン「では、 私の担当はビルガーということで よろしいですわね?」
カーク「ああ。 なお、あれ以外の試作機は地球にある マオ社の工場で保管する」
ツグミ「……参式1号機のパイロットは、 カザハラ所長の指示でブルックリン少尉と クスハ少尉に決まっていますが……」
ツグミ「ビルトビルガーには 誰を乗せるのですか?」
マリオン「ふふ…… すでに目星をつけてありますわ」

《連邦軍・アビアノ基地》

アラド「わわっ!  ラミアさん、ちょっとタンマ!」
ラミア「……実戦で そんなものは通用しない」
(発砲音)
アラド「うわっ!!」
(爆発音)
アラド「や、やられた……!」
キョウスケ「……そこまでだ、アラド。 シミュレーターから出ろ」
アラド「りょ、了解ッス」
キョウスケ「ラミアも出ていい。 一休みだ」
ラミア「了解」
(扉が開閉する)
カチーナ「アラド!  てめえ、何回撃墜されりゃあ 気が済むんだ!?」
アラド「じゅ、15回ぐらいッスね」
カチーナ「このあたしに 口答えするたぁいい度胸だ!  グラウンド1周! 行ってこい!」
アラド「は、はいっ!」
(扉が開閉する・アラドが立ち去る)
エクセレン「……それじゃ審査員の皆様、 今の模擬戦の採点をどうぞ~」
リュウセイ「う~ん、40点?」
キョウスケ「20点だな」
カチーナ「10点で充分だ!」
エクセレン「あらら、厳しいのね」
マリオン「……では、3人の意見を 聞かせてもらいましょうか」
リュウセイ「やっぱり、ビーム系の兵器は 向いてないみたいッスね」
キョウスケ「ああ。 それに、獲物はアルトのステークより 大きめの方がいいだろう」
カチーナ「あとは剣だな。 それも実体剣で、長めの奴」
マリオン「なるほど……。 では、現状の機体で彼に向いていると 思われるものは?」
リュウセイ「そうだな…… アルブレードかな?」
キョウスケ「ああ、 あれなら獲物も大きめだ」
カチーナ「その内、赤く塗ってやろうと 思ってたが……しょうがねえ、 あいつに譲ってやるぜ」
マリオン「わかりました。 色々と参考になりましたわ。 では、後はよろしく」
(扉が開閉する・マリオンが立ち去る)
エクセレン「ラドム博士、 あんなことを聞いて 何をするつもりなのかしらん?」
ラミア「今回の件は、ビルガーの 接近戦用武装を決めるためのものだと 聞いておりますですが……」
エクセレン「あ、な~る。 それでキョウスケにカチーナ中尉、 リュウセイ君なのね」
エクセレン「じゃ、ビルトビちゃんの 右腕には何がつくのかしら?」
キョウスケ「アルトでの採用が 見送られたというリボルビング・ バンカーかも知れんな」
リュウセイ「ブレード・トンファーならぬ チェーンソー・トンファーなんてのは どう?」
カチーナ「漢なら 指先一つでダウンだぜ」
エクセレン「カチーナ中尉、 一応女の子でしょ?」
カチーナ「一応って付けんな!  それに、今はアラドの話だろうが!」
(扉が開閉する)
アラド「カチーナ中尉!  グラウンド1周、行ってきました!」
カチーナ「おう、ご苦労」
アラド「それで、あの……。 クスハ少尉が……」
クスハ「……皆さん、お疲れ様です」
エクセレン「あら?  どうしたの、クスハちゃん?」
クスハ「アラド君とラミアさんが ここで特訓をしてるって聞いたので、 飲み物を持ってきたんです」
エクセレン「!!」
キョウスケ「……!」
カチーナ「な、何だと!?」
ラミア「……?」
リュウセイ「ク、クスハ…… ま、まさか、その飲み物って……」
クスハ「うん、特製の栄養ドリンクよ」
アラド「すみません、少尉。 わざわざおれ達のために」
リュウセイ「ヤ……ヤバいぞ、お前」
アラド「え? 何が?」
ラミア(どういうことだ?  あの飲み物に毒物が混入されて いるとでも……?)
クスハ「今回は味の方も自信作なの。 リュウセイ君も飲んでみる?」
リュウセイ「い、いや、遠慮しとく……」
カチーナ「あ、あたしもな」
エクセレン「わ……私とキョウスケは 缶コーヒーを買ってくるから、ね?」
クスハ「そ、そうですか……」
アラド「じゃあ、俺…… いっただきま~す!」
リュウセイ「あ、待て!」
アラド「う!!」
ラミア「!?」
エクセレン「ア、アラド君!?」
アラド「う……」
アラド「うまい……うますぎる……!」
リュウセイ「へっ!?」
カチーナ「ホ、ホントかよ!?」
アラド「ええ、喉ごしも スッキリ爽やか何とやらで」
クスハ「良かったら、ラミアさんもどうぞ」
ラミア「……」
ラミア(クスハ・ミズハ…… データによれば、ブルックリン少尉らと 同じく念動力者……)
ラミア(もしや、 私の正体に勘づいて……?)
ラミア(考えられる。 アラド曹長の飲み物に異常は なかったが、私の方には……)
クスハ「あ、あの……?」
ラミア(やむを得ん……。 ここでベーオウルフ達に 疑われるわけにはいかん)
ラミア(毒物が混入されていたら、 後で解毒剤を調合するまでだ)
クスハ「あの、無理して 飲んでいただかなくても 結構ですから……」
ラミア「いや、もらおう」
ラミア「……」
ラミア「む!?」
キョウスケ「ラミア?」
ラミア「う……!」
(ラミアが倒れる)
クスハ「ああっ、ラミアさん!?」
カチーナ「た、倒れやがったぞ!」
エクセレン「や……やっぱし?」

