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新生、聖十字軍 月へ行く ~ 第13話 ~

《アースクレイドル内部》

ユウキ「……報告します。 モザンビーク海峡で敵潜水艦隊の 撃破に成功……ただ今帰還しました」
アーチボルド「ご苦労。 おかげで、あちら方面の連邦軍は 大人しくなったみたいですね」
ユウキ「しかし、敵は アフリカ北部へ戦力を集中させていると 聞いておりますが」
アーチボルド「特に心配することは ないでしょう」
アーチボルド「ヴィンデル大佐の 開発チームが作った新型機が、まもなく 実戦へ投入されるそうですからね」
ユウキ「新型機…… 例の斬艦刀装備の特機とは 違うのですか?」
アーチボルド「僕もまだ詳細は 聞いていませんが、Type30と 同じく量産型らしいですよ」
ユウキ「では、ベースは ヒュッケバインMk-II……?」
アーチボルド「いえ、それより上位の 機種を基にした物だそうです」
ユウキ(上位機種だと?  量産型のヒュッケバインMk-IIは 最新鋭機なのに……)
ユウキ(あれ以後、 連邦の新型を奪取したという話は 聞いていない。どういうことだ?)

《アースクレイドル内部》

カーラ「……それで、 しばらくは休めそうなの?」
ユウキ「いや。 出撃準備が整い次第、地中海方面へ 向かうことになる」
カーラ「そう……」
ユウキ「どうした? 疲れたのか?」
カーラ「ううん。こんなことを やってる内に異星人が攻めてきたら どうすんのかなって思ってね」
ユウキ「……デザートクロス作戦は もう中盤に差し掛かっている……」
ユウキ「最悪の事態を防ぐためにも、 今は与えられた任務に集中すべきだ」
カーラ「うん……。 ところで、ゼオラってあれから どうなったの?」
ユウキ「配属が変更され、元の部隊へ 戻った。知らなかったのか?」
カーラ「そうじゃなくて……ここへ 来てからずっとあの子の顔を 見てないし、心配なんだけど……」
ユウキ「今はセロ博士のラボにいると 聞いているが……」
カーラ「……」
カーラ(ゼオラ……大丈夫かな……)

《???》

アギラ「さあ…… 目を覚ますんじゃ、アウルム1」
アギラ「ワシの可愛い娘……。 お前の出番が来たぞ」
???(オウカ)「……」
???(オウカ)「……母様……」
アギラ「気分はどうかえ? アウルム1」
???(オウカ)「……悪くありません」
アギラ「そうかい。 それは良かったのう、フェフェフェ」
???(オウカ)「母様、弟や妹達は……?」
アギラ「もう目覚めておる。 お前も早う支度をするんじゃ」
???(オウカ)「はい……」

《アースクレイドル内部》

ヴィンデル「初期ロットのテストだと?」
レモン「ええ、アクセルが戻ってくる前に 済ませておきたいの」
ヴィンデル「仕掛ける相手は?」
レモン「ハガネがベストね」
ヴィンデル「いいだろう。 私としても、あの連中の足止めを しておきたいからな」
ヴィンデル「ついでにエルアインスの 実戦テストもやっておけ」
レモン「あれを? 今、ハガネ相手に 出したらバレるかもよ」
ヴィンデル「いずれわかることだ。 それに……上手くいけば、ヘリオスが 反応を見せるかも知れん」
ヴィンデル「バンに Type30を渡したのは、 そのためでもあるからな」
レモン「そういうことなら、 ……W16、あなたが今回の指揮を 執りなさい」
エキドナ「了解です」
レモン「メインターゲットはハガネ。 攻撃パターンはレベル2止まりで」
エキドナ「はっ」
レモン「それと……今回のテストで 彼らの耐久性を調べたいから、 無茶をさせても構わないわよ」
エキドナ「撃墜されても構わないと 言うことですか?」
レモン「ええ、初期ロットは まだ数に余裕があるし……」
レモン「あなたがデータを きちんと持って帰りさえすれば、ね」
エキドナ「了解です」
レモン「そうそう、W17に 予備の機密通信装置を持って行って」
レモン「あなたと接触してからも 音沙汰なしなのは、装置が 故障してるせいかも知れないから」
エキドナ「了解。では、出撃します」

