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疑惑の宇宙 ~ 第9話 ~

《???》

アラド(……うう……っ。 ここは……?)
アラド(おれ…… どうなっちまったんだ?)
ゼオラ「……アラド……。 ねえ、アラド。起きて」
アラド(ゼオラ……)
ゼオラ「アラド、 私達の配属先が決まったわ」
アラド(配属先……? どこだ?)
ゼオラ「バン・バ・チュン大佐の 直轄部隊よ」
アラド(誰だっけ?)
ゼオラ「何言ってんの? バン大佐は ビアン総帥の遺志を継いで、DCを まとめようとしている人でしょ」
アラド(……おれ、よく覚えてねえや)
ゼオラ「ねえ、わかってる?  これって物凄く光栄なことなのよ」
アラド(じゃあ…… いよいよアースクレイドルから 出るのか、おれ達……)
ゼオラ「ね、アラド。私と約束して」
アラド(約束……?)
ゼオラ「そう。これから先、 何があっても二人で頑張って…… 必ず生き残りましょ」
アラド(…………)
ゼオラ「そして……散り散りになった スクールの子達を……」
ゼオラ「ラト達を捜すの。 そして、オウカ姉様と一緒に…… みんなで暮らすの」
ゼオラ「今度は スクールと別の場所で……」
アラド(ああ、そうだったな……。 それが……お前との約束だった……)
アラド(でも……すまねえ、ゼオラ…。 おれは……)

《ハガネ医務室》

アラド「……おれは……」
エクセレン「あらん、お目覚め?」
アラド「! こ、ここは……!?」
イルム「ハガネの医務室さ」
アラド「ハガネって……敵の艦かよ!?  お、おれはいったい?」
ラトゥーニ「私達が あなたのリオンを回収したの……」
アラド「ラ、ラト!!  うっ! いてててっ!!」
エクセレン「ほら、動いちゃダメダメ。 命に別状はないけど、安静にね」
アラド「で、でも、 おれはあの時、撃墜されて……」
ラトゥーニ「……」
イルム「お前の機体が爆発した時、 上手い具合に胸部ブロックが 飛ばされたんだ」
イルム「脱出装置は 作動しなかったようだが、 かえってそれが幸いした」
アラド「え? な、何で?」
イルム「あのタイミングでコックピットの 外へ放り出されてたら、機体の 爆発に巻き込まれて死んでたぜ」
エクセレン「う~ん、 悪運の強さはキョウスケ並かも」
エクセレン「どう?  お姉さんと組んで脱出ショーとか やってみない?」
アラド「だ、脱出ショー?」
エクセレン「そそ。ちゃんと バニーちゃんの衣装もあるのよん。 今度、見てみる?」
アラド「喜んで!」
エクセレン「あら、ブリット君とは 違うリアクションね。行く末は タスク君かイルム中尉かしらん?」
イルム「……どういう意味だ?」
エクセレン「ん~、最終的には女の子の お尻にしかれるってこと」
イルム「ま、冗談はさておき……」
イルム「伊豆の時、 俺のグルンガストの前に 飛び込んで来たのはお前だろ?」
アラド「う……」
イルム「図星か。その無鉄砲な所…… 同じスクール出身とは言っても、 ラトゥーニとは大違いだな」
アラド「……おれ、 スクールじゃ成績悪かったんで」
ラトゥーニ「……ごめんなさい、 アラド……私のせいで……」
アラド「え?  じゃあ、あのヒュッケバインに 乗ってたのは……?」
ラトゥーニ「……」
エクセレン「ちょい待ち、 ラトちゃんを責めちゃダメよん」
エクセレン「あなたを回収したのは この子だし、目が覚めるまで ずっと傍についてたんだから」
アラド「そ、そうだったのか……」
イルム「……エクセレン、 ここは二人だけにしてやろう」
エクセレン「んじゃま、 後は若い人同士でってことで」
(扉が開閉する・エクセレンとイルムが立ち去る)
アラド「……」
ラトゥーニ「……」
アラド「……久しぶりだな、ラト。 お前がスクールから出て以来だよな」
ラトゥーニ「うん……」
アラド「何にせよ、 お前が生きてて良かったぜ」
ラトゥーニ「アラドも……」
アラド「あのさ、 ゼオラは……あいつはどうなった?」
ラトゥーニ「あの後、 潜水艦で撤退したわ……」
ラトゥーニ「結局、私達は あの艦を捕捉できなかったから…… 無事だと思う」
アラド「そうか……なら、良かった」
ラトゥーニ「……」
アラド「そんな顔すんなよ。 色々あったけど、おれもゼオラも 無事なんだしさ」
アラド「それに、おれ…… 怒ってねえから。な?」
ラトゥーニ「うん……ありがとう」
アラド「……」
ラトゥーニ「アラド……あの時、 ゼオラを助けようとしたんでしょう?」
アラド「ま、まあな」
ラトゥーニ「そういう所、 変わってないよね……」
アラド「え? そ、そうかな?」
ラトゥーニ「うん……」
アラド「……」
ラトゥーニ「私……アラドが 昔のままでいてくれて安心した」
アラド「でも、お前は変わったよな、 昔は大人しくて、 ほとんど喋らなかったし」
アラド「それどころか、 そのフリフリの服…… そんなの着てて怒られないの?」
ラトゥーニ「こ、これは……その…… ショーン中佐の命令で……艦長や カイ少佐の許可も出てるし……」
ラトゥーニ「それに…… 大切なお友達からの贈り物なの」
アラド「友達、か。 昔はオウカ姉さんに言われても 絶対にそんなの着なかったのに」
ラトゥーニ(オウカ……姉様……)
アラド「お前、 スクールから離れて……ハガネに 乗れて良かったみたいだな」
ラトゥーニ「うん……」
ラトゥーニ「でも、 あなたは私の大事な仲間……。 それに変わりはないもの」
アラド(仲間、か)
アラド(ゼオラ…… おれが死んだって思ってるよな)
アラド(あいつのことだから、 きっと今頃は……)
アラド(……)
アラド(何にせよ、どうにかして ここから逃げ出さなきゃな……)

