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月灯りと銃身 キョウスケルート ~ 第11話 ~

《ヒリュウ改艦橋》

キョウスケ「部隊編成を変更…?」
ショーン「ええ。ゼンガー少佐のことも ありますし、ジガンスクードも戦列に 加わりましたからな」
ショーン「まず、 タスク・シングウジ伍長を 曹長へ戦時昇格させ…」
ショーン「配置を 整備班からカチーナ中尉の小隊へ 変更します」
キョウスケ「では、パイロットに?」
ショーン「まあ、彼が適性検査で 落ちたのは、体技試験の点が 足りなかっただけですからな」
ショーン「それに、前回の戦闘のことも ありますし…足りない分は持ち前の 勘の良さで補ってもらいます」
キョウスケ(勝負勘に 優れているとなれば… パイロット向きか)
ショーン「それから、あなたを ATXチームの隊長に任命します」
キョウスケ「! 自分を…?」
ショーン「ええ。 主力部隊の隊長の座が空席のまま… というわけには参りませんので」
キョウスケ「待って下さい。 指揮官…自分で言うのも何ですが、 向いているとは思えません」
ショーン「とは言え… ブルックリン曹長は少々経験が 足りませんし…」
ショーン「エクセレン少尉も 指揮官の素質はあるのですが、 本人が嫌がるでしょうからなあ」
キョウスケ(…おれの意思は 関係ないらしいな…やれやれ)
ショーン「では、こうしましょう。 適任者が見つかるまで、少尉には 隊長代理を務めて頂くということで」
キョウスケ「…どうやら、 選択肢はなさそうですね。 …了解です」
ショーン「それと… 以後、少尉のコードネームは アサルト1に変更します」
キョウスケ「! それは…」
ショーン「コードネームの変更は オペレート上の都合もありますし…」
ショーン「少尉にゼンガー少佐以上の 戦士になって頂きたい…という私の 個人的な願望も含まれております」
キョウスケ「…自分はあの男を 引きずるつもりはありませんが、 了解です」

《ヒリュウ改格納庫》

カチーナ「おらおら、タスク!  この程度でへばってどうすんだ!?」
タスク「ちょ、ちょっとタンマ!  少し休みましょうよ、中尉」
カチーナ「うるせえ!  お前はただでさえも訓練時間が 足りねえんだ!」
カチーナ「いいか? 実戦で 死にたくなかったら、あたしとの タイマン、もう10セットだ!!」
タスク「じゅ、10セットォ!?」
カチーナ「グダグダ言うな!  さっさとシミュレーターに入れ!」
タスク「は~い…」
タスク(しょうがねえなぁ…。 こうなったら…アノ手でいくか)
カチーナ「ラッセル、状況セット!  月面戦、Dパターンで行く!」
ラッセル「あの、中尉…。 シミュレーターの中にタスク曹長が いませんが?」
カチーナ「何!?  さっき確かに中へ…」
ラッセル「ははあ…。 彼お得意のトリックで だまされましたね、中尉」
カチーナ「なに感心してやがる!  さっさとあいつを捕まえてこい!  代わりに200セットやらせるぞ!」
ラッセル「は、はいっ!」

《ブリーフィングルーム》

タスク「ふう~やれやれ。 あのままじゃ、実戦前に 訓練で死んじまうぜ…」
エクセレン「あらん、タスク君… こんな所でくつろいじゃって。 訓練中じゃなかったっけ?」
タスク「いや、もう。 カチーナ中尉が厳しくて厳しくて。 抜け出して、ちょっと一休みッス」
エクセレン「あらん、お疲れさま。 でも…私は不正とバーゲンは 見逃さないわよ?」
タスク「へ!?」
エクセレン「はぁ~い、ラッセル君!  授業を抜け出しちゃった生徒は ここにいるわよん?」
タスク「ゲ!!」
ラッセル「タスク曹長、こんな所に…!  カチーナ中尉がカンカンですよ!」
タスク「あ、あんまりだ~」
エクセレン「あの女鬼隊長だって、 別にあなたをいじめたくてやってる わけじゃないのよ?」
エクセレン「ん~………たぶん」
タスク「自信ねえんじゃん!」

《ヒリュウ改艦橋》

ショーン「艦長、本艦はあと1時間で 月周辺宙域に到達します」
レフィーナ「…わかりました…」
ショーン「…どうしました?」
レフィーナ「いえ、 何でもありません……」
ショーン(無理もありませんな。 負傷、死別、裏切り…戦争において 避けられぬ影の部分…)
ショーン(それらを全て飲み込むには、 彼女はまだ若すぎますか…)
ショーン「艦長、 ゼンガー少佐のことですが…」
レフィーナ「わかっています。 …駄目ですね、私。 すぐ顔に出てしまって…」
レフィーナ「キョウスケ少尉を 見習わないといけませんね…」
(通信)
ユン「艦長、 救難信号を受信しました!」
レフィーナ「救難信号!?」
ユン「はい。所属は不明ですが、 ARGANというコードで 発信されています」
レフィーナ「ARGAN…?」