《アースクレイドル内部》

アギラ「……クエルボ、 ブロンゾ27の調整は終わったのか?」
クエルボ「はい」
アギラ「時間がかかり過ぎじゃの」
クエルボ「ですが、ラトゥーニが アラドを殺したという事実は、 彼女にとって過酷過ぎましたので……」
アギラ「すぐに使えるのかえ?」
クエルボ「い、いえ……もうしばらくは」
アギラ「そうか。 ワシの方はとりあえず仕上がったぞ」
クエルボ「では、彼女は……」
(扉が開閉する)
ゼオラ「……」
アギラ「27号…… ブロンゾクラスはお前一人だけに なってしまったが……」
アギラ「これからも アウルム1と共にDC再興のために 戦い、良いデータを残しておくれ」
ゼオラ「!  もしかして……姉様が 目覚めたのですか?」
(扉が開閉する)
オウカ「そうよ、ゼオラ」
ゼオラ「オウカ姉様……!」
オウカ「話は聞いたわ。 辛い想いをしたようね……」
ゼオラ「……」
オウカ「あの子が……ラトが生きていて 私の弟を殺しただなんて……」
ゼオラ「私のせいです、姉様。 アラドを守ってあげることが 出来なかった……」
オウカ「ゼオラ、自分を責めては駄目。 そして、ラトも」
ゼオラ「え?」
オウカ「私の可愛い妹が…… ラトが自分の意思でアラドを 殺したとは思えない」
オウカ「きっとあの子は 連邦軍の人間に再教育され、 そうするよう仕向けられたのよ」
ゼオラ「……」
オウカ「だから、 あなたとラトは悪くない……」
オウカ「悪いのは連邦軍…… ラトを操っている者達……」
オウカ「アラドの仇はラトじゃない。 だから、あの子を恨んでは駄目」
ゼオラ「はい。 姉様がそう言うのなら……」
オウカ「……母様、 私を出撃させて下さい。 ラトを連れ戻したく思います」
アギラ「いいじゃろう。 ちょうどヴィンデルの配下の者達が 出るところじゃ」
アギラ「奴にはワシが話をつけておく。 ウォーミングアップも兼ね、 共に出撃するがいい」
オウカ「承知致しました、母様」
ゼオラ「オウカ姉様……」
オウカ「ゼオラ、ラトのことは 私に任せなさい。いいわね?」
ゼオラ「はい」
オウカ「では、母様…… 行って参ります」
アギラ「うむ。 ブロンゾ27、アウルム1の支度を 手伝ってやれ」
ゼオラ「わかりました」
(扉が開閉する・ゼオラとオウカが立ち去る)
クエルボ「……セトメ博士、 オウカは大丈夫なのですか?」
アギラ「記憶の調整はしてある。 もっとも、戦闘中に弊害が 少し出るかも知れんがの」
アギラ「それより、興味深いのは ラトゥーニ11じゃ」
アギラ「あれが 生きていることは知っておったが、 まだ戦場に出ているとはの」
クエルボ「オウカが言った通り、 ラトゥーニは連邦軍で調整を 受けているのでしょうか?」
アギラ「ケンゾウ・コバヤシなら あるいは……」
アギラ「いや、あり得んな。 奴が念動力者以外に 興味を持つとは思えん」
クエルボ「……」
アギラ「じゃが、11号が 自分の意思で戦っておるとなると…… ふむ、面白い」
アギラ「スクール時代に 廃棄されたクラスとは言え、 連れ戻して調べてみる価値はある」
クエルボ「……」
アギラ「何じゃ、その顔は。 不満でもあるのかえ?」
クエルボ「……いえ」
アギラ「フン……くれぐれも、 ブーステッド・チルドレンに つまらぬ情けなどかけるでないぞ」
クエルボ「……」

《シロガネ医務室》

タスク「う~、 まだ頭の奥がジンジンする……」
ラッセル「だ、大丈夫ですか?」
タスク「ああ。 ただの脳震盪だったみてえだし…… ガンドロに感謝しなきゃあな」
カチーナ「何にせよ、 てめえの意識が戻って良かったぜ」
タスク「おろ? 中尉にしては 珍しく優しい言葉ッスね」
カチーナ「何言ってやがる。 あたしはいつでも優しいぜ?」
タスク「……とおっしゃってますが、 どうなんでしょう? ラッセルさん」
ラッセル「え?  ま、まあ……極たまには」
カチーナ「極って付けんな!」
タスク「で、状況はどうなんスか?」
カチーナ「今、シロガネは ハガネとの合流地点へ向かってる。 アフリカから撤退するためにな」
タスク「じゃ、じゃあ、連邦軍は……」
リュウセイ「ああ、押されてる。 あの斬艦刀ロボが他の所にも 現れてるみてえだし……」
タスク「そうか……。あれ、ホントに ゼンガーの大将だったのかな」
タスク「俺の勘じゃ、 違うような気がするんだけど……」
リュウセイ「パイロットはともかく、 あのロボットの正体の方は ちょっとだけ見当がついたぜ」
タスク「マジかよ?」
リュウセイ「ああ、奴のデータと 俺がもらってるSRX計画のデータと 照らし合わせてみたんだ」
リュウセイ「機体構造は グルンガストシリーズに似てて……」
リュウセイ「ドリルと液体金属刃の 斬艦刀をもってることから、新型の 参式2号機に近い奴みてえだ」
タスク「もしかして、 ファルケンのタイプRと同じで、 DC残党に持ってかれたのかよ?」
リュウセイ「いや 参式は1号機から3号機まで 全部テスラ研にあるし……」
リュウセイ「敵に奪われたって話も 聞いてねえ」
ラッセル「じゃあ、テスラ研の データがハッキングされたとか……」
タスク「う~ん…… あそこのデータを盗み出すなんて、 簡単にゃ出来ないと思うけどなぁ」
カチーナ「奴の正体が何であれ…… あたしらの敵になるなら、 ブッ倒すまでだぜ」
ラッセル「ま、またそんなことを……」
カチーナ「だいたい、あの男が こっちの話を素直に聞くタマか!」
タスク「中尉も他人のこと言えないと 思うッスけど……」
カチーナ「何だと、この……!」
タスク「!」
カチーナ「って、いけねえいけねえ。 頭打った奴を殴っちゃダメだ。 しばらくは労ってやるぜ」
タスク(あ~ビックリした。 もしかして、これが極たまって奴?)
カチーナ「ところで、 レオナはどこへ行ったんだ?」
タスク「あ、 さっき腹減ったって言ったら、 出て行ったんスけど……」
カチーナ「な、何!?」
リュウセイ「も、もしかして!?」

《シロガネ艦内》

レオナ「……」
エクセレン「あら……レオナちゃん」
レオナ「エクセレン少尉……」
エクセレン「タスク君、 意識を取り戻したんでしょ?」
レオナ「え、ええ……」
エクセレン「どうしたの?  手にお鍋なんか持って……」
レオナ「……やっぱり、やめます」
エクセレン「え?」
レオナ「また……倒れるだろうから」
エクセレン「た、倒れるって…… それ、もしかして?」
レオナ「はい…… 彼のために作ったんです」
エクセレン「わお、愛の手料理って奴?  レオナちゃん、いいトコあるじゃない」
レオナ「……私…… 彼のためにしてあげられることが あまりありませんから……」
レオナ「でも……やめておきます」
エクセレン「ん~、そうねぇ……」
エクセレン「じゃ、 レオナちゃんがおいしくないって 思う味付けをしてみるのはどう?」
レオナ「え……?」
エクセレン「もしかしたら、 もしかするかもよ?」
レオナ「……」