《ハガネ艦橋》

イルム「身体検査の結果…… 筋肉増強剤や精神高揚剤など、 薬物投与の痕跡が発見されました」
ダイテツ「やはりな」
イルム「注目すべき点は 肉体の頑強さ……見た目の年齢とは 不釣り合いですね」
イルム「それに、 傷の回復力も常人より速いようです」
カイ「助かったのは 運だけではなかったと言うことか?」
イルム「ええ。何らかの肉体強化措置を 受けていると思われます」
ダイテツ「記憶操作や精神操作は?」
イルム「それも受けているでしょうね。 もっとも、話した限りでは ごく普通の子供でしたが」
カイ「ジャーダ達と出会ったばかりの ラトゥーニは、重度の自閉症や 対人恐怖症だったそうだが……」
イルム「見たまんまなのか、 牙を隠し持っているのか、 わかりませんが……」
イルム「心理面での調査は専門家…… 機会があれば、ラーダに 頼んだ方がいいでしょう」
ダイテツ「……アラド・バランガから DC残党の情報は得られそうか?」
イルム「あまり期待できませんね。 彼が持つ情報が本物かどうか わかりませんし……」
イルム「見たところ、 末端の兵士のようですから」
ダイテツ「そうか……」
テツヤ「艦長、 以後の彼の処置はどうするのです?」
ダイテツ「捕虜として艦内に拘置し、 極東方面軍司令部へ 引き渡すつもりだが……」
カイ「待って下さい、艦長。 その件に関して自分に考えが あります」
ダイテツ「考え……?」

