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母なる星に抱かれて アイビス ~ 第57話 ~

[バラルの神殿]

ガンエデン「…封印せよ……。 最後の楽園を……封印せよ………」
ガンエデン「この星は… 災厄より逃れし者達の楽園……。 決して失われてはならぬ……」
イルイ(大人)「……………」
ガンエデン「…封印せよ……。 最後の楽園を……封印せよ………」
ガンエデン「楽園に生ける者達に… ガンエデンの加護を……」
ガンエデン「楽園を護る者達に… ガンエデンの力を………」
イルイ(大人)「楽園を護る者達…… 私が見定めた剣…αナンバーズ……」
イルイ(大人)「…彼らを私の下に………」
カナフ「………」
(カナフの咆哮)
イルイ(大人)「…優しいカナフ……」
ケレン「………」
(ケレンの咆哮)
イルイ(大人)「…気丈なケレン……」
ザナヴ「………」
(ザナヴの咆哮)
イルイ(大人)「…無邪気なザナヴ……」
イルイ(大人)「私の可愛いしもべ達……。 あなた達とあなたの兄弟達の役目は もうすぐ終わります…」
ケレン「…………」
イルイ(大人)「そう…ケレン… あなたもよく知っている剣達が…」
イルイ(大人)「αナンバーズが あなた達の役目を受け継ぐのです……」
カナフ「…………」
イルイ(大人)「…ありがとう、カナフ……。 彼らがそれを否定した時は…… お願いします」
ケレン「……………」
イルイ(大人)「ええ、行きましょう……。 この星を護るために……」
イルイ(大人)「…ガンエデン…… バラルの園を浮上させるのです……」
ガンエデン「…最終プログラム起動……」
ガンエデン「…バラルの園、浮上開始……」
(歌声、閃光)

《Gアイランドシティ・JAPANESE AREA》

[メインオーダールーム]

