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美しき侵入者 ~ 第1話 ~


極めて近く
そして、限りなく遠い世界で……

〔戦域:テスラ・ライヒ研究所周辺〕

Sミラー兵「隊長! バリソン小隊との 通信が途絶しました!」
アクセル「もう突破されたか」
レモン「しょうがないわね。 相手が悪いもの」
アクセル「レモン、そちらの首尾は?」
レモン「あとは 奪取した新型と私達を残すのみよ」
アクセル「ヴィンデル達は無事に 向こう側へたどり着いたのか?」
レモン「それは行ってみてのお楽しみ」
アクセル「やはり、この作戦は あまりにも分の悪い賭けだ」
レモン「何を今さら。 私、向こう側へ行くことを 結構楽しみにしているのよ?」
アクセル「楽しみ? まさか、 例の件じゃないだろうな?」
レモン「さあて、ね」
アクセル「わかっているはずだ。 仮に向こう側にいたとしても……」
レモン「もちろん、 期待なんてしていないわよ。 ただ、興味があるだけ」
アクセル「……」
レモン「それよりも、 先にあちら側へ送り込んだ ナンバーズを信じなさいな」
レモン「あの子達は上手くお膳立てを してくれているはずよ」
アクセル「ファーストジャンパーの、 例もある。その上、俺にあの連中を 信じろと?」
レモン「それは言わない約束でしょ?」
アクセル「覚えはないな。 ……ともかく、お前は先に行け」
レモン「? あなた、何を……」
アクセル「おれは ここで奴と最後の決着をつける」
アクセル「現れたな、 連邦軍特殊鎮圧部隊 ベーオウルブズ……」
(ゲシュペンストMk-IIIとゲシュペンストMk-II・M×10が出現、ゲシュペンストMk-IIIを見る)
アクセル「そして、 ゲシュペンストMk-III……!」
(ソウルゲインが少し東へ移動)
レモン「ちょっと、アクセル!」
アクセル「おれは奴らを食い止める」
レモン「何を言ってるの。 もうすぐ私達が跳ぶ番なのよ?」
アクセル「だが、 ここで後顧の憂いを 確実に断っておく必要がある」
レモン「その憂いって、 ベーオウルブズのことかしら?  それとも……」
アクセル「おれ達が転移した後、 リュケイオスはテスラ研ごと 確実に自爆させねばならん」
アクセル「念には念を押す。 ……ただ、それだけだ」
レモン「おれ達……ね。 その言葉、信じてあげるわ。 でも、遅刻は厳禁よ?」
アクセル「わかっている」
レモン「じゃあ、先に行くわね」
(ソウルゲインとレモン機以外の機体が撤退後、レモン機が撤退)
アクセル「ベーオウルブズ……」
アクセル「いや、 ゲシュペンストMk-III……!」
アクセル「奴は……奴の存在だけは、 この世界から抹殺しておく!」
(ソウルゲインがゲシュペンストMk-IIIに隣接し爆煙・閃光)



新西暦187年。
連邦政府に対し反旗を翻した
ディバイン・クルセイダーズとの「DC戦争」、
異星人エアロゲイターとの戦い「L5戦役」が
終結してから半年後……。

大戦によって中枢部や要人を失った
地球連邦政府は組織の再編を余儀なくされ、
コロニー統合府大統領であった
ブライアン・ミッドグリッドが
連邦政府大統領に就任した。

そして、彼は連邦議会で
L5戦役の情報を公開……
後に「東京宣言」と呼ばれるこの発表で
地球外知的生命体の存在が公式に認められ、
彼等が地球人類にとって
脅威となるなることが示唆された。

さらにミッドグリット大統領は
地球圏の一致団結を訴え、
連邦軍の組織改革と軍備増強計画
「イージス計画」を発表した。
そして、その計画の名の下に
人型機動兵器の量産や新型機の開発、
地球防衛網の強化などが進められた。

