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ネリー・リバイバル アイビス ~ 第40話 ~

[回想 (日本家屋内部)]

???「…勇………」
「うう…」
???「……勇……」
「…姉さん…」
依衣子「勇、こんなところで うたた寝してたら風邪ひくわよ。 …お茶を入れたの、いらっしゃい」
「うん…わかった」
依衣子「早く来なさい。 冷めてしまうわよ」
「………」
伊佐未研作「どうした、勇?  驚いたような顔をして」
伊佐未翠「おかしな子ね。 人の顔をまじまじと見て…」
「みんな、いるんだね…」
依衣子「勇ったら、まだ寝ぼけてるの?」
「姉さん…」
依衣子「いらっしゃい…勇………」

[雪原の林]

「う…うう…っ」
「雪…?」
「…つっ…! どこだ、ここは…?」
「! 比瑪は!?  αナンバーズのみんなは…!?」
(雪を踏む)
ネリー「…気がつきました?」
「君は…?」
ネリー「ネリー…ご覧のとおりの女です」
「そうでしょうけど…」
ネリー「どうぞ」
「! 俺のブレンは…?」
ネリー「ケガをしていますが…大丈夫。 今、私のブレンが傍についています」
ネリー・ブレン「…………」
「…これが…君の?」
ネリー「ええ」
「あの……君は何者で、 何故ブレンパワードに乗ってるんだ?  ここは…?」
ネリー「ふふ…」
「何がおかしいんだ?」
ネリー「あなたが聞いてばかりいるから。 それに私…しばらく人と話してなかったから 嬉しくなったの」
「………」
ネリー「…すぐ吹雪が来ます。 私の小屋に行きましょう」
「小屋って…ここに住んでいるのか…?」
ネリー「ええ…一人で。 だから、遠慮をすることはありません」
ネリー「それに、あなたとあなたのブレンは 休息が必要です。さあ…」
「あ、ああ……」
ネリー「…お友達をお願いね」
ネリー・ブレン「…………」

アイビス「そっちはどう、ツグミ?」
ツグミ「………」
アイビス「ツグミ!  アルテリオンとベガリオンは 飛べるの!?」
ツグミ「え…ええ…何とか…」
アイビス「どうしたのよ、ツグミ…?  早くみんなと合流しなくちゃ ならないのに…!」
ツグミ「…ごめんなさい…」
アイビス「ツグミ…」
スレイ「…いい加減にしろ、アイビス。 お前、状況をわかっているのか…?」
アイビス「スレイ…」
スレイ「私達は負けたんだ…。 制宙権は完全にネオ・ジオンに握られ…」
スレイ「傍受した通信によれば この一週間の間にミケーネの攻撃により 世界中が戦火に包まれたと聞く…」
アイビス「………」
スレイ「私達は負けたんだ…。 こんな状況に置かれれば、 誰だって言葉を失うさ…」
ツグミ「………」
アイビス「だけど…!」
スレイ「ツグミ…。 ベガリオンとアルテリオンの応急処置が 終わったら、すぐに出発しよう」
アイビス「出発って…どこへ…?」
スレイ「DC本部の跡地だ。 あそこならシリーズ77のオプションも 入手出来るだろう」
スレイ「そこで装備を整えたら ハイペリオンで外宇宙に出発するんだ」
アイビス「宇宙へ…」
スレイ「戻ってくる頃には 地球圏の争いも沈静化しているだろう。 誰が勝つかは知らないがな…」
アイビス「…あたし達に 地球を見捨てろってこと?」
スレイ「…その通りだ。 どうせ外宇宙に旅立てば地球のことは 関係なくなる…」
アイビス「スレイ、それは違うよ…。 少なくともあたしは地球を捨てて 銀河を旅する気はない…」
スレイ「私だって地球を愛している…。 だが、この状況で何が出来る…!?」
スレイ「勇もブレンも傷だらけで、 αナンバーズは完全に散り散りだ…」
スレイ「アイビス… お前が理解出来るまで何度でも 言ってやる…!」
スレイ「私達は負けたんだ…!」
アイビス「…嫌だ…。 あたしは…そんなのは認めない…」
(雪を踏む)
アイビス「ネリー…」
ネリー「そちらの様子はどうです?」
スレイ「…見てのとおりだよ。 ベガリオンもアルテリオンも 飛ぶのがやっとの状態だ」
ネリー「…そう。 ですが、良い知らせがあります」
アイビス「もしかして、勇が?」
ネリー「ええ。 やっと彼が目を覚ましました」
アイビス「すまないね、ネリー…。 どこの誰かも知らないあたし達を 助けてもらって…」
ネリー「気にしないで下さい。 あなた方と私は出会うべくして 出会ったのですから」
ネリー「そう、特に勇とは…」
アイビス(不思議な人だな…。 優しさの中にどこか強さを感じる…)
アイビス(ちょっと比瑪に似ているな…)
ネリー「では、私は彼の所に戻ります」
アイビス「ああ。あたし達も こっちを片づけたらすぐに行くよ」


