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ツイン・バード アラド ~ 第37話 ~

《サイド3 スウィート・ウォーター・EARTH AREA》

[レウルーラ・執務室]

シャア「…そうか。 ハマーン・カーンがアクシズに入ったか」
ナナイ「はっ。連邦軍は彼らを使って、 我々を牽制するつもりのようです」
シャア「彼らにしては思い切った策だな。 …いや、むしろハマーンの方か」
ナナイ「…なお、 連邦とハマーンの間を取り持ったのは シーマ・ガラハウだと思われます」
ガトー(やはり…本性を現したか、女狐め)
ガトー「総帥、自分にシーマの討伐を お任せ下さい。二度に渡る離反行為、 もはや度し難く……」
シャア「いや… 彼女はガンダムの回収と核の強奪で その役目を終えている」
シャア「それに、我々の作業の全てを 知っているわけではない。 放っておいて構わん」
ガトー「は……」
ナナイ「…いかが致しますか、大佐?  アクシズの件は次の交渉で 議題にする予定でしたが…」
ナナイ「ハマーンに押さえられたとなると、 例の作戦に大きな支障が出ます」
シャア「彼女の相手をするのは何も 我々だけとは限らんさ。時が来るまで、 アクシズを守ってもらうとしよう」
ナナイ「…………」
シャア「それに、アクシズに固執する ハマーンに我々の真意は読めまい」
ナナイ(ここに来て、大佐が あの女と同調するとは思いたくないが…)
ナナイ「では、『地球寒冷化作戦』は 予定どおりに実行するということで よろしいのですね?」
シャア「ああ。多くの者の注意がアクシズへ 引きつけられたおかげで、フィフス・ルナの 奪取がより容易なものとなった」
ナナイ「了解です。 では、艦隊の出撃準備を開始します」
シャア「…ガトー少佐。君にフィフス・ルナ 制圧部隊の指揮を任せる。エギーユ・ デラーズの悲願を成就させるがいい」
ガトー「は……。 この手で星の屑を再び…!」

[ヤザン艦・ブリッジ]

ヤザン「ロンド・ベルに陽動をかけろだと?」
ラムサス「はっ。 ナナイ・ミゲルからの命令です。 また、補充戦力も送られて来ました」
ヤザン「リストを見せろ」
ラムサス「これです」
ヤザン「ほう……。 これを送ってくるとは、 赤い彗星も豪気だな」
ラムサス「自分も驚きました」
ヤザン「いいだろう。 これならば、αナンバーズを仕留められる。 …ゼオラの使い時が来たようだな」

[独房]

ゼオラ「………………」
ゼオラ(次に命令が出た時… 私はαナンバーズと戦うことになる…)
ゼオラ(…私達はそのために… 彼らを倒すためにスクールで育てられた…)
ゼオラ(でも、 あの子はそれを否定した……)
ゼオラ(私を…否定した……)
ゼオラ(もうあの子は 私がいなくても…やっていける……)
ゼオラ(このまま、ここにいて… ネオ・ジオンに協力するぐらいなら、 いっそ………)
(扉が開閉する)
ダンゲル「ゼオラ、お前に出撃命令が出た。 すぐに準備をしろ」
ゼオラ「はい……」

《移動中 アクシズと地球の間・EARTH AREA》

[ラー・カイラム・ブリッジ]

ブライト「トーレス、再確認は終了したか?」
トーレス「はい。やはり、ネオ・ジオンの 戦艦です。一定距離を置きつつ、こちらを 追尾しています」
アムロ「仕掛けてくる様子なし、か。 俺達を牽制しているんだろうな」
ブライト「こちらから仕掛けるか?」
アムロ「そうだな…。 ネオ・ジオンの戦力は少しでも 減らしておく必要がある」
アムロ「それによって、 シャアの次の動きが見えるかも知れない」
ブライト「よし、総員第一種戦闘配置。 針路反転し、ネオ・ジオン部隊を叩く。 トーレス、他の3艦にも通達しろ」
トーレス「了解!」