だが、それらの陰でうごめく者達がいた。

かつて、ビアン・ゾルダーク博士が率いた軍事結社
「ディバイン・クルセイダーズ」、
通称「DC」の残党……
連邦政府や連邦軍内で軍事政権の
樹立を目論む者達……
それらをつなぐ「影」……
そして、「アインストシリーズ」と呼ばれる
謎の物体群……。
地球人類は今、
さらなる混迷の渦へ陥ろうとしていた……。

〔戦域:ラングレー基地周辺〕

キョウスケ「……こちら、アサルト1。 格納区画への進入許可を求む」
オペレーター「識別信号、確認。 アサルト各機、進入を許可する」
キョウスケ「アサルト1、了解」
エクセレン「やれやれ、今日のお仕事は これでお終いにしたいわねぇ」
キョウスケ「それを決めるのは おれ達じゃない。またスクランブルが かかるかも知れんぞ」
エクセレン「ちょっとキョウスケぇ、 不吉なこと言わないでくれる?」
ブリット「反連邦テロ鎮圧の手伝いに 定時哨戒、DC残党の追跡……」
ブリット「ここ最近の傾向を見ても、 休む暇はないかも知れませんね」
エクセレン「ったくぅ……ローテは どうなってんのよ、ローテは」
ブリット「仕方ありませんよ。 自分達は司令から頼りにされている みたいですから」
エクセレン「あらん、 嫌われてる、の間違いじゃなぁい?」
キョウスケ「………」
オペレーター「アサルト各機へ。 輸送機が間もなく離陸する。 現状の位置で待機せよ」
キョウスケ「アサルト1、了解」
ブリット(輸送機って、 もしかして……)
オペレーター「T4、 2番滑走路へ移動せよ」
(タウゼントフェスラーが出現)
エクセレン「ん?  あれって、クスハちゃんが乗ってる 輸送機じゃないかしらん?」
キョウスケ「ああ、 テスラ研への定期便だ」
エクセレン「あの子、 あっちで新型の調整を手伝うのよね。 いいの? ブリット君」
ブリット「……いいも悪いも、 命令ですから」
ブリット「それに……この基地で 看護兵を務めているより、テスラ研へ 行った方が安全だと思います」
エクセレン「まぁね。 ところで、出発前の熱いキッスは ちゃんと済ませておいた?」
ブリット「な、ななな!  そ、そそそ、そんなこと!」
エクセレン「あら~……その様子じゃ、 何もしてなかったみたいねぇ」
ブリット「あ、当たり前でしょう!  スクランブルがかかって、 今、帰ってきたばかりなんですよ!」
エクセレン「けど、こういう時に キメとかないと後が怖いわよん?」
ブリット「そ、そうなんですか?」
エクセレン「しょうがないわねえ…… んじゃ、せめて手を振るだけでも」
ブリット「手って…… そんなの、見えるわけないでしょ」
エクセレン「何言ってんの。 パーソナルトルーパーの手は、 こういう時のために付いてんのよ?」
ブリット「え!? まさか……」
エクセレン「んふふ~そのま・さ・か。 ほらほら、サインはVっ!」
ブリット「どうして そこでVサインなんですかっ!」
キョウスケ「……ブリット、 発光信号の使用を許可する。 彼女を見送るぞ」
ブリット「は、はい!」
クスハ「……!」
クスハ「あれは……ATXチーム!  あはっ、ヴァイスが手を振ってる!」
クスハ「それに発光信号……。 ガ・ン・バ・レ。 ……もしかして、ブリット君?」
クスハ「マ・タ・ア・オ・ウ…… あれはキョウスケさん?」
クスハ(ありがとう……。 行ってきます)
(タウゼントフェスラーが南へ移動し撤退)
ブリット「クスハ……元気でな」
エクセレン「さあって、 さっさとヴァイスちゃん達を おうちに帰しちゃいましょっか」
キョウスケ「待て。 まだ待機命令が解除されていない」
エクセレン「え?」
キョウスケ「どうやら、 戦艦が基地に入ってくるようだ」
(基地の東側にシロガネが出現し、基地まで移動)
ブリット「中尉、 あれってスペースノア級の……」
キョウスケ「ああ、壱番艦シロガネだ」
エクセレン「修理が終わったみたいね。 艦長さんは誰かしら?」
キョウスケ「さあな。 ダイテツ・ミナセ中佐でないことは 確実だろうが……」

