ジレ「…以上、バビロニア・バンガードが
強奪された経緯報告です」
ドレル「ベラめ…
今は亡きおじい様の志を忘れて、
あくまで我々に刃向かう気か…」
ジレ「我々クロスボーン本隊も
木星圏への出発が近づいております。
いかがなさいますか？」
ドレル「バビロニア・バンガードは
惑星間航行も可能な艦だ。放っておけば、
連中は木星まで追ってくるだろう」
ジレ「では、海賊共の処理に
ザビーネの部隊を向かわせましょう」
ドレル「ザビーネ・シャルか…。
あの男はベラに入れ込んでいたようだが、
問題はないのか？」
ジレ「ですが…御曹司が動けない以上、
海賊の相手はザビーネにさせるしか
ありますまい」
ドレル「………」
ジレ「それに…不穏分子は
早急に切り捨てた方が無難かと」
ドレル「よかろう。では、任せる」
ツグミ「アイビス、
本気でこの艦に乗るつもりなの？」
アイビス「シャトルも失ったしね。
どちらにしても運び屋を
続けるわけにはいかないじゃない」
ツグミ「わかっているの？ この艦に
乗るってことはクロスボーンと戦うのよ？
戦争なのよ！」
アイビス「アルテリオンは
１人でも操縦できる。
ツグミは戦場に出る必要はないよ」
アイビス「それにツグミも
自分が手がけたアルテリオンに
興味あるんじゃないの？」
ツグミ「それは、そうだけど…」
ツグミ「アイビス…あなた、
まさか自分の生命を安く見積もって
いるんじゃないでしょうね…？」
アイビス「そんなこと…ないよ…」
ツグミ「それならいいけど…。
お願いだからヤケになって
馬鹿なことは考えないでね…」
アイビス「………」
ウモン「おお、こんな所におったか」
ウモン「お前達も雇われとはいえ
今日から海賊だ。おしゃべりの暇が
あるなら整備を手伝わんか」
アイビス「それよりも先に
言っておくよ」
アイビス「アルテリオンの整備は
あたしとツグミでやる。あんた達は
勝手に触らないでもらいたい」
ツグミ「アイビス！」
ウモン「わかった、わかった。
その辺は整備の連中にも伝えておく」
ツグミ「よろしいんですか、ウモンさん…」
ウモン「ちょいと極端だが、
自分の機体に愛着を持つのは
当然のことだしな」
ウモン「ワシも若い頃には
自分の機体を勝手にいじくっとった
もんじゃ」
ツグミ「ありがとうございます」
ウモン「待て待て、まだ話は続くぞ！
あれは一年戦争の末期、ワシは
愛機ボールを…」
ツグミ「あの、ウモンさん…、
その前に質問、よろしいでしょうか？」
ウモン「…仕方ないのう…。
ま、昔話は後でしてやろう…、
ワシの部屋でゆっくりたっぷりとな」
アイビス「な…」
ツグミ「アイビス…、
お年寄りの冗談に一々反応しないの」
ウモン「な…」
ツグミ「で、この艦は敵を追って
木星に向かうと聞きましたけど、
木星圏に何があるんです？」
アイビス「ジュピトリアンは
既に壊滅したはずじゃないの？」
ウモン「…まあ、それについては
そのうち話すことになるじゃろうが…」
ウモン「ただ、ワシらがクロスボーンの
艦を襲うのは略奪のためではない。
敵の戦力を奪うのが目的なんじゃ」
ツグミ「………」
ウモン「それより、ツグミ。
お前さんはシステム工学の
エキスパートらしいな」
ウモン「できれば、
Ｘ１のアビオニクスプログラムの
最終チェックを頼みたいんじゃが…」
アイビス「Ｘ１って、あたし達が
運んできたモビルスーツ？」
ウモン「ああ、そうじゃ。
既にワシらに相応しいマーキングは
してある」
アイビス「相応しいって？」
ウモン「そいつは見てのお楽しみじゃ。
ま、気に入ったならお前さん達の
機体にも描いてやるぞ」
（アラート）
ツグミ「この警報…敵襲！？」
ウモン「来おったか！
やはり、ワシらを放っておく気は
ないようじゃな」
アイビス「………」
ツグミ「アイビス…やれるの？」
アイビス「あ…ああ…」