《ハガネ艦内》

リュウセイ「ええっ!? 俺達で あいつを説得しろってんですか!?」
カイ「そうだ。 ラトゥーニやお前、ブリットは 年齢も近いからな」
カイ「出来れば、 彼をこちら側に引き入れたい」
ラミア(何……?)
リュウセイ「引き入れるって……。 伊豆基地とかに連れてかなくって いいんスか?」
カイ「ああ。 すでに艦長の許可も取ってある」
ブリット「しかし、 彼はアードラー・コッホの下に いたんでしょう?」
ブリット「DCへの忠誠心を過度に 植え付けられているんじゃ……」
カイ「スクールのメンバー全てが 必ずしもそうでないということは お前も承知しているだろう?」
ブリット「え、ええ。 確かにラトゥーニは……」
エクセレン「リョウト君やレオナちゃんも 元はDCやコロニー統合軍だったし。 別にいいんじゃない?」
ライ「だが、アラド・バランガが 敵のスパイだという可能性もある」
エクセレン「ん~、 それはないと思うけど……」
ラミア「私も同感でございますです」
ライ「根拠は?」
ラミア「スパイにしては、 後先を考えていませんからですわ」
ライ「俺達を油断させる手かも知れん」
ラミア「彼が脱出や投降などをしてきた ならば、ですことね」
ラミア「しかし、あの行動は死亡確率が あまりにも高く、ハガネに潜入するのが 目的だったとは考えられませんです」
リュウセイ「確かに…… こっちへ潜り込む前に死んじまったら 意味ねえよな」
ラミア「それに、 彼から敵の情報を得るとしても……」
ラミア「こちら側に引き入れてからの 方が、より多くの事柄がわかるかも 知れませんでございますのことよ」
ライ「……」
ラミア(決まらんな。 だが……何故、私あの兵士のことを 弁護してしまったのだ……?)
カイ「ライ、お前の懸念はわかる。 だが、俺はラトゥーニのこともあって 奴を放っておけなくてな」
ライ「同情……ですか?」
カイ「それもあるが、俺は スクールの出身者であるアラドを 人間として扱ってやりたいのだ」
カイ「かつてのジャーダや ガーネットが、ラトゥーニに対して そうしたようにな」
ライ「……わかりました。少佐が そこまでおっしゃるのでしたら」
ラミア(人間として扱う、か)
ラミア(そんな考え…… 任務に支障をきたすだけだ。 兵士は戦争の道具に過ぎんのに)
ラミア(なのに…… 何故、あの男の言葉が気にかかる?)
リュウセイ「……さっすが、カイ少佐。 伊達に年はくってねえよな」
(殴る)
リュウセイ「いてっ!!」
カイ「一つ言っておくぞ、リュウセイ。 俺は子持ちだが……まだ30代だ」
リュウセイ「す、すみません」
エクセレン(いやん、 もっと年上だと思ってたわ)
カイ「……ともかく、 アラドは強力な精神操作の類を 受けているわけではなさそうだ」
カイ「だから、これからの 鍛え方で何とかなるかも知れん」
ブリット「……」
カイ「しかし、 俺は奴を無理矢理戦わせるような 真似はしたくない」
ブリット「……同感です」
リュウセイ(そうだよな……。 そういうの、前の戦いで 何度も見たもんな……)
カイ「あくまでも 奴の意思を尊重してやるんだ」
ラミア「彼が戦いを拒否した場合は どうするのでございましょう?」
カイ「さすがにDCへ戻すわけには いかんが、然るべき処置を執って やるつもりだ」
ラミア「……」
カイ「いいな、ブリット、リュウセイ。 決して無理強いはするなよ」
リュウセイ「ええ、わかりました」
カイ「それに…… いずれはお前達も自分の部下を 持つようになる」
カイ「これを機会に 上官や先輩としての在り方を 勉強しておくんだ」
ブリット「……了解です。 出来るだけのことはしてみます」