《シロガネ医務室》

タスク「……そうか、 ガンドロの応急修理が終わったのか」
レオナ「ええ…… 敵に追いつかれるのは時間の 問題だから、何とか戦えるようにと」
タスク「じゃ、 俺もおちおち寝ちゃいられねえな」
レオナ「……無理はしないで」
タスク「ど、どったの?  今日はヤケに優しいな。極たま?」
レオナ「……」
タスク「心配すんなよ。 俺の運の強さ、知ってるだろ?」
レオナ「だから、心配なのよ。 あなたに何かあったら、私……」
タスク「え? なになに?」
レオナ「な、何でもなくてよ。 それより、これを……」
タスク「鍋? も、もしかして……?」
レオナ「ええ、私が作ったの。 もし、良かったら……」
レオナ「いえ……具合が良くなってから、 温めて食べて」
タスク「いや……今、食うぜ」
レオナ「え!?」
タスク「だって、 俺のために作ってくれたんだろ?  すぐに食わなきゃ意味ねえぜ」
レオナ「ま、待って!」
タスク「いや。ここで食べなきゃ、 男がすたるってモンだぜ」
レオナ「ダ、ダメよ!」
タスク「いっただきま~す!」
レオナ「や、やめて!!」
タスク「う……! ぐ!?」


第13話
新生、聖十字軍

〔戦域:森周辺〕

(シロガネが森の上に)
リー「艦の速度はまだ上がらんのか。 機関部の修理状況は?」
一般兵「現在の修復率は約30%です」
リー「時間がかかり過ぎだ。 もっと効率を上げられんのか?」
一般兵「停艦して修理を行えば 可能だと思われますが……」
リー「現在の本艦の索敵能力は 著しく低下している。足を止めれば、 敵の餌食になるだけだ」
リー「他ブロックの修理班を 機関部へ回し、作業を急がせろ」
一般兵「りょ、了解です」
リー(……これでは ハガネとの合流予定時間に 大幅に遅れてしまう)
リー(ちっ……。 この私がテツヤ・オノデラ達の 足を引っ張ることになるとはな)
(アラート)
一般兵「艦長!  本艦後方に敵の飛行部隊が!!」
リー「!」
(敵機が出現)
リー「追いつかれたか……!  直ちにPT部隊を出撃させろ!」
(出撃準備)
リー「プラチナム1より各機へ。 本艦は戦闘空域からの 離脱を優先する」
リー「お前達は敵機を迎撃せよ。 何としても本艦を守り抜くのだ」
カチーナ「己の命に代えても……かよ?」
リー「無論だ。 お前達の代わりなどいくりでもいる。 ……本艦と違ってな」
カチーナ「何だとォ!?」
エクセレン「あらら、お約束の展開」
ラッセル「ちゅ、中尉、また艦長に……」
エクセレン「ま、喧嘩するほど 何とやらって言うし……あの二人、 案外後で仲良くなるかもね」
カチーナ「ふざけんな!」
リー「冗談ではない!」
エクセレン「いやん、同時援護ツッコミ?」
ラッセル(どっちもどっちかも……)
レオナ「……タスク、 身体の調子はどう?」
タスク「ああ、 レオナちゃんの看病とお粥のおかげで もうバッチリだぜ」
リュウセイ「お粥って……あいつの料理を 食って平気だったのか?」
タスク「それが何とめちゃウマでさ。 結婚後の不安がちょいと和らいだぜ」
レオナ「ば、馬鹿なことを言ってないで、 さっさと迎撃態勢に入りなさい!」
タスク「へいへい」
エクセレン(んふふ、 私の作戦、バッチリだったみたいね)
カチーナ「よし、先手必勝だ!  突撃して敵をブッ叩くぞ!!」

〈敵機4機以下 or 2EP〉

(アラート)
一般兵「か、艦長!  3時方向、新たな敵部隊です!!」
リー「!」
(南側に敵機が出現)
リュウセイ「くそっ、面倒な所に!」
タスク「あいつらが本命か!?」
リー「対空機関砲、弾幕展開!  間の速度を可能な限り上げろ!」
一般兵「だ、駄目です!  メイン、補助エンジンに異常発生!  このままでは停艦します!」
リー「何だと……!?」
カチーナ「シロガネの近くにいる奴は 速攻で敵機を叩き落とせ!」
カチーナ「ボヤボヤしてっと シロガネを沈められちまうぞ!!」
ラッセル「りょ、了解です!」

〈敵機3機以下〉

リー「カチーナ隊は何をしている!  さっさと敵を落とさんか!」
カチーナ「チッ、 いちいち言われなくても!」
一般兵「艦長、 こちらへ突入してくる戦艦が!  識別はスティール2です!」
リー「何っ……!?」
(ハガネ他味方PTが出現)
エクセレン「わお! ハガネじゃない!」
リュウセイ「いい所に来てくれたぜ!」
リー(くっ、 またあの艦に救われるとは……!)
キョウスケ「無事か、みんな?」
カチーナ「何とかな。 それより、こっちを手伝ってくれ!」
キョウスケ「了解した」
テツヤ「各機、攻撃を開始せよ!」
(作戦目的変更)