《ハガネ艦内》

ヴィレッタ「……なるほど。 さっきの騒ぎはそれが原因か」
リュウセイ「ああ…… アラドは平気だったけど」
エクセレン「あの子、 胃袋の方も頑丈みたいね」
マサキ「単に 味オンチなだけじゃねえか?」
クロ「言えてるニャ」
クスハ「……私、栄養ドリンクを 作るのをもう止めます……」
エクセレン「まあまあ、ラミアちゃんは すぐに気がついたんだし、アレの 効果はバッチリなんだから……」
シロ「そう言えば、 マサキも前にアレを飲んだ後、 調子が良くニャったもんニャ」
マサキ「ま、 後は味の方さえ何とかなりゃな」
リュウセイ「けど、アレ…… 混ぜてる物が物だけになぁ」
エクセレン「だから、 ブリット君あたりを毒見役にして、 頑張りなさいな」
クスハ「ど、毒見役……」
ライ「それで、クスハ、マサキ……。 俺に話とは?」
マサキ「おっと、いけねえ。 そうだった」
クスハ「実は…… 私達がテスラ研を脱出する時、 ライさんのお兄さんに会ったんです」
ライ「! エルザムに……?」
リュウセイ「ホ、ホントかよ?」
マサキ「ああ。レーツェル・ ファインシュメッカーとか名乗って、 格好も違ってたけどよ」
クスハ「そして、あの人は 黒いヒュッケバインMk-IIIで 私達を助けてくれたんです」
リュウセイ「黒いMk-IIIって、 タイプRのことか? でも、あれ…… マオ社に行った時にはなかったけど」
ヴィレッタ「重力下でのテスト中だと 聞いていたが……エルザム少佐が それを担当していたらしいな」
ヴィレッタ「そして、ギリアム少佐が 言っていた機体の引きあげの手段とは、 彼のことか」
エクセレン「で…… 今、色男さんのお兄さんはどこに?」
マサキ「参式の2号機を 誰かに届けると言って、 どっかへ行っちまったぜ」
リュウセイ「2号機って、新型の斬艦刀を 装備してる奴だよな?」
クスハ「ええ……」
エクセレン「じゃあ、 ボス用の機体ってことかしらん?」
クスハ「私は2号機の調整には 関わってなかったんですけど…… 多分そうだと思います」
リュウセイ「じゃあ、 例の斬艦刀ロボに乗ってる奴は……?」
エクセレン「まさか、 敵に参式を渡しに行くってわけは ないでしょうしねぇ……」
ライ「……」
ライ(エルザムの目的は ヴォーダン・ユミルの調査……)
ライ(それとも、ノイエDCにいる アーチボルド・グリムズを……?)
(通信)
テツヤ「パイロット各員へ伝達。 直ちにブリーフィングルームへ 集合せよ」
テツヤ「繰り返す。パイロット各員は 直ちにブリーフィングルームへ 集合せよ」
ヴィレッタ「招集がかかったわね。 行きましょう」
ライ「了解です」