《ハガネ艦橋》

エイタ「艦長、 極東方面軍司令部のレイカー司令より 通信が入っています」
ダイテツ「うむ。 こちらへ回してくれ」
(通信)
レイカー「レイカーだ。 ダイテツ、次の任務を伝える」
レイカー「お前達は伊豆へ戻らず、 そのままインドとアラビア半島を 経由して、エチオピアへ向かい……」
レイカー「第23混成機動師団と 合流してくれ」
ダイテツ「では、 いよいよアースクレイドルを 攻めるのだな?」
レイカー「ああ。わが軍は アフリカ方面軍部隊を中心とし、 DC残党の一大掃討作戦を展開する」
レイカー「なお、 作戦名は『キルモール』だ」
ダイテツ「了解した」
レイカー「それと…… お前達に伝えておきたいことがある」
ダイテツ「何だ?」
レイカー「ハガネがDCの潜水艦艦隊を 追撃している間、L2宙域で 不可解な事件が起きてな……」
レイカー「L2宙域軍の機動部隊が 相次いで行方不明になったのだ」
ダイテツ「何……?」
レイカー「詳細はまだ不明だが、 何者かと交戦した後、 消息を経った部隊や……」
レイカー「戦艦ごと 反応が消えてしまった部隊もいる」
テツヤ「もしかして、 DC残党の仕業でしょうか?」
レイカー「その可能性もあるが、 事件の発生場所など、色々と 腑に落ちぬ点が多いそうだ」
ダイテツ「……」
レイカー「現在、事件調査のため ヒリュウがL2宙域へ向かっている」
テツヤ「ヒリュウ…… レフィーナ艦長達が?」
ダイテツ「そうか……彼らは今、 地球件へ戻ってきているのだったな」
レイカー「何か判明次第、 そちらにも知らせる。お前達は キルモール作戦に専念してくれ」
ダイテツ「了解した」


第9話
疑惑の宇宙

〔戦域:暗礁宙域〕

(ヒリュウ改出現)
ショーン「艦長、 本艦はL2宙域に到達致しました」
レフィーナ「わかりました。 総員、第一種戦闘配置」
レフィーナ「カチーナ隊を出撃させ、 本艦周辺の警戒に当たらせて下さい」
ユン「了解。総員、第一種戦闘配置。 カチーナ隊は直ちに出撃」
ショーン「……やれやれ、 イカロスからとんぼ返りした上、 一息つく間もないとは」
レフィーナ「仕方ありません。 地球圏では色々と状況が 変わってきているようですから……」
(カチーナ隊が出撃)
カチーナ「オクト1より各機へ!  遅れんなよ!」
ラッセル「オクト2、了解!」
レオナ「オクト3、了解」
カチーナ「ん!?  オクト4、ガンドロはどうした!?」
レオナ「今、離艦するところです」
カチーナ「遅せえんだよ!  てめえは奴の女房だろうが!  しっからケツを叩いときな!」
レオナ「お言葉ですが、隊長。 自分は彼とそういう関係になった 覚えはありません」
(ジガンスクード・ドゥロが出撃)
タスク「またまたァ、 レオナちゃんてば冷てえんだから」
レオナ「熱いのがお好みなら、 一人で大気圏にでも飛び込みなさい」
タスク「おいおい、 未来のダンナに対して そりゃないんじゃない?」
レオナ「そんなことを言っていると、 火傷程度じゃ済まなくてよ?」
タスク「へえへえ」
カチーナ「おら!  おせえぞ、ガンドロ!」
タスク「ガンドロって……こいつは ジガンスクード・ドゥロっスよ」
カチーナ「るせえ!  略してガンドロだ、ガンドロ!」
タスク「そんなこと言ってると、 ラドム博士に吊されますよ」
カチーナ「その前に てめえが行方不明になってみるか?  ああン?」
タスク「こちらガンドロ。 つつしんで遠慮させてもらいます」
ユン「……各機、配置につきました」
レフィーナ「では、 彼らとフォーメーションDを 組みつつ、原速前進」
ショーン「原速前進、よーそろ」
レフィーナ「副長、 調査用無人ポッドを射出して下さい」
ショーン「了解です」
(アラート)
ユン「艦前方に反応あり!  本艦へ接近中です!」
レフィーナ「もしや、 行方不明の友軍部隊ですか?」
ユン「違います!  識別はAGX-01です!」
レフィーナ「!」
(メギロート出現)
カチーナ「お、おい! あれは!!」
ラッセル「エアロゲイターの バグスだ……!」
タスク「じゃあ、 行方不明の犯人って あいつらかよ!?」
ラッセル「まさか、 L5戦役を生き延びた エアロゲイターがいたのか!?」
カチーナ「ハッ、おもしれえ!  前回のリベンジってわけかよ!」
ショーン「……艦長、 予感が的中しましたな」
レフィーナ「ええ。 ですが、腑に落ちない点もあります」
ショーン「……そうですね」
ユン「目標群、 戦闘態勢に入りました!」
レフィーナ「では、オクト各機に バグスを迎撃させて下さい」
ショーン「一時後退しなくて よろしいので?」
レフィーナ「はい。 ここはあえて先方の手に 乗ってみましょう」
ショーン「了解です」
ユン「ドラゴン2よりオクト各機へ!  バグスを迎撃して下さい!」
カチーナ「よっしゃ!  そうこなくちゃな!!」
レフィーナ「ただし、バグスは 全機撃墜せず、1機捕獲して下さい。 後で調べたいので」
カチーナ「オクト1、了解!  行くぞ、野郎共!!」