〈敵機全滅〉

エイタ「敵機、全機撃墜!」
ダイテツ「本艦と各機は現状維持。 周辺の警戒に当たれ」
テツヤ「はっ」
エクセレン「ふ~う…… これで一息つけるかしらん?」
ラミア「エクセ姉様、 油断は禁物でございますですよ」
タスク「おろ?  あのカワイコちゃん、誰?」
リュウセイ「ああ、 あれはアンジュルグって言って…… イスルギの試作機なんだ」
タスク「そっちの カワイコちゃんじゃねえっつーの!」
エクセレン「そうだ、キョウスケ…… 話があるんだけど」
キョウスケ「……斬艦刀を持った特機と ゼンガー少佐のことか?」
エクセレン「え!?  ど、どうして知ってるの!?」
リュウセイ「もしかして、 そっちも接触したのか!?」
キョウスケ「……ああ。 俺達が救援に向かった先の部隊が、 あの特機に潰された」
リュウセイ「……!」
エクセレン「ねえ…… あれって、やっぱり……」
キョウスケ「まだ……わからん。 この目で真実を確かめるまでは」
ブリット「自分も…… ゼンガー少佐がDC側についている なんて思いたくありません」
エクセレン「そうね……」
リー(何を甘いことを。どう見ても あの男はゼンガー・ゾンボルトだ。 そうとしか思えん)
(通信)
ダイテツ「……こちらは ハガネのダイテツ・ミナセだ」
ダイテツ「周辺の警戒は本艦の部隊が 行う。そちらは機関部の修理を急げ」
リー「……了解です。 ところで、何故ハガネはここへ?」
ダイテツ「貴艦の合流が 予定より大幅に遅れていたのでな。 もしやと思い、迎えに来た」
リー「……そちらの力を借りずとも、 我々は自力で合流地点へ たどり着くつもりでした」
リー「現在の戦況下で、 その行動は軽率すぎるのでは ありませんか?」
テツヤ「どういう意味だ、リー!?」
リー「言葉遣いに気をつけろと 言ったはずだぞ、テツヤ。 まったく、上が上なら……」
(アラート)
リー「!」
テツヤ「何事だ!?」
エイタ「本艦の前方より、 機動兵器群が急速接近中!  友軍機ではありません!」
テツヤ「エイタ、敵機の識別は!?」
エイタ「ま、待って下さい……」
エイタ「! こ、これは!?」
テツヤ「どうした!?」
エイタ「そ、そんな……!  これって、どういうことなんだ!?」
(量産型ゲシュペンストMk-IIが出現)
ブリット「あ、あれは!?」
エクセレン「ゲ、ゲシュちゃんが いっぱい……あれ、量産型よね?」
ライ「妙だな。あの機体は 生産が休止されているはず……」
カイ「うむ。L5戦役後、代わりに リオンシリーズが量産されたからな」
カイ「俺やカチーナ中尉たちを含め、 今でもいくつかの部隊が量産型の ゲシュペンストを使用しているが……」
カイ「あれだけの数が DC残党側にあるのは確かに妙だ」
リュウセイ「もしかして、あいつらが 量産してやがったのか?」
ライ「リオンシリーズがあるにも 関らずにか?」
リュウセイ「あ……」
キョウスケ「可能性があるとすれば、 L5戦役の時にエアロゲイターが 複製した機体だが……」
ラトゥーニ「ホワイトスターやメテオ3が 破壊された今……そんな物が現存し、 稼動しているとは思えません」
キョウスケ「ああ」
イルム「空を飛んでいる所を見ると、 テスラ・ドライブを積んだ 改良型らしいが……」
イルム「性能面はともかく、 コスト面じゃリオンの方が上だ」
イルム「連邦軍ならいざ知らず、 連中にゲシュペンストMk-IIを 量産する理由はないぜ」
ブリット「じゃあ、あれは何なんです?」
イルム「その名の通り、 幽霊だったりしてな」
ブリット「い、いくら何でもそんな」
キョウスケ(……奴らは、今までの DC残党と違う。そんな気がする)
ラミア(……間違いない、 あれは本隊の機体だ)
ラミア(ならば、 こちらの状況が伝えられる)
カイ「各機へ! 詮索は後だ!  散開して敵機を撃破しろ!」
リュウセイ「了解!」

〈vs 量産型ゲシュペンストMk-II〉

[ラミア]

ラミア(機密通信装置は使えないが、 本隊で使用している暗号ならば……)
ラミア(……)
ラミア(……応答がない。だが、 こちらの状況は伝わったはずだ)