《シロガネ艦橋》

リー「敵に動きがあっただと?」
一般兵「はい。偵察機が ポイントN1008付近でノイエDCの 物らしき機影をキャッチしました」
リー「N1008…… このアビアノから近いな」
一般兵「なお、ハガネとヒリュウ改から 何機か偵察に出すとのことです」
リー「その中に ラミア・ラブレスとアラド・バランガは 含まれているか?」
一般兵「はい」
リー(ふん、身元不詳の者やノイエDCの 離反者を偵察に出すとは……)
リー(やはり、彼らは甘すぎるな)


第19話
現れた「影」

〔戦域:湖畔〕

(アンジュルグとアルブレードが出現)
アラド「……R1101ポイントに 到達。現時点で特に異常なし……と」
ラミア「……」
アラド「あの……大丈夫ッスか、 ラミアさん?」
ラミア「ああ、 消化系の機能に異常はない」
アラド「き、機能?」
ラミア(しかし……何故だ?  筋肉系の疲労が回復している。 それどころか、活性化も……)
ラミア(あの飲料……私にまで そのような効果が出るとは……)
(アラート)
ラミア「!!」
アラド「ね、熱源反応!?」
ラミア「敵か!」
(ビルトファルケンとゲシュペンストが出現)
アラド「ビ、ビルトファルケン!!」
ゼオラ「あれはR-1の量産試作機に SMSCアンジュルグ……!」
アラド「ま、まさか…… ゼオラが乗ってんのか!?」
ゼオラ「あの2体がここにいるのなら、 ハガネも近くにいるはず!  すぐにアクセル隊長へ報告して!」
Sミラー兵「了解!」
ラミア(本体のゲシュペンスト……。 だが、接触の指示は来ていない。 まだこちらにいろということか?)
アラド「つ、通信! 通信を!!」
ラミア「何をする気だ?」
アラド「あれには ゼオラが乗ってるかも知れねえ!」
アラド「あいつにおれが生きてるって 知らせなきゃ!!」
ラミア(そんなことをして何になる?  ラトゥーニ・スゥボータと 同じことをするつもりか?)
アラド「周波数、周波数は……!」
ラミア(指示がない以上、 余計な接触は避けねばならん。 ……ASRS、Jモードで作動)
アラド「な、何だ!?  通信が出来ねえぞ!?」
ゼオラ(ハガネを ここへ誘き出せれば、 ラトを助けられる……!)
ゼオラ「各機へ!  アンジュルグには手を出さず、 R-1の量産試作機へ集中攻撃!」
アラド「こ、こうなったら、 接触して確かめるしかねえ!!」
(アルブレードが少し北へ移動)
ラミア(任務を放棄し、自ら死に急ぐか。 彼も兵士としては失格……)
アラド「ラミアさん、 ファルケンには手を出さないでくれ!  あいつの相手はおれがする!」
アラド「あいつはおれが助ける!!」
ラミア「……好きにしろ」
ラミア(その手の話には 付き合っていられん…… いや、付き合う必要もない)
ラミア(そうだ、W17…… 奴らのようになってはならない……)

〈vs ゲシュペンスト〉

[アラド]

アラド「くそっ、邪魔するな!  おれをファルケンの所へ行かせろ!」

〈vs ゼオラ〉

[ラミア]

ゼオラ「仕掛けてきた……!  隊長が来るまでの時間を 稼がせてもらうわよ!」
ラミア(機密通信はなし、か。 なら、こちらの任務を継続する)

[アラド]

