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星への翼 ~ 第2話 ~

《PT格納庫》

ラミア(PTX-003C、 アルトアイゼン……PTX-007- 03C、ヴァイスリッター……)
ラミア(形状や形式番号、 名称が私のデータと違う。 そして……)
ラミア(ヒュッケバインの後継機、 連邦の主力機でもあるリオン……)
ラミア(向こうの状況とは 色々と違っているらしい)
ラミア(だが、 気になるのはあの女…… エクセレン・ブロウニング)
ラミア(ただの偶然だと思うが……)
キョウスケ「……おれ達の機体に 興味があるようだな」
ラミア「ええ。これでもパイロットの 端くれでございますですし……」
ラミア「自社の機体ならともかく、 軍用のカスタム機は、そうそう お目にかかれはしませんですので」
ラミア(いかんな。ますます喋り方が おかしくなってくる)
キョウスケ「珍しい、ということか。 それはアンジェルグも同じだな」
ラミア「どういうことで ございますです?」
キョウスケ「イスルギの機体に見えん。 どこの技術を使っている?」
ラミア「どこも何も、作れたのだから 仕方ありませんのことよ」
キョウスケ「百歩譲って 作れたとしよう。だが、お前の 操縦技術、身のこなし……」
キョウスケ「明らかに特殊な訓練を 受けた者のそれであり、民間の パイロットには不必要なスキルだ」
ラミア「それは、私も常々疑問に 思っていたところなのです」
キョウスケ「言われるがままに 訓練を受けただけというのか?」
ラミア「そうでございますわ」
キョウスケ「何食わぬ顔をしながら、 水面下で事を運ぶ……。 そのやり方は以前にも見た」
ラミア「何を おっしゃられたいんですの?」
キョウスケ「お前のバックにいるのは イスルギだけとは思えん」
ラミア(この男…… やはり、一筋縄ではいかんな)
キョウスケ(おれの読みが正しければ、 何らかのカードを切ってくるはずだ)
(扉が開閉する)
一般兵「キョウスケ中尉、 こちらにいらっしゃいましたか」
キョウスケ「どうした?」
一般兵「艦長命令で、 パイロットはブリーフィングルームに 集合とのことです」
キョウスケ「わかった」
ラミア「私も行くのですね?  それから、私の言ったことは 全て真実でこざいましてよ」
キョウスケ「……今は そういうことにしておこう。 ブリーフィングルームへ行くぞ」
ラミア「はい」
ラミア(この場は切り抜けられたか。 動きづらくならんといいがな)

《ブリーフィングルーム》

リー「……先程、 北米方面軍司令部から 連絡があり……」
リー「DC残党と思われる部隊が ヒューストン基地方面へ 向かっていると判明した」
キョウスケ「では、その追撃を?」
リー「いや。 我々は我々の任務を遂行する」
ブリット「! 何故です!?  艦長はヒューストン基地を 見捨てるおつもりですか!?」
エクセレン(あちゃ~…… ブリット君、やっちゃったわね)
リー「ブルックリン少尉…… 貴様、今までどういう教育を 受けてきた?」
ブリット「え!?」
リー「上官の命令には絶対服従…… それが軍隊の大原則だ」
リー「それを守れぬ者は命令系統を 混乱させる要因となり、全体の 作戦行動や士気に悪影響を及ぼす」
リー「個々が与えられた命令に従い、 定められた任務を効率よく 遂行しなければ……」
リー「優れた戦果を 挙げることなど出来ん」
ブリット「……!」
ラミア(至極当然の話だな。 兵士に求められるのは任務の完遂だ)
リー「……本艦の任務は、あくまでも メキシコ高原に潜伏していると 思われるDC残党の討伐だ」
リー「航路を変更し、 ヒューストンへ向かえば、 時間と物資のロスにつながる」
リー「それに、 あの基地にも戦力はある。 本艦が救援に行く必要はない」
ブリット「しかし!」
リー「これ以上口を開けば、 営倉入りだぞ、少尉」
ブリット「営倉が怖くて……!」
キョウスケ「そこまでだ、ブリット」
ブリット「う……!」
リー「まったく……貴様らのような 軍人がL5戦役の中心戦力だった などと、私は認めん」
リー「そして、許さん」
ブリット(!?  許さないって……どういうことだ?)
キョウスケ「艦長、よろしいですか」
リー「何だ?」
キョウスケ「ヒューストンには 新主力機の量産型ヒュッケバイン Mk-IIが配備されており……」
キョウスケ「特別プロジェクトの 実験機もあると聞いています」
ラミア(量産型のヒュッケバイン?  それに、実験機だと?)
キョウスケ「自分は敵の目的が それらの情報収集……あるいは 奪取ではないかと考えます」
リー「その根拠は?」
キョウスケ「現時点で、量産型の ヒュッケバインが配備されている 基地は北米地区で4つ……」
キョウスケ「その中で 保有戦力が最も少ないのは ヒューストン基地であるからです」
リー「手薄な所を狙ったというわけか。 あり得ん話ではないな」
リー(ここで ケネスに恩を売っておくのも 悪くはないか……)
リー(それに、後々のことを踏まえて 戦果を挙げておく必要もある)
リー「では、 ATXチームは直ちに出撃し、 ヒューストンへ向かえ」
キョウスケ「我々だけで?」
リー「そうだ。本艦は予定通り、 メキシコ高原へ向かう」
リー「貴様らは事が済み次第、 帰投しろ。移動手段については 私が根回しをしておいてやる」
キョウスケ「……了解」