〈敵機全滅〉

(アラート)
テツヤ「何だ!?」
エイタ「敵の増援部隊、 本艦へ向けて急速接近中!」
テツヤ「各機、警戒せよ!」
(エルアインスなどが出現)
ブリット「くっ、 またゲシュペンストか!」
イルム「いや、待て!」
ブリット「え!?」
イルム「あ、あの機体は……!?」
リュウセイ「ま、まさか!!」
(エルアインスを指す)
イルム「アルブレード……!!」
カイ「何だと!?」
ライ「確かに似ています。しかし……」
ラトゥーニ「あの機体は リュウセイが乗った物を含めて、 3機しか作られていないのに……」
ライ「ああ。こんな所に……しかも、 2機も存在しているわけがない」
キョウスケ「マオ社から試作機の データが流出した可能性は?」
ライ「ないとは言い切れんが、 可能性は限りなく低い」
リュウセイ「ライの言う通りだ。 それに、あれはこの世に存在してる はずのねえ機体だぜ」
キョウスケ「……!」
ラミア(そう……。 その表現はある意味正しい)
キョウスケ「どういうことだ?」
リュウセイ「細かい所は色々と 違うみてえだけど、肩のキャノンに 背中のテスラ・ドライブ……」
リュウセイ「ありゃ、試作機じゃねえ。 量産型アルブレード…… 『エルシュナイデ』だ」
キョウスケ「量産型……?」
ブリット「エルシュナイデ!?」
リュウセイ「ああ、アルブレードってのは コードネームでな……」
リュウセイ「正式採用の暁には そう名付けられることになってんだ」
ブリット「……」
イルム「もっとも…… マオ社じゃ、まだ骨組みを 作っている最中だがな」
ブリット「ええっ!?」
キョウスケ「現時点で 完成しているはずのない機体、か」
エクセレン「どうやら、 幽霊はゲシュちゃんだけじゃ ないみたいね」
ラミア(あれが出てきたという事は…… 本隊が本格的に動き始めたのか?)
ラミア(何にせよ、 上手くコンタクトを取らねば)
(通信)
ラミア(来たか。 だが、通常周波数を使うとは…… どういうつもりだ?)
オウカ「……ラト、 聞こえているなら返事をなさい」
ラトゥーニ「!!」
ライ「ラトゥーニを知っているだと?  まさか……!」
ラトゥーニ「オウカ……!!」
カイ「オウカだと?」
ライ「では、 あれがスクールの……!」
オウカ「久しぶりね、ラト。 あなたが生きていてくれて 嬉しいわ」
ラトゥーニ「ね、姉様……」
オウカ「アラドのことは知っているわ。 でも、私はあなたを責めはしない」
ラトゥーニ「え?」
オウカ「……あなたは自分の意思で 戦っているつもりなのでしょうけど…… それは違うの」
ラトゥーニ「姉様、何を……!?」
オウカ「今のあなたは 本当のあなたじゃない……」
オウカ「あなたは連邦軍に 再教育されてしまっているのよ」
オウカ「彼らがあなたを自分達の 兵器として利用するために……」
ラミア(……なるほど、 要は私と同じか)
ラトゥーニ「違う……!」
ラミア「!」
ラトゥーニ「姉様、私は!」
オウカ「……可哀想なラト。 自分がだまされていると わからないのね」
オウカ「だから、 あなたはゼオラと戦い…… アラドを殺してしまった」
ラトゥーニ「え……!?」
ブリット「違う、あれは事故だ!  それにアラドは死んじゃいない!」
リュウセイ「そうだ!  あいつは生きてる!」
オウカ「戯れ言を。 その証拠があるとでも?」
エクセレン「今は月にいる……って 言っても、信じてくれないわよね」
オウカ「……思い出して、ラト。 スクールで私達と過ごした 日々のことを……」
ラトゥーニ「……!」
オウカ「本当の自分を思い出して。 そして、私と一緒に帰るのよ」
オウカ「母様とゼオラが あなたを待っているわ」
ラトゥーニ「嫌……」
オウカ「!」
ラトゥーニ「私は……帰らない。 だまされているのは、 姉様達の方……」
オウカ「何を言うの。あなたは 母様やメイガスに育ててもらった 恩を忘れたの?」
オウカ「私達と一緒に過ごした日々を 忘れてしまったの?」
ラトゥーニ「……みんなのことは 忘れていない……」
オウカ「なら、何故?」
ラトゥーニ「……私はスクールで 本当の自分を失ってしまった……」
ラトゥーニ「そして、 それをジャーダやガーネット、 リュウセイ、シャイン王女……」
ラトゥーニ「ハガネやヒリュウ改の みんなのおかげで取り戻せたの」
オウカ「……」
ラトゥーニ「だから、姉様…… 私はあなた達の所へ帰らない」
ラトゥーニ「そして、私が姉様達に かけられた呪縛を解く……」
オウカ「それは私の台詞よ、ラト。 私の言うことが聞けないなら、 力ずくでもあなたを連れて帰る」
オウカ「そして、私と母様の手で 本当の自分を思い出させてあげるわ」
リュウセイ「冗談じゃねえ!  それじゃ、スクールの時と 同じだろうがっ!!」
オウカ「お黙りなさい。 部外者であるあなたに何がわかると 言うのです?」
リュウセイ「何?」
オウカ「私とラトの絆を知らぬあなたに 口を挟まれるのは心外です」
オウカ「そして……ラトを利用し、 アラドを殺させたあなた達…… 連邦軍を許すわけにはいきません」
オウカ「弟の仇はこの私…… スクールの長姉たるオウカ・ナギサが 討ちます」
イルム「やれやれ、 見た目以上にガチガチだな、ありゃ」
カイ「だが、 量産型アルブレードのこともある。 出来れば、機体ごと捕らえたい」
ライ「そうですね」
カイ「やれるな、ラトゥーニ?」
ラトゥーニ「は、はい」
オウカ「……エキドナ、 攻撃を開始しましょう。 ラトの相手は私が致します」
エキドナ「了解した」
エキドナ(だが、その前に……)
(通信)
ラミア(! 本隊の暗号か)
エキドナ(そちらの状況は把握した。 やはり、機密通信装置が 故障していたようだな)
エキドナ(予備を落としていく。 後で回収しろ)
ラミア(了解。 それと、次に接触することがあれば、 言語部位の交換用シナプスを)
エキドナ(そちらも故障していたのか。 では、レモン様に伝えておく)
ラミア(……お前の任務は?)
エキドナ(テストだ。我々の兄弟達のな)
ラミア(兄弟? 量産型か?)
エキドナ(そうだ。 ……コード発信。攻撃を開始しろ)
量産型W「了解」
エキドナ(W17の相手は私がする。 お前達は手を出すな)
エキドナ(なお、撃墜された場合は コードATAを遂行……証拠を残すな)
量産型W「了解」
エキドナ「では行くぞ、W17。 お前が疑われない程度にな」
ラミア「了解した」

〈量産型Wとの戦闘後〉

ブリット「あのゲシュペンスト隊、 こないだの時と動きが違う……!」
イルム「ああ。 動きが妙に機械的だな」
ライ「AI搭載型の機体でしょうか?」
ラミア「……」
ラトゥーニ「あの攻撃パターン…… 覚えがあります」
カイ「何? 本当か?」
ラトゥーニ「はい。あれはスクールで 研究されていたものに似ています」
キョウスケ「なら、 ゲシュペンストに乗っているのは スクールの他のメンバーなのか?」
ラトゥーニ「違います……。 あそこにいるのは姉様だけ……」
ブリット「……それ、 俺にも何となくわかるよ」
ブリット「あのゲシュペンストに 乗っているのは……人間なのか?」
キョウスケ「……」

〈vs エキドナ〉

[キョウスケ]

キョウスケ「こいつの動き…… ラミアに似ている……!?」
エキドナ「ベーオウルフか。 データはW17の方でも 収集しているだろうが……」
エキドナ「こちらでも その能力を確かめさせてもらおう」

[エクセレン]

エクセレン「夜中ならともかく、 真っ昼間に幽霊さんが出るなんてね」
エクセレン「中身は どうなってんのかしら?」
エキドナ「……」

[ラミア]

ラミア(W16…… 対戦するのは初めてではないが……)
エキドナ(レモン様の命令もある。 致命傷を与えるわけにはいかん……)

[リュウセイ]

リュウセイ「こ、こいつ…… マジでプラン通りの機体だ……!」
リュウセイ「何であいつらに こんなものが作れるんだよ!?」
エキドナ「……」

[HP50%以下]

エキドナ「任務終了。撤退する」
(オウカ機以外が撤退)
ラミア(退いたか。 後は機密通信装置の回収を……)
ラミア(………)
ラミア(我々の……兄弟、か)

〈vs オウカ〉

[キョウスケ]

キョウスケ「存在しないはずの機体、か。 そのカラクリ、暴かせてもらうぞ」
オウカ「私の機体などよりも 自分の命を気にかけることですね」

[エクセレン]

