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氷の国の方舟 リュウセイルート ~ 第35話 ~

《医務室》

クスハ「……ブリット君…」
ブリット「! 気がついたのか?」
クスハ「…私…北京で… エアロゲイターに捕まって…」
クスハ「…それから………」
クスハ「…ダメ、思い出せない……」
ブリット「む、無理して 思い出さなくてもいいさ。こうやって 無事に助け出されたんだから」
クスハ「…でも、 何かあったんでしょ…? 私…」
ブリット「な、何もないって。 気にしなくても大丈夫、大丈夫」
クスハ「…ブリット君、 嘘をつくのが下手ね…」
ブリット「う……」
クスハ「…みんなに迷惑かけたのね… ごめんなさい…本当に…」
ブリット「クスハ…」
クスハ「…それから、ブリット君… ありがと…」
ブリット「ありがと…って?」
クスハ「私を助けてくれたの、 ブリット君なんでしょ…?」
ブリット「え!?  い、いや、その…。みんなが 力を貸してくれたおかげさ」
クスハ「…でも、ブリット君が 一番強く私を呼んでくれていた…」
クスハ「そんな気がするの……」
ブリット「クスハ……」

《ブリーフィングルーム》

マサキ「南極ぅ?  何でそんな地の果てまで行くんだ?」
カチーナ「…放棄されたはずの コーツランド基地で何かやってる 連中がいるらしいぜ」
カチーナ「あたし達はそいつらが 何者なのか調べに行くのさ」
マサキ「ちぇっ、あそこは あんましいい思い出がねえんだよな」
シロ「まったくだニャ。 グランゾンとは出くわすし、 ハガネの同型艦は沈んじゃったし」
クロ「おまけに死ぬほど寒いしニャ」
カチーナ「寒いのは当たり前だぜ。 南極だからな」
エクセレン「まぁ、 寒さに関係なくアツアツでラブラブな 人達もいるけど。ね、リューネ」
リューネ「さあ、誰のこと?  もしかして、医務室の二人?」
エクセレン「あらん、 上手く切り返して来たわねえ」
リューネ「そう何回も同じネタで からかわれちゃ、たまんないわよ」
マサキ「お前ら、何の話してんだ?」
リューネ「ブリットとクスハの話。 おかげでラーダが風邪をひかなくて 済むって言ってたよ」
マサキ「風邪をひかねえだと?  何でだよ?」
リューネ「意味、わかんないの?」
マサキ「あ、ああ」
カチーナ(こりゃ余程だね。 あたしでもわかるってのにさ)

《艦内個室》

アヤ「ごめんなさい、ライ。 心配をかけちゃって…」
ライ「いえ」
アヤ「私…… SRXチームのリーダーなのに、 みんなの足を引っ張ってばかりだわ」
ライ「…大尉は 自分の役目を果たしておられます」
アヤ「…嘘をつかなくてもいいわ。 大尉という階級も、機密保持に都合が いいからもらっただけだもの」
ライ「………」
アヤ「私ね、今さらな話だけど… 本当は軍に入るのが嫌だったの」
アヤ「でも、父が作った R-3のT-LINKシステムと リンクしていれば…」
アヤ「死んだ母や妹のマイと 心のどこかでつながっていられると 思った…」
ライ「では、大尉の母上と妹さんも?」
アヤ「ええ。母と妹は私と同じ力を持ち、 父の実験台になって…死んだわ」
アヤ「そして、他にも父の 実験台になった人が何人かいたの」
アヤ「その中には リュウのお母さんも…」
ライ「! それは本当ですか…?」
アヤ「ええ。 最近知ったんだけど、私と同じような 力を持っていらしたそうなの」
アヤ「でも、ある日…突然それを失って 特脳研を退所した…。リュウを 生んだのはその後のことらしいわ」
アヤ「結果的に父は私の母と妹のみ ならず、リュウとあの子の母親までも 利用していた…」
アヤ「そして、あの子はこないだの 査問でそのことを知ったはずだわ」
アヤ「だから、私… リュウに何て言えばいいのか、 わからなくて…」
ライ「彼からの伝言で、 大尉には気にしないで欲しいと」
アヤ「え…?」
ライ「リュウセイも子供では ありません。奴は奴なりに大尉の ことを理解しているのだと思います」
アヤ「…そう…あの子が…。 フフ…私、本当に自分が 情けなくなっちゃった…」
アヤ「いつも自分のことばかり考えてて… 過去のこだわりを捨てられなくて…」
ライ「…いい加減にして下さい、大尉」
アヤ「えっ…?」
ライ「悩むだけなら… 誰にでも、いつにでも出来ます」
ライ「辛い過去を背負っているのは、 我々だけではないのです」
アヤ「………」
ライ「ですから、覚悟を決めて下さい。 いつまでも過去に囚われていたら… 前に進むことは出来ません」
ライ「足踏みをしているだけでは、 何にもならないのです」
ライ「例え、同じ結果を 迎える可能性があったとしても…」
ライ「勇気を持って、一歩を 踏み出すことが大事なのです」
ライ「…自分はハガネに乗り、 キョウスケやマサキ達と出会って… そのことを学びました」
アヤ(………)
アヤ(一歩を踏み出すこと……)
アヤ「…わかったわ、ライ。 私も前に進むわ。SRXチームの リーダーとして…」
アヤ「ハガネや ヒリュウ改の一員として… みんなと一緒に戦うわ」
アヤ「でなきゃ、エクセレンや リューネ達に笑われちゃうものね」
ライ「大尉…」
アヤ「じゃあ、行きましょう…ライ」
ライ「了解です」