第40話
ネリー・リバイバル

〔戦域:森の中の湖周辺〕

(小屋の横にユウ・ブレンとアルテリオンが着地している)
「あれはネリーの…」
(ネリー・ブレンが湖でスケートをしている)
「あのブレン、ああいうのが好きなのか…」
「………」
「そうか…俺は起きちゃいけなかったんだ。 これはブレン二人だけの世界だもんな」
(ネリー・ブレンが勇の北側に隣接し、着地する)
ネリー「勇もやらない?  この子、とても上手よ」
「いや…俺が乗ったら、あいつが嫌がる。 ネリーのブレンが踊ってるのを見てると、 気持ちが休まるみたいなんだ」
ネリー「そう」
「見ていても、嬉しそうだった」
ネリー「そうでしょ?  この子が遊びたがっているから、 私も喜んでいるわ」
(…喜び…遊びたがってるか…。 アンチボディが生まれてきたのって、 そういうためかも知れないな)
ネリー「何を見ているの?」
「君を…」
ネリー「どうして?」
「君が知っている人に似ているから…」
ネリー「どんなところが?」
「顔…じゃないな…。 全然性格は違うんだけど、 雰囲気なのかな…」
「ブレンと話をしているみたいな ところなんか、そっくりなんだ…」
ネリー「だって、本当に話しているのよ。 あなただって話せるでしょ?」
「少しは…。いや、嘘だな…。 俺にはあいつの言葉は聞こえない…」
ネリー「そうは思えないな。 瀕死の重傷を負いながらも、あなたの ブレンはあなたを守ったのよ」
ネリー「あなた達が お話出来ないなんてことないわ」
「比瑪は言葉はなくとも、 何となくわかるって言っていた。 あいつが話すとヒメ・ブレンは喜ぶんだよ」
「…俺はひねくれてるから…」
ネリー「そういう風に話せるように なったのなら、もう聞こえるわ」
ネリー「今までは 聞こうとしてなかったんでしょう?」
「聞こうとしてなかった?」
ネリー「そうでしょう?  あなたの気性は激しかった…」
ネリー「でも、 あのブレンと付き合うようになって やわらかくなったんでしょ?」
「そうか…そうだね…」
ネリー「…その比瑪って人、 あなたの大切な人なのね?」
「違うよ。 …俺には、そんな人はいない」
ネリー「ふふっ、 そう思い込もうとしているだけでしょ?」
「………」
ネリー「人間は誰だって大切な人を 持っているものよ。だから、生きていける」
ネリー「一人で生きていくのは つらいし、怖いわ…」
ネリー「ブレンパワードのような オーガニック・マシンと呼ばれる 存在だって、そうなのよ」
ネリー「だから、この子達…私達のような人を 水先案内人として選ぶのよ」
(パイロットって、 元々そういう意味かも…)
「わかったよ…。俺みたいな 癪の強いのと付き合ったおかげで あいつはあんな目に遭っちまったんだ…」
「それに引きかえ、姉さんは… グランチャーを痛めないようにしていた…」
「姉さんは グランチャーの気持ちをわかっている…」
ネリー「………」
「…君だって、大切な人はいるんだろう?」
ネリー「もちろん、いたわ。 …けど、お別れしてきたの」
「どうして?」
ネリー「…こういう時代でしょう?  この子といることを選んだのよ」
「ネリー・ブレンといることを?」
ネリー「そうすることが正しいと思ったから」
「戦うため?」
ネリー「…違うわ。出来れば、この子と 二人で静かに暮らしていきたかった…」
ネリー「でも、そういうわけには いかないのね。この時代に何かを 成すために生まれてきたものだから」
ネリー「このようなことも起こる…。 それは思っていたわ」
「リバイバルを見たから?」
ネリー「それはそう…」
「ネリー…」
(ユウ・ブレンが飛ばずに勇達の傍へ移動)
ネリー「ダメ!  あなたはまだ動いてはいけません!」
「ネリー・キムの言うとおりだ。 もう少し養生するんだ」
ユウ・ブレン「………」
ネリー「ふふっ、聞き分けのいい子だ」
「………」
ネリー「私のブレンも勇に興味があるみたい… あなた、ブレンに好かれるのね」