エクセレン「お姉さん、 ラトちゃんは、私達と一緒にいたいって 言ってるのよね」
オウカ「それは、あなた達が そう思わせているからでしょう?」
エクセレン「……アラド君も 月で私達に協力してくれたんだけど?」
オウカ「黙りなさい!  弟を殺しておいて、 よくもそんなことを!」
エクセレン「いや、だから…… あの子は生きてるんだってば」

[ラミア]

ラミア「まさか、このタイミングで 『エルアインス』を投入するとはな」
オウカ「あの動き…… エキドナに似ている?」

[リュウセイ]

オウカ「あなた達などに 私のラトを私はしません」
リュウセイ「あんた、 あいつの話を信じねえのかよ!?」
オウカ「ええ、今のラトは。 でも、あなた達を倒せば、 あの子も目が覚めるはずです」
リュウセイ「冗談じゃねえ!  あいつは俺達の仲間だ!  あんたには渡さねえぞ!!」

[ライ]

ライ「どうやら、お前達は ただのDC残党ではないようだな」
オウカ「私達はDC再興のために 訓練を重ねてきたのです……!」
オウカ「その成果は あなた達の死を以て示しましょう!」

[ブリット]

オウカ「ラトを利用し続けてきた罪、 死んでいったアラドの苦しみ…… その身で思い知りなさい!」
ブリット「くっ!  少しはこっちの話を聞けっ!!」

[カイ]

オウカ「あなた達などに 私の邪魔はさせません!」
カイ「ラトゥーニを 上回る実力の持ち主だと言うのなら、 油断はならんか……!」

[ラトゥーニ 1回目]

オウカ「さあ、ラト…… 私の所へ来なさい」
ラトゥーニ「姉様こそ、 私と一緒に来て」
ラトゥーニ「そうすれば、 本当のことがわかるから……!」
オウカ「可哀想……それほどまでに 再教育されてしまっているなんて」
ラトゥーニ「!」
オウカ「でも、安心なさい。 私達があなたの呪縛を解いてあげる」

[ラトゥーニ 2回目]

オウカ「ラト、あなたは自分の意思で 戦っているのではない」
オウカ「それに…… あなたでは私に勝てないわ」
ラトゥーニ「……!」

[イルム]

イルム「見れば見るほど エルシュナイデに似てやがるぜ。 いったい、どうやって作ったんだ?」
オウカ「この機体の由来など、 私にとってはどうでもいいこと……」
オウカ「アラドの仇を討ち、 ラトを取り戻す力があれば それでいいのです!」

[HP50%以下]

オウカ「この程度で落ちはしません。 私は……」
(精神感応)
オウカ「!」
ラトゥーニ「!?」
オウカ「く、うう……!」
ラトゥーニ「姉様……!?」
オウカ「ううっ……あ、頭が……!  くっ!!」
ラトゥーニ「も、もしかして……!?」
オウカ「ア、ASRS展開…… ブースト……!」
(オウカ機が撤退)
ブリット「逃げた!?」
イルム「あの加速…… やはり、ブースト付きの テスラ・ドライブか」
ラトゥーニ「ね、姉様……」
エイタ「敵機の反応、 全て消えました!」
テツヤ「後退した2機の追跡は!?」
エイタ「トレース出来ません!  例のECMを使用しているせいだと 思われます!」
テツヤ「くっ……!」
ダイテツ「大尉、艦を停止させろ。 撃墜したゲシュペンストの破片を 回収し、調査する」
テツヤ「……了解です」

《ハガネ艦橋》

リョウト「……送られてきたデータを こちらでも検討してみました」
リョウト「製造番号は 巧妙に削除されているようですが、 部品は同じ物が使われています」
イルム「ああ…… ハリボテじゃないな、あれは」
テツヤ「あのゲシュペンストがどこで 作られたか、見当はつくのか?」
リョウト「ご存じの通り、マオ社の 生産ラインは量産型ヒュッケバインに 移行しています」
リョウト「やはり、 DC残党によって量産された物と 考えるのが妥当だと……」
キョウスケ「では、 量産型のアルブレードについては?」
リョウト「試作1号機と2号機は こちらにありますし、3号機は リュウセイが使っています」
リョウト「また、データが ハッキングされた形跡もありません」
キョウスケ「DC残党が 独自に開発した物だという線は?」
リョウト「あり得ません。 あそこまでこちらのプランと そっくりだなんて……」
リョウト「仮にデータが ハッキングされているとしても、 開発期間の辻褄が合いません」
テツヤ「だが、 あれは現実に存在している。 それについて、お前の見解は?」
リョウト「あの…… 呆れずに聞いてもらえますか?」
テツヤ「? ああ……」
リョウト「非現実的だと思いますが…… あれが未来から来た物だとすれば、 納得がいきます」
テツヤ「み、未来からだと!?」
キョウスケ「……」
イルム「う~ん…… そういう考え方もあるか」
テツヤ「しかし、いくら何でも……」
イルム「ま、それぐらいに 非現実的な話だっていうことですよ」
リョウト「とにかく、僕達の方でも ゲシュペンストMk-IIの件と 一緒に調査を進めてみます」
テツヤ「わかった。 また新たなデータを入手したら、 そちらへ送る」
リョウト「お願いします」
イルム「じゃあ、 リンやリオ、ラーダによろしくな」
リョウト「はい。 そちらもお気をつけて……」
(通信切れる)
ダイテツ「……斬艦刀装備の特機の件も 含めて、謎が深まったようだな」
テツヤ「ええ。今回のDCには 腑に落ちぬ点が多すぎます」
ダイテツ「ああ。 やはり、彼らはただの残党ではない」
ダイテツ「新しいDCと 言うべきなのかも知れん……」