第37話
ツイン・バード

〔戦域:暗礁宙域〕

ネオ・ジオン兵「敵部隊、来ます!」
ネオ・ジオン艦長「よし、かかったな。 ヤザン大尉に報告を!」
(母艦出撃選択、出撃準備)
モンシア「ヘッ… あいつら、どう考えてもオトリだな」
ベイト「ああ。後から客が来ると 思っておいた方が良さそうだぜ」
モンシア「だったら、先にパーティーを 盛り上げといてやるか」
アラド(ゼオラは…いないのか……)
コウ「アラド、どうした?」
アラド「い、いえ… 何でもありません! 行きますっ!」
(作戦目的表示)

〈敵機全滅〉

トロワ「終わったか…」
隼人「俺達を追っていた割には 押しの弱い連中だったな」
トロワ「おそらく、スケープゴートだろう。 本命は必ず来る…」
小介「みなさん! こちらへ急速接近してくる 機体をキャッチしました!」
隼人「!」
(ビルトファルケンが出現)
アラド「! ビルトファルケン!!」
ゼオラ「…………」
アラド「ゼオラ! お前だろ!?」
ゼオラ「……」
ヒイロ「あの女…一人で来たのか?」
五飛「どのみち、奴はヤザンの部下だ。 …攻撃するぞ!」
「待て、彼女はネオ・ジオンから 抜け出して来たのかも知れないぞ!」
五飛「このタイミングでは罠と考えるべきだ」
カトル「待って下さい、五飛!  こちらを攻撃するつもりなら、 とっくの昔にそうしているはずです!」
カトル「彼女は何かわけがあって ここに来たんだと思いませんか!?」
ゼオラ「…αナンバーズへ。 自分は…ネ、ネオ・ジオン軍所属、 ゼオラ・シュバイツァー曹長…」
ゼオラ「これより武装を解除し…… そちらへ……と、投降します…」
アラド「!!」
キリー「お、おいおい… あいつ、本当に武装を解除しやがったぜ?」
レミー「ふ~ん… ちょっと素直すぎるのが怪しいわね」
ゼオラ「…………」
アムロ「…理由を聞かせてもらおうか、曹長」
ゼオラ「……ダ、ダメ……!」
アムロ「!?」
ゼオラ「み…みんな、早く逃げてっ!!」
(ヤザン隊が出現)
ヤザン「逃げろだと?  フン…もう遅いぞ、ゼオラ」
キース「あ、あれはっ!?」
モンシア「ガ、ガンダム2号機かよ!!」
ゼオラ「ヤ、ヤザン大尉…!」
ヤザン「やはり、非情に徹しきれなかったか。 もっとも、貴様がアラドのことを知った 時点でこうなるのはわかっていたがな」
ゼオラ「え…!?」
ヤザン「素質はあったが… 女の部分がそれを邪魔したな、ゼオラ」
ゼオラ「わ、私はそんなつもりで…!!」
ヤザン「別に構わんさ。 貴様のおかげでこの位置を確保できた… それで充分だ」
ゼオラ「じゅ、充分って…!?」
ヤザン「女になったお前に用はない。 奴らと一緒に処分してやる」
ゼオラ「そ、そんな……!」
アムロ「まずいぞ…!  ヤザンのあの位置…核を使う気か!」
コウ「え…!?  し、しかし、あの2号機は…!」
アムロ「忘れたのか、ウラキ少尉?  ジオンは核を手に入れているんだぞ」
コウ「!!」
「あいつ、本気なのか…!?」
ナンガ「おい、冗談じゃねえぞ!  南極条約はどうなったんだ!?」
ラッセ「そんなもの、目の前に あれがある時点で意味ないだろうが」
ヤザン「そういうことだ。 今までの借りをまとめて清算してやる」
カミーユ「そんなこと、 誰がやらせるかよっ!!」
アムロ「各機へ! 核を撃たれる前に ガンダム2号機を撃墜しろ!!」
竜馬「了解!!」
モンシア「あンの野郎…!  2号機を奪われた落とし前は キッチリつけてやるぜっ!!」
(作戦目的表示)

