back index next


ビアン・ゾルダーク リュウセイルート ~ 第13話 ~

《DC総司令部》

アードラー「遠路はるばる ご苦労だったな、テンペスト少佐」
テンペスト「副総帥、 あの後、ウェーク島はハガネによって 陥落したと聞きましたが…」
アードラー「フン、耳が早いな。 テンザンに任せたのが 失敗だったと言いたいのか?」
テンペスト「…いえ」
アードラー「…ビアン総帥が 先程からお待ちじゃ。行くがいい」
テンペスト「………」
(扉が開閉する・テンペストが立ち去る)
アードラー(あの顔…。 総帥のご命令にも、ワシの命令にも 納得がいっておらぬようじゃな…)
アードラー(上手くすれば、こちら側に 引き込めるかも知れんのう…)
イーグレット「アードラー…」
アードラー「イーグレット・フェフか。 『アースクレイドル』の建造の 進行具合はどうじゃ?」
イーグレット「遅れている。 ビアン総帥とマイヤー総司令が月側の 作業を優先させているおかげでな」
イーグレット「それに加え…」
アードラー「ソフィア・ネートが アースクレイドルの軍事利用に 反対しておるのじゃな?」
イーグレット「ああ。あの巨大な 地下人工冬眠施設が、DCの戦力 拠点となる事に嫌悪感を抱いている」
アードラー「フン…。今は 地球の武力統一を成し遂げることが 最優先の課題じゃというのに…」
イーグレット「ビアン総帥や マイヤー総司令官のやり方では 手ぬるいと?」
アードラー「うむ。連邦の中枢部や 主要基地への打撃を最小限に抑える 戦略では、戦乱が長引くばかりじゃ」
アードラー「もし、今、 エアロゲイターが本格的な侵略を 開始したら、我らは敗北する…」
イーグレット「そんな時のための アースクレイドルだ。ほんの一握りの 優秀な種さえ生き延びれば…」
イーグレット「人類は 新たな未来を手にすることが出来る」
アードラー「そうじゃな」
イーグレット(フッ…愚かな老人に 未来など必要ない。お前達の命など、 異星人共にくれてやる…)

《DC総司令部》

ビアン「テンペスト…お前は、 このアイドネウス島で中枢制圧作戦に 投入する部隊の再編成を行うのだ」
テンペスト「…了解しました」
ビアン「…何か私に 言いたいことがあるような顔だな」
テンペスト「総帥、 どうか自分を前線へお送り下さい」
ビアン「ならん。 今の私が必要としているのは…」
ビアン「連邦軍やエアロゲイターとの 戦いで、精鋭部隊を率いることの 出来る優秀な指揮官だ」
テンペスト「…今の自分は、連邦軍への 復讐を遂げるために生きています」
テンペスト「…それが… 今回のように後方へ送られては…」
ビアン「お前が『ホープ事件』で 妻と子供を失い…連邦軍を激しく 憎悪していることは知っている」
テンペスト「ならば、せめて自分に ハガネの迎撃任務をお任せ下さい」
ビアン「………」
テンペスト「明らかに、 このアイドネウス島を目指している あの艦を放っておくことは危険です」
テンペスト「…全体的な戦況は我が軍が 優勢と言えど、ハガネは我々の寝首を かく刺客になるかも知れません」
テンペスト「…それとも、総帥は 何らかのお考えがあって、あの艦を 見逃しておられるのですか?」
ビアン「お前がそこまで言うほどの ハガネ…。一度、この目で直に 見ておいた方が良さそうだな」
テンペスト「は…?」
ビアン「フフフ…。はたして、 連中がどこまで成長しているか…。 それを私が自ら確かめるとしよう」
テンペスト「………」