《ブリーフィングルーム》

エクセレン「え? あのゲシュちゃんには 誰も乗ってなかったの?」
ライ「ああ。 パイロットが外へ脱出した形跡もない」
カチーナ「じゃあ、 無人機だったんじゃねえのか?」
ライ「コックピットは有人仕様でした。 普通、無人機ならモジュールを 丸ごと入れかえるはずです」
レオナ「なら、何者かが乗っていた 可能性は高いわね」
ライ「……ああ」
ラミア「……」
カチーナ「パイロットが 煙みてえに消えたってのか?  信じられねえな」
エクセレン「文字通り、 ホントに幽霊さんが乗ってたりして」
カチーナ「んなワケあるか!」
ラミア(……機密保持のために 消去コードを発動させたか)
ラミア(私も任務に失敗すれば、 同じ結末を迎えることになる。 ……それが我々の宿命だ)
エクセレン「ん?  どうしたの、ラミアちゃん?  そんな顔して」
ラミア「な、何でもございませんです」
ラミア(それより、 指令の内容を確認せねば……)

《ハガネ格納庫》

ラミア(……よし、これで アンジュルグの機密回路が使える。 先日のディスクの内容確認を……)
(通信)
ラミア(指令コード、0605……)
ラミア(デザートクロス作戦の スケジュールに基づき、 潜入任務の続行……)
ラミア(さらに、 ヘリオスに関する情報の入手……。 可能であれば、身柄を確保)
ラミア(……私にまで その指令が下ったか……)
ラミア(どうやら、 まだ本隊の方でも奴の行方を つかめていないらしいな)
ブリット「……ラミアさん、 そこで何をやってるんです?」
ラミア「ブルックリン少尉……。 アンジュルグの整備をしていたり してましたのよ」
ブリット「そうなんですか。ところで、 ラトゥーニを見かけてませんか?」
ラミア「いや……」
ブリット「……あの子、 どこへ行ったんだろうなあ。 リュウセイも捜してるのに……」
ラミア「もしや、 あのオウカという敵パイロットの 情報を彼女から聞き出すために?」
ブリット「いや、 そういうわけじゃないんですけど」
ラミア「……」
ラミア「……少尉達は、 本気で彼女を『助ける』おつもりで ございますですか?」
ブリット「ええ……。 いくら戦争だとは言え、身内同士で 戦うのは悲しいじゃないですか」
ラミア「……」
ラミア(わからん…… 何故、そんなことを言う?  理解できん)
ブリット「実は、 俺にも似たような経験があるんです」
ブリット「だから……ラトゥーニには そういう思いをさせたくないんです」
ラミア「甘い考え……ですことね。 こちらを倒しにくる敵に そんな理屈は通用しませんのよ?」
ブリット「……わかってますよ。 でも、俺は憎しみのためだけに 戦ってるわけじゃありません」
ラミア「任務だから 戦っているのでございましょう?」
ラミア「兵士から任務を取ったら、 何が残るんでございますです?」
ブリット「人間が残ると思います」
ラミア「……!」

《ハガネ艦内》

ラトゥーニ「……」
ラトゥーニ(あの時の姉様の反応…… もしかして、まだ……?)
(扉が開閉する)
リュウセイ「ラトゥーニ、 ここにいたのかよ」
ラトゥーニ「リュウセイ……」
リュウセイ「お前の…… 姉さんのことなんだけど……」
ラトゥーニ「私は大丈夫……。 姉様の誤解は予測がついていた ことだから……」
リュウセイ「あの人は ああ思い込まされてるってことか?」
ラトゥーニ「多分……」
リュウセイ「そうか……。でも、 アラドが生きていることを知ったら、 考えが変わるかも知れねえ」
リュウセイ「だから、諦めるなよ。 俺も……手伝うしさ」
ラトゥーニ「うん……」
ラトゥーニ(……オウカ姉様……)

《???》

アウルム1「……ラトゥーニ……」
ラトゥーニ11「……」
アウルム1「……どうしたの?  泣いているの?」
ラトゥーニ11「……姉様……うう……」
アウルム1「……訓練が厳しかったのね。 可哀想に……」
ラトゥーニ11「………」
アウルム1「……いいわ、私の方から コッホ博士に言ってあげる。あなたの メニューを考え直すようにって」
ラトゥーニ11「……でも…… あの人は……私を……」
アウルム1「安心なさい。私がいる限り、 あなたに妙な真似はさせないわ。 今度の実験は私が変わってあげる」
ラトゥーニ11「……」
アウルム1「私が守ってあげる。 あなたを……そして、弟や妹達を」
ラトゥーニ「姉様……」
アウルム1「だから、泣かないで。ね?」
ラトゥーニ11「はい……姉様……」

《アースクレイドル内部》

クエルボ「どうですか、セトメ博士…… オウカの状態は?」
アギラ「拒否反応が出ておるの。 まあ、予測しておったことじゃが」
クエルボ「スクール時代、彼女は ラトゥーニを可愛がっていました。 やはり、その記憶のせいで……」
アギラ「いや、 原因はそれだけではなさそうじゃ」
クエルボ「え?」
アギラ「どうやら、ブロンゾ28が 生きておるらしい。レコーダーに それらしい会話が記録されておった」
クエルボ「アラドが……!」
アギラ「そのせいで アウルム1の深層意識に乱れが生じ、 拒否反応を起こしたのじゃろうな」
クエルボ「……」
アギラ「ブロンゾ28め、欠陥品のくせに 悪運だけは強いようじゃの」
アギラ「フェフが目をつけただけのことは あるということか」
クエルボ「では、睡眠調整中のゼオラに アラドが生きていることを……」
アギラ「この際じゃ、 奴に関するアウルム1とブロンゾ27の 記憶をリセットし、再構築しよう」
クエルボ「もしや、それは……」
アギラ「そうじゃ。ブロンゾ28を 完全に敵だと思い込ませる……」
アギラ「その方が アウルム1とブロンゾ27も任務を 遂行し易かろう、フェフェフェ」
クエルボ「……」