《ヒューストン基地》

ミツコ「……では、プロジェクトは 順調に進行しているようですね」
フィリオ「はい。本日1500、 このヒューストン基地で……」
フィリオ「シリーズ77・ コードβプロト、『カリオン』の テストを行います」
ミツコ「うふふ、 結果が楽しみですこと」
ミツコ「特にカリオンの武装が どれだけの力を発揮するか、出来れば この目で確かめたいところですわ」
フィリオ「……シリーズ77に武器は どうしても必要な物なのですか?」
ミツコ「もちろん。あなたも ミッドクリッド大統領の東京宣言を お聞きになったでしょう?」
ミツコ「あれが異星人の存在と 彼らによる地球侵攻の危機が 政府公認のものとなりました」
ミツコ「今や外宇宙は敵だらけ。 小学生でも知っている常識ですわ」
ミツコ「もっとも、DC…… ディバイン・クルセイダーズの メンバーだったあなたは……」
ミツコ「以前から ご承知のはずでしょうけど」
フィリオ「しかし、 『プロジェクトTD』の 本来の目的は……」
ミツコ「あら……7年前、 太陽系外宙域で異星人と交戦した 探査艦ヒリュウのことをお忘れ?」
ミツコ「まさか、大事な妹さん達を 敵でいっぱいの外宇宙へ 丸腰で送り出すおつもり?」
フィリオ「……」
ミツコ「あなたはビアン博士の考えに 賛同したからこそ、彼の下でリオンの 開発に加わったのでしょう?」
フィリオ「それは……そうですが、 プロジェクトTDの技術を 軍事に転用するのは……」
ミツコ「いい機会ですから、 はっきりと申し上げましょう」
ミツコ「私の仲介がなければ、 DCが壊滅した時点で プロジェクトは解散……」
ミツコ「それどころか、 あなた達は反逆者として 拘留されるところでしたのよ?」
フィリオ「我々の研究を連邦軍で 続けられるようにして下さったことに 対しては感謝しています」
フィリオ「しかし……」
ミツコ「いいこと? 今のあなた方の 実質上のスポンサーは連邦軍でなく、 イスルギ重工なのです」
ミツコ「私は、社の利益にならない物へ お金を出すつもりなどありません」
ミツコ「我が社の製品が 連邦軍次期主力機の座を得るには、 プロジェクトTDの成果が必要……」
ミツコ「ですから、 新たなリオンの礎となるαプロトの 完成を心待ちにしておりますわよ」
フィリオ「はい……」
ミツコ「それでは、ごきげんよう」
(通信)
フィリオ(αとβ、そしてΩ。 シリーズ77の軍事運用は 避けられぬことなのか……)
フィリオ(僕は……)
(扉が開閉する)
ツグミ「少佐、 テストの準備が完了しました」
フィリオ「ありがとう、 タカクラチーフ。 パイロットの様子は?」
ツグミ「2名共スタンバイしています。 ただ、アイビスの心拍に多少の乱れを 計測していますが」
フィリオ「彼女のことだ、 武者震いだと思うよ」
ツグミ「だといいのですが……」
フィリオ「不安かい?」
ツグミ「……はい。ツイン・テスラ・ ドライブの実験機であるカリオンを 彼女の技量で扱えるかどうか……」
ツグミ「少佐、システムチーフの 権限で、今回のテストはスレイのみで 行うことを提案します」
フィリオ「……君の意見は もっともかも知れない。だが、 テストは予定通り2機で行うよ」
ツグミ「少佐は何故そこまで彼女を…… アイビス・ダグラスを買うのです?」
ツグミ「確かに、メンバーの欠員により テストパイロットは今や2名だけに なってしまいましたが……」
フィリオ「そこまでにしよう、チーフ。 そろそろ予定の時刻だ」
ツグミ「でも……」
フィリオ「君もいつか知るよ。 彼女の持っている確かな力を……」
フィリオ「そして、それこそが 僕達……いや人類にとって、最も 必要とすべきものであることをね」
ツグミ「フィリオ……」
フィリオ「さあ、行こう。 残された時間はわずかなんだ……」