ゼオラ「この機体を落とせば、 ハガネはここへ来るはず!」
アラド「ま、待て!  そっちと戦う気はねえ!!」

〈アルブレードがビルトファルケンへ隣接〉

ゼオラ「何なの、こいつ!?  なれなれしいわねっ!!」
アラド「ゼオラッ!!」
ゼオラ「!  もしや、あなたは……!?」
アラド「そうだ、おれだ! アラドだ!  おれ、生きてんだよ!」
ゼオラ「アラド……!  アラド・バランガ!!」
アラド「!?」
ゼオラ「私やオウカ姉様の所から、 ラトを連れ去った男!  倒すべき私の敵!!」
アラド「な、何だって!?  お前、いったい何を……!?」
ゼオラ「あなたのせいでラトはっ!!」
(アルブレードに爆煙)
アラド「ぐあっ!!」
ラミア(……当然の反応だな。 今は敵と味方なのだから)
アラド「な、何でだ……!?  何でおれを!?」
ゼオラ「許せない……!  あなただけは許せない!!」
アラド「ゼ、ゼオラ!  おれのことがわからねえのか!?」
アラド「ずっとお前とコンビを 組んでたおれのことがっ!!」
ゼオラ「あなたとコンビを!?  冗談じゃないわ!」
アラド「!?」
ゼオラ「あなたは私の敵!  そんなこと絶対にあり得ない!!」
アラド「なっ……!!」
ゼオラ「私は最初からシングル!  そして、ブロンゾクラスの27号、 ゼオラ・シュバイツァーよ!!」
アラド「ブ、ブロンゾ……!?  お、お前……その名前を……!」
ゼオラ「さあ、 ラトを連れ去った罪を その命で償いなさい!!」
アラド「お前…… ま、まさか、アギラばあさんに!?」
ラミア「……」
(アラート)
ラミア「! この反応は!?」
(敵機増援が出現)
アラド「て、敵の増援かよ!!」
アクセル「……上手くハガネの機体を 見つけたようだな、ゼオラ」
ゼオラ「はっ!」
ラミア「あれは……?」
アクセル「SMSCアンジュルグ…… W17か」
(通信)
ラミア「機密通信……。 このコードは……アクセル隊長か」
アクセル「……W17、 ハガネやヒリュウ改におれ達が 現れたことを報告したか?」
ラミア「はい。 目的はあの艦をここへ誘き出すことで ございますでしょうか?」
アクセル「貴様……ふざけているのか」
ラミア「……いえ。言語機能に支障が 出ておりますことでして……敬語が 上手く使えませんのことですのよ」
アクセル「ふん、レモンは お前を買い被り過ぎているようだな。 ……普通に喋れ」
ラミア「はい……」
ラミア「何故、 隊長がここまで来たのだ?」
アクセル「決まっている。 指令がなければ、ロクに動けない 人形の様子を見に来ただけのこと」
アクセル「それから、 ハガネやヒリュウ改のな」
ラミア「着実に戦力を伸ばしつつある。 このままでは、あの時と 同じ結果になるぞ」
アラド「ラ、ラミアさん!  何やってんだ!?」
アクセル「あの時と同じ結果だと?  ふん、ならばおれが確かめるまで」
ラミア「……」
アクセル「奴らが来るまでの間、 人形の性能を試してやる」
ラミア(……指令がなければ、 ロクに動けない人形か…… そうかも知れん)
アクセル「各機へ。 W17の相手はおれがする。 お前達は指示があるまで動くな」
Sミラー兵「了解!」
ゼオラ「隊長、 私はアラド・バランガを……!」
アクセル「好きにしろ。 今はW17以外に興味はない」
ゼオラ「はっ!」
(ビルトファルケンに『加速』)
アクセル「……行くぞ、W17。 本気でかかってこい……!」
ラミア「了解」
(作戦目的変更)

〈vs ゼオラ〉

[アラド]

アラド「ゼオラ!  お前、アギラばあさんに 何を吹き込まれたんだ!?」
ゼオラ「わけのわからないことを 言わないで!」
アラド「おれだって、 スクールに一緒にいたんだぞ!  お前と一緒にいたんだぞ!!」
アラド「それに、おれはラトを 連れ去ったりなんかしてねえ!!」
ゼオラ「そんなことを言って……!  だまされないわよ!」
アラド「おかしいとは思わないのか!?  なんでおれがお前やスクールのことを 知ってるのかって!」
ゼオラ「ラトから聞いたんでしょう!  そうに決まってるわ!」
アラド(言ってることが変だ……!  やっぱり、ラトが言った通り オウカ姉さんと同じで……!?)
ゼオラ「私はあなたを倒し、 ラトを母様の所へ連れ戻す!  さあ、覚悟なさいっ!!」
アラド「か、母様!? お、お前…… アギラばあさんのことを……!?」

〈vs アクセル〉

[ラミア]