《ハガネ艦橋》

ラトゥーニ「…DCは、AMの他に 連邦軍の機体を使っていることが あるから、気をつけて…」
クロ「大体は所属基地や部隊コードで、 敵味方を識別すればいいニャ?」
ラトゥーニ「うん…」
シロ「じゃあ、このAGXってのは ニャんニャんだ?」
ラトゥーニ「それは エアロゲイターの機体識別コード…」
リオ(…ラトゥーニが、ジャーダ少尉や ガーネット曹長以外の人と こんなに喋るなんて珍しいわね)
リオ(…と言っても、相手は猫だけど)
テツヤ「お前達、何をやってるんだ?」
ラトゥーニ「………」
リオ「クロとシロに敵機のデータを 用意してあげてるんです」
テツヤ「敵機のデータ?」
リオ「ええ。サイバスターには 連邦軍とDCの機体データが ないようなので…」
テツヤ(…やはり、サイバスターは この世界の機体ではないのか…?)
シロ「このデータをサイバスターの コンピュータに入れれば、 戦闘がやりやすくなるニャ」
テツヤ「…猫が コンピュータにデータを…。 ゆ、優秀なんだな、お前達は」
クロ「ただの猫じゃニャいわよ。 あたし達はマサキをサポートする ファミリアニャの」
テツヤ「ファミリ…?」
シロ「一言でいうと、使い魔だニャ」
テツヤ「つ、使い魔…?」
ラトゥーニ「…使い魔は、 主に西洋の魔女が使役する 下級の悪魔のこと…」
クロ「でも、あたし達は 悪魔ニャんかじゃニャいわよ」
ラトゥーニ「…うん、わかってる…」
テツヤ「魔女…悪魔…う、う~む…」
リオ「うふふ… テツヤ大尉って、そっち方面の 話には免疫ないみたいですね」
テツヤ「あ、ああ… そんなこと、士官学校では 教わらなかったからな…」

《ブリーフィングルーム》

イングラム「では、 君がどこから来たのかという 質問には答えられないと?」
マサキ「ああ。どうせあんた達には 信じられねえ話だろうからな」
アヤ「でも、一応、 話してもらえないかしら…?」
マサキ「………」
アヤ(余程、話したくない理由が あるみたいね…)
イングラム「ならば、質問を変えよう。 君は何故、シュウ・シラカワを 追っているのだ?」
マサキ「あいつを放っておけば、 必ず地上にもロクでもねえことが 起きるに決まってる」
イングラム(…地上にも、か…)
アヤ「ろくでもないことって、 あの南極の事件みたいな…?」
マサキ「ああ。だから、 俺はそれを止めるために あの野郎を追ってるんだ」
イングラム「…シュウ・シラカワという 人物は十指に及ぶ博士号を持つ 若き天才科学者…」
イングラム「さらに、EOT解析の 第一人者であり、グランゾンのテスト パイロットだと聞いているが…」
マサキ「………」
イングラム「君の話しによると、別の 側面も持っている人物のようだな」
マサキ(…このイングラムって奴、 何者なんだ? どこか得体の 知れねえ感じがしやがる…)
マサキ(シュウと同じで 油断のならねえ野郎だな…)
イングラム「………」

《ブリーフィングルーム》

イングラム「調査結果はどうだった?」
アヤ「マサキ・アンドーの IDは、政府のデータベースに 存在していました」
アヤ「正真正銘の日本人であることに 間違いありませんが…ここしばらく 行方不明になっていたようです」
イングラム「ほう…」
イングラム「ならば、 彼はこの世界から魔装機神を 作り出した別の世界へ行き…」
イングラム「またこの世界へ 帰って来たという見方も出来るな」
アヤ「別の世界…ですか?」
イングラム「ああ。古来より そういう世界は地球のいずこかに 存在していると言われている」
イングラム「シャンバラ、アバロン、 アガルダ、桃源郷、常世之国など… 例を挙げればきりがない」
イングラム「数年前には、古代文明の 再調査を行っているLTR機構の マコト・アンザイ博士が…」
イングラム「新たな視点から見た 地球内空洞説を発表している」
アヤ「空洞…? 地球の中に そんなものがあるというんですか?」
イングラム「アンザイ博士の 論文によれば、実際に存在する空洞と いうわけではないらしいが…」
イングラム「マサキ・アンドーは、 博士が仮定した地球内部に存在する 異世界から来たのかも知れんな」
アヤ(…地球内部の異世界…)

《ハガネ格納庫》

シロ「あ、マサキ。ラトゥーニと リオからもらったデータを、 サイバスターに入れといたニャ」
クロ「ついでに 地上世界の地図データもね」
マサキ「ふ~ん。 気が利くじゃねえか、クロ」
クロ(それでマサキの方向オンチが 治るとは思えニャいけどニャ)
シロ「それより、マサキ… こないだの戦闘から、顔色が あまり良くニャいニャ」
マサキ「なに、気にすんな。 大丈夫だって」
クスハ「あ、あの…」
マサキ「ん? あんた、 確か俺を手当てしてくれた…」
クスハ「はい。 看護兵のクスハ・ミズハです」
マサキ「俺に何か用かよ?」
クスハ「こないだの 診断結果で、マサキ君の体調が 良くなかったので…」
クスハ「これを持って来たんです」
マサキ「何だこりゃ?」
クスハ「私が作った 特製の栄養ドリンクです」
マサキ(栄養ドリンク…?  な…何か凄い色してんだけど…)
クスハ「あ、あの… 見た目は悪いですけど、 効き目はありますから…」
マサキ(その見た目って奴が 問題なんだよな…怪しげな 粒々が入ってるし…)
シロ「マサキ、人の好意を 無にするのは良くニャいニャ」
クロ「そうニャ。 せっかくクスハがマサキのために 持って来てくれたのに…」
マサキ「わ、わかったよ。 飲むよ、飲みゃあいいんだろ!」
マサキ「………」
クスハ「…あの、味はどうですか?」
マサキ「…んぐ!? んぐぐ…!」
クロ「マ、マサキ! 大丈夫!?」
(アラート)
クスハ「な、何なの!?」