第2話
星への翼

〔戦域:ヒューストン基地周辺〕

スタッフ「ターゲットの バルドング、配置につきました」
ツグミ「カリオン、スタンバイOK」
フィリオ「よし…… カリオン01、04、STOL発進」
(カリオンが出現)
ツグミ「ツイン・テスラ・ドライブ、 各アビオニクス、オールグリーン」
スタッフ「04、01に遅れています」
フィリオ「アイビス、加速だ。 フォーメーション23について」
アイビス「りょ、了解!」
(アイビス機が東へ移動しスレイ機に隣接)
ツグミ「フォーメーション23、 確認。が、04の機体制御に 若干のブレがあります」
フィリオ「アイビス、 少し緊張しているようだね」
アイビス「そんなことは……!」
フィリオ「肩の力を抜いてごらん。 大好きなチーズケーキを 目の前にした時のように」
アイビス「……はい」
フィリオ「ほら、リラックスして。 いつもの君なら出来るはずだよ」
アイビス「ありがとうございます、 フィリオ……少佐」
スレイ「……」
ツグミ「……スレイ、アイビスを 誘導してあげて」
スレイ「了解した。 ……04、こちらの指示に従え」
アイビス「りょ、了解!」
ツグミ「機体、安定しました。 続いて、武装テストを行います。 01、ターゲットへアプローチ」
スレイ「了解。 スレイ・プレスティ、行きます」
フィリオ「落ち着いてな、スレイ」
スレイ「……余計な心配は無用です」
【強制戦闘】
スレイ[ソニック・カッター]vsAI[防御]
(撃破)
スタッフ「01、ターゲット撃破」
フィリオ「ワンアプローチでか……」
スタッフ「さすがですね。 ナンバー01のポジションは 伊達じゃない」
フィリオ「ああ。我が妹ながら、 よくやってくれているよ」
ツグミ「続いて04、 ターゲットへアプローチ」
アイビス「……」
ツグミ「アイビス!」
アイビス「りょ、了解!  アイビス・ダグラス、行きます!」
【強制戦闘】
アイビス[ソニック・カッター]vsAI[防御]
(撃破は出来ない)
アイビス「くっ! しまった!」
スタッフ「04、ターゲット撃破失敗」
フィリオ「カリオンの出力に問題が?」
スタッフ「いえ、重力加速は充分な 数値を計測しています。原因は パイロットの操縦ミスです」
フィリオ「……そうか」
ツグミ(予想通りの結果ね……)
アイビス「すみません!  再アプローチに入ります!」
フィリオ「その必要はないよ、 アイビス。テストに関しては 充分な結果か出た」
アイビス「でも……!」
フィリオ「今の君の最優先事項は、 一刻も早くカリオンに慣れることだ」
ツグミ「少佐、時間の無駄です。 次のテストに進みましょう」
アイビス「時間の無駄……!?」
スレイ「チーフの言う通りだ。 お前が成功するのを待っているほど 我々は暇ではない」
アイビス「く……」
スタッフ「ターゲット、回収します」
(訓練用ダミーが撤退、アイビス機がスレイ機に並ぶと、アラート)
フィリオ「警報!? 何があった!?」
ツグミ「司令部より伝達!  所属不明機が当基地に接近!  現在、迎撃部隊と交戦中!」
ツグミ「いえ、 突破されたようです!」
フィリオ「!!」
(敵機が出現)
フィリオ「ガーリオン……!」
アーチボルド「ふふふ……。 連邦のパイロットはリオンの扱いに まだ不慣れなようですね」
アーチボルド「おかげで、思ったより 簡単に基地へ侵入できましたよ」
ツグミ「短時間で基地の守備隊と 防衛網を突破してくるなんて……」
スレイ「敵はかなりの手練れらしいな」
アイビス「……!」
アーチボルド「ほう、あれが プロジェクトTDの実験機ですか」
所属不明兵「アーチボルド・ グリムズ少佐、あの機体は どうするのですか?」
アーチボルド「ああ、無視して下さい。 僕達の獲物じゃありませんから」
所属不明兵「はっ!」
基地司令「フィリオ少佐、 パーソナルトルーパー部隊が出撃 するまでの時間をカリオンで稼げ!」
フィリオ「待って下さい、司令。 あれは実験機で、パイロットにも 実戦経験はありません」
基地司令「だが、カリオンには 実弾が装填されているのだろう!」
基地司令「今すぐ敵を迎撃できるのは あの2機しかない! やらせろ!」
フィリオ「しかし……!」
スレイ「こちら01。 これより敵機を迎撃する」
フィリオ「スレイ!」
スレイ「機体は完璧だ。 後はパイロットの腕を見せれば、 プロジェクトの有意が実証できる」
スレイ「アイビス、お前は下がれ」
アイビス「で、でも……」
スレイ「足手まといだと 言っている……!」
ツグミ「スレイの言う通りよ。 アイビス、下がりなさい」
アイビス「……あたしだってやれる…… やってみせるよ……!」
ツグミ「アイビス!」
フィリオ「……わかったよ、アイビス。 でも、二人とも無理をしないでくれ」
スレイ「了解」
アイビス(やってみせる……。 あたしは、こんなところで 終われないんだ……!)
アイビス(星の海を往く日まで あたしは……!)