ラミア「いつか勝負をつけたいと 思っていた!」
アクセル「レモンの遊び道具風情が!」

〈アクセル達出現から3 NEXT PP〉

(アラート)
アクセル「む? 来たか」
(ハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、アルトアイゼン、ヴァイスリッターが出現)
アラド「あ、あれは!!」
キョウスケ「無事か、アラド?」
アラド「キョ、キョウスケ中尉!」
エクセレン「待たせちゃってごめんね。 けど、私達が来たからには 大丈夫よん」
ラミア「エクセ姉様……!」
ダイテツ「各機、直ちに出撃せよ!」
(出撃準備)
アラド「こ、これで何とか……」
リー「アラド・バランガ…… やはり敵との接触を図ったか」
アラド「え!?」
リュウセイ「な、なに言ってんだ!  あいつは……!」
リー「貴様の意見など聞いていない。 見ての通り、アラド・バランガは ノイエDCのスパイだった」
リー「故にここで奴を処分する」
リュウセイ「なっ……!」
ブリット「中佐、本気でそんなことを 言ってるんですか!?」
リー「そうだ。 まったく、貴様らの考えの 甘さには虫唾が走る」
リー「この状況下で、敵からの離反者を 偵察に出すなどと……」
カチーナ「ケッ! 虫唾が走るのは てめえの頭の堅さの方だぜ!!」
リー「あの状況を把握できぬ者が 何を言うか。現にアラド・バランガは 自ら通信を断ったのだぞ」
アラド「ち、違う! それは……!!」
リー「機体を損傷させたとて、 私はだまされんぞ」
マサキ「あの野郎、 あれが演技だって言うのか!?」
リューネ「状況を把握できてないのは あんたの方じゃなのさ!」
リー「部外者は黙っていろ」
マサキ「何だと!?」
リー「フン……民間の協力者風情が」
テツヤ「やめろ、リー!  今はそんなことを言っている 場合じゃない!」
リー「それが 上官に対する態度か、テツヤ?  下が下なら、上も上だな」
テツヤ「何っ!?」
リー「貴様の認識の甘さが 奴らを増長させているのだ」
リー「やはり、 貴様は指揮官としては失格…… せいぜいナンバー2止まりの男だ」
テツヤ「お前にそんなことを 言われる筋合いはない!」
レフィーナ「あ、あの……!」
ダイテツ「いい加減にせんか!  馬鹿者共がッ!!」
リー「!」
テツヤ「!」
ショーン(……落ちましたな、雷が)
ダイテツ「この状況下で 己の成すべきことを忘れ、 口論するとは何事だ!」
テツヤ「も、申し訳ありません……!」
ダイテツ「直ちに攻撃開始!  アルブレードとアンジュルグを 救助し、敵を撃破せよ!」
リー「……了解」
カイ「アラド、ラミア。すぐにそこから 離脱し、こちらと合流しろ」
アラド「で、でも、ゼオラが!  ゼオラがいるんです!!」
カイ「何……!?」
ラトゥーニ「ま、まさか、 あのファルケンに……!?」
ゼオラ「……」
アラド「あ、ああ! けど、あいつ…… おれを敵だと思い込んでる!」
ラトゥーニ「!」
アラド「それに、おれと一緒にいた 記憶がねえみたいなんだ!」
ラトゥーニ「え……っ!?」
リュウセイ「も、もしかして……!」
ラトゥーニ「記憶操作を 受けているの……!?」
キョウスケ「……エクセレン、 おれ達で先陣を務めるぞ」
エクセレン「そうした方が いいみたいね」
キョウスケ「ああ。ラミアはともかく、 アラドは満足に戦えんはずだ」
アクセル「……ふっ、ふふふ……」
アクセル「あれがこちら側の ゲシュペンストMk-III…… いや、アルトアイゼンか」
アクセル「楽しみにしていたぞ。 貴様と相見える時をな……!」
キョウスケ「……」
カイ「キョウスケ中尉、 フォワードはお前達に任せる!」
キョウスケ「了解」
アクセル「全機、ターゲット変更」
アクセル「ただし、ベーオウルフには 手を出すな。奴の相手はおれがする」
(アラート)
アクセル「!」
ラミア「こ、この反応は!?」
ユン「か、艦長!!  前方に空間転移反応が!!」
レフィーナ「転移反応!?」
ダイテツ「アインスト……!  いや、インスペクターか!?」
エイタ「いえ!  そのどちらの反応でもありません!」
ダイテツ「何だと!?」
