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流転 アーク

 人類が、増えすぎた人口を宇宙 に移住させるようになって、すで に2世紀近く。地球のまわりには 巨大なスペースコロニーが数百機 浮かび、人々はこの人工の大地を、 第二の故郷とした。
総人口の8割が宇宙に暮らすよう になった、この時代……。

 しかし、地上に残った政府高官 や一部の特権階級の者たちは、 そのような時代となってもなお、 宇宙を地上から統制できると信じ ていた。その地上のエリートたち と、宇宙居住者の意識格差は対立 の図式をうみ、連邦政府はコロニー に対する抑圧を高めていった。

A.C.191年、1月……

地球からもっとも遠いコロニー 群サイド3は、ジオン公国を名乗 り、地球連邦政府に対して独立戦 争を挑んだ。半年以上におよんだ この戦いは、人類の総人口の半数 を死に至らしめるという、史上類 を見ない凄惨なものとなった。

 戦争は国力に勝る地球連邦の勝 利に終わり、ジオンの独裁者ザビ 家一党は倒れる。だがしかし…… これは人類の苦難の、ほんの前奏 曲でしかなかった。

A.C.191年、9月……

 人類は、かつて想像したことす らなかった、恐るべき脅威にさら された。外宇宙からの侵略者、 ムゲゾルバトス帝国の出現である。 人々はジオン独立戦争で疲弊し、 その勝利者である地球連邦は腐敗 し、戦後の復興も遅々として進ま ぬ中で、いまだ勝利の美酒に酔い しれていた。

 圧倒的な戦力で地球圏へ侵攻し たムゲゾルバトス帝国軍の前に、 地球連邦軍はなんら効果的な反撃 もできぬまま、敗退。衛星軌道上 からの攻撃によって、地上の都市 の70%が業火に焼かれるに至り、 地球連邦政府はついに全面降伏を 宣言した。


こうして地球圏は、異星人の帝国 の占領下におかれることとなった のである。

 時にA.C.191年、12月 のことであった。


 のちに一年戦争と呼ばれたこの 戦いの後に残っていたものは、帝 国による苛烈な弾圧と、血の粛清。 そして、恐怖による支配だった。 帝国の支配体制の確立は、地球に 潜んでいた非人類種族の出現をも 促し、人々は自らのゆく末に恐怖 した。

 それから3年が過ぎ、世界各地 で再び、帝国の支配に対する抵抗 運動が活発化する兆しが見え始める。

 A.C.195年……
地球の未来は、まだ混沌の闇の中 にあった。

 A.C.195年。地球……

 1人の少年がいる。

 ジオン独立戦争で両親を失った、 コロニー生まれの少年だ。

 少年は戦後、地球のおば夫婦の もとへと身を寄せていた。
ムゲゾルバドス帝国の強圧な支配 体制の只中にあっても、彼の3年 間は、あるいは平穏であったとい えたかもしれない。

少なくとも、彼の住んでいた町が 帝国軍のゲリラ狩りによって、戦 場と科すまでは。彼のおば夫婦、 そして彼が好意を寄せていた少女 の命が、爆発の閃光の中に、恐ろ しい破壊の中に、一瞬にして消え 去ってしまう、その時までは……

そしていま……運命の扉が開く……


アーク「オレンジが手に入らなかったのは 予定外だったな
 エミリア、怒るだろうなぁ……。 でも、しかたないよな
 かわりにチーズも手に入ったし……」
(地響きのような音)
アーク「なんだ……?」
(銃撃音、震動)
アーク「うわぁぁーっ!! て、帝国軍!?  は……はやく戻らなくちゃ!」

(別の場所)
スペシャルズ「シュターゼン特尉」
エルリッヒ「場所は確認できたか?」
スペシャルズ「はい。しかし……」
エルリッヒ「どうした?」
スペシャルズ「どうも正規軍の無人機が 出ているようです。当該地域に
 コードCが発令されています」
エルリッヒ「バカな。無人機にコードCでは、 無差別攻撃と同じではないか
 ゲリラ掃討のためとはいえ、 それでは何も残らん」
スペシャルズ「このところかなり多くなってますね。 どうしますか?」
エルリッヒ「追跡していた試作機の行方が そこだというのなら、いくしかなかろう?
 それに、我々もこの任務のために それなりの権限が与えられている
 間に合えば無人機の攻撃を 抑制することもできよう
 放っておけば住人も全滅するぞ」
スペシャルズ「了解です。無人機は容赦が ありませんからね」