〈HP5%以下のメギロート改1機のみとした〉

カチーナ「よ~し……あの虫野郎、 動けなくなったようだな」
カチーナ「タスク!  ガンドロであいつを捕まえろ!」
タスク「合点承知!」
(ジガンスクード・ドゥロがメギロート改に隣接し取り込む)
タスク「これでいっちょ上がり、と!」
レフィーナ「オクト各機は いったん帰還して下さい。それから、 無人調査ポッドを……」
ユン「待って下さい!  まだ本艦へ接近してくる物体群が!」
(量産型ヒュッケバインMk-IIなど出現)
ラッセル「あれは…… ランゼンに量産型のMk-II?」
カチーナ「もしかして、 行方不明になった連中か?」
ラッセル「い、いえ! あの中には バグスが混じっています!」
カチーナ「何!?」
(メギロートを見る)
カチーナ「マジかよ!  どういうことなんだ!?」
ラッセル「エアロゲイターは こちら側の機体を自軍の戦力として 使っていたこともありました」
ラッセル「おそらく、 今回のもそうなのでは……!?」
タスク「う~ん……奴らが 復活してんなら、ホワイトスターの 駐留艦隊に何か起きてるはずだぜ」
ラッセル「そ、そうか……」
ユン「目標群、 攻撃態勢に入りました!」
カチーナ「あいつらも敵か!!」
レオナ「これは…… こちら側を混乱させるつもりか、 偶然ああなっただけなのか……」
ラッセル「え?」
カチーナ「偶然だぁ?」
レオナ「前と同じか、違うか……。 可能性は……五分五分ね」
タスク「あ、な~る。 そういうことなら、 俺は違う方に賭けるぜ?」
レオナ「あら、同意見ね。 それでは賭けにならなくてよ」
カチーナ「こぉら!  なにこそこそ話してやがんだ!  わかるように説明しろ、説明を!」
タスク「……ならさ、 俺が同じ方に賭けるから……」
タスク「負けた方が勝った方を デートに誘うってことでどお?」
レオナ「お断りよ。 もちろん、その逆もね」
タスク「あらら」
ラッセル「……聞いてませんね、 二人共」
カチーナ「いい度胸だ! 後で タスクの野郎を折り曲げてやる!」
タスク「ゲ! な、何で俺だけ!?」
レフィーナ「……ユン、 識別は終了しましたか?」
ユン「はい。 ランゼンとMk-IIは行方不明になった L2宙域軍所属のものです」
レフィーナ「パイロットとの交信は?」
ユン「つながりません。先方が通信機を オフにしているようです」
レフィーナ「……」
ショーン「さて、どうします?」
レフィーナ「調査のためにも、ここで 引き下がるわけにはいきません。 迎撃します。ただし……」
ショーン「機体を回収……ですな?」
レフィーナ「ええ。出来れば、 量産型ヒュッケバインMk-IIを」
ショーン「……ということです。 オクト各機へ……少々面倒ですが、 よろしくお願いしますよ」
カチーナ「何!?  最新型のパーソナルトルーパーと 戦って捕獲しろだあ!?」
ショーン「ええ」
カチーナ「面白いじゃねえか!」
ショーン(そう言うと思いました)
カチーナ「オクト1より各機へ!  さっきと同じ要領でMk-IIを とっつかまえるぞ!!」
ラッセル「最後に1機だけ残して 動けなくする……ですね?」
カチーナ「そうだ! 行くぜ!!」