《ヒリュウ改艦橋》

ユン「まもなく 本艦は南極圏に入ります」
ショーン「やれやれ、どうも寒い所は 好きになれませんな」
ユン「あら、 副長…冷え症でしたっけ?」
ショーン「いやいや、こういう所は 女性が厚着になりがちですからな」
ユン「やっぱり…。 そんなことだろうと思いました」
レフィーナ「ユン、コーツランド基地の 情報は何か入って来ましたか?」
ユン「は、はい。高熱源体らしきものの 反応を微弱ながら感知しています」
ユン「しかし、HOSジャマーのせいで 詳細は不明です」
ショーン「この距離で感知可能な 高熱源体なら、おそらく戦艦の類 でしょうな」
レフィーナ「戦艦…!?」
ショーン「ええ、それも特殊な…」
レフィーナ「特殊…」
ショーン「私は南極にいる方々の だいたいの正体はつかめました。 艦長はいかがですかな?」
レフィーナ「EOT特別審議会ですね」
ショーン「ええ。主要メンバーの 何人かはジュネーブの惨劇から 生き延びていたようですな」
レフィーナ「どうします、副長?  極東支部に報告しますか?」
ショーン「念のため、 南極へ直接赴いて事実の確認を しておいた方がいいでしょう」
ショーン「何せ、彼らは エアロゲイターと接触することが 目的だった組織ですからな…」
ショーン「今になって何を企んでいるか わかりませんぞ?」
レフィーナ「そうですね。 何事もなければいいのですが…」