《ラングレー基地司令室》

ケネス「生意気な口を利くな!  貴様に言われずとも、報告書には 目を通しておるわ!」
キョウスケ「……では、ATXチームの 出動シフトの見直しは?」
ケネス「答えは、ノーだ」
キョウスケ「……」
ケネス「他の小隊はヒュッケバインへの 機種変換を終えたばかりだ。 慣れるのに少々時間がかかる」
ケネス「それとも何か?  L5戦役の英雄は、この程度の任務で 根を上げるのか?」
キョウスケ「いえ。 しかし、このままでは機体に負担が かかり、効率が悪くなる一方です」
ケネス「ワシは 貴様らの戦歴を高く買っておる。 それに応えてみせんか、馬鹿者が」
キョウスケ(どうやら、余計なものまで 買われているようだな)
(扉が開閉する)
リー「失礼します。シロガネ艦長、 リー・リンジュン中佐であります」
ケネス「ご苦労、中佐。 ここにいる男が貴様の新しい部下、 キョウスケ・ナンブ中尉だ」
キョウスケ(新しい部下?)
リー「貴様が、そうか……」
キョウスケ「はっ」
リー「私の部下になるからには 遠慮はせん。今まで以上に 働いてもらうぞ」
キョウスケ(……なるほど、 厄介払いということか。これでは、 シフトが見直されるはずもあるまい)
リー「早速だが、 シロガネは補給が済み次第……」
リー「メキシコ高原に潜伏していると 思われるDC残党の掃討任務に就く」
リー「それまでに引き継ぎと機体の搬入を 終えておけ。いいな?」
キョウスケ「……了解」
ケネス「中尉、リー中佐は士官学校を 全科トップの主席で卒業した逸材だ。 彼の下で存分に働いてこい」
キョウスケ「はっ」
ケネス「リー中佐、 シロガネの戦果を期待しておるぞ」
リー「お任せ下さい。 北米方面軍の討伐隊以上の 働きをお見せ致しましょう」
ケネス(フン、口の減らん若造め。 せいぜいワシのために 得点を稼ぐがいい)
キョウスケ(……休む暇はないらしい。 ブリットの言った通りになったか)


第1話
美しき侵入者

〔戦域:森周辺〕

(北側にアンジュルグが出現し、南へ移動)
???(ラミア)「不覚をとった。 各部チェック……レーダーと ASRSがやられたか」
???(ラミア)「機体動作に 支障なさそうだが…… このままでは移動もままならん」
???(ラミア)「それに、 予定していたポイントから大きく 外れてしまっているらしい」
???(ラミア)「む……追いついて来たか」
(敵機が出現)
所属不明兵「チャーリィより アルファへ! アンノウンを視認、 地上6時方向!」
所属不明兵「各機、アンノウンを追尾。 逃がすなよ」
所属不明兵「了解。 しかし、あの機体は何だ?  異星人の兵器か?」
所属不明兵「わからん。 だが、俺達を見られた以上、 撃墜するしかない」
???(ラミア)「……レーダーの故障が ここまでストレートに裏目に 出るとはな」
所属不明兵「各機、仕掛けろ!」
???(ラミア)「長距離通信も使えん…… 何とかしのぐしかないか」