《ハガネ艦橋》

エイタ「降下カプセル3基、 上空から降下して来ます!!」
テツヤ「宇宙から降りて来たのか?  ならば、連中は…」
エイタ「カプセルよりAMが出現!  識別は…コロニー統合軍です!」
テツヤ「やはり、そうか!」
エイタ「敵AMが数機、 本艦へ接近して来ます!」
ダイテツ「総員、第1種戦闘態勢!  PT部隊、出撃せよ!」


第13話
ビアン・ゾルダーク

〔戦域:北太平洋上〕

レオナ「よろしいのですか、隊長?  我々の任務は、降下部隊の護衛と 新型AMの受け取りです」
ユーリア「………」
レオナ「それに、任務が終わり次第、 すぐに宇宙へ帰還しなければなりません。 ここで時間を無駄にするわけには…」
ユーリア「私は、エルザム様から 報告があったハガネと、それの 所属PT部隊に興味がある」
ユーリア「彼らが どれだけの力を持っているか、 この目で確かめたい」
レオナ「しかし、 早くDC部隊と接触しなければ…」
ユーリア「フフ…融通の 利かない所は相変わらずだな、 レオナ・ガーシュタイン」
ユーリア「やはり、血筋は争えんか」
レオナ「…私は、 総司令から与えられた任務を 確実に遂行したいだけです」
ユーリア「いいか、レオナ…」
ユーリア「我がトロイエ隊は、 マイヤー総司令官をお守りするために、 いかなる敵とも戦わなねばならない」
ユーリア「だから、新たな敵との 戦闘は、我らの力を向上させる またとない機会だと思え」
レオナ「…わかりました、隊長」
ライ「…あの部隊は…まさか」
リュウセイ「ライ、知ってんのか?」
ライ「おそらく、コロニー統合軍の 親衛隊…トロイエ隊だ」
リュウセイ「親衛隊…?  そ、それってかなり強い奴らじゃ…」
ラトゥーニ「…データによれば、 トロイエ隊は…」
ラトゥーニ「…コロニー統合軍の 総司令直属…女性パイロットのみで 構成されたエリート部隊…」
ジャーダ「へえ、女だけの部隊かよ。 そりゃ相手するのが楽しみ…」
ガーネット「ジャーダ、何か言った?」
ジャーダ「い、いや、別に…」
ライ(…トロイエ隊は、 総司令に付き従っているはずだ。 それが何故、こんな所に…?)
テツヤ「各機、出撃せよ!」
(出撃準備・サイバスターは出撃不可)
ユーリア「出て来たな」
レオナ「試作機や試験機を 前線に投入するなんて…」
レオナ「それほどまでに彼らは 戦力に困窮していると…?」
ユーリア「フフ…。 私達は実験台にされているのだ」
レオナ「実験台? SRX計画や ATX計画など、対異星人戦用の 兵器を開発するための…ですか?」
ユーリア「そうだ。 そして、我々が実験台となることは マイヤー総司令の望みでもある…」
レオナ(そんな…。なら、 私達コロニー統合軍は一体…?)
テツヤ「サイバスターはどうした?  マサキは何故、出撃せん!?」
リオ「そ、それが…。 気分が悪くて出撃できないと…」
テツヤ「気分が悪いだと? 何か 変な物でも食ったのか、あいつは!」
リオ「さ、さあ…? 今、クスハが 看病しているみたいですけど…」
テツヤ「やむをえん!  各機、攻撃を開始しろ!」

〈2EP〉

レオナ「あの機体……」
(ライ機を見る)
レオナ「動きに見覚えがあるわ。 もしかして」
(レオナ機が移動を開始)

レオナを撃墜したのは
ライ ライ以外


back index next