第35話
氷の国の方舟

(基地の上にシロガネ[中立]がいる)
カール「シロガネの調子はどうだ?  レンジ・イスルギ社長…」
レンジ「問題はありません、議長。 修理作業はパーフェクト…この艦は 予定通りの時刻に出航できます」
カール「フン…さすがは軍の戦闘機や DCのリオンシリーズを量産した イスルギ重工といったところか」
カール「だが、信用面ではどうかな」
レンジ「と、申されますと?」
カール「お前はEOTI機関時代から ビアン・ゾルダークに接近し…」
カール「DCの兵器製造を一手に 引き受けて大きな利益を得た」
カール「しかし、ビアンが 死んだと知れば手のひらを返し… 私の下へやって来た」
カール「はたして、そんな男を 信用することが出来るか?」
レンジ「お戯れを、議長。 利益を追及するのは、企業として 当然の行為です」
レンジ「つまらぬ理想を掲げ、 客を選ぶマオ・インダストリーなどと 一緒にしてもらっては困ります」
カール「フン…まあよい。 シロガネとこの基地を修復した お前の功績は認めよう」
レンジ「ありがとうございます。 で、例のお話ですが…」
カール「わかっておる。 お前達のシロガネへの乗艦を認める」
レンジ「ご配慮感謝致します。 これで一安心でございます」
レンシ「私は、勝てぬ相手に 戦いを挑む愚かな軍人共と 心中する気はこざいませんので」
レンジ「時に議長… 一つ気になることがあるのですが」
カール「ニブハル・ムブハルの ことか?」
レンジ「左様で。あの男… 本当に我々をホワイトスターへ 導くつもりなのですか?」
カール「もはやエアロゲイターと 正面きっての交渉は絶望的だ」
カール「地球圏の安泰を図るには、 ニブハルを介して、直接彼らの 統治者と話し合うしかない」
レンジ「あの男と行動を共にすれば、 エアロゲイターに攻撃されずに済むと いう話はわかりますが…」
レンジ「信用するのは危険かと」
ニブハル「…これはまた、 随分と失礼なおっしゃりようですな」
レンジ「……!」
ニブハル「私はあなた方に 先見の明があると判断し、国賓待遇で お迎えしようというのですぞ?」
レンジ「口先だけでは 何とでも言えるものだ、ニブハル」
ニブハル「フフ…あなたも同様にね」
レンジ「何だと…!?」
カール「今はつまらぬ言い争いを している場合ではない。 一刻も早くシロガネで…」
(アラート)
オペレーター「議長!  氷原下に高熱源体の反応が!!」
カール「! ハガネめ、もう現れたか」
オペレーター「いえ、識別は弐番艦の ハガネではありません!」
(クロガネ[味方]が出現)
オペレーター「そ、そんな馬鹿な!  大陸氷を突き破って来た…!?」
レンジ「な、何という無茶な真似を…!  貴重なスペースノア級を壊す気か!」
エルザム「…私はクロガネ艦長、 エルザム・V・ブランシュタインだ」
カール「ブランシュタイン?  マイヤーの息子か…」
エルザム「そちらはEOT特別審議会の カール・シュトレーゼマン議長と お見受けした」
カール「…そうだ」
エルザム「では…その壱番艦シロガネで いずこへ行かれるつもりなのか、 お答え願いたい」
レンジ「DCの残党風情が…。 お前にそんなことを教える必要が あるのか?」
カール「よかろう。 ならば、教えてやろう…」
レンジ「議長?」
カール「我々はこのシロガネで 地球から一時脱出するのだ」
エルザム「母星の危機に立ち向かおうと する者達を見捨て…」
エルザム「自分達だけで 逃げ出すおつもりか?」
カール「否。我々は人類の種の 保存のため、エアロゲイターと 直接交渉を行うのだ」
エルザム「…その行為が 新たなる火種を地球へ呼び込むことを 承知の上でか?」
カール「私は戦うことしか能のない 軍人とは違う」
カール「地球を代表する政治家として… 人類の未来を確保するために ホワイトスターへ赴くのだ」
エルザム「やはり、 行き先はあの白き魔星か…」
エルザム「…人類の未来のためにという 理念は間違ってはいまい。だが…」
エルザム「お前達の暗躍が、 結果として地球圏をさらなる危機に 追い込んでいるのがわからんのか?」
カール「政治とはそういうものだ」
カール「軍事力に頼るしかなかった マイヤーやビアンの下にいた貴様には 理解出来ぬだろうがな」
エルザム「己の身の保全のために大義を 捨て、母星を売ろうとするお前達の 考えなど…」
エルザム「理解する気はない!」
カール「ならば、どうするつもりだ?  このシロガネを沈めるか?」
エルザム「………」
(アラート)
LB兵「重力震反応を感知!  エアロゲイターの機動兵器が 転移出現します!」
エルザム「やはり、現れたか…!」
(敵機が出現)
レンジ「エ、エアロゲイター!  何故、奴らがここに!?  話はついているのではないのか!?」
ニブハル「先程、 あなたもおっしゃられたとおり… 我々も一枚岩ではこざいませんので」
レンジ「う、うぬぬ…。 ここまで来て死んでなるものか!」
ニブハル「心配はいりません。 どうやら、あのクロガネは我々を 守るためにここへ来たようですから」
レンジ「そ、それは本当か!?」
カール「よし…。 シロガネの出港準備を急がせろ」
LB兵「エルザム少佐、 いかがなさいますか!?」
エルザム「シロガネを防衛する。私の トロンベを回せ。Mk-IIの方をな」
LB兵「しょ、少佐はあの腰抜け共を 守れとおっしゃるのですか!?」
エルザム「シュトレーゼマンは ともかく、シロガネは地球側の 戦力として必要だ」
エルザム「ここで失うわけにはいかん」
(ヒュッケバインMk-IIが出現)
エルザム「では、 クロガネを任せるぞ」
DC艦長「しかし、少佐だけでは!」
エルザム「構わん。それに…」
エルザム「DC戦争中、統合軍が マオ社から手に入れたこの機体… ここで性能を確かめておきたい」
DC艦長「りょ、了解しました…」
エルザム「よし…。では行くぞ、 ヒュッケバイン・トロンベよ!」

〈3PP〉

エルザム(さすがに 敵があれだけだとは思えん)
エルザム(増援が現れた場合は こちらが不利になるか…)
エルザム「む!?」
(ヒュッケバインMk-IIがゼカリアに囲まれる)
エルザム「くっ、不覚!」
(南側にグルンガスト零式が出現)
エルザム「あれは…!」
レンジ「グ、グルンガストだと!?  しかも、あのタイプは…!」
ゼンガー「我が名はゼンガー!  ゼンガー・ゾンボルト!  悪を断つ剣なり!!」
(グルンガスト零式がヒュッケバインMk-IIの近くまで動く)
ゼンガー「一刀! 両断ッ!!」
(ヒュッケバインMk-IIの周りに現れた増援を破壊)
ゼンガー「…我に断てぬものなし!」
エルザム「…生きていたか、 我が友よ」
ゼンガー「敵に隙を見せるとは… 貴様らしくないな、エルザム」
エルザム「フッ… その物言い、相変わらずだな」
ゼンガー「再会を喜んでいる暇はない。 我が使命を果たすため助太刀に来た」
エルザム「助かる。ならば、 久々に馬を並べて戦うとしよう」
ゼンガー「応ッ!」

(フーレ以外を全滅)

母艦出撃選択
ハガネ ヒリュウ改


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