〈???(ラミア)の初戦闘〉

???(ラミア)「任務を 遂行しなければならんのでな…… 消えてもらう!」

〈敵機を2機撃墜〉

所属不明兵「各機、警戒しろ!  この空域へ大型艦が侵入してくる!」
所属不明兵「艦影1、 PT3機の降下を確認!  識別信号は連邦軍!」
(ATXチームとシロガネが出現)
キョウスケ「アサルト1より プラチナム1へ。全機、降下完了」
リーアサルト1、 アンノウンへコンタクトを試みろ」
キョウスケ「アサルト1、了解」
???(ラミア)(あの機体は……!)
???(ラミア)(形状がやや違うが、 間違いない。任務の第一段階は とりあえず成功か?)
エクセレン「えらく趣味的な機体ねえ。 ヴァルシオーネちゃんのお友達?」
ブリット「まるで天使みたいだ……」
エクセレン「あららん、 詩人ねえ、ブリット君。 もしかして、惚れちゃった?」
ブリット「いや、あの…… どこかの誰かじゃあるまいし」
エクセレン「ん~、 あの子だったらあり得るかも」
???(ラミア)(ゲシュペンストMk-IIの カスタム機、ヴァイスリッター……)
???(ラミア)(それに、 ヒュッケバインの系列機らしき 機体……こちらではそうなのか?)
キョウスケ「アンノウンに告ぐ。 こちらはキョウスケ・ナンブ中尉だ」
???(ラミア)(!  キョウスケ・ナンブ……)
キョウスケ「聞こえていたら、 所属と姓名を名乗れ」
???(ラミア)(間違いない、 『ベーオウルフ』か)
キョウスケ「どうした?」
???(ラミア)「大丈夫だ、聞こえている」
ブリット「女の人の声だ……!」
エクセレン「ま、お約束でしょ。 ああいう機体だもんねえ」
キョウスケ「……繰り返す。 所属と姓名を名乗れ」
???(ラミア)「名前か……。 そうだな、ラミア・ラヴレスという。 所属は……機密事項のため、言えん」
キョウスケ「機密事項だと?」
リー「……照会は済んだか?」
一般兵「はっ。 識別コードはSMSC。 イスルギ重工の試作機のようです」
リー「イスルギ重工?  リオンシリーズには見えんぞ」
一般兵「ですが、 単独行動テストのプランが 軍に提出されています」
一般兵「それによると、 テストパイロットはラミア・ ラヴレスとなっています」
リー「フン、 つじつまは合っているということか」
リー「だが、念のためイスルギ重工に 確認を取れ」
一般兵「はっ」
リー「アサルト1、 その機体はイスルギの試作機だ。 DC残党を掃討した後、保護しろ」
キョウスケ(あれが?  それに、こんな所で単独行動 テストとは……解せんな)
リー「どうした、アサルト1?  復唱しろ」
キョウスケ「了解。DC残党を掃討し、 イスルギの試作機を保護します」
リー(フン……データなど いくらでもねつ造できるが……)
リー(イスルギ重工の横行を 食い止める材料になるかも知れん)
キョウスケ「エクセレン、ブリット。 聞いての通りだ。ぬかるなよ」
エクセレン「オッケー!  んじゃま、謎の美女の救出劇と いきましょっか!」
ブリット「少尉、まだ美女だって 決まったわけじゃ……」
エクセレン「それもお約束でしょ?」
キョウスケ「無駄口を叩くな。 ……行くぞ!」
ラミア(すでに お膳立てがされていたらしいな。 これではあべこべだ)
ラミア(まあいい、利用させてもらおう)

〈敵機全滅〉

一般兵「索敵範囲内に敵影なし」
リー「警戒態勢へ移行。 試作機を回収し、危険物処理室で 機体の調査を行え」
一般兵「はっ」
リー「それから、イスルギ重工と コンタクトは取れたか?」
一般兵「はい。 すでに先方を待たせてあります」
リー「よし、回線をこちらに回せ」

