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16年目の復讐 リュウセイルート ~ 第10話 ~

《艦内個室》

ラトゥーニ「………」
ガーネット「ほら、動かないで」
ラトゥーニ「…どうして、 私にこんなことを…?」
ガーネット「ん…まあ、いきなり 本番ってワケにもいかないからね」
ガーネット「クスハの予行演習を あんたでやっとこうと思っただけ」
ラトゥーニ「予行演習…?」
ガーネット「いいから、いいから。 さ、この服に着替えて」
ラトゥーニ「何、この服…?」
ガーネット「あたしの 趣味じゃないけど、あんたや クスハには似合うと思ってね」
ラトゥーニ「…どうして、手錠と ウサギのヌイグルミが…?」
ガーネット「だって、あんた… そういうアイテム、すぐに 手放しちゃうでしょ?」
ラトゥーニ「そんなの… 任務に必要ないもの」
ガーネット「う~ん…ベビードール風は 変な色気が出ちゃってるな。 クスハのイメージじゃないわね」
ラトゥーニ(聞いてない……)
ガーネット「だったら、 次はゴシップ…じゃなかった、 ゴシック・ロリータ風で…」
ラトゥーニ「ちょ、ちょっと…」
ガーネット「うん、 こっちの方がいいわね。 じゃ、眼鏡を外すわよ?」
ラトゥーニ「いったい、 何のために…こんなこと…」
ガーネット「大丈夫。大丈夫。 心配いらないって」
ガーネット「こう見えてもあたし、 軍に入る前はメイクアップ・ アーティストだったんだから」
ガーネット「もっとも、 モデル崩れのだけどね」
ラトゥーニ「……!」
(速い足音・ラトゥーニが走り去る)
ガーネット「あ、待ちなさいってば!」
ガーネット「もう…年頃の 女の子のくせに、おしゃれには 全然興味ないんだから」
ジャーダ「よう、ガーネット… ラトゥーニに何やってたんだ?  何か凄い格好をしてたけど…」
ガーネット「ま、ちょっと ワケありでね。で、何の用?」
ジャーダ「ああ…さっき、 イングラム少佐に呼ばれてな。 機種変更の話をされた」
ガーネット「機種変更?」
ジャーダ「そうだ。次から イルム中尉がヒュッケバインに 乗ることになってな…」
ジャーダ「中尉のゲシュペンスト Mk-IIが空いたんだ。そいつが 俺達の部隊に回ってきたってワケ」
ガーネット「ふ~ん…。 それで、誰が乗るの?」
ジャーダ「俺はラトゥーニを ゲシュペンストMk-IIに 乗せようと思ってるんだが…」
ガーネット「あの子を…?」
ジャーダ「ああ」
ガーネット「あたしはいいけど… あんた、それでいいの?前から 機種変更願いを出してたじゃない」
ジャーダ「そうだけど… 正直言って、PT操縦技術は 俺よりあいつの方が上だしな」
ガーネット「…あの子、 『スクール』の出身だもんね…」
ジャーダ「ま…俺達、自分の 専用機はねえけど、PTに乗ろうと 思ったらいつでも乗れるしさ」
ジャーダ「ラトゥーニのためを 思って、ゲシュペンストMk-IIは あいつへ譲ることにするよ」
ガーネット「ふ~ん…。もしかして あの子みたいな子供が欲しいの?」
ジャーダ「バ、バカ。どうして そういう話に飛躍すんだよ!?」
ガーネット「ま~た、照れちゃって!  いつでもいいわよ?」
ジャーダ「って、何がだ。 ところで、当のラトゥーニは どこへ行ったんだ?」
ジャーダ「あの服で艦内を うろつくのは、いくら何でも マズいんじゃねえのか?」
ガーネット「そうだった!  早く着替えさせないと、艦長や テツヤ大尉に怒られちゃう!」