〈NEXT PP〉

ゼオラ「…………」
アラド「あいつ、何やってんだ!?」
「アラド! あの子を何とかしないと 巻き添えを食うぞ!」
アラド「は、はいっ!」
ゼオラ「…………」
アラド「ゼオラ、動け!  動かないとやられちまうぞ!!」
ゼオラ「…アラド…私……」
ゼオラ「帰る所がなくなっちゃったよ…」
アラド「帰る所!?」
ゼオラ「…もうどこへも帰れない…。 連邦軍にも……ネオ・ジオンにも……」
ゼオラ「……スクールにも……」
アラド「な、何言ってんだ…!?」
「そうじゃないだろう、アラド!」
アラド「え!?」
トビア「アラドさん、 あの人を取り戻したいんでしょう!?」
アラド「ト、トビア…!」
エマ「彼女の心を動かせるのはあなただけよ」
アラド「エ、エマ中尉…!」
モンシア「か~っ、じれってえ野郎だな!  ここでビシッとキメちまえってんだ!!」
一矢「そうだ!  また彼女と離ればなれになる気か!?」
レミー「キメる時はキメないと… 一生後悔するわよ?」
比瑪「だから、 早く言っちゃいなさいよ!」
アラド「わ、わかりましたっ!!」
ゼオラ「……………」
アラド「ゼオラ、おれの話を聞けっ!」
ゼオラ「…放っといて… 私はもうどうなっても……」
アラド「!!」
アラド「そ、そんなの… そんなのお前らしくねえんだよ!!」
ゼオラ「………」
アラド「お前は もっと短気でガサツで、胸はあっても 色気がなくて、おまけに頑固で…」
サンシロー「あいつ、何言ってんだ!?」
フォウ「いいから、あの子に任せましょう」
アラド「その上、 年上だからっておれを子供扱いするわ、 いちいちやることにケチをつけるわ…」
アラド「ええい、 こんなこと言ってる場合じゃねえ!  とにかくっ!!」
アラド「おれ達、小さい頃から ずっと一緒だったじゃねえか!!」
ゼオラ「………」
アラド「だから!  お前が帰る所は……おれがいる αナンバーズなんだっ!!」
ゼオラ「で、でも…… 私は…あなた達の敵だった……」
アラド「それがどうした!?  おれだって、最初はそうだったんだ!!」
カトル「…ゼオラさん、あなたが 決意したのなら、それでいいんですよ。 …かつての僕達もそうでしたから」
ゼオラ「…………」
プル「そうそう!  細かいことは言いっこなし!」
プルツー「あたし達もジュドーのおかげで ここにいるんだからね」
フォウ「だから…後はあなた次第よ」
ゼオラ「…………」
アラド「おれの所へ来い、ゼオラ!  おれにはお前が必要なんだ!!」
ゼオラ「アラド……」
アラド「お前は おれのパートナーだろうが!  だから、おれの所へ来いっ!!」
ゼオラ「わ…わかったわ…」
ゼオラ「私……私………」
ゼオラ「あなたと一緒に行く!!」
(ビルトファルケンがビルトビルガーに合流)
レーツェル「フ… つがいの鳥がようやく一つとなったか」
京四郎「故人曰く『比翼の鳥、連理の枝』…」
ヴィレッタ「それは言い過ぎかも 知れないけど…ひとまず一件落着ね」
ゼオラ「アラド、私……」
アラド「話は後だ!  今はヤザン大尉を止めるっ!!」
ヴィレッタ「アラド、ゼオラ… すぐにパターンTBSを解除しなさい」
アラド「パターンTBS!?」
ヴィレッタ「そう、 ツイン・バード・ストライク…」
ヴィレッタ「ビルガーと ファルケンの連携攻撃パターンよ」
ゼオラ「ツイン・バード…」
アラド「ストライク……!!」
レーツェル「ビルガーとファルケンは2機で 運用することによって真価を発揮する…」
レーツェル「それを 今から私達に見せてもらおうか」
アラド「わ、わかりました!」
ゼオラ「やってみます!!」
(作戦目的表示)

〈vs ヤザン〉

[アラド]

アラド「ヤザン大尉!  ゼオラは返してもらったぞ!!」
ヤザン「フン… 女とつるんで力を出すようじゃ、 まだまだ青臭いガキだな」
アラド「そんなの、 百も承知でやってんだよ!!」
ヤザン「女を守るためか。 だが、戦場じゃ守る物が多い奴から死ぬ。 それをお前に教えてやるよ!」

[ラムサス機撃墜]

ラムサス「だ、脱出する!」

[ダンゲル機撃墜]

ダンゲル「こ、後退する!」

[ガンダム試作2号機撃墜]