《シロガネ艦橋》

イスルギ社員「……ええ、 確かにSMSCアンジェルグは 当社で開発した機体です」
リー「何故、機密扱いに?」
イスルギ社員「アンジェルグは 次期量産主力機のトライアルに 提出する予定でして……」
イスルギ社員「他社に情報がもれるのを 防ぎたかったのです」
リー「テストパイロットの ラミア・ラヴレスについては?」
イスルギ社員「彼女の経歴は、 お送りした採用時の信用調査資料の 通りです」
リー「……了解した。では、速やかに 機体とパイロットの引き取りを」
イスルギ社員「それなんですが…… 弊社の社長、ミツコ・イスルギの 意向で……」
イスルギ社員「各種データ取得のため、 アンジェルグとラミアを貴艦に 同行させていただけませんか?」
リー「本艦は現在作戦行動中である。 出来ぬ相談だな」
イスルギ社員「そこを何とか。 社長の方からも艦長の才能を 見込んで、是非にと」
リー「貴社の利益に貢献する気はない。 ただでさえも軍とイスルギのゆ着が 問題視されているというのに……」
イスルギ社員「実は、北米方面軍の ケネス・ギャレット少将にも 根回しが済んでおりまして……」
リー(ケネスめ、金になびいたか。 そんな連中が地球圏防衛の 要など……私は認めん)
イスルギ社員「間もなく、少将の方から 正式にご命令が下るかと」
リー「……機密保持と 機体の安全保証は出来んぞ?」
イスルギ社員「それは 重々承知致しております。 では、何卒よろしくお願い致します」
(通信)
リー「聞いての通りだ、中尉。 アンジェルグとラミア・ラヴレスは 貴様に預ける」
キョウスケ「いいのですか?  身元が明かされたとは言え、 まだ不確定要素は多い……」
リー「反論は許さん。 貴様は私の命令に従っていればいい」
キョウスケ「……」
リー「言っておくぞ、中尉。 ハガネに乗っていた時と同じように ふるまえるとは思わんことだ」
リー「命令、そして軍規に違反する者は 厳しく処分する。あのふざけた女にも そう伝えておけ」
キョウスケ「……了解」