第11話
月灯りと銃身

ヴィレッタ「ヒリュウ改より先に 統合軍と接触するとは…」
ジーベル「あの見慣れぬPT… マオ社の新型らしいな」
ジーベル「機密保持のため、 単機で逃がしたと見た…。 ならば、SRX計画の機体か」
ジーベル「ククク…俺は運がいい。 あれを手に入れれば、功績になる」
ジーベル「これでゼンガーなどに 大きな顔をされずに済む…ククク…」
ヴィレッタ「フッ… 常務の言う通り、安定性の高い H2で脱出するべきだったわね」
ジーベル「先行している バレリオンはあのPTを入手せよ。 …パイロットは殺しても構わんぞ」
ヴィレッタ「向こうも新型…見た目は 砲撃戦用のアーマードモジュール…」
ヴィレッタ「なら、 このR-GUNとその新型…一緒に 戦闘データを取らせてもらうわ」

〈3PP〉

一般兵「ジーベル少佐!  この宙域に連邦軍の戦艦が 接近してきます!」
ジーベル「フン、ヒリュウ改か…」
ジーベル「あの艦を沈めるのは、 ここでなくとも良い。次の機会を 利用するとしよう」
ジーベル「よし、 艦隊は月面へ降下する。残りの者は ヒリュウ改の相手をしろ」
ジーベル「…仕留め損ねても構わんぞ?  俺の手で沈めた方が、手柄に なるからな。クックック…」
(戦艦×3が撤退)
ヴィレッタ「月へ向かった?  もしや、あの艦隊の狙いは 『ムーンクレイドル』か…?」
ヴィレッタ「しかし、今は この状況を何とかしないと…」
(ヒリュウ改が出現)
ヴィレッタ「!」
ラーダ「やっぱり、ヴィレッタね!?  無茶よ、まだ調整中のR-GUNで 戦うなんて…!」
ヴィレッタ「フフ…自分でも そう思っていたところよ」
レフィーナ「ラーダさんの お知り合いですか?」
ラーダ「ええ。 私と同じマオ社のスタッフです」
タスク「あの姉ちゃん、状況の割には あんまり焦ってねえなあ」
ヴィレッタ「焦ったところで、敵が 手加減してくれるわけでもないわ」
エクセレン「わお、クールねえ。 ちょっとキョウスケ、あなたと キャラ被ってない?」
キョウスケ「知らん。だからと言って、 全て任せるわけにはいくまい。 …出撃する」
(出撃準備)

《ヒリュウ改艦橋》

レフィーナ「とりあえず、 この場はしのげたようですね…」
ヴィレッタ「いえ、 状況は悪化する一方よ」
レフィーナ「えっ…?」
ショーン「確かに、 我々と入れ替わるように統合軍の 戦艦が月へ降下しましたからな」
ヴィレッタ「そう、彼らの狙いは おそらくムーンクレイドル…」
ラーダ「ムーンクレイドルって…!  マオ社はどうなったの!?」
ヴィレッタ「…コロニー統合軍に 制圧されたわ」
ラーダ「そ、そんな…! どうして 先にそれを教えてくれなかったの!」
ヴィレッタ「あなた達に、不要な 動揺を与えたくなかったからよ」
タスク「ク、クールビューティ…!  カチーナ中尉とは正反対だな」
カチーナ「何だと、てめえ!  頭カチ割るぞ!!」
タスク「あ、あの~… ビューティーってところに、 フォロー入ってるんスけど?」
カチーナ「申し訳程度なのが、 かえって腹が立つんだよ!」
ラーダ「…じゃあ、ヴィレッタ。 マオ社のみんなは…?」
ヴィレッタ「Mk-IIの試作2号機と 引き替えに、社員全員の安全は 確保したわ」
ラーダ「Mk-IIって まさか、ヒュッケバインの…?」
カチーナ(!  ヒュッケバインだって…!?)
ヴィレッタ「統合軍もマオ社の ノウハウを欲しがっている。 しばらくは保つでしょうね」
ラーダ「じゃ、じゃあ… 社長と専務は…?」
ヴィレッタ「私とは別に脱出し、 ムーンクレイドルへ向かったわ」
ショーン「ならば、マオ社より先に、 そこへ向かった方が 良さそうですな」
レフィーナ「ええ。行きましょう、 ムーンクレイドルへ…!」


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