ヤザン「うぬっ…!  ガンダムを落とすとは…!!」
(ガンダム試作2号機が爆発)
アラド「ふう……」
ゼオラ「アラド……私…」
アラド「いいんだ、ゼオラ。 おれ達、何があっても二人で生き残る。 そう約束しただろ?」
ゼオラ「う、うん……」
アラド「だから、もういいんだ。 さあ、一緒に帰ろうぜ」
ゼオラ「………」
アラド「おれ達の仲間… αナンバーズの所へ………」
ゼオラ「うん……」

《移動中 アクシズと地球の間・EARTH AREA》

[モビルスーツデッキ]

ゼオラ「…ゼオラ・シュバイツァー 曹長です……あの…今まで……」
エマ「それ以上言う必要はないわ」
ゼオラ「え…?」
コウ「ああ…俺達は君を歓迎するよ」
キース「それに、 ウチの部隊じゃよくあることだしね」
アムロ「君が自分の判断で 我々に協力してくれるのなら、 それでいい」
ゼオラ「…みなさん……。 ありがとうございます…」
「何はともあれ… 良かったな、アラド」
ヴィレッタ「これからは二人で頑張りなさい」
アラド「はい……」
ゼオラ「アラド……」
アラド「…そうだ、ゼオラ。 おれの友達を紹介するよ」
イルイ「…イルイです…。 私、あなたに会ってみたかった…」
ゼオラ「私に…?」
イルイ「…うん……」
イルイ「アラドの大切な人って、 どんな人なのかなって……」
ゼオラ「大切な人…?」
イルイ「うん…私、わかるもの。 アラドはあなたのことを……」
アラド「ちょ、ちょっと待った!  イルイ、そこまでだ!」
イルイ「え?」
アラド「ゼ、ゼオラ、行こうぜ!  この艦の中を案内するからよ!」
ゼオラ「う、うん…」
(アラドとゼオラが立ち去る)
イルイ「…どうして行っちゃうの…?」
「あいつ、照れくさかったんだよ」
エマ「フフ…そうみたいね」

[艦内通路]

アラド(ふう~…危ねえ、危ねえ…)
ゼオラ「…ねえ、アラド。 一つ聞いていい?」
アラド「何だ?」
ゼオラ「あなた、別れ別れになる前に 私との約束以外に守るものがあるって 言ったわよね?」
アラド「そ、そうだったっけ?」
ゼオラ「あれって…何だったの?」
アラド「え、え~と…」
ゼオラ「…地球圏に住む人達のこと?」
アラド「それもあるけど…」
ゼオラ「じゃあ、自分のプライドとか…」
アラド「そんなの、 あってねえようなもんだからなあ…」
ゼオラ「じゃあ、何なの?」
アラド「…お前って… そういう所は鈍いんだよな、前から…」
ゼオラ「え?」
アラド「あの時に言った おれの守るものって……」
アラド「お前だよ」
ゼオラ「!」
アラド「そう…お前のことなんだ」
ゼオラ「アラド…… あなた……私を…?」
アラド「ああ。 でも…今はお前以外にも、 守らなきゃならないものがたくさんある」
ゼオラ「どうして…今まで…」
アラド「…ホラ、そういうのって いちいち口に出すもんじゃないしさ」
ゼオラ「……………」
ゼオラ「…バカ……」
ゼオラ「本当にバカなんだから…」

[ラー・カイラム・ブリッジ]

(アラート)
ブライト「どうした!?」
トーレス「フィフス・ルナの駐留部隊より 緊急入電! 現在、ネオ・ジオン艦隊の 攻撃を受けているようです!」
ブライト「フィフス・ルナ!?  資源小惑星を奪取するつもりか!?」
トーレス「現時点で敵の目的は不明です!」
アムロ「このタイミングで 動くのはシャアに違いない…!」
アムロ「だが、フィフスを奪取して 何をするつもりだ? スウィート ウォーターへ運ぶつもりだとでも…」
アムロ「! まさか!?」
ブライト「どうした、アムロ!?」
アムロ「ブライト、シャアの考えが読めたぞ!  すぐに艦をフィフスへ!!」
ブライト「シャアの考え!?」
アムロ「ああ、 奴はフィフスを地球へ落とす気だ!!」


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