アクセル(……もう来たのか)
(ツヴァイザーゲインが出現)
ラミア「間違いない、あれは……!!」
リオ「て、転移してきた!?」
ヴィンデル「……あれがそうか。 なるほど、我々の世界よりも 戦力は充実しているようだな」
アイビス「あれ、インスペクターの 機動兵器なの……!?」
リューネ「でも、ホワイトスターで あんな機体は見てないよ!」
レオナ「フォルムは アインストシリーズの物と違う……」
ヴィレッタ(そして、 エアロゲイターの機動兵器でもない)
リョウト「でも、転移技術を 持っているということは……」
タスク「まさか、新顔の異星人かよ!?」
マサキ「いや、怪しい技術絡みなら…… シュウと関係のある奴かも知れねえな」
イルム「何とも言えんね。 ただ、敵だってのは間違いないな」
ヴィンデル「面食らっているようだな。 無理もなかろう」
アクセル「システムXNの調子はどうだ?  ヴィンデル」
ヴィンデル「通常転移は安定している」
ラミア「やはり、 ツヴァイザーゲインか……!」
ヴィンデル「あれはW17か、アクセル?」
アクセル「ああ。 言語回路がイカれているようだがな」
(通信)
ラミア「ヴィンデル様…… その機体、まさか完成しちゃってたり するのでございましょうか?」
ヴィンデル「……」
アクセル「聞き苦しいぞ、W17。 普通に話せ」
ラミア「了解」
ラミア「……ヴィンデル様、見たところ 安定しているようだが?」
ヴィンデル「その通りだ。見ての通り、 通常転移機能に問題はない」
ラミア「いよいよ本隊が動くのか?」
アクセル「そうだ。 これから指令も多くなるだろう」
アクセル「……良かったな。指令が なければ何も出来ん貴様も、これで 安心できるというものだろうが」
ラミア「ああ」
ラミア(だが…… 何故、安心感がわかない?)
ラミア(もしかしたら…… 情緒を司る感情中枢も 破損しているのか……?)
キョウスケ「奴らは何をしている……?」
ライ「……ラミアの様子がおかしい」
エクセレン「ねえ、どうしたの?  ラミアちゃん」
ラミア「……これ以上は怪しまれる。 どうすればいい?」
ヴィンデル「ツヴァイの実戦テストも 兼ね、ここまでやって来た。 W17……付き合ってもらうぞ」
ヴィンデル「それに、仕方ないとは 言え、人形ごときに不遜な口の 利き方をされるのは不愉快でな」
ラミア「……すまん」
アクセル「フッ……」
ヴィンデル「アクセル、 お前はゼオラ曹長と共に戻れ」
アクセル「何故だ?」
ヴィンデル「ベーオウルフ絡みになると お前は突っ走る傾向にあるからな」
アクセル「おれが奴に負けるとでも?」
ヴィンデル「この段階で しくじるわけにはいかん。 それに、お前を失うわけにもな」
アクセル「……」
ゼオラ「し、しかし、 私に与えられた命令は……!」
アクセル「だろうな。人形でなければ、 それが普通の反応だ」
ゼオラ「え……?」
ヴィンデル「機会は別に与えてやる。 今回は命令に従え。いいな?」
ゼオラ「……」
アクセル「……」
ヴィンデル「アクセル、 お前の本当の敵はあの男ではない。 ……わかっているはずだ」
アクセル「……」
アクセル「……了解。 勝負は預けるぞ、ベーオウルフ」
アクセル「それまで、 他の誰にも倒されるなよ」
(ランドグリーズが西端へ移動し消える)
ゼオラ「くっ……!  ラト、連れて帰ってあげられなくて ごめん……!」
(ビルトファルケンが西端へ移動し消える)
ラトゥーニ「ゼオラ!?」
アラド「ゼ、ゼオラーッ!!」
ラミア(退いたか、アクセル隊長……)
ヴィンデル「……システムXNの 復元によって、我々はいよいよ 動き出すことが出来る……」
ヴィンデル「我らの手によって 再び『アギュイエウスの扉』が 開かれるのだ」
ラミア「……」
ヴィンデル「こちら側では あの時のような不覚はとらんぞ、 ハガネ、ヒリュウ改の者共よ」
ラミア「連邦軍特別任務実行部隊 『シャドウミラー』指揮官、 ヴィンデル・マウザー大佐……」
ヴィンデル「……!」
ラミア「来い。 何故か私は機嫌が悪い。何があっても 恨まないでもらう……!」
ヴィンデル「面白い、面白いぞ!  W17!」
(作戦目的、熟練度獲得条件変更)