〈1EP〉

アーチボルド「おや? 離脱せずに こちらとやりあう気ですか」
所属不明兵「情報では、 非武装の実験機だと……」
アーチボルド「やれやれ、 どうやら『ローズ』に いっぱい食わされたようですね」
アーチボルド「仕方ありません。 コーツ隊は実験機の相手を」
所属不明兵「はっ!」
アーチボルド「ああ、そうそう。 くれぐれも功を焦ってあの2機を 攻撃しては駄目ですよ」
アーチボルド「スポンサーを怒らせると 僕達の活動に支障が出ますからね」
所属不明兵「了解!」
アーチボルド「ところで、 僕達の獲物は見つかりましたか?」
所属不明兵「はっ、熱源反応を確認。 機数、4。出撃準備中のようです」
アーチボルド「結構。じゃあ、僕達は もう少し様子を見るとしましょう」

〈初戦闘〉

[スレイ]

スレイ「兄様のカリオンに この私の力があれば!」

[アイビス]

アイビス「撃つんだ……!  撃たなければ、自分がやられる!」

〈2PP〉

フィリオ「おかしい……」
ツグミ「え?」
フィリオ「ガーリオン隊は まともな動きを見せていない。 まるで何かを待っているようだ」
ツグミ「言われてみれば……」
フィリオ(もしや、敵の狙いは?)