〈HP10%以下のヒュッケバインMk-II・M1機のみとした〉

(ジガンスクード・ドゥロが移動し捕獲)
ユン「目標の捕捉に成功しました」
レフィーナ「わかりました。 本艦は現状維持。周辺宙域の警戒を 続行して下さい」
ユン「了解です」

《ヒリュウ改艦橋》

ショーン「艦長、 捕獲したバグスと量産型Mk-IIの 調査結果が出ました」
レフィーナ「どうでした?」
ショーン「結果から申し上げれば、 あれらを操っていたのは エアロゲイターではありません」
レフィーナ「やはり……」
タスク「やれやれ、思った通りだぜ」
カチーナ「おい、どういうことだ?  バグスは奴らの兵器だろうが」
ショーン「その通りですが、 今回の物は中身が違ったのですよ」
カチーナ「中身ィ?」
ショーン「回収したバグスの部品の 約50%は、我々が持つデータと 異なっていました」
ショーン「つまり、あれは エアロゲイター以外の者の手によって 改造された物なのです」
カチーナ「エアロゲイター以外だと!?  どこのどいつなんだ!?」
ユン「もしかして、DC残党ですか?」
レオナ「……それはどうかしら」
ユン「え……?」
レフィーナ「……副長、量産型 ヒュッケバインMk-IIの方は?」
ショーン「そちらの方は本物でした。 しかし……」
ショーン「パイロットは 人間ではありません」
レフィーナ「……!」
カチーナ「人間じゃねえだと!?」
ショーン「Mk-IIに乗っていたのは バイオロイド……いわゆる人造人間の 類だと思われます」
カチーナ「人造人間だぁ?」
ショーン「人の姿をした制御装置……と 言った方がいいかも知れません」
ショーン「人格や自我を持たず、 訓練や経験が不要で命令に忠実…… 『部品』としての替えも効く」
レオナ「機動兵器の パイロットとしては理想的ですね」
ショーン「ただし、 それを作る技術と大量生産の手段が あればの話しですが」
レフィーナ「……副長の考えは?」
ショーン「かつてDCで 同じような研究が進められていたと 聞きますが……」
ショーン「あのバイオロイドは どうでしょうね」
レフィーナ「……」
ショーン「いずれにせよ、 今回の件はすぐに総司令部へ 報告した方がよろしいでしょうな」
レフィーナ「ええ……」