〈vs ヴィンデル〉

[キョウスケ]

キョウスケ「量産型のゲシュペンスト、 アルブレード、ヴォーダン…… そして、空間転移」
キョウスケ「どうやら、 こいつがノイエDCに対する謎の 答えを握っていそうだな」
ヴィンデル(フッ……。 今のお前の力を見せてもらうぞ、 ベーオウルフ)

[エクセレン]

エクセレン「妙に仰々しい機体ねぇ。 もしかして、ボスキャラだったりして」
ヴィンデル(何だ? この女は……)

[ラミア]

ヴィンデル「W17…… レモンはお前のことを 気に入っているようだが……」
ヴィンデル「私は自分で 確かめたことしか信じないのでな。 ……最新型の性能、見せてもらおう」
ラミア「その最新型も…… どうやらおかしくなり始めたらしい」
ヴィンデル「……?」

[アラド]

アラド「こいつが 今のゼオラの上官か!?」
ヴィンデル「……」
アラド「だけど、こんなメカ クレイドルじゃ見たことねえぞ!!」
ヴィンデル(……セトメ博士の実験体が 奴ら側へ寝返っていたとはな)
ヴィンデル(我らのことは 何も知らぬだろうが…… ここで始末しておくべきか)

[アイビス]

アイビス「こいつらを何とかしなくちゃ、 テスラ研にいるフィリオ達を 助けにいくことが出来ないんだ!」
ヴィンデル(プロジェクトTDの機体か。 これが奴らの手中にあるとは……。 ローズめ、何を考えている?)

[マサキ]

マサキ「てめえ! まさかシュウと 関係があるんじゃねえだろうな!?」
ヴィンデル(……魔装機神サイバスターか。 インスペクターが現れた以上、 こちらにいるのは当然だな)
マサキ「おい! 何とか言いやがれ!」

[リューネ]

リューネ「あんたも、 そこのPT部隊と同じで、 ノイエDCなのかい!?」
ヴィンデル(ヴァルシオーネ…… やはり、こちらでもノイエDCには 与していないか)

[イルム]

イルム「どうも今回は 空間転移装置が流行のようだな」
ヴィンデル「……」
イルム「まさか、 独自に開発したわけじゃあるまい。 そいつをどこで手に入れた?」
ヴィンデル(フッ…… あながち間違ってはいないがな)

〈ツヴァイザーゲイン以外の敵機全滅〉

ヴィンデル「なるほど。 やはり、こちらでも我々の前に 立ち塞がるのはこいつらか」
ヴィンデル「だが、おかげで ツヴァイの慣らしとしては上々だ」
ラミア「私は……」
ヴィンデル「待つがいい。もう少しだ。 我々の世界でなし得なかったこと…… こちらでは可能にしてみせよう」
ヴィンデル「いいな、W17。 次の指示を待て」
(ツヴァイザーゲインが転移撤退)
クスハ「き、消えた……!」
ライ「それも転移で、か」
ヴィレッタ「あの機体は 単独での空間転移が可能なようね」
ラッセル「インスペクターの機体の中に それを行ったものはいません……。 もしかして、あれは第三の……?」
イルム「いや……多分、地球人だろう。 ゲシュペンストやアルブレードが 奴に従っているようだからな」
ラミア(その通り……地球人だ。 私は……違うがな)

《連邦軍・アビアノ基地》

ラーダ「……ラトゥーニ、あなたには 非常に聞きづらいことなんだけど……」
ラーダ「スクールでは やはりあの手の記憶操作が よく行われていたの……?」
ラトゥーニ「はい……。 ひどい例では、人格そのものを 変えられてしまった仲間も……」
リュウセイ「何だって……!?」
ブリット「そ、そこまでやるのか……」
ラトゥーニ「でも、 自分では記憶を変えられたことが わからない……」
ラトゥーニ「私も……もしかしたら」
ラーダ「ラトゥーニ……」
ラトゥーニ「けど、私はまだまし……。 オウカ姉様やアラド、ゼオラ達との 記憶があるから……」
ラトゥーニ「それに、みんなと 出会えたし……みんなとの思い出は 大切なものになったから……」
ラトゥーニ「でも、ゼオラは……」
リュウセイ「……あの子の記憶は もう元に戻らないのか?」
ラトゥーニ「……わからない……」
(扉が開閉する)
アラド「大丈夫だよ、ラト。 おれが何とかしてみせるって」
ラトゥーニ「アラド……」
ブリット「何とかするって…… どうやって?」
アラド「それは わからないッスけど……」
アラド「おれ…… 諦めるわけにはいかないんです。 あいつとの約束を守るためにも」
ラーダ「アラド……彼女は 完全に変わってしまっていたの?」
アラド「俺に関する記憶は そうだったみたいッスけど……」
アラド「すぐにカッとなる所とか、 融通の利かない所とかは同じで…… ラトのことも覚えてたし……」
ラーダ「……じゃあ、 彼女の記憶を元に戻すことが 出来るかも知れない」
アラド「え!? 本当ッスか!?」
ラーダ「ええ。 おそらく、彼女が受けているのは 暗示系の記憶操作よ」
リュウセイ「暗示系……?」
ラーダ「人格や記憶を完全に 作りかえてしまうのではなく……」
ラーダ「元からあるものに 何からのイメージを加え、 内容を変える方法……」
ブリット「催眠術みたいな ものなんですか?」
ラーダ「概念的には似ているわ。 だから、与えられたイメージ……」
ラーダ「彼女の記憶を 歪めている原因となっているものを 取り除けば……」
アラド「……」
リュウセイ「……ブリット、 あの時に似てるな」
ブリット「ああ。あの時のそれは…… 弐式のT-LINKシステムだった」
アラド「ど、どういうことなんです?」
リュウセイ「前例があるってこった。 それも、成功例」
ブリット「だから…… 今回もきっと上手くいくよ」
アラド「……」
リュウセイ「アラド、ラトゥーニ…… お前達の姉さんと一緒に、あの子も スクールから助けてやろうぜ」
リュウセイ「……本当の意味でな」
アラド「はい」
ラトゥーニ「うん……」