（マザー・バンガードが出現）
ベラ「宇宙海賊クロスボーン・バンガード、
最終チェックの後、各機発進！」
（クロスボーン・ガンダムＸ１、ウモン機が出現）
キンケドゥ「これがＸ１…、
格闘性能と運動性はＦ９１以上だな」
ツグミ「で、でも、
頭部にドクロのマーキングだなんて…」
ウモン「ふっふっふ。
ワシら海賊に相応しい機体じゃろうが」
ツグミ（サナリィが
本気で海賊用に作ったのかしら…？
ううん、きっと単なる偽装よね）
（敵機が出現）
キンケドゥ「あのベルガ・ギロス…
ザビーネ・シャルか…！」
ウモン「かーっ！
やっかいな奴が来ちまったな！」
アイビス「そのザビーネってのは、
それほどの腕なの？」
キンケドゥ「ああ。
クロスボーンの精鋭部隊の中でも
飛びっきりのエースだ」
アンナマリー「ザビーネ隊長、
海賊達はバビロニア・バンガードに
乗換えた模様です」
ザビーネ「驚くことではない。
あの艦は正統な主を迎えたのだ」
アンナマリー（正統な主…ロナ家の人間か）
ザビーネ「各機、攻撃開始。
海賊の機動部隊を足止めしろ」
（作戦目的表示）
ザビーネ（そろそろ頃合いか…）
ザビーネ「行くぞ、アンナマリー」
アンナマリー「了解です」
（ザビーネ機がマザー・バンガードの西へ移動）
キンケドゥ「ザビーネ！」
（ザビーネ機がマザー・バンガードに隣接しようとするが、クロスボーン・ガンダムＸ１が間に入る）
【強制戦闘】
キンケドゥ[ブランド・マーカー]ｖｓザビーネ[防御]
（ザビーネは切り払う）
ザビーネ「待て、シーブック・アノー。
我々はそちらに投降する所存だ」
キンケドゥ「投降だと！？」
ザビーネ「そうだ。前大戦でクロスボーン・
バンガードが見せた残虐な殲滅作戦の
やり方に嫌気がさしたのでな」
キンケドゥ「だからと言って、
貴様を信用することは出来ない」
ザビーネ「どう思われようと構わんが…
今のクロスボーン・バンガードに大義が
ないことは、十分承知しているつもりだ」
キンケドゥ「………」
ザビーネ「それに、私はマイッツァーや
鉄仮面の意志に従う気はない」
ザビーネ「彼らのやり方では、
人をより良い方向へ導くことなど
不可能だからな」
キンケドゥ「………」
アイビス「あいつ、信用できるの？」
ウモン「ううむ…」
ベラ「わかりました、ザビーネ・シャル。
あなた方の協力に感謝します」
キンケドゥ「ベラ、本気か！？
奴は俺達の敵だった男だぞ！」
ベラ「キンケドゥ、
今は少しでも戦力が必要な時です」
ベラ「例え、それが
クロスボーン・バンガードからの
離反者であっても…」
ザビーネ「ありがとうございます、姫様。
このザビーネ、命を懸けて
お尽くしさせていただきます」
アンナマリー「………」
ツグミ「待って！
新たな部隊の接近を感知…、
クロスボーンです！」
（ベルガ・ダラスとゾンド・ゲーが３機出現）
ドレル「ザビーネ、やはり裏切ったか」
ベラ「ドレル…！」
ザビーネ「裏切ったつもりはない。
本来の主の下へ戻ったまでだ」
ドレル「私を愚弄するか、ザビーネ」
ザビーネ「真実を述べたまでだ」
ベラ「ドレル、兵を退きなさい。
今の世に貴族は必要ありません」
ドレル「黙れ！ おじい様と父の理想を
貶めた罪は万死に値する！」
ベラ「違います！
あなた達のやろうとしていることは
統治の名の下の支配に過ぎません！」
ドレル「ベラ…お前は
コスモ・バビロニアの女王と
なるべき人物だった」
ドレル「その者の口から、
自らの信念を否定された兵達の絶望が
貴様に理解できるか？」
ベラ「………」
ドレル「前大戦以後、我らクロスボーン・
バンガードは、お前の演説によって分裂し、
その力は大きく削がれることとなった」
ドレル「だが、新たな協力者を得た今、
我々の掲げる理想の実現は目の前だ」
ベラ「愚かな…！
彼らの真意を知りながらも
それと手を結ぶか…」