流転

ゲリラ「くそっ、帝国めッ!  散開して迎撃しろ!!」
(味方ザクが撃墜される)
ゲリラ「ちっ……だめかな、こいつは、 ……ん?」
(足音、ゲリラの近くに)
アーク「はぁっ、はぁっ、みんな、はやく!!」
ゲリラ「くっ……逃げ遅れた連中か!」
(敵が近づいてきて、アークたちがいるところも攻撃を受ける)
アーク「うわぁぁぁぁぁーっ!!」
ゲリラ「しまった!? くっ……」
(アークたちを攻撃した敵をゲリラが撃墜)
ゲリラ「坊や、おい坊や、生きてるか!?  早く逃げるんだ!」
アーク「う……あ……  み、みんなは……?」
ゲリラ「残念だが……瓦礫の下だろう
 くそっ帝国め、見境なしに 攻撃してやがる
 おい坊や、何をしてる!?」
アーク「……おばさん、おばさん! おじさん!?」
ゲリラ「バカなことはやめて早く逃げろ!  お前も死ぬぞ!!」
アーク「エミリア!  返事をしてくれ、エミリア!!」
ゲリラ「やめろ坊や!  みんな死んじまってる!」
(ゲリラに攻撃)
ゲリラ「くっ!!」
アーク「エミリア……なんで……なんで……」
アーク「あ、あんたたちがこんな所で戦争 なんて始めるからっ!  うあぁぁぁぁっ!」
ゲリラ「……すまんな、坊や。 だが言い訳をするわけじゃないが、
 奴らは、はなからこの町が 狙いだったんだ
 皆殺しにするつもりだったのさ。 あの無人機をみりゃわかる
 奴らのやり方は3年前から 少しもかわっちゃいない」
アーク「うぅっ……うっ……」
ゲリラ「逃げろ坊や。 俺たちはもう長くは持たない
 頼む、せめて君だけでも 逃げてくれ!」
(1機撃墜後、2機目の攻撃の途中)
ゲリラ「くっそぉぉぉーっ!!」
(ゲリラ機撃墜)
アーク「うわっっ!」
(アークのいる所に敵機が隣接)
アーク「ひっ!?」
(足音・アークが逃げる)
アーク「う……ううっ……」
(足音・敵機が追う)
アーク「なんで……なんで……」
(敵機攻撃・アークが飛ばされる)
アーク「うわあぁぁぁぁぁーっっ!!」
アーク「うぅっ……」
(敵機がアークの反対側へ移動)
アーク「……ちくしょう……なんで……」
(攻撃される、足音)
アーク「くっ…………!?
 うわっ、な……なんだ!?
 中にもいるのか!?」
アーク「違う……こいつ…… レジスタンスの……?」
(アークが少し移動)
アーク「シ……システムが生きてる……?  これ……どうやって……」
(動作音)
アーク「う、動くのか!?
 動作モード……市街戦…… セミオート?
 このディスプレイに出てるのは 操作ガイダンスなのか……」
(敵機が隣接)
アーク「ちくしょう!! どうせ死ぬんなら、 1機ぐらいはっ!!」
(ソルデファーが出現)
アーク「うわぁぁーっ!  動け、動けよ!」
(ビーム砲を発射した)
アーク「はぁっはぁっはぁっ ……やった……のか……?」
(敵機爆発)
アーク「く……くそぉぉーっ!!」

2EP

(ノウルーズを含む敵機増援が出現)
スペシャルズ「一足遅かったようですね」
エルリッヒ「うむ……ひどい有り様だ。帝国の 無人機などに好きにやらせるから、
 非武装の市民まで巻き添えに なる」
スペシャルズ「レジスタンスは、ほぼ壊滅 したようですが、どうしますか?」
エルリッヒ「ケガ人の救助を優先しろ…… いや、待て。あれは……ソルデファーか
 やはりレジスタンスの手に 渡っていたな」
アーク「ま、まだいる!? うぅ…… やっぱりだめなのか……ちくしょう
 エミリア……俺もすぐいくから……」
エルリッヒ「聞こえるか、そこのパイロット。 残っているのは貴君だけだ
 無益な戦いはやめ、投降したまえ」
アーク「……人の声!? だ、誰がっ!」
エルリッヒ(……若いな、あのパイロット……)
エルリッヒ「少年、私の任務はレジスタンスに 強奪された試作機の回収
 あるいは破壊だ。おとなしく そのマシンをおりてくれれば、この私……
 エルリッヒ・シュターゼンの名に かけて、君の命は保証しよう
 だが、聞き入れてもらぬならば……」
アーク「うるさいんだよ、この人殺しが!  今さら俺一人生き残ったって!」
エルリッヒ「……やむを得まい。これ以上 死者を増やすのは忍びないが、
 これも任務なのでな」
(リックディアスが出現)
アポリー「大尉、こいつは……」
クワトロ「間に合わなかったか……」
クワトロ「いや……あの1機、 例の試作機か?」
アポリー「そのようです」
クワトロ「あれはまだやれるようだな。 あれだけでも回収せねば
 危険をおかしてここまで来た 意味がない……」
アポリー「どうします、大尉?」
クワトロ「アポリー中尉、 その機体でやれそうか?」
アポリー「コックピットが違っても、三日も あれば自分の手足にすることが
 できます。大丈夫です」
ロベルト「自分たちはマニュアル通りの 訓練など、やっておりません
 それで、1年戦争もくぐり抜けて きたのですから」
クワトロ「ロベルト中尉、その過信は 自分の足をすくうぞ」
ロベルト「はっ、クワトロ大尉」
クワトロ「よし、敵を牽制しつつ あの試作機を確保する」
スペシャルズ「特尉、あれは!?」
エルリッヒ「ん? 見たことのない機体だな
 レジスタンスが独自に 開発したものか?
 情報部もあてにならん。 狙いは、あれか……」
スペシャルズ「やはりレジスタンスでしょうか?  どうしますか!?」
エルリッヒ「あれを持っていかれるわけにはいかん。 二手に分かれるぞ」
スペシャルズ「はっ!」
アーク「な、なんだ……?  敵……じゃないのか……?」
(通信)
アーク「え……?」
クワトロ「そこのパイロット、まだやれそうか?」

アーク選択

は、はい……
ほっといてくれ!
…………


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