《アースクレイドル内部》

ヴィンデル「……テストの結果は どうだったのだ?」
レモン「全機撃墜されたけど、 改良点のヒントが得られたわ」
レモン「それに、ハガネの足止めも 出来たみたいだしね」
ヴィンデル「証拠の隠滅は 万全なのだろうな?」
レモン「それはもちろん。 仮に不具合があったとしても、 W17が何とかするでしょうしね」
ヴィンデル「……そのW17に 問題はないのだろうな?」
レモン「W16の報告によれば……」
レモン「あの子から連絡がなかったのは アンジュルグの機密通信装置が 壊れていたせいだし……」
レモン「言語機能の故障で済んでるだけ 大したものよ」
ヴィンデル「……だといいがな」
レモン「あら……あなたもアクセルと 同じようなことを言うのね」
レモン「彼らは今後の作戦に なくてはならない存在なのに」
ヴィンデル「だからこそ、ミスは許されん。 データが揃うまでの損失は問わんが、 後期ロットの調整は完璧にな」
レモン「ええ、わかっているわ」
ヴィンデル「……そろそろ、 バンの演説の時間だな」
レモン「連邦軍にも映像を 流すんですってね。遅まきながらの 宣戦布告ってことかしら?」
ヴィンデル「ああ、 これで奴らも本気になるだろう。 そして……」
ヴィンデル「我々が望む混沌の時代が いよいよ始まるのだ」

《ハガネ艦橋》

バン「……然るに、 東京宣言を経て、連邦政府の 執ってきた施策はどうか?」
バン「一部特権に偏った 巨大な官僚機構は、無為無策のまま 旧世紀からの諸問題を解決せず……」
バン「会議と選挙工作に明け暮れ、 問題を先送りにするための立法に 日々を重ねてきたに過ぎない」
バン「だが、地球圏全体を覆っている 事態は、すでにそのような思考の 時間が終わったことを告げている」
テツヤ「艦長、これは……」
ダイテツ「ああ……DC戦争の再来だ」

《シロガネ艦橋》

バン「地球と宇宙に生きる全ての 人類諸君、私はここに宣言しよう!」
バン「我々こそが 地球圏を守り得る力であることを!」
バン「私は宣言しよう! かつて ビアン・ゾルダークが示唆した 異星人の脅威を払拭できるのは……」
バン「我ら新たなディバイン・ クルセイダーズ、『ノイエDC』を おいて他にいないと!」
リー「ノイエ……DC……!」

《伊豆基地司令室》

バン「先の東京宣言でもわかるように、 連邦政府は今まで多くの真実を 隠蔽していた」
バン「そんな者達に地球圏の舵取りを 任せることは、自殺行為に等しい」
バン「諸君らは 為政者の捨て駒という、 意味の無い死を望んでいるのか?」
バン「そして、種族として 根絶やしにされる惨めな結末を 享受するつもりなのか?」
バン「否! 諸君らには 生を望む意思があるはずだ。 己の未来を欲しているはずだ」
サカエ「レイカー指令……」
レイカー「……」
バン「生ある者として、 今選ぶべき手段は一つ」
バン「それは人類の力と叡智を 一つに集め、来るべき脅威に 立ち向かうことである」
バン「そして、 そのためには腐敗していくだけの 官僚機構を排除し……」
バン「強大な力の下に、多くの意思が 統一されなければならない!」
レイカー「……ビアン博士の…… もう一つの選択肢、か」

《連邦政府・大統領府》

バン「今、この世界に必要な物は イージスの盾ではなく、 ハルパーの鎌である!」
バン「我らの意思に賛同する者は ノイエDCに来たれ!」
バン「己の力を欲望ではなく、人類と 地球の未来のために使う者であれば、 何人であろうと拒みはしない!」
バン「心ある者達よ、 新たな聖十字軍の旗の下に集え!」
バン「そして、 我らの手で自らの自由と未来を 勝ち取るのだ!」
ブライアン「……」
議員「大統領……」
ブライアン「仕掛けた直後じゃなく、 今というタイミングでの演説か。 バンという男、なかなかやるな」
議員「しかし、 連邦軍が本格的な反攻に出れば、 いくら彼らと言えど……」
ブライアン「あそこまでの大見得を 切ったんだ。ジョーカーの一枚や 二枚、用意していそうだね」
議員「どうなさるのです?」
ブライアン「今のノイエDCに 話し合いは通じないだろう……」
ブライアン「だが、 いずれバンは振り上げた拳の 下ろし所を見極めることになる」
議員「……」
ブライアン「それまでは 混乱を最小限に食い止める努力を するしかない」
ブライアン「もっとも、混乱の継続を 望む者もいるようだけどね……」

《???》

ミツコ「イージスの盾ではなく、 ハルパーの鎌……いい例えですわね」
ミツコ「どうでしょう?  私達の計画をそう名付けませんこと?」
グライエン「名前など、どうでもいい」
ミツコ「あら…… いいアイデアだと思いますのに」
グライエン「それより、ノイエDCの手綱は きちんと引き絞れるのだろうな?」
ミツコ「ええ、もちろん。 念のため、鈴もつけてありますわ」
グライエン「ケースEが発生した以上、 急いで事を進めねばならん。奴らが 本格的に動いてからでは遅いのだ」
ミツコ「わかっております。 で、そちらの方の根回しは?」
グライエン「ぬかりはない。 北米方面軍のケネス・ギャレットも 我々への協力を約束した」
グライエン「後はムブハル特別補佐官を どうするか、だ」
ミツコ「あの方は SRX計画とATX計画の後押しを なさってますから……」
ミツコ「我が社としては、 少々困っておりますの」
グライエン「……何を考えているか よくわからぬ所がある男だ」
グライエン「以前は、 EOT特別審議会と関わり合いを 持っていたようだが……」
ミツコ「ええ、 私の父とも面識があったようですわ」
グライエン「戦後、 どうやってブライアンに 取り入ったか知らぬが……」
グライエン「私の目をかいくぐって、 特別補佐官の座についた」
ミツコ「EOT特別審議会と関係を 持っていた以上、シュトレーゼマン派の 人間だったのは確実なのでしょう?」
グライエン「死んだカールの後を継いで 派閥を作るつもりはないようだが…… 要注意の人物である事に違いはない」
ミツコ「……」
ミツコ(私とヴィンデル・マウザーの 読みが正しければ、 ムブハル特別補佐官は……)
ミツコ(新しいビジネスへの 糸口になる方ですわね)

『チョバムアーマー』を入手した
『アポジモーター』を入手した
『防塵装置』を入手した


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