「それは嬉しいけど…」
ネリー「あなたもいつかブレンの気持ちが わかるようになるわ」
「ああ…。 でも、ネリーはすぐだったんだろう?  すごいな」
ネリー「私は普通よ。何の力もない女だわ。 ただ…ブレンと出会えたことだけが 他の人と違った…」
「それ、後悔してるんだ?」
ネリー「逆よ、後悔なんか…」
ネリー「私はこの子がしたがっているように、 精一杯遊んであげられないんで 可哀想だと思っている…」
「ネリー・ブレンが可哀想…?」
ネリー「あたしはこの子の持っているものを 全部引き出してあげることは出来ない。 でも、あなたなら出来るかもしれない…」
「ネリー…」
ネリー「この子のリバイバルに 立ち会ってしまった時にね…」
ネリー「私は生命がなくなるはずだったのに、 それが元気になった…けれども、もう駄目」
「そんな風には見えない…」
ネリー「細胞を蝕む病気はいっぱいあるわ」
「……!」
ネリー「それに…私が この子に会えたのは偶然ではないわ」
ネリー「最期に一人じゃないようにっていう 神様の采配だと思うわ」
「……家族には?」
ネリー「どのみち、 悲しませることになるなら… 目の前にいない方がいいでしょ?」
「…………」
ネリー「家族には黙って出てきたわ。 最期に孤独じゃないって…心強いわ」
「…………」
(雪を踏む)
「アイビス…」
アイビス「………」
ネリー「おはよう」
アイビス「あ…おはよう…」
ネリー「病のことを聞いたのですね?」
アイビス「ごめん…、 そんな気はなかったんだけど…」
ネリー「気になさらないで。 勇にも言ったように、最期にあなた方と 出会えたことを感謝しているわ」
アイビス「ネリー…」
ネリー「ところで、他の二人は?」
アイビス「…まだ駄目みたい…。 戦う気力を完全に失っているよ…」
ネリー「そう…。 心の傷は思った以上に深いようね…」
「今までが上手くいきすぎただけだ。 …俺達に出来ることなんて限られている」
「だけど、ここで逃げ出すつもりはない」
アイビス「さすが、一人でリクレイマーと 戦おうとしただけのことはあるね…」
「…茶化す気か?」
アイビス「ううん…。 素直に感心しているだけよ」
「………」
ネリー「勇…あなた達の戦いについては アイビスから聞いたわ」
「だったら、わかってくれるな?  俺達はここから出て行かなくちゃならない」
ネリー「…あなた達が 大きな運命の流れの中にいることは 出会った時からわかっていた…」
アイビス「大きな運命の流れ…?」
ネリー「ええ…。地球に落ちた隕石は 地球やオルファン…そして、大いなる存在の 意思に影響を与えることになる…」
アイビス「大いなる存在?  一体、それは…」
「…オルファンとは別の…?」
ネリー「詳しいことは私にもわからないわ。 でも、何かが目覚める…。 この星に眠っていた何かが……」
アイビス「………」
ネリー「! この気配は…!?」
(ネリー・ブレンとユウ・ブレンの間に爆煙)
「何だ!?」
ネリー「勇! ブレンに乗って!」
「あ、ああ!」
(ユウ・ブレンが空中へ、ネリー・ブレンが湖の東側を見る。湖の東にバロンズゥが出現)
「何だ…?  グランチャーのシルエットに似てるけど!」
???(ジョナサン)「フフフ…フハハ……」
???(ジョナサン)「ヒャハハハハハハハ!!」
「!?  ジョナサンの幻覚などにだまされるか!」
ジョナサン「残念だなあ、勇!  本物なんだよ! 幻でもないし、 お前の錯覚でもない!」
ジョナサン「お前の頭が おかしくなってないことは、 この俺が保証してやる!」
「生きていたのか!?」
ジョナサン「今のお前と同じようにな!  やれよ、バロンズゥ!!」
「!?」
(ユウ・ブレンが湖の南西側へ移動。ユウ・ブレンとバロンズゥが交差し、ユウ・ブレンに爆煙×2。ユウ・ブレンとバロンズゥが向き合う)
「ブレン!」
ネリー「勇っ!!」
ジョナサン「ヒャハハハ!!」
「貴様ァッ!!」