《ハガネ艦内》

ブリット「……」
リュウセイ「……」
アラド「うまい!  やっぱ、強い部隊ってのは メシも違うな」
アラド「ラト、おかわりしていいか?」
ラトゥーニ「え? い、いいけど……」
アラド「じゃ、ライス超盛りで!」
ブリット「ラトゥーニ、これは?」
ラトゥーニ「アラドは 昔からたくさん食べるの……。 最低でも三人分は……」
リュウセイ「さ、三人分だあ?」
アラド「やっぱ、身体が資本ッスから。 それに、パイロットは食える内に 食っておけ……」
アラド「あのエルザム・V・ ブランシュタイン少佐が そう言っていたって聞きます」
ブリット「ほ、本当なのか?」
リュウセイ「さ、さあ。 食い物ネタだけにあり得るかも 知れねえけど」
アラド「ラト、早くお代わりお代わり!」
ラトゥーニ「う、うん……待ってて」
(扉が開閉する・ラトゥーニが立ち去る)
リュウセイ「やれやれ、捕虜になって 落ち込んでるか、逃げ出す算段でも してるかと思いきや……」
ブリット「……アラド・バランガ曹長、 歳はいくつなんだい?」
アラド「多分、15ぐらいだと思います」
リュウセイ「ぐらいって…… お前、自分の歳を知らねえのかよ?」
アラド「ええ…… おれ、スクールに入る前のことを 覚えてないんです」
ブリット「何だって……?」
リュウセイ「それって、 過去の記憶がないってことか……?」
アラド「まあ、そうッスけど… 今はそんなに気にしてません」
アラド「スクールなんかに 入れられたくらいだから、 どうせロクな過去じゃないんだろうし」
ブリット「じゃあ… 君は何のために戦っているんだ?」
アラド「……生きてくためです。 おれ、他に出来ることはないし……」
リュウセイ(スクールで そう仕込まれたってのか……?)
アラド「それに…DCの再建とか、 ビアン総帥の仇討ちとか、 正直そんなのどうでもいいし……」
ブリット「そうか……」
アラド「ところで、あの…… おれ、これからどうなるんですか?」
ブリット「この艦に残るか残らないか…… 自分で考えて決めるんだ」
アラド「か、艦に残るって……?」
ブリット「……君が DCの再建に拘らないと言うのなら、 俺達と一緒に来ないか?」
アラド「えっ!?」
リュウセイ「この艦には ラトゥーニもいるし…… そう悪い話じゃないと思うぜ」
アラド「で、でも、おれ…… こないだまで敵だったんスよ!?」
リュウセイ「ああ、 そのことは気にしなくていいよ。 前例もあるしな」
アラド「ぜ、前例?」
ブリット「さすがに君を元いた所へ 返すわけにはいかないけど…… 無理強いするつもりはない」
ブリット「これからどうするかは 自分で考え、決めるんだ」
アラド「……」
アラド(た、確かに この艦に乗ってた方が ゼオラと遭遇しやすいけど……)
アラド(どういうつもりなんだ、 いったい……?)