《ブリーフィングルーム》

アヤ「イングラム少佐…」
イングラム「どうした、アヤ?」
アヤ「今回の作戦に 私達が参加する理由…。 それはもしかして……」
イングラム「そうだ。お前の父親、 ケンゾウ・コバヤシ博士の理論に 基づいた上での判断だ」
アヤ「そ、そんな… 私はともかく、リュウは…!」
イングラム「………」
アヤ「も、もしかして…クスハを この艦に乗せたのも…?」
イングラム「例の力は、 絶体絶命の状況に陥った時… 発動する可能性が高い」
イングラム「現にリュウセイが 初めてパーソナルトルーパーに 乗った時もそうだった」
アヤ「で、でも!」
イングラム「…アヤ、リュウセイを この戦争に巻き込んだのが、 自分だと思っているのか?」
アヤ「………」
アヤ「…あの子の素質は 間違いないものだと思います。 ですが……」
イングラム「遅かれ早かれ、 人類は今以上の危機に直面する」
アヤ「………」
イングラム「その時、リュウセイの ような素質を持った者が複数必要だ。 無論、お前も例外ではない」
アヤ「でも、私は高レベルの テレキネシス・リンクを行うと…」
アヤ「システムに残留している 思念を…あの二人の念を…… 感じるような気がするんです」
イングラム「……特脳研での 実験中に亡くなったという 母親と妹のことか?」
アヤ「はい……」
イングラム「………」
イングラム「…思い出は 所詮、過去の亡霊に過ぎない」
アヤ「少佐…」
イングラム「お前なら乗り越えられる。 信じているぞ、アヤ…」
アヤ「……わかりました。 結果を出せるよう努力します」
イングラム「………」

《ハガネ格納庫》

ロバート「おい、ラトゥーニは まだ格納庫に来てないのか?」
ロバート「あの子が 来なけりゃ、ゲシュペンストの 調整作業が終わらないんだが…」
一般兵「さっき、 呼び出しをしましたから、 もうすぐ来るでしょう」
ロバート「ん? あそこに いるのはリュウセイと…リオか。 二人して何やってるんだ?」
リュウセイ(………)
リュウセイ(バニシング・トルーパー… ヒュッケバイン…)
リュウセイ(あのライが、そいつの テストパイロットだったなんて…)
リオ「…リュウセイ君。 私の話…聞いてるの?」
リュウセイ「え? 何だったっけ?」
リオ「だから、クスハに冷たい態度を 見せるのはやめてっていう話」
リュウセイ「あ、ああ…そうだったな」
リオ「もう…。あなた、 あの子の幼なじみなんでしょ?」
リオ「事情はどうあれ…クスハは こんな戦艦へ乗せられて 不安になってるのよ?」
リオ「そんな時に、あなたが力になって あげなくちゃダメじゃないの」
リュウセイ「ああ…」
リオ「ねえ、 どこか具合でも悪いの? いつもの リュウセイ君らしくないわよ」
リュウセイ「そ、そうか?」
(ぶつかる)
???(眼鏡なしのラトゥーニ)「!」
リュウセイ「あ…。 ご、ごめんよ。大丈夫かい?」
???(眼鏡なしのラトゥーニ)「……!」
(足音・???が立ち去る)
リュウセイ「お、おい、リオ… 今の女の子、誰だ?」
リオ「さ、さあ…見かけない顔だし、 軍艦には全然につかわしくない 格好をしてたけど……」
リュウセイ「…ロブの知り合いかな?」
リオ「まさか」
リュウセイ「! 敵襲か!?」