ジョナサン「再会を祝って 歓迎してやったんだろう!  孤独であるより楽しいぞ!」
ジョナサン「オーガニック・エナジーが 作ってくれた再会のチャンス…!  共に祝おう!」
「ブレン、逃げろ!  相手に出来るもんじゃない! 逃げろ!!」
(ユウ・ブレンはネリー・ブレンの北西まで移動)
ジョナサン「ハッハッハ……そうだよ!  勇のブレンが泣いているなァ!!」
ジョナサン「勇、貴様が泣くのを 見られるとは人生捨てたもんじゃない」
「なめるなぁっ!  どういう状態だろうと!!」
ジョナサン「伊佐未ファミリーには そろそろ引っ込んでもらいたかったんで…」
ジョナサン「血祭りの手始めぇ!  覚悟してもらうぜぇっ!!」
「くうっ!!」
(バロンズゥがユウ・ブレンに隣接しようと移動し、ネリー・ブレンが空中に浮いてからユウ・ブレンの前へ移動)
「ネリー!」
ジョナサン「何だ!? 勇の援軍か!?」
ネリー「あなた達の邪気が この森を…バイタル・ネットが作る 結界を汚しています!」
ジョナサン「何を偉そうに物言うか!  ここは俺とバロンズゥの造る結界だぞ!」
ネリー「やはり、バロン・マクシミリアン…」
「バロン・マクシミリアン!?」
バロン「………」
ネリー「バロン・マクシミリアン…!  グランチャー・バロンズゥを けしかけることは罪を犯すことです」
ネリー「バロンズゥを退かせなければ、 私のブレンパワードまで暴発するかも 知れません」
ネリー「それでは私も罪を犯し、 私もあなたも罰を受けることになります」
バロン「………」
「罪を犯し、罰を受ける…。 バロンだと…?」
ジョナサン「勇と一緒に潰してやる!  それで貴様の罪と罰もチャラに してやるよ!」
ネリー「…おやめなさい、 バロンズゥを操る人! あなたには あなたが思うほどの力などはないのです」
ネリー「バロンズゥ、お帰りなさい!  あなたのプレートに!」
ジョナサン「!?  俺のバロンズゥ、何ビビッてる!?  たった一人のブレンだぞ!!」
バロン「…………」
「ネリー!  僕のことはいいから、一人で逃げてくれ!」
ネリー「馬鹿なことは言わないで!」
「ジョナサンという奴は 普通じゃないんだ!!」
ネリー「ユウ・ブレンを見れば… あなたを守らなければならないのは あたしとネリー・ブレンです!」
(甘えられるのか、ユウ・ブレン…!?  この厚意に…!!)
(ネリー・ブレンがユウ・ブレンに合流し、爆煙に追われながら東へ移動、ブレンパワードの声)
ジョナサン「ネリーとか!  ユウ・ブレンを放して戦ってみせろ!!」
ネリー「嫌です! あなたこそ、 この森から出て行って下さい!!」
「くううっ!!」
「助けられず、助けられただけで… しかも、落ちて行く…!!」
「いいのか、ブレン!?  こういう運命で!?」
ユウ・ブレン「…………」
「何…!?」
「生まれた時にオルファンに連れて 行かれて辛かった…!?」
ユウ・ブレン「…………」
「それを、オルファンから 連れ出してくれて嬉しかった…!?」
「太陽が見られて… 太陽がある宇宙が想像できて……」
「宇宙の中のこの星…… 人間が地球と呼んでいる星のことが わかって、嬉しかった…?」
ユウ・ブレン「…………」
「そういう中で 生きてこられたことは喜びだ……」
「でも、今…何も出来ないのが……」
ユウ・ブレン「…………」
「悔しいのなら、何とかしろ!!」
(アルテリオンが空中へ浮かび、ユウ・ブレンの傍へ移動)
「アイビス!」
アイビス「勇、ネリー!  ここはあたし達で食い止める!」
「気をつけろ、アイビス!  あのアンチボディは普通じゃない!!」
アイビス「了解!」
(バロンズゥが西のバロンの傍まで移動)
ジョナサン「バロン・マクシミリアン… お借りしたバロンズゥの力、 存分に使わせていただきます」
バロン「油断はするな、ジョナサン。 手負いの人間は何をするかわからん」
ジョナサン「心得ております! バロンは そこで私の狩りをお楽しみ下さい!」
(作戦目的表示)