ドレル「彼らと合流する前にロナ家の
威光を借る逆賊を粛正してくれる…！」
ベラ「ドレル…
クロスボーン・バンガードの野望は
この私が必ず止めてみせます」
ザビーネ（そうだ…。その高潔なる血こそ、
私が求めていたものだ…）
ザビーネ「姫様、私のみの証は
この戦いで立ててみせましょう」
（作戦目的表示）
キンケドゥ「ドレル・ロナ！
貴様は鉄仮面のやったことを
繰り返すつもりか！」
ドレル「その通りだ！ 父の遺志を継ぎ、
私が人類を粛正する！」
ベラ「ドレル、考え直すのです！
木星圏の人間と手を組むことは
人類全体の破滅につながります！」
ベラ「前大戦でジュピトリアンが
何をしたのか、忘れたのですか！？」
ドレル「人類の存続という目的のために、
手段を選んでいる余裕はない！」
ドレル「そして、無能な者達を
生き長らえらせる必要もない！」
ドレル「ザビーネ！
貴様もコスモ貴族主義を否定するか！」
ザビーネ「勘違いしないでもらおう。
私は真の理想にこの身を捧げるために
貴公の敵に回ったのだ」
ドレル「データ未登録のアーマード
モジュールだと！？ ＤＣが解体した今、
何故新型が海賊のところにあるのだ！」
ドレル「ここは退くしかないか…！」
ドレル「だが忘れるな、ベラ！
クロスボーンの名を継ぐのは我々だ！」
ドレル「そして、私は必ずや愚民を粛正し
この宇宙に高貴なる者による統治を
打ち立ててみせる！」
（ドレル機が南西端へ移動し撤退）
ベラ「ドレル…」
ザビーネ「姫様、
今のクロスボーン・バンガードに
大義はありません」
ザビーネ「彼らを討つのも
高貴なる者の務め。あまり
お心をお痛めなさらぬように…」
ベラ「………」
キンケドゥ「ザビーネ、
まずはこちらの誘導に従ってもらう」
ザビーネ「…まだ私を疑うか」
キンケドゥ「………」
ザビーネ「ならば…」
（ベルガ・ギロスからダギ・イルスが離れ、ベルガ・ギロスが爆発）
ウモン「なんと…！」
ツグミ「自分の機体を爆破した！？」
ザビーネ「私も過去は捨てたつもりだ。
…これで信じてもらえたかな？」
キンケドゥ「わかった…」
キンケドゥ「ザビーネ、アンナマリー…
お前達にはしばらくの間、武装兵の
監視をつけさせてもらう」
キンケドゥ「それから、艦内での行動は
かなり制限されると思ってくれ」
ザビーネ「当然の処置だな。異論はない」
アンナマリー「自分もであります」
キンケドゥ「………」
アイビス「随分と慎重な対応だな」
ウモン「そりゃそうよ。
あのザビーネとキンケドゥは、
宿敵同士だったからな」
アイビス「宿敵？」
ウモン「ああ。キンケドゥは
ワシらと出会う前から、奴と戦場で
何度も顔を合わせとったらしい」
ツグミ「キンケドゥさんって、宇宙海賊に
なる前は何をやっていたんです？」
ウモン「うむ…まあ…それはそのうち
キンケドゥ本人から聞くんじゃな…」
ベラ「…ザビーネ」
ザビーネ「姫様…」
ベラ「今の私は貴族でも、
ロナ家の当主でもありません。
以後、その呼び方は禁じます」
ザビーネ「仰せのままに…」
ベラ「ザビーネ、それにアンナマリー…
もう一度あなた達の意志を確認します」
ベラ「我々はクロスボーン・バンガードを
含む人類の敵と戦っています。
それに協力すると言うのですね？」
ザビーネ「はい。
現体制のクロスボーンの非道な戦略は、
到底容認できるものではありません」
キンケドゥ「………」
ベラ「いいでしょう。今の我々にとっては
賛同者こそが何よりの戦力です」
キンケドゥ「ベラ…」
ベラ「ザビーネ、
あなたにはＸ２を預けます」
ザビーネ「承知いたしました」
ベラ「では…これより本艦は
木星へ向かったクロスボーン本隊を
追撃します。各自、出発の準備を」
ザビーネ「…キンケドゥ、
今後はよろしく頼む」
キンケドゥ「ああ…。
だが、それはあんた次第だがな」
ザビーネ「フ…」