第10話
16年目の復讐

〔戦域:北太平洋上〕

テツヤ「くっ!  ここまで敵機の接近を許すとは…!  索敵手は何をしていた!?」
エイタ「そ、それが…敵は 新型のジャミング装置を使用し…」
エイタ「この南鳥島付近に 潜伏していたと思われます!」
ダイテツ「テツヤ大尉、 迎撃機を発進させろ!」
テツヤ「りょ、了解!」
(出撃準備・ヒュッケバイン009、リュウセイ機、ゲシュペンストMk-IIのみ出撃)
テツヤ「3機だけだと!?  他のPTや戦闘機はどうした!?」
ロバート「すまない、大尉!  他の機体は発進まで もう少し時間がかかる!」
テツヤ「あと、どれくらいだ!?」
ロバート「6分… いや、4分で何とかする!」
ダイテツ「やむをえん。 それまで、本艦とPT3機で 敵機を迎撃せよ!」
リュウセイ「了解!」
イルム「やれやれ… ヒュッケバインに関わると ロクなことが起きないよな」
イルム「それじゃ、他の連中が 出てくるまで俺達だけで 頑張ろうぜ、ラトゥーニちゃん」
ラトゥーニ「…了解…」
イルム「!?」
ラトゥーニ「………」
イルム「…お嬢さん、 前にどこかで会ったっけ?」
ラトゥーニ「…いつも 会ってるけど……」
リュウセイ「も、もしかして…!?」
イルム「う~む…美人の顔は 忘れないようにしてるんだがな。 名前は何て言うんだい?」
ラトゥーニ「ラトゥーニ・ スゥボータ…」
イルム「な、何!?  お前がラトゥーニだって!?」
リュウセイ「や、やっぱり…!」
イルム「どうして、 突然そんなに可愛くなったんだ!?  それに、その格好は…」
ラトゥーニ「…着替える時間が なかったから……」
イルム(な……)
イルム(何てこった…。 この俺としたことが、まったくの ノーマークだったぜ…)
リオ「あ、あの子… ラトゥーニだったんだ…!」
エイタ「…か、可愛い…」
リオ「ふ~ん。エイタって、 そういう趣味だったんだ?」
エイタ「わ、悪いかよ」
テツヤ「貴様ら!  そんなことを言っている場合か!  敵機を迎撃しろ!!」

〈2PP〉

エイタ「新たな敵部隊を感知!  30秒後に接触します!」
リュウセイ「敵の増援か!」
イルム「ラトゥーニ、 気を付けろ! 敵の集中攻撃を 受けるかも知れないぞ!」
ラトゥーニ「………」

〈敵3機以下〉

(敵機増援が出現)
テンペスト「………」
テンペスト「この時を…」
テンペスト「連邦軍との 戦いの場へ赴ける時を どれほど待ち望んだことか」
テンペスト「あれから、もう16年…。 レイラ、アンナ…お前達の無念を 俺のこの手で晴らしてやる」
テツヤ「あのAMは 伊豆基地にも現れた新型か…!」
ライ(だが、機体色が違う。 エルザムではない…)
テンペスト「む…?」
(ヒュッケバイン009を指す)
テンペスト「あのPTは… もしや、月で暴走事故を起こした ヒュッケバインの同型機か?」
イルム「やれやれ…どうやら、 あいつもエースパイロットっぽいな」
イルム「敵さんも次から次へと 面倒な相手を送り込んで くれるもんだぜ、まったく」
(ゲシュペンストMk-II・Mを指す)
テンペスト「連邦軍に 与する者には、死を…!」
テンペスト「我が妻と娘に対する 最初の手向けとなるのは…」
テンペスト「お前だ!」
ラトゥーニ「! 来る…!」
【強制戦闘】
テンペストvsラトゥーニ
テンペスト『年季の差を 思い知らせてやる!』
ラトゥーニ『…思った通りね……』
ラトゥーニ「その機体の動き、 データで見た記憶があるわ…」
テンペスト「何だと!? あの機体… 子供が乗っているのか!?」
ラトゥーニ「…あなたは エルザム少佐と同じ、 元特戦教導隊のメンバー…」
テンペスト「! 何故、それを…!?」
イルム「あいつも教導隊…!?」
テンペスト(…アンナが生きていれば、 あの子と同じ年頃か…)
テンペスト(…俺は… あのパイロットを撃てるのか?)
テンペスト「いや… 慈悲の心は、とうに捨てた」
ラトゥーニ「!」
テンペスト「俺は連邦軍の 人間を一人でも多く血祭りに 上げるために…」
テンペスト「16年目の復讐を 果たすために、鬼となる!」
ラトゥーニ「…復讐…!」
イルム「ラトゥーニ、 その敵はヤバい! 離れろ!」