《連邦軍・アビアノ基地》

カチーナ「それにしても…… さっきの角メカは何モンなんだよ?」
ヴィレッタ「機体の感じは マスタッシュマンに似ていたわね」
カチーナ「マスタッシュマン?」
エクセレン「ヒゲ男……って意味ね」
ライ「隊長、それは……?」
ヴィレッタ「オペレーションSRWの時、 私達とは別の戦闘宙域で確認された 所属不明の人型機動兵器よ」
カチーナ「そんな奴が あの時の戦場にいやがったのか?」
エクセレン「ヴィレッタお姉様、 所属不明ってことは……」
エクセレン「地球の物でも、 エアロゲイターの物でもないっこと?」
ヴィレッタ「いえ、マスタッシュマンは エアロゲイターの機動兵器と 戦闘を行っていたそうよ」
ヴィレッタ「そのことから判断すれば、 地球製である可能性が遥かに高いわ」
カチーナ「今、そのヒゲ野郎は どこにいるんだ?」
ヴィレッタ「オペレーションSRW後、 行方不明になり……現在もその消息は つかめていない」
エクセレン「ん~、 今回の事件はアインストも含め、 謎ばっかりで奥が深そうねぇ」
キョウスケ「だが、 さっきの連中はノイエDC軍とは違う。 ……それだけは明らかだ」
ライ「……」
ライ(あの特機が現れた時…… ラミアの様子がおかしかった)
ライ(もしや……?)

《ハガネ艦長室》

テツヤ「……艦長、 先程は申し訳ありませんでした」
テツヤ「リー中佐が言う通り…… 自分は指揮官として失格です」
ダイテツ「……指揮官クラスの 揉め事は部隊の士気だけでなく、 戦局にも影響する」
ダイテツ「そのことを忘れるな」
テツヤ「は、はい」
ダイテツ「ところで、話は変わるが……」
ダイテツ「大尉、 今回の件が落ち着いたら、お前には ハガネから降りてもらうことになる」
テツヤ「は!?  そ、それはいったい……!?」
ダイテツ「これはあくまでも月の奪還に 成功した場合の話だが……」
ダイテツ「お前にスペースノア級の 四番艦から陸番艦、そのいずれかの 艦長を務めてもらおうと思っている」
テツヤ「じ、自分が…… スペースノア級の艦長に!?」
ダイテツ「そうだ。 お前はワシの下でDC戦争、L5戦役と 充分な経験を積んできた……」
ダイテツ「そして、 スペースノア級を任せられる人間に 成長しつつあると思っておる」
テツヤ「じ、自分はまだそんな……」
ダイテツ「謙遜することはない。 それに、同期のリー中佐もシロガネの 艦長に就任しているではないか」
テツヤ「……」
ダイテツ「不服なのか?」
テツヤ「い、いえ、そんなことは。 しかし、自分はハガネに 愛着がありますし……」
テツヤ「まだ艦長の下で多くのことを 学びたいと思っております」
ダイテツ「雛鳥はいつか親鳥の下から 飛び立たねばならん。 それはお前とて例外ではない」
テツヤ「……」
ダイテツ「自信を持て、大尉。 そして、以後はそのつもりで 任務に就け。いいな?」
テツヤ「……わかりました」

《ハガネ格納庫》

ラミア(機密通信装置、 機能確認……)
(通信)
ラミア(よし、問題はない。 確実に指令を受けることが出来る)
ラミア(アクセル隊長、 もう人形などとは言わせない)
ラミア(……いや、 それこそが人形ということか)
ラミア(だが、 今さら私は生き方を変えられん……)


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