〈2PP〉

(敵機増援が出現)
アイビス「リクレイマー!?」
ジョナサン「ヒャハハハ! そう!  準備は万全だったということさ!!」
アイビス「この数が相手じゃ…!」
ジョナサン「どうした、女!  威勢がいいのは口だけだ!?」
アイビス「…ツグミ、スレイ!  覚悟を決めるよ!」
ツグミ「………」
スレイ「………」
アイビス(駄目か…。 二人がこんな風では やられるのを待つだけだ…!)
ネリー「アイビス…逃げて下さい。 あのアンチボディは私達が何とかします」
アイビス「でも…!」
「アイビス、逃げろ!  お前にはやることがあるはずだろう!  銀河を飛ぶんじゃないのか!」
「それがお前の夢だったはずだ!!」
アイビス「それとこれとは話は別よ!  誰かの犠牲の上の夢なんて!」
「アイビス…!」
アイビス「あたしはあきらめない…!  ここで力尽きることになったとしても…」
アイビス「全力も出さずに 自分だけ逃げるなんて出来ない!」
ネリー「アイビス…」
アイビス「ネリーだって最期の時まで 何かをやろうとしている…。 あたしだって…あたし達だって…!」
ツグミ「アイビス…」
スレイ「お前…!」

〈3PP〉

ジョナサン「チッ!  奴らめ、手間をかけさせる!」
(出撃準備)
ジョナサン「奴らは!?」
「ガオガイガーとゴーショーグン…!  来てくれたのか…!」
真吾「ほ~う。 今度もケン太の予言が的中したな」
キリー「将来は 占い師で食っていけるぜ、ケン太」
ケン太「ううん、 僕は友達からみんなの居場所を 教えてもらってるだけだよ」
レミー「その友達ってのが よくわかんないのよねえ…」
キリー「ま、 ケン太のおかげで宝探しは終わったんだ。 ありがたく思っておこうぜ」
アイビス「みんな…!」
「無事だったか、アイビス」
アイビス「な、何とか…」
「よし…これで αナンバーズ全員が集まった」
アイビス「じゃあ、みんなも 無事なのね!?」
「ああ。残りのメンバーは 別の場所に集結している」
レミー「疲れてるところ悪いけど、 もうひと頑張りできる?」
アイビス「それは…」
スレイ「余計な心配は無用だ」
ツグミ「スレイの言うとおりです。 私達も最後の最後まで あきらめる気はありませんから」
アイビス「ツグミ、スレイ…」
ツグミ「ありがとう、アイビス。 あなたに教えられたわ」
スレイ「フ…またお前に 借りを作ってしまったな」
アイビス「気にしないでよ!  あたし達は仲間なんだから!」
レミー「じゃ、 雨降って地固まったということでOK?」
ツグミ「ええ。それから、2機のブレンは 防御に徹していますが…事実上、 行動不能の状態にあります」
ツグミ「そして、あの白い アンチボディはグランチャーをはるかに 超える力を持っているようです」
レミー「油断大敵ってことね。 じゃあ、最後の仕上げといきましょ!」

〈vs ジョナサン〉

[真吾]

真吾「さあて…新しいグランチャーの 実力を見せてもらおうか?」
レミー「見物料は払えないけどね」
ジョナサン「ハッ!  だったら、貴様らの命をもらってやる!」
真吾「そいつは ちょいとゼイタク過ぎるってもんだ!!」

[凱]