〈2EP〉

オペレーター「司令、PT第3小隊の 発進準備が整いました!」
基地司令「よし、出撃させろ!」
(量産型ヒュッケバインMk-II×4が出現)
アーチボルド「現れましたね。 では、第3段階に移行……」
アーチボルド「中のパイロットは 殺して構いませんから」
(ガーリオンが量産型ヒュッケバインMk-IIにそれぞれ隣接)
スレイ「何だ!?  あのガーリオンのスピードは!?」
ツグミ「ブースト・ドライブ!?」
フィリオ「馬鹿な、 あのシステムは……!」
連邦兵「なっ、何だ、こいつら!?」
連邦兵「ハ、ハッチが! うわああっ!」
アイビス「あいつら、 何をやっているんだ!?」
所属不明兵「少佐、 機体の奪取に成功しました!」
アーチボルト「上出来です。後詰めは 僕達に任せて、直ちに離脱を」
所属不明兵「はっ!」
(ガーリオンと量産型ヒュッケバインMk-IIが撤退)
基地司令「ヒュッケバインが 奪取されただと!?  すぐに追撃しろ!!」
オペレーター「だ、駄目です!  あのスピードでは追いつけません!」
基地司令「ば、馬鹿な!」
フィリオ「何てことだ……」
ツグミ「少佐、これは一体……!?  何故、あのガーリオンが ブースト・ドライブを!?」
ツグミ「あれは私達のプロジェクトで 開発したバイン・ランゼンの……!」
フィリオ(イスルギに提出した データが外部にもれたのか……?)
アーチボルド「では、もうしばらく 付き合ってもらいましょうか。 獲物を逃がす時間を稼ぐためにね」
(アーチボルド機の側にガーリオンが出現)

〈3PP〉

オペレーター「司令!  友軍機が基地内に突入してきます!」
基地司令「!」
(出撃準備)
キョウスケ「量産型の ヒュッケバインMk-IIは…… 持っていかれた後か」
エクセレン「キョウスケの読みが 当たっちゃったみたいね」
ブリット「くそっ!  あいつら、よくも!!」
キョウスケ「熱くなるな、ブリット。 実験機だけでも守り抜くぞ」
ブリット「ええ、わかっています!」
ツグミ「アルトアイゼンに ヴァイスリッター、量産試作型の ヒュッケバインMk-II……」
スレイ「彼らが あのATXチームか……!」
ラミア(コードのない機体…… あれが実験機か?)
フィリオ(何だ、あの機体は……?  パーソナルトルーパーや アーマードモジュールじゃない)
フィリオ(強いて言えば、 ヴァルシオーネやダブルGに 似ているが……)
アーチボルド「おやおや、噂に名高い ATXチームのご登場ですか」
アーチボルド「よろしい、彼らへの 攻撃を許可します。前々から手合わせ 願いたいと思っていましたからね」
フィリオ「スレイ、アイビス、後は 彼らに任せて、一時離脱するんだ」
スレイ「その必要はありません。 私はまだやれます!」
アイビス「あたしだって!」
フィリオ「これは プロジェクト責任者としての命令だ。 拒否は許さない」
フィリオ「それに、素人の君達では 彼らの足手まといになるだけだ」
スレイ「兄様……!」
アイビス「フィリオ……」
フィリオ「離脱するんだ」
スレイ「……了解です……」
(スレイ機とアイビス機が撤退)
ラミア(後退したか。 よほど大事な機体らしいな)
ラミア(それに、あの加速…… 高性能のテスラ・ドライブを 搭載していると見た)
キョウスケ「アサルト1より各機へ。 敵機を掃討するぞ」
ラミア「了解」

〈アーチボルド機以外全滅〉

アーチボルド「そろそろ頃合ですね。 月並みな台詞で恐縮ですが…… また会いましょう、ATXチーム」
(アーチボルド機が撤退)
ラミア「隊長。 敵機の反応、消えましてございます」
キョウスケ「こちらでも確認した。 ……基地司令とコンタクトを取る」
ラミア「承知しましたですわ」
エクセレン「ねえねえ、ラミアちゃん。 その喋り方、何とかならないの?」
ラミア「お気に触りましたら 申し訳ございませんです。 エクセ姉様」
ラミア(……好きで こう喋っているわけではない)
エクセレン「ううん、文句を 言ってるわけじゃないんだけど…… 緊張感てものが、ちょっとねぇ」
ブリット「それ、 少尉に言えることですか?」
エクセレン「ブリット君。今ので ランキングポイント、下がったわよ?」
ブリット「す、すみません。 って、何のランキングなんですか!」
ラミア(緊張感がないのはどちらだ。 こいつらがあの部隊の中核になるとは 思えんな)
キョウスケ「……基地司令との 交渉が済んだ。弾薬の補給と 帰りの足を用意してくれるらしい」
エクセレン「わお! ついでに お風呂も用意してくんないかしら?」
キョウスケ「近くの湖で 水浴びでもしていろ。 ……全機、格納区画へ向かうぞ」