《シロガネ格納庫》

エクセレン「な~る。 私達で面倒を見ろってのね?」
キョウスケ「ああ」
ブリット「中尉、アンジェルグの 調査結果……聞きました?」
キョウスケ「いや、まだだ」
ブリット「かなりの 高性能機らしいんですが……」
ブリット「ジェネレーターや武装とか、 不明な点が多いそうです」
エクセレン「あれって、 トライアル提出用の 機体なんでしょ?」
エクセレン「おニューの 量産型ヒュッケちゃんに 取って代わろうってんだから……」
エクセレン「新技術や企業秘密が 満載なのは当たり前じゃない?」
ブリット「そんな言葉だけで 片づけられはしませんよ」
ブリット「どう見たってあれ…… リオンシリーズじゃありませんし、 本当にイスルギの機体なのかどうか」
エクセレン「そうねぇ。 何とかリオンって名前じゃないしね」
(扉が開閉する)
ラミア「私の機体に何か?」
ブリット「!」
エクセレン「あらん、 もしかして、あなたが……」
ラミア「ええ。ラミア・ラヴレスで ございますことよ」
ブリット(? 喋り方が何か変だな)
エクセレン「ほらほら、ブリット君。 お約束通りだったでしょ?」
ブリット「え、ええ……確かに」
ラミア(お約束? 何のことだ?)
キョウスケ「一つ聞かせてもらおう。 何故、あんな空域で単独テストを?」
ラミア「……そういう社命で ありましたので、従っただけ なのですことよ」
ラミア(む……何だ? 口調が……)
エクセレン「ふ~ん…… 変わった喋り方をする子ねえ。 どこの出身?」
ラミア「……」
エクセレン「もしかして、 不思議の国とかだったりして?」
ラミア(この女……)
ブリット「何言ってんですか、少尉。 スペースコロニーの出身だって、 資料に書いてあったでしょ?」
ラミア「そうでございますことよ、 ホホホホ」
ラミア(く、間違いない。 あの時のショックで言語機能に……)
エクセレン「ふ~ん…… でも、気になるのよねえ」
ラミア(……気づかれたか?)
エクセレン「んふふ~、 ちょっといいかしら?」
ラミア「な、 何を見られてるでございます?」
エクセレン「むむ、これは……。 ガーネット敗れたり、って感じ?」
ラミア「?」
ブリット「ガーネットさん?  も、もしかして…… むむむ、胸の話ですか!?」
エクセレン「ちょいちょい、 ブリット君? 顔真っ赤にして なに想像してんの? いやぁねえ」
ブリット「お、俺は別に……!!」
エクセレン「いやん、鼻血?  まだまだ若いわねぇ、ブリット君」
ラミア(この女……わからん)
キョウスケ「いい加減にしろ、 エクセレン」
エクセレン「はいは~い。 ごめんしてね、ラミアちゃん」
ラミア「いえ……」
ラミア(どうやら、見かけで 判断しない方が良さそうだな)
ラミア(キョウスケ・ナンブ同様、 警戒が必要か。場合によっては、 始末しなければならん)
キョウスケ「自己紹介をしておこう。 おれはキョウスケ・ナンブ…… ATXチームの隊長だ」
ラミア(ATXチーム…… 確か、例の部隊の前身だったな)
ラミア(そして、AAAクラスの ターゲット……コード『ベーオウルフ』 キョウスケ・ナンブ)
ラミア(アクシデントはあったが、 任務の第二段階まで成功か)
ブリット「自分はブルックリン・ ラックフィールド少尉です。 ブリットと呼んでください」
エクセレン「付け加えれば、 ただいま遠距離恋愛中よん」
ブリット「しょ、少尉!」
ラミア(ブルックリン・ ラックフィールド…… その名前もデータにある)
ラミア(問題はこちらのデータに 存在していないあの女だ)
エクセレン「私はエクセレン…… エクセレン・ブロウニング。 よろしくね」
ラミア「!」
エクセレン「どうしたの?」
ラミア(ブロウニング…… ブロウニングだと?)
ラミア(まさか……)
エクセレン「そんなに変わった名前じゃ ないと思うんだけど?」
ラミア「一つお聞きしたいので ございますですが……ご家族は?」
エクセレン「家族? 私とパパだけよ」
ラミア(……なら、ただの偶然か)
エクセレン「じゃ、ラミアちゃん。 私のことは『姐さん』か、 『エクセ姉様』って呼んでね」
ラミア(……ここは 合わせておいた方が無難だな)
ラミア「かしこまりましてよ、 エクセ姉様」
キョウスケ「真に受けなくていい。 これからはおれ達と行動を 共にしてもらうぞ」
ラミア「はい」
ブリット「それじゃ、ラミアさん。 艦内を案内しますよ」
ラミア「よろしく お願い致しますですわ」
ラミア(後は言語系か…… これはどうにもならん)
キョウスケ(……さて、このカードは ジョーカーか、フェイクか……?)
キョウスケ(それとも……)

《???・司令室》

???(ヴィンデル)「反応があっただと?」
???(レモン)「ええ、北米のアラバマでね。 『ローズ』から報告があったわ」
???(ヴィンデル)「こちらへ来るタイミングと 転送ポイントがかなりずれているが、 大丈夫なのか?」
???(レモン)「どうかしら。転移時の エネルギー数値が、予想されていた 限界値を遥かに超えている……」
???(ヴィンデル)「……失敗ならば、 すぐに次の手を打たねばならん」
???(レモン)「そうあわてないで。 機体の転移そのものは 成功しているし……」
???(レモン)「『ローズ』が 根回しもしてくれたみたい。 ただ……」
???(ヴィンデル)「ただ……何だ?」
???(レモン)「神経系に影響が出るかも 知れないわね……あの子、 デリケートなのよ」
???(ヴィンデル)「所詮、そんなものか。 やはり、奴を捜し出すぞ」
???(レモン)「まあまあ、お待ちなさいな。 あの子、任務遂行の確実性は 彼より上よ」
???(ヴィンデル)「良かろう、任せる」
???(レモン)(上手くやりなさいな)


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