ジョナサン「ヒャハハハ!  俺は貴様すら倒す力を手に入れたぞ!」
「その力におぼれているようじゃ、 この俺を倒すことなど出来ないぜ!!」

[アイビス]

ジョナサン「そこをどけ、女!  俺の邪魔をするな!」
アイビス「憎しみで戦う奴に 勇とネリーをやらせやしない!」

[HP規定値以下 or 6PP]

ジョナサン「ええい! 忌々しい!」
バロン「やめろ、ジョナサン」
ジョナサン「何故だ、バロン! 俺は!!」
バロン「君は自分の感情に流され過ぎる。 それでは、そのバロンズゥの能力を 引き出すことは出来ない」
ジョナサン「だが、勇だけはっ!!」
(バロンズゥがユウ・ブレンの北側へ移動)
「くっ! 動けないのか、ブレン!?」
ジョナサン「勇!  これで終わりにさせてもらう!」
ネリー「バロン・マクシミリアンは あのグランチャーを邪悪に使うことを 目指しているだけ!」
ネリー「それに、あの青年を 手伝わせるという心はいったい何なの!?」
ジョナサン「俺は俺の戦い方をバロンに示し!  その上でオルファンに凱旋をする!」
ジョナサン「勇を討たせてくれれば、 貴様の話を聞いてやってもいいんだぞ!」
ネリー「何故、そのような口が 邪悪な心で言えるのです!?」
ネリー「あなたは他人に怨念を ぶつけようとしているバロンと そのグランチャーに操られてるだけです!」
ジョナサン「バロン・マクシミリアンは 俺を理解してくれた!」
ジョナサン「バロンの見ている前で、無様な 真似をさらすわけにはいかないんだ!!」
「ジョナサン! ネリーを!?」
ジョナサン「トドメは 一気に受けた方が楽だぜ、勇!!」
「ブレン! 撃てなければいい!  もういい! よくやった!  好きにしろ! 付き合う!!」
(バロンズゥがユウ・ブレンに隣接。ユウ・ブレンの下にリバイバルのブレードが出現、バロンズゥが少し離れる)
ジョナサン「リバイバルのブレード!?」
バロン「オーガニック・エナジーの発動が このように現れる…!」
「俺達は覚悟がついた!  ネリーだけでも逃げてくれ!」
ネリー「私達の覚悟はあなたを守ること!」
「何だって!?」
ネリー「あなたが 来てくれてようやくわかったの」
「何を言ってるんだ!?」
ネリー「あなたなら、ブレン達を 強く育ててくれる。私の分も 生かさせてくれる人だってわかったのよ」
ジョナサン「カーテンの向こうで 何やってるッ!?」
「リバイバル!?  もう一度リバイバルする!?」
ネリー「この子は完全じゃないの!  もう一度、リバイバルが必要なの!」
「ネリー!!」
バロン「ジョナサン、 バロンズゥの手に私を乗せよ」
バロン「このリバイバルが 私の恐れているものであるならば、 私はオルファンに行かねばならない」
ジョナサン「狙撃してやる!!」
バロン「未熟者の言うことは聞かない!」
ジョナサン「!」
バロン「急げ、ジョナサン!」
バロン「リバイバルが終わった時、 あのブレードがチャクラの矢になって 襲ってきたらどうするのだ!?」
ジョナサン「そ、それが… オーガニックなるものだと言うのなら…!」
(バロンズゥがバロンの居る位置まで移動し、撤退)
レミー「な、何が始まるの…!?」
ケン太「ふ、二つのブレンが……!!」
「一つになる…!?」
「ネリー!  どこだ!? どこへ行ったんだ!?」
ネリー「…この子が ここを出たがらなかったのは……」
ネリー「勇、 あなたのような人を待ってのことだった」
「本当に…!?」
ネリー「生命を与えられた者の 可能性を探すためね」
「…誰が与えた可能性だ…!?」
ネリー「それはあなたが探して。 私にはもう探せないから…」
ネリー「この子も一緒に探してくれるわ。 この子の力で勇の大切な人達も 守ってあげればいい…」
「ネリー・キム…!!」
ネリー「勇、忘れないで…。 憎しみだけで戦わないでね。 それではオルファンは止められないわ」
「ネリー……!!」
ネリー「悲しまないでね、勇。 私は孤独じゃなかったわ、いつでも…。 最期にはあなたにも会えた……」
ネリー「ありがとう……………」
「……………!!!」
(ユウ・ブレンがネリー・ブレンと融合し、ブレードが収まる)
「………ネリー…………!」
アイビス「…さよなら、ネリー……」
(東端にグッドサンダーが出現)
真吾「…迎えが来たか……」
比瑪「あのブレン………」
比瑪「勇のブレンなの……!?」
ネリー・ブレン「………」
「……………」
「俺のブレンは雄々しかったんだぞ…。 そのビットだって取り込んだんだろ。 もう泣くんじゃない…」