《ヒューストン基地・格納庫》

スレイ「アイビス…… さっきの無様なフライトは何だ!」
アイビス「………」
スレイ「わかっているのか!  成果を見せなければ、我々の プロジェクトは即刻解散だ!」
スレイ「お前のミス一つで 全てが終わるのだぞ!」
アイビス「わかっている……!  だから……だから……!」
スレイ「意気込みを見せるのなら、 結果を出してもらいたいな」
スレイ「それが出来ない者に シリーズ77のシートに座る 資格はない……!」
アイビス「く……」
ツグミ「酷なようだけど、 スレイの言っていることは事実よ」
ツグミ「アイビス……認識してね。 私達はぎりぎりのところにいるのを」
アイビス「そんなこと…… あたしだってわかってるさ……!」
(速い足音・アイビスが走り去る)
スレイ「逃げたか……。 まるで尻尾を丸めた負け犬だな」
ツグミ「彼女の熱意は 認めるけどね……」
スレイ「だが、今のままでは あいつが星の海を往くのは 無理な話だ」
スレイ「怪我をする前にプロジェクトを 脱退させた方がいい」
ツグミ「そうね……その方が あの子のためかも知れない……」
ツグミ「叶わない夢ならば、 見ない方が幸せだから……」
スレイ「構わんさ。 カリオンはともかく、αプロトの テストパイロットは私一人で充分だ」
スレイ(そう……兄様の夢は 私が必ずかなえてみせる……!)
ツグミ「……」
(扉が開閉する)
エクセレン「わお!  あれがさっきの実験機ね。 名前は……マリオンだったっけ?」
ブリット「カリオンです。 そんなこと言ってると、 ラドム博士に吊されますよ」
エクセレン「あらん、 ブリット君、そういうのが好み?」
ブリット「な、ななな……!」
エクセレン「お約束の反応ねえ。 も少しバリエーションを 増やしなさいな」
ラミア(付き合っていられんな)
スレイ「……タカクラチーフ、 後は任せる」
ツグミ「あ、スレイ……」
(足音・スレイが立ち去る)
エクセレン「あの子が マ……じゃなかった、 カリオンのパイロット?」
ツグミ「え、ええ」
エクセレン「何だか ご機嫌ななめだったみたいね」
ツグミ「申し訳ありません、 エクセレン・ブロウニング少尉。 初の実戦で疲れているようで……」
エクセレン「しょうがないんじゃない?  誰だって初めての時は緊張するもの」
エクセレン「あ、ブリット君。 初めてって言っても、 そっち方面の話じゃないわよ?」
ブリット「わかってますよ。『え』が つく方面じゃないってことでしょ?」
エクセレン「むむ、 やれば出来るじゃないの、 別のリアクション。初段認定よん」
ブリット「そんなのもらっても、 嬉しくありませんよ」
ラミア「あの、エクセ姉様…… 話が進みませんでございますことよ」
ツグミ「?」
エクセレン「ああ、気にしないで。 この子、こういう喋り方なの」
ツグミ「は、はぁ。 ……申し遅れました、私、 プロジェクトTDのメンバー……」
ツグミ「ツグミ・タカクラと申します」
ラミア「プロジェクトTD?」
ツグミ「ええ、シリーズ77…… 恒星間航行機の開発計画です」
ラミア(なるほど。 そのための新型テスラ・ドライブか)
ブリット「恒星間航行機ってことは、 外宇宙へ行くんですか?」
ツグミ「はい。ですので、 その試作機であるカリオンは……」
ツグミ「本来は戦闘機でなく、 外宇宙探査船に分類されるべき 物であり……」
ツグミ「そのパイロットも アストロノーツとしての訓練を 積んでいるんです」
ブリット「あんな小さな機体で 外宇宙へ行こうだなんて…… 随分と思い切った計画ですね」
ツグミ「最終的には、 探査用と居住用のモジュールを 付ける予定なのですが……」
ツグミ「それでも最小クラスの 恒星間航行機であることに 違いはありません」
ラミア「何のためにそんな物を?」
ツグミ「人類が本格的に 外宇宙へ進出するためです」
ツグミ「でも、こんなご時世ですから カリオンにはやむなく武装を……」
エクセレン「そうねえ。 あの大統領さんが、異星人のことを 演説でバラしちゃったもんね」
ツグミ「ですが、シリーズ77は 本当は平和利用のために 開発された機体なんです」
ラミア(平和利用?  くだらん、兵器は兵器でしかない)
ラミア(……私のようにな)
(扉が開閉する)
キョウスケ「……ここにいたか。 輸送機の準備が整った。 シロガネと合流するぞ」
ブリット「わかりました」
ツグミ「あの……キョウスケ・ナンブ 中尉、先程は助けていただき、 本当にありがとうございました」
キョウスケ「礼には及ばん。 当然のことをしたまでだ」
エクセレン「んじゃ、 縁があったらまた会いましょう、 ツグミちゃん」
ツグミ「はい。 皆さん、どうかお気をつけて……」