大河「…本日4時34分、 アラビア半島北西部の上空に 全長約1キロメートルの岩塊が出現した」
ブライト「それがガンエデン…?」
麗雄「いや、彼女の言葉を借りるなら… バラルの園だろうな」
ベラ「バラルの園……」
麗雄「その形状は、例えるなら空中庭園… 偵察衛星の映像では、中央に巨大な塔や 遺跡らしき物が確認されておる」
エリ「私達は あれがガンエデンやクストースの 本拠地ではないかと推測しています」
シナプス「ガンエデンに動きは?」
猿頭寺「依然ありません…。 バラルの園も特定ポイントに 固定されたままです」
麗雄「おそらく、 結界の展開準備をしておるのだろうな」
ブライト「地球を封印するために…ですか」
ベラ「…ガンエデンは… いえ、イルイは私達人類にとって 味方…それとも敵なのでしょうか?」
麗雄「…微妙なところじゃな」
ベラ「え…?」
麗雄「だが、少なくともイルイの話で クストースの謎がいくつか解けた…」
麗雄「まず、 彼らがほとんどと言っていいほど 僕達の前にしか姿を現さなかった理由…」
麗雄「それは自分達の主である イルイがαナンバーズにいたからだ」
シナプス「…なるほど。 彼女と我々を助けるために…ですな?」
麗雄「うむ。 そして、過去の文献や伝説、神話等に 彼らの記録がなかったのは…」
麗雄「まぁ、単純に あのバラルの園でずっと眠っていたか、 封印されていたんじゃろうな」
ロバート「誰も見たことがなければ、 記録の残りようがありませんからね」
エリ「そして… クストースはガンエデンの命令を受け、 地球を守るために…」
エリ「同じ目的を持つ αナンバーズを手助けするために 行動を開始したのです」
サコン「しかし… クストースはグッドサンダーに対して 攻撃を仕掛けたことがあります」
サコン「彼らの目的が 地球の守護だと言うなら…あの行動は 矛盾しているのではありませんか?」
麗雄「うむ、ポイントはそこだ」
麗雄「あの時、イルイは地球を結界で封印し、 外界から遮断すると言った…」
麗雄「つまり、それは… 地球を防衛するための究極の手段なのだ」
ベラ「究極の手段…?」
麗雄「うむ。 簡単に言えば…バリアじゃな、バリア」
大文字「つまり、異星からの侵略者を 地球へ寄せつけないための…?」
麗雄「ああ。中に入れんことには 侵略活動のしようがないからのう」
麗雄「もっとも、 異星人の中には空間転移技術を 保有する連中もおるから…」
麗雄「ガンエデンの結界とは それすらも防ぐ強力なものだと思われる」
大河「ならば、その結界の中にいる者は…」
麗雄「当然、ガンエデンの許しなく 外へ出ることは出来んじゃろうなあ」
サコン「そうか…!  あの時、クストースがグッドサンダーを 攻撃したのは…」
サコン「ビムラーが人類を宇宙へ誘う エネルギーだからですね…!?」
麗雄「うむ。そして、 クストースが異星人を攻撃したのは…」
ベラ「彼らの目的が地球の侵略だったから…」
麗雄「そのとおりじゃ」
シナプス「では、地下勢力との戦闘中に クストースが現れた理由は?」
麗雄「これもまた単純に考えれば、 αナンバーズを守るため…」
麗雄「そして、ガンエデンが 地球の守護者として相応しいのが 地下勢力ではなく…」
麗雄「僕らの方だと判断したからだろう。 そして、それを行ったのは… 少女の姿をしたイルイだと考えとる」
ベラ「あの子は何故我々に接触を…?」
大河「それは 君達に実績があったからだろう」
ベラ「実績…ですか?」
大河「うむ。 αナンバーズの大半のメンバーは かつてのバルマー戦役に参加し…」
大河「地球を守るために戦って勝利した。 だから、彼女が地球の守護者として 君達を選んだ理由にも納得がいく」
麗雄「おそらく、 イルイには地球の情勢を見定める 役目もあったのだろうな」
麗雄「何せ、かつてのロンド・ベル隊… プリベンター、そしてαナンバーズは…」
麗雄「地球のあっちゃこっちゃを 飛び回っておったからのう。 情報収集にはある意味最適じゃ」
ベラ「情報収集…… あの子が…そんな………」
麗雄「彼女はガンエデンという 巨大なシステムの端末だ…。それぐらいの 役目は与えられておるじゃろうて」
ベラ「…システム…端末……」
麗雄「おそらく…子供の姿をしておったり、 過去の記憶を失っておったりしたのは…」
サコン「ええ…我々へ心理的影響を 与えるためだったのかも知れませんね」
サコン「そして、 これは私の推測に過ぎませんが……」
サコン「ガンエデンは 古代文明によって造られた 地球防衛システムなのかも知れません」
サコン「あるいは…オルファンのように 外宇宙から飛来し…地球を監視、 もしくは封印するためのシステム…」
大文字「だが、オルファンとは性質が違う。 あれは銀河へ旅立とうとしていた」
麗雄「うむ…オルファンが外宇宙へ 出ていたら、クストースはあれを 攻撃していたかも知れんな…」
ベラ「では…私達でさえも 外宇宙へ出ようとしたら………」
麗雄「…その時はガンエデンが敵となる」
ベラ「そんな…!  今という時代に地球と宇宙との 行き来を封じられてしまえば…」
ベラ「人類の存続の危機に関わります…!」
ブライト「方法は違っても…目指す所は シャアやドゥガチと同じなのか…?」
麗雄「僕らの出方次第では、 その結果を導き出しかねん……」
麗雄「人類が地球というゆりかごの中で 眠ることを否定すれば、ガンエデンは強大な 敵となって僕らの前に立ち塞がるだろう」
麗雄「つまり、僕らが選べる道は二つ…」
麗雄「まもなくガンエデンが 展開する結界によって、 この地球に閉じ込められるか……」
麗雄「僕らの手で ガンエデンを破壊するか、だ」
ブライト「………………」
大河「……………」
ベラ(それしか…方法はないと言うの…?)