《北ヨーロッパ・WORLD AREA》

[雪原の林]

比瑪「…ネリーさんの形見を埋めるの?」
「ああ…。俺もネリー・ブレンも いつまでも泣いているわけにはいかない」
ネリー・ブレン「…………」
「気持ちはわかるけど…ブレスレット一つの 記憶より、お前と俺の中にしみこんだ ネリー・キムの想い出を大切にしたいな」
「…いっぱいあるだろ?」
ネリー・ブレン「………」
「ここにいる宇都宮比瑪って、 いい子なんだぞ。こういうことを ちゃんとわかってくれるんだ」
「お前の身体の中にはネリーも…… 俺のブレンもいるんだろう?」
ネリー・ブレン「…………」
「これで充分じゃないか、ネリー・ブレン」
ネリー・ブレン「………」
比瑪「ありがとう、勇…。 でも、私…人を愛せない人って嫌いだよ?」
「…………」
「…ネリーはね、 ジョナサンとバロンと、バロンズゥが オルファンに入ることを恐れてたんだ」
比瑪「バロン? バロンズゥ?」
「ああ…。 だから、俺は一つの記憶を封印する」
「これからの戦いのために………」

[グッドサンダー・ブリッジ]

イルイ「アイビス…!」
アイビス「イルイ…来てくれたのね…」
イルイ「よかった…無事で……」
アイビス「ごめん、イルイ…。 地球を守るっていう約束、守れなくて…」
イルイ「ううん、いいの。 アイビス達は一所懸命頑張ったもの……」
イルイ「悪いのは… ネオ・ジオンや他の星から来た人達…」
イルイ「あの人達さえいなければ……」
アイビス「イルイ…」

ツグミ「この10日間… 地球にとって動乱の時だったのですね」
「ええ…。フィフス・ルナの落下は 予想以上の影響を与えているわ」
「ラサ一帯が壊滅したのに加え… ミケーネ帝国の大軍団が地球の 主要都市を同時に襲撃した」
「今は連邦軍と膠着状態となっているが… 戦闘が長引けば、こちらが不利だ」
「それに、オルファンの浮上が 地球の異常現象に拍車をかけているし…」
ツグミ「下手をすると、地球そのものが 危ないということですか…」
スレイ「ネオ・ジオンや木星帝国の方は?」
真吾「高見の見物さ。 奴らのキツい脅しのせいで、連邦の お偉いさん達は浮き足立ってる」
キリー「次は自分達の頭の上に 何が落ちてくるかわからないからな」
レミー「つまり… 今のところはお手上げってワケ」
ツグミ「これがシャア・アズナブルの言う 重力に魂を引かれた者の罪なのかしら…」
「狭い世界の中だけで暮らし、 外界に無関心でいることは 他人への優しさや思いやりを忘れさせ…」
「長い目で見れば、自分達自身を 滅ぼすことなのかも知れないな…」
ツグミ「ええ…」
「…オルファンの方は どれぐらい浮上したんだ?」
「それが……この一週間で ついに海面から離れてしまったの」
「やはり、そうか…!」
ツグミ「ということは、オルファンは 完全に浮上してしまった……!?」
「ああ。フィフス・ルナによる 地球へのダメージ…」
「つまり、大規模なオーガニック・ エナジーの喪失にオルファンがパニックを 起こしたためだと言われている」
スレイ「想像以上に状況は絶望的だな…」
アイビス「…でも、 あきらめてはいないよね?」
「ああ、もちろんだ…!」
真吾「でなきゃ、いつものこどく突然姿を 現したグッドサンダーで、世界中へ散った 仲間達を集めたりはしないさ」
ツグミ「でも、どうやって 私達がいた場所を知ったのですか?」
真吾「ああ、そりゃケン太のおかげだ」
ツグミ「ケン太君が?」
真吾「そう。 あいつの友達がαナンバーズの 居場所を教えてくれたそうだ」
アイビス「その友達って?」
真吾「信じられん話だろうが… ケン太は山と話せる人、森と話せる人、 雨と歌える人達と言ってる」
アイビス「どういう意味?」
レミー「一言でいえば、地球の自然そのもの… ファンタジックに表現すれば、精霊と 交信してるってことになるわね」
スレイ「それって…」
ツグミ「まるで…」
キリー「そう、おとぎ話さ」
「だけど、 護やイルイも同じようなことを言ってる」
「…どうやら、あの子達は 俺達に聞こえない声を聞いているらしい…」
レミー「信じられないでしょ?」
「いや、そうは思わない。 俺や比瑪もブレンの声を聞いているし…」
「子供達は俺達よりも オーガニック的なものに敏感だと言える」
レミー「つまり、純粋だから…ってワケね」
キリー「なら、レミーにゃ友達の声が 聞こえなくて当然だよな」
レミー「じゃ、 代わりに自分の悲鳴でも聞いてみる?」
キリー「うへっ、そりゃご勘弁」
真吾「とにかく、グッドサンダーが 俺達と行動を共にしている内に αナンバーズと合流した方がいいな」
キリー「ああ。このままじゃ、 どこに飛ばされるかわからんからな」
ツグミ「ところで、ケン太君はどこに?」
真吾「ああ… 今、親父さんと会ってるよ」
ツグミ「え…!?  真田博士って、確か亡くなったはずじゃ…」
キリー「何でも、予め自分の意識を ファザーに移植していたらしい。 要は宙の親父さんと同じってことだ」
ツグミ「…………」