《連邦政府・大統領府》

レイカー「……以上が ヒリュウ改からの報告内容であります、 ミッドクリッド大統領」
ブライアン「すまないね、レイカー少将。 職務に戻ってくれたまえ」
レイカー「それでは」
(通信)
グライエン「……総司令部を 通さぬコンタクトは感心せんな」
ブライアン「彼らとはL5戦役からの縁でね。 信頼できる男だよ」
グライエン「そういう問題ではない。 組織の縦のつながりというものを もう少し意識してもらわねば困る」
グライエン「その上、 民間人の前で機密事項の話など…… 言語道断だ」
ミツコ「委員長、どうかご心配なく。 秘密は守りますわ」
ブライアン「そうしてもらえると助かるよ、 美しい社長さん」
ブライアン「でないと、 僕はそこにいる政界の『ウィザード』に 呪いをかけられてしまうからね」
グライエン(ふん…… コロニーの成り上がりめが)
ブライアン「……さて、 ああいう事態が発生した以上、 ミツコ・イスルギ君の査問は中断だ」
ブライアン「DC残党に対する 軍事物の横流しの件は、 次の機会に回すとして……」
ブライアン「ここにいる面々の 意見を聞きたいな」
グライエン「DC残党の仕業とは思えん。 ……『ケースE』だな」
ニブハル「私もそう考えます」
ブライアン「その根拠は何かな?  ニブハル・ムブハル特別補佐官」
ニブハル「ヒリュウが接触した 敵集団の中にいたエアロゲイターの 機動兵器、バグスです」
ニブハル「現在の地球上で あれを活用できる者はおりますまい」
ブライアン「……ミツコ君、君は?」
ミツコ「先程もご説明した通り、 イスルギ社のアーマードモジュールは ライセンス生産されております」
ミツコ「故に戦後の混乱した状況で、 製品の先行きを全て把握することは 到底不可能……」
ミツコ「この件に関しましても、 我が社の与り知らぬことで ございますわ」
ブライアン「ふむ……」
ミツコ「大統領……私共より、 マオ・インダストリー社を 疑われた方がよろしいのでは?」
ミツコ「主力機として導入されたばかりの 機体が、謎の組織に使われるなど 由々しき事態でございますし」
ブライアン「確かにな。だが、君の会社は 限りなく黒に近いグレーだ」
ミツコ「あら、DCと結託していた 前社長ならいざ知らず……」
ミツコ「私はアーマードモジュールの量産や イージス計画への参画など、連邦軍へ 多大な協力をしておりますのに」
ブライアン「……」
グライエン「ブライアン、 もはや一刻の猶予もない」
グライエン「中国地区に現れたという アンノウンの件も踏まえて、 直ちにケースEの承認を」
ブライアン「僕としては もう少し情報を……」
グライエン「カール・シュトレーゼマンと 同じ過ちを犯すつもりか?」
ブライアン「……」
グライエン「彼らは 交渉が通じる相手ではない。 我々地球人類の敵なのだ」
ブライアン「僕は出来る限り 彼らとの戦争を回避したい。 時間を稼ぐ意味でもね」
グライエン「もう遅い。 何のために彼らの存在を 世に公表したと思っているのだ?」
ブライアン「あなたも知っての通り、 東京宣言は僕の本意じゃなかった」
グライエン「世迷い言を……。 L5戦役のような奇跡は二度と起きん」
グライエン「そして、新たな戦争は すでに始まっている。もはや民主主義が 通用する時代ではないのだ」
グライエン「だからこそ、私は……」
ブライアン「委員長、 この議論はまたの機会にしよう」
グライエン「ならば、決断を」
ブライアン「わかったよ……。 ケースEを承認する」
ブライアン「ムブハル補佐官、連邦軍を 通じて、コロニーや月……そして、 ホワイトスターの警戒態勢強化を」
ニブハル「承知致しました」
ブライアン「それから、 彼らとの接触手段を検討してくれ」
ニブハル「……」
グライエン「ブライアン……!」
ブライアン「あなたの傀儡とは言え、 やれることはやっておきたいんでね」
グライエン「徒労に終わるのは 目に見えているぞ?」
ブライアン「それでも、だ。 東京宣言の時のような議会工作は 遠慮してもらうよ」
グライエン「フン……好きにするがいい」
ミツコ「……」
ミツコ(うふふ……我が社にとって また大きなビジネスチャンスが 訪れることになりそうですわね)
ニブハル「……」
ニブハル(さて……いよいよですね)

《伊豆基地・ラボ》

科学者「……オブジェクトの固定、 終了しました」
ケンゾウ「TP反応は?」
科学者「レベル2のままです。 表面材質にも変化はありません」
ケンゾウ「第6層の内部スキャンは 不可能なままか?」
科学者「はい」
ケンゾウ「ヴィレッタ大尉、どう思う?」
ヴィレッタ「破損が激しいが、間違いなく あれはホワイトデスクロスのコア……」
アヤ「え……!?」
ヴィレッタ「他の破片から 検出されなかったTP反応が、 何よりの証拠よ」
アヤ「じゃ、じゃあ、あの中には!?」
ヴィレッタ「……修復率のこともある。 それは開けてみなければわからないわ」
ケンゾウ「よし……切開作業を開始しろ」
アヤ「お、お父様……!」
ケンゾウ「アヤ……真実はあの中にある。 そして、我々はそれを確かめなければ ならない」
アヤ「……わ、わかりました」
ケンゾウ「では、作業開始だ」
科学者「了解です」
(チェーンソーの音)
ヴィレッタ「!!」
アヤ「あ、あれは!!」

『A-アダプター』を入手した
『ブースター』を入手した

『修理装置』を入手した
『補給装置』を入手した


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