[モビルスーツデッキ]

アイビス「アルテリオン、 ベガリオン、今までありがとう…」
アイビス「お前達は本当は戦闘用の マシンじゃないのに、今日まで あたし達と一緒に戦ってくれた…」
アイビス「フィリオに代わって お礼を言わせてもらうよ…」
アイビス「ありがとう、 アルテリオン、ベガリオン」
アイビス「…でもね… それももうすぐ終わりだよ…。 もうすぐね…」
アイビス「………」
アイビス「イルイ… あたしは…どうすればいいの…」

スレイ「最終ブリーフィングが 始まるというのに…声をかけられる 雰囲気ではないな…」
ツグミ「ええ…」
スレイ「あいつ…あんな様子で 出撃出来るのか…」
ツグミ「……もし、イルイが 人類の敵となったとしても…」
ツグミ「アイビスは…あの子を 撃てないかも知れない…」
スレイ「………」
ツグミ「スレイ…私達に 付き合うのはここまででいいわ」
スレイ「…冗談はよせ。 私も今はαナンバーズの一員だ。 決着はこの手でつける」
ツグミ「………」
スレイ「無理をするな、ツグミ。 相手はあのクストースの主…そして、 その真意は見えない状況にある」
スレイ「逃げ出したいのは お前だけではない…」
ツグミ「………」
(足音)
レーツェル「だが、逃げ出す前に 出来ることがある」
ヴィレッタ「そう…だけど、 あなた達にしか出来ないこと でしょうけどね」
ツグミ「え…?」
スレイ「教えてくれ、レーツェル…!  それは、いったい…」
レーツェル「フ…それは君達の キャプテンに聞くといいだろう」
スレイ「キャプテン…?」
ヴィレッタ「そう…星の海を往く 強い意志と勇気をもった彼女に…ね」
ツグミ「………」
ツグミ「…そうですね。 きっと、それが私達の出来る最良にして 最後のやり方だと思います…」
スレイ「出来るのか…あいつに…」
アイビス「………」
アイビス「イルイ…あたしは…」

[アルビオン・ブリーフィングルーム]

アムロ「…ガンエデンを破壊する?」
ブライト「ああ。それが我々の決定だ」
竜馬「し、しかし…!」
シナプス「現在、ガンエデンは 結界の展開準備中だと思われる。 そして、それが終われば…」
シナプス「イルイの言葉どおり、地球は 外界から遮断されることになるだろう」
カミーユ「…その結界とは それほど強力なものなんですか?」
麗雄「君も様々な現象を引き起こした クストースの力を知っておるだろう?」
カミーユ「え、ええ…」
麗雄「そして、ガンエデンは彼らの主だ… あの3体以上の力を駆使して、地球を 封印すると考えておいた方がいい」
「しかし、父さん…。 ガンエデンを倒すということは… イルイをも……」
麗雄「…そういうことになる」
比瑪「そ、そんな! あの子を 助けてあげないっていうんですか!?」
ベラ「…………」
麗雄「彼女を助ける、か……」
比瑪「え、ええ…! だって、イルイは あんなことを言うような子じゃ…」
比瑪「きっと、 あの子はガンエデンに取り込まれて……」
「比瑪………」
麗雄「…僕もそう考えたい。 だが…イルイがガンエデンという システムの一部だとしたら……」
麗雄「子供の姿が、僕らに心理的な影響を 及ぼすように計算されていたとしたら…」
比瑪「それでも私はあの子を信じます!  私達と一緒にいた頃のイルイを信じます!」
ジュドー「俺、比瑪さんの意見に賛成するよ。 だって、あれが本当のイルイだって まだ決まったわけじゃないんだろ?」
豹馬「俺もだ。ここまで来て、 あの子が最後の敵だなんて… そんなの認められるかよ」
サンシロー「…今までやって来たことを ガンエデンに無駄にされちまうのは 御免だぜ」
アムロ「あの言葉が彼女自身のものなのか、 あるいはガンエデンのものなのか… それを確認する必要はあるだろう」
キンケドゥ「時間がないのは事実だが… イルイとはまだ話すことが出来る」
キンケドゥ「ベラ、 俺はやってみる価値はあると思う」
ベラ「…ええ。では、その決定の前に ある方の意見を聞きたいと思います」
ベラ「…アイビス、 あなたはどう思います?」
アイビス「………」
ツグミ「アイビス…」
アイビス「あたしは…」
スレイ「………」
アイビス「あたしは… 全体の決定に…従うよ…」
ルー「アイビス…」
ベラ「アイビス、 あの日、私はあなたにイルイのことを お願いしました…」
ベラ「アイビス… 決着はあなたの手でつけるのです…」
アイビス「…あたしは……」
フォウ「アイビス…」
比瑪「………」

アイビス選択

「イルイと話をしたい」
「ガンエデンと戦う」


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