[グッドサンダー・コンピュータルーム]

真田「ケン太… お前達の仲間は全て集まったか?」
ケン太「ううん…。 キンケドゥさんがまだ……」
「…大丈夫かな…キンケドゥさん…」
OVA「きっと大丈夫ですよ」
ケン太「でも… あの人の場所だけはわからないんだ。 ……もしかしたら……」
真田「信じるんだ…ケン太、護君。 そうすれば、友達は必ず応えてくれる…」
ケン太「うん……」
サバラス「真田博士… もしかして、ケン太の友達とは私達の使命と 深い関係があるのですか?」
真田「そうだ。ケン太の成長と ビムラーの覚醒のきっかけとなる……」
ケン太「ビムラーの覚醒…?  ビムラーって、瞬間移動を可能にする エネルギーのことだよね…?」
真田「うむ…」
ケン太「それと僕にどんな関係が…?」
真田「いいか、ケン太…よく聞くんだ。 お前とお前の仲間達には、まだ多くの 試練が待ち受けている…」
真田「そして、それに打ち勝った時… 人類は新たなステップを上ることになる」
真田「覚醒したビムラーや…… お前の友人達と共に……」
ケン太「え…!?」
OVA「どういう意味なんです…?」
真田「…外宇宙へ進出したとは言え、 人類は未熟な存在だ」
真田「本当の意味での巣立ちをするには、 守護者の下から離れなければならない」
サバラス「守護者…?」
ケン太「待ってよ、父さん…!  どういうことなの? ビムラーって、 いったい何なの?」
真田「今はまだそのままでいい。 いずれわかることだ……」
真田「そして、その時こそが お前の…いや、人類の新たなる旅の 始まりとなるのだ」
ケン太「父さん!」
真田「ケン太、しばしのお別れだ…。 また会おう………」
(モニターオフ)
ケン太「父さん! 父さん…!」
サバラス「ケン太…真田博士はファザーの中で 再び眠りについた。呼びかけても無駄だ」
ケン太「と、父さん…」
サバラス「君は真田博士の言葉どおり、 旅を続けなければならない。 そう、全ての答えを見つけるために…」
ケン太「………」
「そうだよ、ケン太。 まだ君の旅は終わりじゃないんだ」
ケン太「…わかったよ、護。 僕、自分で答えを見つけてみせるよ」
ケン太「それがこの旅の目的なんだから…」


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