《ヒューストン基地・部屋》

ツグミ「少佐、本日のテストと 交戦時のデータをお持ちしました」
フィリオ「ありがとう、チーフ。 ……まずは君の目から見た感想を 聞きたいな」
ツグミ「結果は上々と言えます」
ツグミ「特にスレイ操縦時の カリオンの各データは予測数値の 108%を達成しました」
フィリオ「うん……さすがはスレイだ」
ツグミ「嬉しそうですね」
フィリオ「僕達のエースであり、 自慢の妹でもあるからね。 それで、アイビスの方は?」
ツグミ「……93%程度です」
フィリオ「そうか……」
ツグミ「ですが、これでカリオンの 完成度の高さは実証されました」
ツグミ「交戦データにおいても、 部分的にはガーリオンを上回る 戦闘力を発揮しています」
フィリオ「戦闘力か。 果たして、僕達はこの結果を 喜ぶべきなのだろうか……」
ツグミ「少佐……?」
フィリオ「かつてのDC総帥、 ビアン・ゾルダーク博士の 地球圏防衛思想は……」
フィリオ「確かに 人類にとって必要なものだった」
フィリオ「だから、僕は総帥の考えに 賛同し、テスラ・ドライブを搭載した リオンシリーズを設計した……」
ツグミ「………」
フィリオ「そして、戦いは終わった。 ビアン総帥が望んだ形で……」
フィリオ「だが、僕達はいまだに 戦争から解放されない……」
フィリオ「シリーズ77も僕達も 永遠に戦いの呪縛から逃れることは できないのだろうか……」
ツグミ「フィリオ……」
フィリオ「ごめんよ、ツグミ。決して、 ヤケになっているわけじゃないんだ」
フィリオ「ただ、 カリオンとリオンシリーズが 戦っているのを見て、少しね……」
ツグミ「……フィリオ、 今回の襲撃事件でプロジェクトの 本拠地が変わることになったの」
フィリオ「シリーズ77が、他組織の ターゲットになり得るからかい?」
ツグミ「ええ……私達が開発した ブースト・ドライブのデータも 外にもれているようだし……」
ツグミ「万が一を想定しての処置なの」
フィリオ「そうか……移動先は?」
ツグミ「テスラ・ライヒ研究所よ」
フィリオ「テスラ研か……懐かしいな。 でも、DC側についた僕が今さら どの面を下げて戻ればいいんだ……」
ツグミ「ジョナサン・カザハラ博士は そんなことを気になさらないわ」
ツグミ「それに…… 今回の処置で、少しはあなたに 休息を与えてあげることが出来る」
フィリオ「ツグミ……」
ツグミ「フィリオ……残りの データ検証は明日にしましょう」
ツグミ「眠りにつくまで傍にいるわ。 いい夢が見られるように」
フィリオ「いや、 君こそゆっくり休んだ方がいい。 ここのところ、働き詰めだろう?」
ツグミ「ううん……いいの。 今はあなたの力になりたいの……」
フィリオ「……ありがとう、ツグミ」
ツグミ「忘れないでね、 フィリオ。あなたの夢は 私の夢であることを……」
フィリオ「TD…… テレストリアル・ドリーム…… 夢で終わらせたくないよ……」

『リペアキット』を入手した
『プロペラントタンク』を入手した
『スクリューモジュール』を入手した

『チャフグレネード』を入手した


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