〈4PP〉

リオ「PTの発進準備が 完了しました!」
ダイテツ「出撃を許可する!」
リオ「了解!  PT各機、発進どうぞ!」
(味方機が出撃)
イングラム「各機へ。 ハガネを防衛しつつ、 敵AMを撃破せよ」
ライ「了解です」
ジャーダ「ラトゥーニ!  大丈夫か!?」
ラトゥーニ「うん」
ガーネット「見てなさいよ…!  今までラトゥーニをいじめて くれた分のお返しをしてやるから!」
ジャーダ「ああ! てめえら、 そこをうごくんじゃねえぞ!!」
テンペスト「PTが出てきたか。 各機へ。各個に敵機を叩け」

〈ガーリオン・カスタム撃墜〉

テンペスト「うぐっ!  な、何と…!?」
テンペスト「お、俺は 復讐を成し遂げるまで…」
テンペスト「妻と娘の無念を 晴らすまでは死なん…!」
(爆発)
リオ「艦長!  敵の戦闘原潜と思われる 物体が浮上して来ます!」
ダイテツ「何だと…!」
DC艦長「ビアン総帥からの 撤退命令に従い、テンペスト少佐達を 回収次第、この海域から離脱する」
リオ「敵機、及び敵戦闘原潜が この海域から撤退して行きます!」
テツヤ「どういうことだ…?  本艦にあれだけの攻撃を仕掛けて おいて、撤退するなんて…」
ダイテツ「………」

《ハガネ格納庫》

イルム「いや、驚いたの何のって。 まさか、あのラトゥーニが あんな化け方をするとはな」
ガーネット「素材もいいけど… あたしのコーディネイトも なかなかでしょ、イルム中尉?」
イルム「ああ。眼鏡を取ったら 可愛い子ちゃん…っていうお約束を あそこまで地で行くとはね」
ロバート「俺もあの子を見た時は、 自分の目を疑ったよ」
イルム「正体がもっと早くわかってたら 口説いてたんだが…」
ガーネット「口説くって… あの子、まだ14歳ですよ?」
イルム「十分、守備範囲だね」
(扉が開閉する)
ラトゥーニ「………」
ガーネット「あら、ラトゥーニ… もう着替えちゃったんだ?」
ラトゥーニ「…あんな格好じゃ 艦内を歩けない…」
イルム「服はともかく、 その眼鏡は取ったらどうだ?  せっかくの美人が台無しだぜ」
ラトゥーニ「これはアナライズ・ ツール。分析作業に必要なの…」
イルム「あ、そう」
ロバート「ところで、ガーネット。 何で彼女にあんな格好を させてたんだ?」
ガーネット「それは、クスハと リュウセイの会話のきっかけを つかむために、予行演習で…」
ガーネット「…って、 そのことすっかり忘れてたっ!」

《ブリーフィングルーム》

クスハ「リュウセイ君…あの…」
リュウセイ「………」
クスハ(まだ怒ってるのかな…)
リュウセイ「…やっぱ、 いつまでもウジウジ悩んでるのは 俺の性に合わねえんだよな」
クスハ「え…?」
リュウセイ「過ぎたことを 悔やんでたって、何にもならねえ」
クスハ「…でも、私が ここに来る決意をした理由は…」
リュウセイ「いいんだ。 お前にも、ライにも事情は 色々あるだろうけど…」
リュウセイ「そういうのを まとめて、ひっくるめて… スッパリ割り切ることにするぜ」
クスハ「リュウセイ君…」
リュウセイ「俺の力で どこまでやれるかわからねえけど…」
リュウセイ「DCやエアロゲイターから みんなを守るために…俺、頑張るぜ」
クスハ「…うん……」
クスハ(………)
クスハ(…私も…周りに流されて この艦に乗っちゃったけど…)
クスハ(自分に何が出来るのか… 何をしなければいけないのか… ちゃんと考えなきゃ…)


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